AIエージェントの有償化は顧問先数の掛け算で試算 税理士・社労士の確認7手順

AIエージェントの有償化に備え、顧問先数と単価の掛け算で月額費用を試算する方法と、解約条件やデータ移行の確認手順を、税理士・社労士事務所向けに7手順で整理します。

AIエージェントの有償化は顧問先数の掛け算で試算 税理士・社労士の確認7手順

有償化試算とは、顧問先数と単価から月額費用を見積もる計算のことです。

顧問先が30件なのか、80件なのかで、同じAIエージェントでも月の費用はまるで違ってきます。この記事では、freeeが公表した料金体系を例に、顧問先数を掛け算して月額費用を見積もる手順と、契約前に確認しておきたい解約条件やデータの扱いを、税理士事務所と社会保険労務士事務所の目線で7手順に整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。freeeのプレスリリースによると、記帳と月次チェックのエントリープランは、1顧問先あたり月額1,000円(税抜)と記載されています(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

公表されている料金体系の事実関係

最初に、公表されている事実を確認します。freeeのプレスリリースには、freee顧問先管理のAIエージェントと、freee Agent Hubの2つのサービスについて、料金が書かれています。エントリープラン(記帳・月次チェックエージェント)は、1顧問先あたり月額1,000円(税抜)で、最低3顧問先から契約できます(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

freee Agent Hubは、基本利用料が1IDあたり月額5,000円(税抜)で、5,000円分のトークンの基本利用枠が含まれます。追加のIDも、1ユーザーあたり月額5,000円(税抜)で、同じく5,000円分の基本利用枠が含まれます。基本利用枠を超えたトークン量には、従量課金が発生すると記載されています(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

申告書チェックエージェントについては、freeeアドバイザー制度に加入している事務所に限り、無償で利用できると書かれています。両サービスとも、利用にはfreee認定アドバイザー制度への登録が必要とされています。

ここで、キーワードに含まれる無償期間と有償化の切替日について触れておきます。確認した範囲のプレスリリースには、無償のトライアル期間や、有償化の切替日は書かれていませんでした。キャンペーンとして、初月の月額料金が50%オフになる措置があり、契約開始日の対象期間は、顧問先管理のAIエージェントが2026年9月15日から2026年10月15日、Agent Hubが2026年9月1日から2026年10月15日と記載されています(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。この対象期間は、本記事の公開時点ですでに終わっています。現在の料金や条件は、freeeの公式ページで確認する必要があるため、要確認とします。

顧問先数を掛け算する試算の考え方

試算の基本は、単価に件数を掛ける計算です。エントリープランなら、顧問先の数に1,000円(税抜)を掛けます。Agent Hubなら、利用するIDの数に5,000円(税抜)を掛け、基本利用枠を超えた分の従量課金を足します(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

具体例として、税理士事務所で記帳と月次チェックの対象になる顧問先が30件の場合を考えます。エントリープランは、30件に1,000円を掛けて、月額30,000円(税抜)です。Agent Hubを所員3名分のIDで使う場合は、3IDに5,000円を掛けて、月額15,000円(税抜)です。両方を合わせると、月額45,000円(税抜)になります。これは、前述の料金表を使った計算例で、従量課金や、実際の契約条件は含みません(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

顧問先が80件に増えた場合は、エントリープランが80,000円(税抜)になり、IDが5名分なら25,000円(税抜)で、合計105,000円(税抜)です。単価は前述のプレスリリースの記載で、件数とID数は編集部の仮定です(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。顧問先数が約2.7倍になると、エントリープランの部分は同じ倍率で増えます。件数に比例して増える費用と、IDの数に比例して増える費用が、別々の式になっている点が試算のポイントです。

従量課金は、利用するトークン量によって変わるため、事前の予測が難しい部分です。試算するときは、まず少数の顧問先で試し、月ごとのトークンの使用量を記録して、顧問先ごとの目安を出す方法があります。

社会保険労務士事務所で考えるときの注意

freeeのサービスは、プレスリリース上、会計や税理士事務所の記帳、申告業務を支援する内容です。社会保険労務士事務所は、同じサービスの対象になるとは限りません。社労士事務所が、他社の勤怠、給与、労務のAIエージェントを検討する場合は、そのサービスの料金体系を、同じ手順で確認します。

試算の式は、サービスごとに違います。顧問先ごとの課金か、利用者ごとの課金か、処理量ごとの課金かを、まず見極めます。社労士事務所では、給与計算の対象となる従業員の人数が、課金の単位になっている場合があります。課金の単位を取り違えると、試算が大きくずれます。

契約前に確認する7手順

ここからは、AIエージェントの有償化に備えて、事務所が確認する手順の一例です。

手順1は、課金の単位の確認です。顧問先ごとか、利用者ごとか、処理量ごとかを、公式の料金表で確認します。入力は料金表、出力は課金単位の一覧です。

手順2は、顧問先の対象範囲の確認です。全顧問先に使うのか、一部の顧問先だけに使うのかを決めます。対象を絞れば、費用も絞れます。

手順3は、月額費用の試算です。前述のように、単価に件数を掛け、IDや従量課金を足します。複数の想定、たとえば顧問先が現状の件数の場合と、増えた場合を並べておくと、増員や増加への備えになります。

手順4は、最低契約数や契約期間の確認です。エントリープランに最低3顧問先からの条件があるように、サービスごとに最低条件があります(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

手順5は、解約条件の確認です。解約の申し出の時期、日割りの有無、解約後のデータの取り扱いを、利用規約で確認します。確認できなかった項目は、問い合わせて書面で残す運用があります。

手順6は、データ移行の確認です。解約や乗り換えのときに、作成済みの記帳データや、チェックの記録を取り出せるかを確かめます。取り出せる形式と、取り出せる期間も確認します。

手順7は、有資格者による最終判断です。試算の結果、契約の可否、顧問先への説明は、事務所の責任者が決めます。生成AIが作った試算表は、あくまで下書きです。

試算表の下書きに使うプロンプト例

手順3の試算表は、生成AIで下書きを作る方法があります。数字は公式の料金表から手で入力し、計算は別の表計算ソフトで検算します。

あなたは会計事務所の費用試算の補助役です。
次の料金条件だけを根拠に、月額費用の試算の式を整理してください。
条件にない項目は補わず、「要確認」と書いてください。

条件:
- 単価A: 1顧問先あたり月額1,000円(税抜)
- 単価B: 1IDあたり月額5,000円(税抜)
- 従量課金: 基本利用枠を超えた分(単価は不明)
- 顧問先数: 30件、ID数: 3

出力:
- 計算式
- 従量課金を除いた月額の合計
- 確認が必要な項目の一覧
次の試算結果を、所員向けの短い説明文にしてください。
数字は入力どおりに使い、推測で補わないでください。
断定は避け、「試算」であることを明記してください。

試算結果:
(ここに試算結果を貼る)

返ってきた計算は、電卓や表計算ソフトで検算し、料金表の数字と一致しているかを担当者が確かめます。

導入前後で記録しておく項目

試算した費用が妥当だったかを後から振り返るには、導入の前後で同じ項目を記録しておく必要があります。記録の項目の一例を挙げます。

まず、作業ごとの所要時間です。記帳の確認、月次チェック、申告書の確認など、対象にした作業ごとに、担当者が実際にかけた時間を記録します。導入前の数か月分があれば、導入後と比べる材料になります。

次に、誤りや手戻りの件数です。AIエージェントの出力に誤りがあって直した件数と、その内容を記録します。誤りの種類が分かれば、どの作業をAIに任せ、どの作業を人が見るかの線引きに使えます。

さらに、費用の実績です。月々の請求額を、基本料金と従量課金に分けて記録します。試算との差が大きい月があれば、その原因、たとえば処理した顧問先の数やトークンの量を調べます。

最後に、顧問先からの反応です。説明したときの質問や、同意の取得状況を記録します。説明の仕方を改善する材料になります。

これらの記録は、事務所の運用台帳にまとめておくと、次の契約更新や、別のサービスとの比較のときに役立ちます。記録の様式は、事務所の規模や既存の台帳に合わせて決めます。

事務所規模ごとの試算の見方

事務所の規模によって、試算で重視する点が変わります。以下は編集部が想定した見方で、特定の事務所の実態ではありません。

所員が数名の小規模な事務所では、固定費の割合が大きいため、基本料金の負担感が相対的に強く出ます。対象にする顧問先を絞って始め、効果を確かめてから広げる進め方があります。

所員が十名前後の事務所では、IDの数が増えるほど、IDごとの基本料金の合計が大きくなります。全員に付与するのか、担当者だけに付与するのかで、費用が変わるため、役割ごとに必要なIDを整理します。

複数の拠点を持つ法人では、拠点ごとに契約するのか、本部でまとめて契約するのかで、条件や費用が変わり得ます。契約の窓口を一本化しておくと、台帳の管理が楽になります。

顧問先データを扱う前に決めておく守秘義務の論点

AIエージェントを使うということは、顧問先の帳簿や資料が、外部のサービスに渡るということです。税理士法は第38条で、業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない旨を定めています。社会保険労務士法は第21条に、秘密を守る義務の規定があります。当てはめは、各事務所の有資格者の判断事項です。

個人情報の扱いについては、個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起が公表されています。顧問先の従業員の個人情報が含まれる資料を扱う場合は、特に入力の範囲を決める必要があります。

顧問先への説明では、AIエージェントを使うこと、渡す情報の範囲、費用の負担が事務所か顧問先か、の三点を伝える運用例があります。費用を顧問先に転嫁する場合は、顧問契約の内容との関係を、有資格者が整理します。

解約とデータ移行で問い合わせておきたい事項

解約条件とデータ移行は、契約前に見落とされやすい項目です。問い合わせの際に整理しておきたい事項を挙げます。

解約については、申し出の方法と時期、月の途中で解約した場合の日割りの有無、最低利用期間の有無を確認します。最低利用期間がある場合は、期間内に解約したときの扱いも聞いておきます。

データについては、解約後も作成済みのデータにアクセスできるか、アクセスできる期間はどれくらいか、データを取り出す形式は何か、の三点を確認します。形式が独自のものだと、別のサービスに移すときに手間がかかります。

顧問先の情報に関しては、解約後にサービス側に残る情報の扱い、削除を依頼できるか、削除の完了をどう確認できるかも、問い合わせの対象です。回答は、書面やメールなど、後から見返せる形で残す運用があります。

また、サービスの料金体系が変わったときの通知の方法と、変更後に解約できる期間があるかも、確認しておくと安心です。料金は、キャンペーンの終了や改定で変わり得るため、変更の通知を誰が受け取るかを、事務所内で決めておきます。

顧問先への説明文の考え方

費用を顧問先に説明する場面では、AIエージェントを導入した理由と、顧問先にとっての変化を、平易な言葉で伝えます。たとえば、記帳や月次の確認にAIを補助的に使うこと、最終的な確認は担当者が行うこと、顧問先の資料の取り扱いに配慮すること、の三点を柱にする運用例があります。

費用の負担については、事務所が負担するのか、顧問料に反映するのかを、顧問契約の内容と照らして整理します。顧問料の改定を伴う場合は、改定の時期と理由の説明、顧問先の同意の取り方を、有資格者が決めます。説明文の下書きは生成AIで作れますが、内容は責任者が確認してから使います。

失敗例と回避策

失敗の一つ目は、無償の期間があると思い込んで導入し、費用が発生してから気づくことです。回避策は、公式の料金表と利用規約で、費用が発生する時点を確認することです。本記事で確認した範囲のプレスリリースには、無償期間の記載がありませんでした。

二つ目は、課金の単位を取り違えることです。顧問先ごとの課金と、利用者ごとの課金が混在するサービスでは、試算の式を分けて作ります。

三つ目は、解約後のデータの行き先を確かめないまま、記帳の運用をサービスに寄せてしまうことです。回避策は、手順6のとおり、データの取り出しの可否を契約前に確認することです。

費用対効果の考え方

費用は、削減できる工数と比べて判断します。たとえば、記帳の確認に1件あたり20分かかっている事務所が、AIエージェントで半分にできたと仮定すると、30件で月に300分、つまり5時間が浮く計算になります(出典: 編集部の仮定による計算例)。この数字は、計算の例を示すためのもので、実際の削減効果を示すものではありません。自事務所の時間単価に当てはめて、月額費用と比べます。

効果の測定は、導入前後の同じ作業の所要時間を記録して行います。第三者の検証がない数字は、そのまま採用せず、自事務所の実測で確かめます。導入事例の読み方は、導入事例の数字の読み方でも整理しています。

今後の論点

論点になるのは、無償や割引の期間が終わった後の費用を、事前に見込んでおくことです。キャンペーン期間の終了日は、申込みの判断にも影響します。freee関連のサービスの整理は、freee Agent Hubの導入判断軸でも触れています。

よくある質問

無償期間はありますか

確認した範囲のプレスリリースには、無償のトライアル期間の記載はありませんでした。申告書チェックエージェントは、freeeアドバイザー制度加入者に限り無償と書かれています(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。

エントリープランの最低契約数はありますか

最低3顧問先から契約できると記載されています。

従量課金はいくらですか

基本利用枠を超えたトークン量に応じて発生すると書かれています。単価は確認した範囲では記載がなく、要確認です。

初月50%オフは今も使えますか

契約開始日の対象期間は2026年10月15日までと記載されています(出典: freeeプレスリリース(デジタルPR))。現在の条件は公式ページで確認してください。

社会保険労務士事務所でも使えますか

プレスリリース上は、会計や税理士事務所の業務を支援する内容です。社労士事務所の対象になるかは、公式ページで確認してください。

試算の数字は請求額ですか

本記事の試算は料金表を使った計算例で、請求額を示すものではありません。

参考文献

関連記事: 導入事例の数字の読み方、freee Agent Hubの導入判断軸

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本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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