Gmail LiveとDocs Liveが士業事務所に来る前に決める 音声AIの情報管理7項目

Gmail Live・Docs Live・Keep Liveが法人向けに届く前に、士業事務所が決めておく音声AIの情報管理を7項目で整理。公式ブログとWorkspaceのデータ取扱いページ、守秘義務の条文を確認しています。

Gmail LiveとDocs Liveが士業事務所に来る前に決める 音声AIの情報管理7項目

音声AI機能とは、声で話しかけてメールや文書を扱う機能のことです。

AIに任せられるのはどこまでで、有資格者が判断するのはどこからか。声で操作する新機能が、この線引きの論点を増やしています。Googleは2026年9月3日の週から、Gmail Live、Docs Live、Keep Liveの提供を始めたと公式ブログで案内しており、Google Workspaceの法人向けには近日提供予定と記載しています(出典:Google Blog Use your voice to get more done in Gmail, Docs, and Keep)。本記事では、この機能が事務所のWorkspaceに届く前に、士業事務所が決めておく情報管理の項目を、7つに整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、製品の仕様はGoogleの公式ブログとヘルプで確認しています。

公式ブログで確認できること、できないこと

最初に、公式ブログに書かれている範囲を整理します。ブログによると、Gmail Liveは、受信トレイに自然な言葉で質問して答えを得る機能です。Docs Liveは、会話しながら文書の下書きを作る機能で、必要に応じてGmail、Drive、Chat、ウェブの情報を取り込む可能性があると説明されています。Keep Liveは、話した内容を整理されたメモやリストにする機能です(出典:Google Blog Use your voice to get more done in Gmail, Docs, and Keep)。

提供対象については、ブログに次のとおり書かれています。Gmail LiveとKeep Liveは、Google AI Plus、Pro、Ultraの購読者が対象です。Docs Liveは、ProとUltraの購読者が対象です。いずれも、Google Workspaceの法人向けには近日提供予定という扱いです(出典:同ブログ)。

一方で、このブログには、データの保持やプライバシーに関する明示的な記載、言語対応の詳細、プラットフォームごとの技術要件は、確認できませんでした。日本語での提供時期も、公式の記載では確認できていません(要確認)。報道によっては、提供対象のプラットフォームや言語に触れているものもありますが、本記事では、公式ブログで確認できた範囲だけを事実として扱います。

つまり、現時点で事務所が確認できるのは、機能の概要と、法人向けは近日という扱いまでです。仕様が出そろう前に、事務所として何を決めておくかが、本記事の主題です。

7つの情報管理項目 声のAIを使う前の運用例

ここからは、公式ブログで確認できた機能を前提にした、士業事務所向けの運用例です。弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁理士、中小企業診断士の事務所を共通の想定とし、数名から十数名規模で、Google Workspaceを使っている事務所を例にします。

項目1は、利用の可否と対象者の決定です。法人向けの提供が始まったとき、全所員に一斉に使わせるのか、一部の所員から試すのかを、先に決めます。管理者の設定で、Geminiの利用そのものを切り替えられるかどうかは、後述のヘルプで確認できます。

項目2は、受信トレイの内容と顧問先情報の関係の整理です。Gmail Liveは、受信トレイを検索対象にする機能です。顧問先とのメールには、守秘義務の対象となる情報や、個人データが含まれます。どのラベルやどのアカウントの内容を、AIの検索対象にしてよいかを、運用で決めておく必要があります。

項目3は、Docs Liveで取り込む範囲の整理です。ブログには、Gmail、Drive、Chat、ウェブの情報を取り込む可能性があると書かれています。取り込み元のDriveに、顧問先ごとのフォルダがある場合、フォルダのアクセス権の設計が、そのまま情報の流れの設計になります。

項目4は、音声入力の環境の整理です。声で話しかける機能は、周囲に人がいる場所で使うと、顧問先の情報を口にすることになります。執務室、移動中、在宅勤務で、使ってよい場所と内容を決めておく運用が考えられます。

項目5は、出力の確認工程です。AIが作った下書きやメモは、そのまま外に出さず、有資格者が確認する工程を挟みます。誰が確認し、どこに記録を残すかを、事務所の手順書に書いておきます。

項目6は、利用記録の方針です。音声での操作は、後から何を話したかを確認しづらい性質があります。会話の履歴がどこに保存され、どのくらいの期間残るかは、後述のヘルプの記載を踏まえて、管理者設定と合わせて決めます。

項目7は、規約と仕様の見直しの頻度です。機能が段階的に広がるため、法人向けの提供が始まった時点と、その後の仕様変更のたびに、上の6項目を見直します。四半期に1回など、点検の日程を決めておく運用があります。

項目の確認に、生成AIを使うこともできます。次のプロンプトは、架空の事務所の運用を整理する例です。実在の顧問先の情報は入力しません。

あなたは士業事務所の情報管理の点検の補助です。
架空の事務所「乙事務所」が、音声で操作するAI機能の導入前に決めておく事項を整理します。
次の運用メモ(下に貼り付け)を読み、以下の3つに分けて出してください。

1. すでに決まっている事項
2. 決まっていない事項(顧問先情報、アクセス権、記録の観点)
3. 所長に確認を依頼したい事項

断定は避け、判断が必要な箇所は「要確認」と書いてください。
貼り付けた文章にない事実は補わないでください。

【運用メモ】
(ここに架空のメモを貼り付ける)

次のプロンプトは、公式ヘルプの文章を事務所向けの確認事項に直す例です。

あなたは士業事務所の規程づくりの補助です。
下に貼り付けた製品の公式説明(Aとします)を読み、事務所の規程に反映するかどうかを検討するための確認事項を、
次の観点で5つ以内に整理してください。

- 入力データの学習利用
- 会話履歴の保存と削除
- 管理者が制御できる範囲

説明に書かれていないことは補わず、「説明からは確認できない」と書いてください。

【A】
(ここに公式説明の文章を貼り付ける)

どちらのプロンプトも、出力は下書きです。最終判断は、有資格者が行います。

顧問先の情報を声で扱う前に決める3つのこと 守秘義務と規程

守秘義務の整理は、新しい機能の導入のたびに見直す論点です。ここでは、公式ヘルプの記載と条文を確認したうえで、決めておく3つの事項を示します。

1つ目は、製品側のデータの取扱いの確認です。Googleの公式ページGenerative AI in Google Workspace Privacy Hubには、Workspaceは、顧客の事前の許可や指示なしに、顧客データをモデルの学習に使わないという趣旨の記載があります。また、プロンプトと応答は、許可なしにドメイン外で人が確認したり、生成AIモデルの学習に使われたりしないという趣旨も書かれています(出典:Google Generative AI in Google Workspace Privacy Hub)。管理者の制御として、Geminiのオンとオフの切り替え、会話履歴の自動削除期間の設定(3か月、18か月、3年などの選択肢)、ユーザーによる個別削除の許可が挙げられています(出典:同ページ)。

ただし、このページの対象は、Gmail、Docs、Drive、MeetなどのWorkspaceのGeminiです。今回の音声機能が、同じ扱いの対象になるかどうかは、法人向けの提供が始まった時点で、公式のヘルプで確認する必要があります(要確認)。

2つ目は、守秘義務の根拠の確認です。各士業の守秘義務は、それぞれの業法に置かれています。弁護士法第23条は、弁護士又は弁護士であった者が、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています(ただし書で、法律に別段の定めがある場合を除いています)。税理士法第38条、行政書士法第12条、社会保険労務士法第21条にも、それぞれ秘密を守る義務の規定があります。外部のAIサービスに顧問先の情報を入力することが、これらの条文との関係でどう整理されるかは、契約内容と設定によって変わる論点です。個別の当てはめは、有資格者の判断、必要に応じて所属団体への確認が前提です。

3つ目は、個人データの安全管理です。個人情報保護法第23条は、見出しが安全管理措置で、個人情報取扱事業者が、取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理のために、必要かつ適切な措置を講じることを定めています。声で操作する機能を使う場合の、周囲への漏えいや、履歴の保存も、安全管理の整理の対象になります。

事務所の規程に落とすなら、運用例として、利用を認める機能の一覧、対象とするアカウントとフォルダ、音声入力をしてよい場所、入力してはいけない情報の区分、会話履歴の保存期間、確認者の記録、事故の報告先を書く方法があります。顧問先への説明は、業務の開始時に、AIを使う可能性と、情報の扱いを文書で伝えておく運用があります。生成AIの法人プランの比較は、生成AIの法人プランと学習利用の比較でも整理しています。

法人向けの提供が始まったときの試験運用の進め方

法人向けの提供が始まったら、全所員に広げる前に、小さな単位で試験運用をする進め方があります。ここでは、公式ブログに書かれた機能の範囲だけを前提に、確かめる観点を5つに整理します。

1つ目は、機能が事務所のアカウントで有効になっているかの確認です。個人向けのプランで先に提供が始まっているため、法人のアカウントで使えるのか、管理者が設定できるのかを、最初に確認します。画面の表示だけで判断せず、管理者の設定画面と公式ヘルプの記載の両方を見ます。

2つ目は、検索や取り込みの対象範囲の確認です。Gmail Liveはどのメールを検索対象にするのか、Docs LiveはどのDriveのフォルダを取り込むのかを、架空のテスト用アカウントと、疑似データで試します。顧問先の実データを使った試験は、範囲が確認できてから行います。

3つ目は、出力の誤りの確認です。AIが答えた内容が、元のメールや文書の内容と合っているかを、人が突き合わせます。誤りの種類と頻度を記録しておくと、確認工程の設計に使えます。

4つ目は、履歴の残り方の確認です。声で操作した内容が、どの画面に、どのくらいの期間残るかを、管理者の設定とあわせて確認します。事務所の記録として使えるかどうかも、このときに判断します。

5つ目は、所員の使い勝手の確認です。使いにくい機能は、使われないまま、個人の端末での別の使い方に流れる場合があります。試験運用の担当者から、使う場面と使わない場面の理由を聞き取り、規程の運用ルールに反映します。規程の作り方は、AI事業者ガイドライン1.2版を事務所規程に反映する方法でも整理しています。

試験運用の結果は、日付と確認者を付けて、簡単な報告書にしておきます。報告書があると、顧問先から利用状況を尋ねられたときに、事務所として答える材料になります。また、機能の仕様が変わったときの再確認でも、前回との差を見る基準になります。

失敗例と回避策

資料の記載から想定される失敗を、架空のシナリオで示します。

1つ目は、個人契約の機能を業務で使ってしまう失敗です。ブログによると、Gmail LiveとKeep Liveは、Google AI Plus、Pro、Ultraの購読者向けで、法人向けは近日提供とされています(出典:Google Blog)。所員が個人契約で先に使い始め、業務のメールを対象にしてしまう想定です。法人契約のデータの扱いと、個人契約のデータの扱いは、同じとは限りません。回避策は、個人アカウントでの業務利用を、規程で明示的に区分することです。

2つ目は、音声で口にした内容が周囲に漏れる失敗です。喫茶店やオフィスの共有スペースで、顧問先の名前や金額を声に出して入力してしまう想定です。回避策は、音声機能を使ってよい場所と、口にしてよい情報の種類を決め、所員に周知することです。

3つ目は、取り込み範囲が広がっていることに気づかない失敗です。Docs Liveが、Drive内の資料を取り込む可能性があるため、フォルダのアクセス権が広いままだと、意図しない顧問先の資料が下書きに混ざる想定です。回避策は、導入前に、フォルダのアクセス権を棚卸しすることです。

費用・工数・体制の目安

費用は、提供プランと法人向けの提供条件が確定していないため、本記事では金額を示しません。法人向けの提供が始まった時点で、Googleの公式の料金ページで確認してください(要確認)。

工数の面では、導入前の準備として、アクセス権の棚卸し、規程の改定、所員への周知が主な作業になります。数名から十数名規模の事務所では、担当者が数日、所長の確認が数時間という規模感を、運用例として想定できます(自所での実測が前提で、数字は要確認です)。体制は、所長が最終責任者となり、Workspaceの管理者を兼ねる所員が、設定と記録を担う分担が一例です。

今後の展望と独自考察

公式ブログは、法人向けの提供を近日としているだけで、時期の詳細は書いていません。そのため、いつ事務所のWorkspaceに届くかは、現時点では確認できません。

論点になるのは、声という入力方法が、事務所の情報管理の前提を変える点です。文字なら、入力した内容が画面に残り、見返せます。声は、その場で消えるため、何を話したかの記録の取り方が、運用の課題になります。管理者設定の会話履歴が、どこまで事務所の記録として使えるかは、仕様が出そろってから確認する論点です。

また、Gmail Liveのように、受信トレイを会話で検索できる機能は、顧問先との過去のやり取りを探す作業を変える可能性があります。ただし、どの程度の時間が減るかを示す公表データは、本記事では確認できていません(要確認)。自所で試験運用して、実測するのが現実的です。

よくある質問

Gmail LiveやDocs Liveは、Google Workspaceの法人契約で使えますか。

現時点では、近日提供予定です。公式ブログは、これらの機能がGoogle Workspaceの法人向けに近日提供されると記載しています(出典:Google Blog)。時期の詳細は確認できません。

日本語で使えますか。

公式ブログでは、言語対応の詳細は確認できませんでした(要確認)。法人向けの提供が始まる時点で、公式の案内を確認してください。

入力した内容は、AIの学習に使われますか。

WorkspaceのGeminiについては、公式ページに、顧客の事前の許可や指示なしに顧客データを学習に使わないという趣旨の記載があります(出典:Google Privacy Hub)。今回の音声機能が、同じ扱いかどうかは、公式ヘルプで確認する論点です(要確認)。

管理者は、機能を止められますか。

公式ページには、管理者がGeminiのオンとオフを切り替えられると記載があります(出典:同ページ)。今回の機能が、同じ設定の対象かどうかは、法人向けの提供時に確認してください(要確認)。

顧問先への説明は、必要ですか。

説明や同意の要否は、契約内容と入力する情報の種類で変わります。守秘義務や個人情報保護法との関係は、有資格者の判断、必要に応じて所属団体への確認が前提です。

個人契約のアカウントで、業務のメールを対象にしてもよいですか。

可否は、事務所の規程で決める事項です。個人契約と法人契約で、データの扱いが同じとは限らないため、業務利用の区分を、規程に書いておく運用があります。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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