取適法の運用基準が10月1日に改正 顧問先への説明資料を生成AIで下書きする7手順

取適法の運用基準と考え方が令和8年10月1日に改正内容として公表されました。顧問先向け説明資料の下書きを生成AIで作り、有資格者が照合して仕上げる7手順と守秘義務の論点を整理します。

取適法の運用基準が10月1日に改正 顧問先への説明資料を生成AIで下書きする7手順

取適法の運用基準改正とは、公正取引委員会が定める解釈の物差しの更新のことです。

顧問先から取適法の運用基準が変わったと聞いたが何をすればよいのか、と聞かれたとき、説明資料をゼロから作ると半日がかりになります。この記事では、公表された一次情報だけを材料に、顧問先向け説明資料の下書きを生成AIで作り、有資格者が確認して仕上げるまでを7手順で整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。前提として、公正取引委員会は令和8年10月1日に運用基準と「考え方」の改正内容を公表しています(出典: 公正取引委員会 報道発表資料 令和8年10月1日)。

10月1日に公表されたのは改正案ではなく確定した改正内容

最初に整理しておきたいのは、公表の位置づけです。公正取引委員会は令和8年6月24日に、運用基準と「考え方」の改正案を公表し、意見募集を行っていました(出典: 公正取引委員会 意見募集の公表 令和8年6月24日)。同ページによると、意見の提出期限は令和8年7月23日の23時59分必着でした。

10月1日の公表ページには、運用基準の改正内容、「考え方」の改正内容、寄せられた意見の概要と考え方が掲載されています。意見は20件で、原案に技術的修正を加えたと記載されています(出典: 公正取引委員会 報道発表資料 令和8年10月1日)。つまり、顧問先への説明では改正案が出ているではなく改正内容が公表されたという時制で書くことになります。このズレは、AIに下書きを任せると混ざりやすい点です。

改正の背景も公表ページに書かれています。公正取引委員会、中小企業庁及び特許庁は、令和8年6月24日に「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」を公表しました。公正取引委員会は、この指針の内容等を踏まえて、取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法の解釈・考え方を明確にするために改正を行ったと説明しています(出典: 公正取引委員会 意見募集の公表 令和8年6月24日)。

注意点が一つあります。公表ページ本体には、個々の改正点の中身が文章では書かれていません。具体的な改正箇所は、別紙1-1の運用基準と別紙1-2の「考え方」の新旧対照表で確認する構成です。ですから、記事や説明資料にどの項目がどう変わったかを書く前に、別紙を開いて自分の目で読む工程が欠かせません。本記事も、改正点の中身には踏み込まず、読み方と資料化の手順に絞って書いています。

説明資料を作る前に決める3つの線引き

取適法は、正式名称を製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律といいます。条文はe-Gov法令検索で確認できます。顧問先の業種によって、製造委託、役務提供委託、特定運送委託といった類型のどれが関係するかが変わります。この類型の振り分けは、取引の実態を見て判断する仕事であり、有資格者が担う部分です。

線引きの一つ目は、AIに任せる範囲です。公表資料の要約、新旧対照表の差分の整理、顧問先に聞くべき質問の洗い出し、説明資料の文面案までは、AIが下書きできます。二つ目は、有資格者が担う範囲です。顧問先の個別取引を条文に当てはめる作業、改正が自社の契約や発注書式に及ぶかの判断は、弁護士や行政書士、中小企業診断士など、それぞれの立場で責任を負える人が行います。三つ目は、書かない範囲です。説明資料には、特定の取引が適法かどうかの評価を書きません。評価を書いた瞬間に、資料は一般的な情報提供から個別の助言に変わります。

この線引きは、事務所内で先に文章にして共有しておくと、担当者ごとの揺れが減ります。スタッフが数名の事務所で、顧問先が数十社あるとします。全社に同じ資料を送る前提なら、半日かかっていた資料づくりを、下書きと確認の二段に分けて短縮できる見通しが立ちます(出典: 編集部の想定例であり、実測値ではありません)。実際の所要時間は、一次情報の量と顧問先の業種で変わります。

7手順で進める説明資料の下書き

手順は次の7つです。各手順の入力と出力を明示し、最後は有資格者の確認で締めます。

手順1は、一次情報の収集です。入力は、10月1日の公表ページ、6月24日の意見募集ページ、別紙1-1と別紙1-2のPDFです。出力は、これらのURLと取得日を並べた資料一覧です。URLと取得日は人が記録します。AIに関連資料を探すよう頼むと、存在しない資料名が混ざる可能性があるためです。

手順2は、新旧対照表の読み込みです。別紙1-1と別紙1-2をAIに読ませ、変更箇所を一覧にします。ここで使うプロンプト例を示します。

以下の新旧対照表を読み、変更された箇所を「項目名」「旧の記載」「新の記載」の順に抜き出してください。
解釈や評価は加えず、原文の言い回しのまま引用してください。
読み取れなかった箇所は「読み取り不能」と書いてください。
【新旧対照表の本文】
(ここに貼り付け)

出力は変更箇所の一覧です。この一覧は、手順3で人が原文と突き合わせます。AIが旧と新を取り違える誤りは、表形式のPDFで起きやすいためです。

手順3は、原文との突き合わせです。一覧の全行を、別紙のPDFと照合します。照合した行には印を付け、照合していない行は資料に載せません。この工程は省略しないでください。

手順4は、条文の確認です。説明資料に条文を載せる場合は、e-Gov法令検索の原文で確認したものだけを載せます。たとえば、支払期日については取適法第3条が、製造委託等代金の支払期日について、給付を受領した日から起算して六十日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内で定められなければならないと定めています。書面等による明示については取適法第4条が、委託事業者に対し、給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示することを求めています。委託事業者の遵守事項は取適法第5条にまとめられています。説明資料には条文の引用に留め、顧問先の取引への当てはめは書きません。

手順5は、顧問先向けの文面案づくりです。AIには、読者を取引先に発注する側の中小企業の経営者と指定し、専門用語に短い説明を添えるよう頼みます。2本目のプロンプト例です。

次の変更箇所一覧を、取引先に発注する側の中小企業の経営者向けに、A4で1枚の説明文にしてください。
条件は次のとおりです。
・一覧にある内容だけを使い、一覧にない制度や数字は足さない
・特定の取引が問題かどうかの評価は書かない
・各段落の末尾に、根拠となる資料名を括弧で付ける
・確認が必要な箇所は「要確認」と明記する
【変更箇所一覧】
(手順3で照合済みのものを貼り付け)

手順6は、顧問先に聞く質問の洗い出しです。発注書式の様式、支払サイクル、協議の記録の残し方など、改正の影響を判断するために有資格者が確認したい項目を、AIにチェックリスト案として出させます。リスト案は有資格者が加除します。

手順7は、有資格者の最終確認です。確認者は、文面の各文が公表資料のどこに対応するかを、出典欄と見比べながら確かめます。対応が取れない文は削除します。ここで承認の記録を残しておくと、後から誰がいつ確認したかを説明できます。

発注側の官公需や自治体案件に関わる事務所は、生成AIの調達と利活用に関するガイドラインの動きも合わせて確認する運用があります(参照: デジタル庁の生成AIガイドライン2.0版を士業の視点で読む)。事務所の規程に生成AIの利用ルールを足す観点は、別の記事で整理しています(参照: 生成AIガイドライン参照元5系統の7手順)。

守秘義務・規程上の論点

顧問先の発注書式や取引条件を生成AIに入力する場合、守秘義務との関係を先に整理する必要があります。弁護士については弁護士法第23条が、職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています。行政書士については行政書士法第12条が、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならないという趣旨を定めています。中小企業診断士は資格法の条文を本記事では確認できていないため、事務所の契約書や就業規則上の秘密保持条項を、各自で確認する前提とします。

本記事の手順は、顧問先固有の情報を入力しなくても完結するように組んであります。手順2と手順5で入力するのは、公表済みの新旧対照表と、そこから作った変更箇所一覧だけです。顧問先名や取引条件は、AIには渡しません。顧問先ごとの当てはめは、AIの外で、有資格者が行います。

どうしても顧問先の書式をAIに読ませたい場合は、事務所の規程で次の点を決めておく運用例があります。入力してよい情報の範囲、利用するAIサービスの種類とデータの取り扱い設定、顧問先への説明と同意の取り方、入力ログの保存方法です。個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法第27条の第三者提供の制限との関係が論点になります。個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています(出典: 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について)。サービス側が入力内容を学習に使うかどうかは、ベンダーの公式文書で確認するのが出発点になります。

規程の文案は、事務所の責任者が決める事項です。本記事は一般的な論点の整理であり、個別の事務所への助言ではありません。

失敗例と回避策

失敗例の一つ目は、改正案の時制のまま説明資料を送ってしまうことです。6月に作った下書きを使い回すと、改正案が公表されているという書き方が残ります。回避策は、資料の冒頭に「公表日」と「確認日」を置き、公表ページのタイトルと日付を人が書き直すことです。

二つ目は、AIが旧と新を取り違えるケースです。新旧対照表の左右の列を逆に読むと、改正前の内容を改正後として説明してしまいます。回避策は、手順3の全行照合です。照合の分担を決め、複数人で見ると抜けが減ると考えられます(出典: 編集部の運用例)。

三つ目は、AIが関連する通達や事例を補ってしまうケースです。親切のつもりで、存在しない通達番号や、確認していない事例を足すことがあります。回避策は、手順5のプロンプトで一覧にない内容を足さないようと指定し、出力に出典欄を必須にすることです。出典欄に書かれた資料が、手順1の資料一覧にあるかを機械的に突き合わせます。

四つ目は、説明資料が個別の助言に変わるケースです。御社の発注書式には問題があるといった評価の一文が紛れ込むと、資料の性格が変わります。回避策は、評価に当たる表現を禁止語として事務所内で共有し、最終確認で検索することです。

費用・工数・体制

生成AIの利用料は、サービスやプランで大きく変わります。ここでは金額を挙げず、事務所が契約済みのサービスの範囲で足りる作業量だと整理します。新規契約が必要かどうかは、各社の料金ページで確認してください。

工数は、下書きと確認を分けて組み、顧問先が増えるほど共通部分を資料化する効果が出ます(出典: 編集部の想定例)。個別の相談が入った場合の対応は、別枠で見積もります。

体制は、収集と下書きを担当するスタッフ、照合を担当する第二の確認者、最終確認の有資格者の3役を決めます。小規模の事務所では、一人が複数役を兼ねる場合もありますが、照合者と最終確認者は同一人物にしない運用が、誤りの発見に向いています。

今後の展望と独自考察

今回の改正は、知財取引指針を踏まえたものと説明されています。ノウハウやデータの取引に関する考え方が、取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法の側にも反映されたことで、生成AIの利用に伴うデータの取り扱いと、発注側と受注側の関係が、同じ文脈で語られる場面が増えることが論点になります。顧問先がAIを使って成果物を作り、その成果物の取引条件を決める場面では、データの帰属や利用範囲をどう書面に落とすかが課題になります。

士業の側にとっては、制度の改正が出るたびに説明資料を作る作業が繰り返されます。公表資料の収集、差分の整理、出典付きの文面化、有資格者の確認という流れを型にしておけば、次の改正にも同じ手順で対応できます。今回の手順は、取適法に限らず使えます。

最後に、ツール連携の観点です。発注書式や案件情報を扱う業務システムとAIの連携が広がると、書式の確認作業を自動化する動きも出てきます。法律事務所向けの案件情報APIの公開など、連携の入口が増えている点は、別の記事で整理しています(参照: LegalOnの案件情報APIを弁護士事務所の連携に使うときの7項目)。ただし、連携が広がるほど、守秘義務の範囲を確認する作業も増えます。

よくある質問

質問1は、10月1日の公表は改正案か確定かという点です。公正取引委員会の10月1日の公表ページに、運用基準の改正内容、「考え方」の改正内容、意見の概要と考え方が掲載されています。改正案は6月24日に公表され、意見募集を経ています(出典: 公正取引委員会 報道発表資料 令和8年10月1日)。

質問2は、具体的な改正点を知るにはどうするかという点です。公表ページの別紙1-1と別紙1-2に新旧対照表があります。ページ本体には改正点の中身が書かれていないため、別紙のPDFを開いて確認してください。

質問3は、意見は何件あったかという点です。公表ページには20件と記載されています(出典: 公正取引委員会 報道発表資料 令和8年10月1日)。

質問4は、AIに新旧対照表を読ませて問題ないかという点です。公表済みの資料であれば、顧問先の情報を含みません。ただし、読み取りの精度には限りがあるため、手順3の全行照合が前提になります。

質問5は、顧問先の個別取引が改正に関係するかをAIに判断させてよいかという点です。個別取引への当てはめは有資格者の業務であり、AIには任せない運用が示されています。説明資料も、一般的な情報の提供に留めます。

質問6は、問い合わせ先です。公表ページには、運用基準については公正取引委員会事務総局経済取引局取引部企業取引課、「考え方」についてはフリーランス取引適正化室が記載されています。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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