国税の処分通知が電子交付へ拡大 税理士事務所が回す一括同意7工程

令和8年9月24日以後、e-Taxで電子交付を受けられる処分通知等が拡大します。一括同意への変更点と、税理士事務所が踏む7工程、守秘義務の論点を一次情報で整理します。

国税の処分通知が電子交付へ拡大 税理士事務所が回す一括同意7工程

処分通知等の電子交付とは、税務署からの通知書をe-Tax上で受け取る仕組みのことです。

顧問先に届く税務署からの通知を、事務所は紙で受けているでしょうか、それともe-Taxで受けているでしょうか。この記事では、国税システムの更改にあわせて電子交付の対象が広がることで、税理士事務所の通知受領フローがどう変わるのか、事前に何を決めておくと移行がなだらかになるのかを、工程に分けて整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。国税庁は処分通知等の電子交付についてで、令和8年9月24日以後にe-Tax上で電子交付を受けられる処分通知等の対象が拡大されると案内しています。

令和8年9月24日に通知の受け取り方の何が変わるのか

変わるのは二点です。電子交付の対象となる通知の範囲が広がること、そして同意の取り方が「その都度」から「事前の一括」へ移ることです。根拠は国税庁の処分通知等の電子交付についてで、令和6年度税制改正で措置された処分通知等の電子交付の拡充を踏まえた対応だと説明されています。

これまでのe-Taxでは、電子で受け取れる通知書の種類が限られていました。還付金の振込通知、住宅借入金等特別控除の証明書、予定納税等の通知書、適格請求書発行事業者の登録に係る通知書といった、個別に名前の挙がっているものが対象でした。それ以外の処分通知やお知らせは紙で郵送され、事務所は届いた封筒を開けて内容を判断し、顧問先へ転送するか電話で伝えるという運用を続けてきました。更改後は、この「紙で届くもの」の範囲が縮みます。

同意方法の変更のほうが、実務への影響は大きいかもしれません。国税庁は同ページで、電子交付への同意方法が原則として申請等の都度の同意から「事前の一括同意」へ変更されると記載しています。そのうえで、これまで電子交付を利用していた利用者も含めて、e-Tax上で一括同意の手続を行うことになると案内しています。つまり、すでに電子で受け取れていた事務所も、何もしないままでは新しい仕組みの外に置かれる可能性があります。

ただし、すべてが一括同意に吸い込まれるわけではありません。国税還付金振込通知書は申告・申請等の都度に同意することで電子交付され、電子申請等証明書と納税証明書は請求をすれば電子交付される、と同ページは分けて書いています。また住宅借入金等特別控除証明書と適格請求書発行事業者の登録に係る通知書については、令和8年9月23日以前に提出した申告・申請で同意済みであれば従前の同意に基づいて電子交付される、とされています。ここを一律に扱うと、顧問先への案内が事実とずれます。

システム面の下準備も同時期に走ります。国税庁は国税システムの更改に伴うメンテナンス時間についてで、令和8年9月19日の0時から9月24日の8時30分まで、および令和8年9月26日の0時から24時までe-Taxを利用できないと告知しています。切替の週に申告期限や納付期限が重なる顧問先を抱えている事務所は、電子交付の設計とスケジュールの手当てを並行して進めることになります。停止期間そのものの段取りは、士業のチカラのe-Taxが9月19日0時から停止 税理士事務所が組む申告スケジュール7工程で別途整理しています。

一括同意までに税理士事務所が踏む7工程と通知の仕分け設計

ここからが本題です。電子交付は同意を押して終わりにはなりません。紙で届いていたものが電子で届くようになると、通知を誰がいつ見るのか、見落としたときに誰が気づくのかという受信体制の設計が新しく必要になります。以下の工程は、担当者が入れ替わっても回る形に落とすことを意図しています。有資格者が最終確認を行う箇所は、工程のなかで明示します。

第一工程は、現状の通知受領ルートの棚卸しです。顧問先ごとに、通知が事務所へ届いているのか、顧問先の本社へ届いているのか、代表者の自宅へ届いているのかを一覧にします。この一覧が無いまま電子交付へ切り替えると、これまで紙を受け取っていた側が、何も届かなくなったと感じる事態が起きます。

第二工程は、電子交付の対象となる通知の確認です。国税庁は電子交付対象となる処分通知等の一覧をe-Taxによる電子交付の対象となる処分通知等検索で公開しています。自事務所の関与先でよく発生する通知が対象に入っているかを、ここで突き合わせます。

第三工程は、一括同意を行う主体の整理です。e-Taxの利用者識別番号は顧問先のものと税理士事務所のものが併存します。どの番号で同意を行うと、どの通知がどのメッセージボックスへ届くのか。この対応関係を先に紙に書き出しておくと、後工程の混乱が減ります。国税庁は一括同意の詳細について後日e-Taxホームページで案内するとしているため、この工程は公表を待って確定させる部分が残ります(要確認)。

第四工程は、顧問先への説明文の作成です。ここは生成AIが下書きを引き受けられる領域です。事実関係は一次情報から与え、AIには文章の組み立てだけを任せます。

あなたは税理士事務所の事務局担当です。以下の事実だけを根拠に、
顧問先の経理担当者へ送る案内メールの下書きを作成してください。

【事実】
・国税庁は、令和8年9月24日以後、e-Tax上で電子交付を受けられる
  処分通知等の対象が拡大されると案内している
・電子交付への同意方法は、原則として申請等の都度の同意から
  事前の一括同意に変更される
・これまで電子交付を利用していた場合も、e-Tax上で一括同意の
  手続を行うことになる
・一括同意の具体的な手続方法は後日案内される予定である

【条件】
・事実として挙げた範囲を超える記述はしないこと
・「違法」「義務」など法的評価を含む語は使わないこと
・不明点は「当事務所で確認のうえ改めてご連絡します」とすること
・400字程度、ですます調
・冒頭で結論、その後に背景、最後に当面のお願いの順で必ず構成すること

第五工程は、下書きの事実照合です。AIが出した文面を、第二工程で確認した一次情報と一文ずつ突き合わせます。とくに通知の名称は誤りが混入しやすい箇所です。この照合を終えた文面に、税理士が目を通して送信可否を判断します。ここが有資格者の最終確認工程にあたります。

第六工程は、受信後の仕分けルールの設計です。電子交付に切り替わると、通知はメッセージボックスに溜まります。届いた通知を要対応と記録保存に分け、要対応のものだけを担当者のタスクへ流す線引きを先に決めます。分類の下書きにもAIを使えます。

あなたは会計事務所の業務設計担当です。以下の通知名の一覧を、
事務所内の対応区分に仕分けした案を作成してください。

【対応区分】
A: 期限のある対応が発生しうる(担当者タスク化)
B: 内容確認のうえ顧問先へ共有(共有のみ)
C: 記録として保管(保管のみ)

【入力】
{通知名の一覧をここに貼り付け}

【条件】
・区分の根拠を各行に一文で添えること
・判断に迷うものは「要確認」と明記し、Aに寄せること
・法令の解釈は行わず、通知名から読み取れる範囲にとどめること
・出力は通知名、区分、根拠の順で1行ずつ

第七工程は、試験運用と振り返りです。切替直後の期間は、電子で届いた通知を紙の記録と突き合わせる二重確認を残します。関与先が百件を超える規模の事務所であれば、まず関与の浅い十数件から始めて、受信から担当者への到達までにどれだけ時間がかかるかを測ると、設計の粗が早く見つかります。

この七つを通して押さえておきたいのは、AIに任せているのが文章の生成と分類の下書きだけだという点です。どの通知が対象か、同意を誰の番号で行うか、顧問先に何を約束するかは、一次情報と税理士の判断で決まります。国税システム更改そのものへの事前案内の組み立ては、KSK2が9月24日稼働 税理士事務所が顧問先に出す事前案内7工程でも扱っています。

顧問先の通知をAIに読ませる前に決めておく3つのこと

電子交付が広がると、通知のPDFがそのままAIに投げ込まれる場面が増えます。ここで最初に確認したいのは、そのツールが入力を学習に使うかどうかです。

税理士の守秘義務の根拠は税理士法第38条にあります。

同条は、正当な理由なく税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らすこと、および窃用することを禁じる規定を置いています。税理士でなくなった後も同様だと条文は続きます。

事務所の職員についても税理士法第54条が同様の規律を置いています。条文は義務の所在を示していますが、生成AIへの入力がこれに触れるかどうかの当てはめは、個別の事情を踏まえて有資格者が判断する領域です。この記事はその判断を代替しません。

決めておきたい一つ目は、入力してよいデータの範囲です。通知書には納税者の氏名、住所、利用者識別番号、税額が載ります。氏名と識別番号を伏せたうえで本文だけを投入するのか、そもそも顧問先ごとの個別通知は投入しないのか。事務所として線を引かないまま個々の判断に委ねると、運用はたやすく揺れます。

二つ目は、使用するツールの設定です。主要な事業者は、法人向けプランにおける入力データの取り扱いを公開しています。OpenAIのエンタープライズ向けプライバシーに関する説明、Anthropicの商用利用規約、Google Cloudの生成AIに関するデータガバナンスは、いずれも参照できる一次資料です。事務所で採用するプランがどれに当たるのかを、契約書とあわせて確認しておくと、顧問先から問われたときに答えられます。

三つ目は、顧問先への説明です。生成AIを業務に使う旨をどの段階で伝えるか、同意を書面で取るか、口頭の説明にとどめるか。ここは各事務所の判断ですが、電子交付への一括同意を案内するタイミングは、AI利用の説明を同時に行う機会にもなります。通知の受け取り方を変える連絡と、その通知を事務所内でどう処理するかの説明は、顧問先から見れば一続きの話だからです。

規程に落とすとすれば、入力禁止データの列挙、利用を認めるツールとプランの限定、出力を成果物に反映する前の確認者の指定、ログの保存期間の四点が骨格になります。細部の書き方は事務所の規模で変わりますが、この四点が欠けた規程は運用段階で機能しにくいという声が実務家から出ています。事務所内のAI利用ログの扱いについては、士業のチカラのChatGPT WorkのData agent 顧問先データを入れる前の7確認でも別角度から整理しています。

電子交付の切替でつまずきやすい3つの場面

一つ目は、同意したつもりで同意できていない状態です。従来から電子交付を使っていた事務所ほど、この落とし穴にはまりやすくなります。国税庁は、これまで電子交付を利用していた場合も含めてe-Tax上で一括同意の手続を行うことになると処分通知等の電子交付についてで案内しています。過去に同意済みだから今回は何もしなくてよい、という前提で動くと、通知が紙へ戻る可能性があります。回避策は単純で、切替後に実際の受信状況を一件ずつ確認する工程を残すことです。

二つ目は、メッセージボックスの見落としです。紙の封筒には物理的な存在感があり、机の上に置かれていれば誰かが気づきます。電子の通知にはそれがありません。担当者が休暇に入った週に期限のある通知が届き、復帰後に発見されるという事故は、電子化を進めた事務所で繰り返し起きてきました。受信の確認を特定個人の習慣に依存させず、当番制や通知の転送設定で冗長化しておく設計が要ります。

三つ目は、AIが出した通知の要約をそのまま顧問先へ転送してしまう場面です。通知書の文面は定型に見えて、金額や期限の記載箇所が種類ごとに異なります。要約の過程で期限が落ちたり、別の通知の数値が混ざったりしても、読んだだけでは気づきにくい。回避策は、顧問先へ出す文面に通知原本をそのまま添付し、要約はあくまで補助として位置づけることです。要約と原本が食い違ったときにどちらが正かを明記しておくと、後の紛議を避けられます。

電子交付への移行にかかる工数と、誰が運用を持つか

費用の面では、e-Tax自体の利用に追加の料金は発生しません。発生するのは人の時間です。関与先の通知受領ルートの棚卸しは、一件あたり数分から十数分程度を見込む事務所が多いようです。関与先が百件規模であれば、棚卸しだけで一営業日から二営業日を確保しておくと無理がありません。これは各事務所の関与形態によって大きく振れるため、自事務所で数件を試してから全体を見積もるのが堅実です。

生成AIの利用料は、案内文の下書きと通知の分類程度の用途であれば、一般的な法人向けプランの範囲に収まります。追加のシステム投資よりも、設計と教育に時間を割く局面だと捉えたほうが実態に近いはずです。

体制面で決めておきたいのは、運用の所有者です。電子交付の受信確認を全員で気をつける体制にすると、誰も見ていない状態になりがちです。受信箱の確認当番、未対応通知のエスカレーション先、税理士へ上げる基準の三つを、名前を入れて決めておきます。事務所の規模が小さいほど属人化しやすいため、担当者が一人しかいない場合でも代替者を紙に書いておく価値があります。

この先の論点は「紙が残る業務」の再設計に移る

電子交付の対象拡大は、通知という入口のデジタル化です。入口が電子になると、次に問われるのは事務所内で紙に戻している工程がどこかという点になります。電子で受け取った通知を印刷してファイルに綴じているなら、その印刷は誰のために行われているのか。保管のためなのか、確認のためなのか、それとも慣行なのか。この問いが、更改後の実務で事務所ごとに立ち上がってくるはずです。

もう一つの論点は、通知の構造化です。処分通知が電子で届くようになると、内容を機械的に読み取って会計システムや進行管理へ連携させる余地が生まれます。現時点で国税庁がそうした連携の仕様をどこまで開放するかは、公表資料から読み取れる範囲を超えます(要確認)。ただ、通知が電子で揃う環境は、事務所側が自前で仕組みを組む前提条件にはなります。

三つ目は、顧問先との役割分担です。電子交付は顧問先自身のe-Tax環境でも受け取れます。すべてを事務所経由にするのか、顧問先にも見える状態にして二重に把握するのか。ここは顧問料の設計にも関わる話で、更改を機に整理し直す事務所が出てくることが論点になります。

よくある質問

一括同意をしないと、通知は届かなくなりますか

いいえ、届かなくなるわけではありません。国税庁の処分通知等の電子交付については、電子交付を希望する場合にe-Tax上で一括同意の手続を行うことになると案内しています。希望しない場合の受け取り方については同ページの記載を確認したうえで判断することになります。

これまで電子交付を使っていた場合も手続が要りますか

はい、対象によって扱いが分かれます。国税庁は同ページで、これまで電子交付を利用していた場合も含めて一括同意の手続を行うことになるとしつつ、国税還付金振込通知書や電子申請等証明書などは一括同意の手続なく電子交付される場合があると分けて記載しています。自事務所で扱う通知がどちらに属するかを個別に確認するのが安全です。

一括同意の具体的な操作方法はどこで分かりますか

現時点では公表を待つ段階です。国税庁は同ページで、一括同意の手続は令和8年9月24日以降にe-Tax上で行えるようになり、詳細は後日e-Taxホームページで案内すると記載しています。操作画面を前提にした事務所内マニュアルは、公表後に作成することになります。

通知書のPDFを生成AIに読ませてもよいですか

判断の前に確認したいのは、使用するツールが入力データを学習に使う設定になっているかどうかです。守秘義務の根拠は税理士法第38条にありますが、個別の入力がこれとどう関わるかの評価は、事務所の状況を踏まえて有資格者が行う領域になります。事務所として入力可能なデータの範囲をあらかじめ決めておく運用例が見られます。

e-Taxが止まる期間に申告期限が来る顧問先はどうすればよいですか

期限と停止期間の重なりを先に洗い出すのが起点になります。国税庁は国税システムの更改に伴うメンテナンス時間についてで停止時間を公表しています。具体的な対応は顧問先ごとの事情によって変わるため、税理士の判断で個別に設計することになります。

事務所の規程はどこまで書き換えることになりますか

通知の受領ルートが変わる部分と、AI利用の部分の二つに分けて考えると整理しやすくなります。前者は業務マニュアルの改訂で足りる事務所が多い一方、後者は入力禁止データやログ保存を含むため、規程本体への追記を選ぶ事務所もあります。どちらが適切かは、事務所の規模と既存規程の構成によって変わります。

AIが作った顧問先への案内文は、そのまま送っても差し支えありませんか

送信前に人の確認工程を挟む運用が一般的です。案内文には通知の名称、時期、顧問先に依頼する事項が含まれ、いずれも誤りが実務上の影響を持ちます。下書きの生成をAIに任せ、事実の照合と送信可否の判断を税理士が担うという役割分担を、工程として明示しておく方法が採られています。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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