TaxSys導入で確定申告期に約170万円削減 税理士事務所が証憑データ化の外部委託を見直す7つの判断軸

税理士法人リライトのTaxSys導入事例(確定申告期に約170万円削減)を材料に、税理士事務所が証憑データ化の外部委託を見直す際の費用比較・確認工程・守秘義務の7つの判断軸を整理します。

TaxSys導入で確定申告期に約170万円削減 税理士事務所が証憑データ化の外部委託を見直す7つの判断軸

証憑データ化とは、領収書や通帳などの紙や画像を、会計に使える数値データに変える作業のことです。

確定申告期は、証憑の量が一気に増える時期です。外部の証憑データ化サービスに支払う費用と、納品を待つ時間を、AI-OCRの内製に切り替えることで変えられるのか。本記事では、税理士法人リライトのTaxSys導入事例を材料に、税理士事務所が証憑データ化の外部委託を見直す際の判断軸を7つに整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、事例の内容は提供会社のプレスリリースで確認しています。同事例のリリースは2026年6月8日に配信され、2026年の確定申告期に約170万円のコスト削減を実現したと述べられています(出典:PR TIMES 株式会社SoLabo)。

公表された事例の内容と、読み取れない範囲

まず、プレスリリースに書かれている事実を整理します。税理士法人リライトは東京都千代田区に本社を置く税理士法人で、Google Workspaceを活用したTaxSysを導入し、AI-OCRによる証憑のデータ化と、顧客情報の一元管理を進めたと紹介されています。導入前は外部の証憑データ化サービスを使っており、導入から約2か月でAI-OCRを活用する体制を構築したと説明されています(出典:PR TIMES 株式会社SoLabo)。

同法人のコメントとして、確定申告期は証憑処理の量が非常に多く、導入後は進め方が大きく変わり、コスト削減に加えて、納品待ちの時間が減ったことで繁忙期の業務が進めやすくなったと紹介されています。

ここで、公表資料から読み取れない点を整理します。削減額の内訳は記載がありません。従来の外部委託の費用の額、処理した証憑の件数、内製後に増えた人件費や機器の費用、AI-OCRの読取精度と修正にかかった時間も、資料の範囲では確認できません。事務所の規模や顧問先の件数も記載がなく、削減額をそのまま自事務所に当てはめることはできません。これらは、事例の数字を自事務所の判断に使う際に、実測で置き換える項目です(要確認)。

提供会社であるSoLaboのプレスリリースによれば、TaxSysは2025年9月にサービスを開始し、2026年8月時点で300を超える税理士事務所が導入しています(出典:PR TIMES 株式会社SoLabo)。機能としては、Google Driveでの顧客フォルダの自動作成と管理、領収書や通帳のAI-OCRによるデータ化、顧客と案件の情報を扱うCRM、Google Meetの録画の文字起こしと要約、会計ソフトとのデータ連携が挙げられています。

外部委託と内製の費用を比べる考え方

証憑データ化を外部に委託するか内製に切り替えるかは、単価の比較だけでは決まりません。事務所が比べる費用の項目を整理します。

外部委託の側では、処理単位あたりの単価と、繁忙期の追加料金の有無、納品までの日数、修正や再依頼の扱いを確認します。内製の側では、ツールの利用料、AI-OCRの読取結果を人が確認して直す時間、操作を覚える教育の時間、運用ルールの整備にかかる時間が主な項目です。

ここで、費用の見立ての式を示します。外部委託の年間費用は、処理件数に単価を掛け、追加料金を足したものです。内製の年間費用は、ツールの利用料に、確認と修正の作業時間へ時間単価を掛けたものを足し、初期の構築と教育の費用を年数で割ったものを加えます。両者の差が、削減額の見立てになります。事例の削減額は、この式の結果の1つですが、式の中身が公表されていないため、自事務所では、過去の繁忙期の実績で式の各項目を埋めて計算する必要があります。

時間の面では、納品待ちの時間が減ることが、事例で強調されています。外部委託では、証憑を送ってから納品されるまでの間、後続の作業が止まる場合があります。内製にすると、証憑が届いた順に処理を進められる利点がある一方、事務所の担当者に確認の作業が集中します。繁忙期の人員の配置と、確認の作業の分担を、あらかじめ決めておく必要があります。

証憑データ化の内製化を進める5つの手順

以下は、税理士と職員を合わせて数名から十数名規模の事務所が、確定申告期の前に内製化を試す場面を想定した運用例です。

第1に、現在の外部委託の実態を数字にします。過去の繁忙期の処理件数、費用、納品までの日数、修正の発生状況を、一覧にします。

第2に、対象を絞って試します。全顧問先ではなく、証憑の種類が比較的そろっている数件の顧問先で、AI-OCRの読取結果を、従来の外部委託の結果と比べます。

第3に、確認の工程を設計します。AI-OCRの結果は、読取の誤りを含み得ます。金額、日付、取引先名など、誤りの影響が大きい項目を決め、職員が確認する範囲と、税理士が最終の確認を行う範囲を分けます。

第4に、会計ソフトとの連携を確かめます。データがどの形式で会計ソフトに渡るか、仕訳の登録までの流れで人が触れる箇所はどこかを、実際の操作で確認します。

第5に、繁忙期の運用に組み込みます。試行の結果をもとに、外部委託と内製の分担を決め、一部を外部に残す選択も含めて設計します。全面の切り替えではなく、段階的な移行にする運用が考えられます。

生成AIを補助に使う場面もあります。プロンプトの例を2本示します。どちらも架空の設定で、実在の顧問先の情報は入力しません。

あなたは税理士事務所の業務改善担当の補助です。
確定申告期の証憑データ化について、外部委託と内製の費用を比較する表計算の項目を設計してください。

- 対象は架空のE税理士事務所です
- 外部委託の項目: 処理件数、単価、繁忙期の追加料金、納品までの日数、修正対応
- 内製の項目: ツール利用料、読取結果の確認時間、教育時間、初期構築
- 実際の金額は入力せず、項目の定義と計算式の考え方のみを示してください

計算式は文章で示し、断定的な削減額の予測は書かないでください。
あなたは税理士事務所の品質管理の補助です。
AI-OCRで読み取った領収書データの確認手順を作ってください。

- 架空の領収書データ(日付、金額、取引先、勘定科目の候補)を確認する場面です
- 職員が確認する項目と、税理士が最終確認する項目を分けてください
- 誤りが起きやすい箇所(桁の読み違い、日付の形式、同名の取引先)を挙げてください
- 実在の顧問先の情報は含まれていません

出力は、確認のチェック項目として、番号付きで示してください。

守秘義務・規程上の論点 顧問先の証憑をAIに渡す前に

証憑には、顧問先の取引先、金額、個人の情報が含まれます。外部の証憑データ化サービスを使っていた事務所が、AI-OCRを含むクラウドの基盤へ切り替える場合、データの流れが変わるため、守秘義務との関係を整理する必要があります。

税理士法第38条は、税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないと定めており、税理士でなくなった後も同様としています。この条文を、クラウドサービスへのデータの入力にどう当てはめるかは、契約と設計によって異なり、本記事では判断しません。

事務所として確認する項目を挙げます。1つ目は、証憑のデータがどのサービスを経由し、どこに保管されるかです。TaxSysの資料では、Google Driveでのフォルダ管理やAI-OCRの利用が挙げられていますが、AI-OCRの処理を担う事業者や、データの保管場所、学習への利用の有無は、公表資料の範囲では確認できません(要確認)。2つ目は、外部委託していた際の契約との違いです。外部の証憑データ化サービスとの間で結んでいた秘密保持の契約が、切り替え後のサービスでどう置き換わるかを、書面で確認します。3つ目は、担当者の権限の範囲です。顧問先ごとのフォルダへのアクセス権を、担当者ごとに絞れるかを点検します。

個人情報の面では、個人情報保護法第27条が、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています(例外が列挙されています)。委託や共同利用に関する整理は、個人情報保護委員会の公表資料などで、個別に確認する論点です。

顧問先への説明は、業務委託契約や説明書面の中で、証憑のデータ化にAI-OCRを含むクラウドの基盤を使うこと、データの保管の扱い、最終の確認は税理士が行うことを書いておく方法があります。国税庁のAI活用に関する公表を踏まえた事務所の検討は、国税庁のAI活用方針を税理士事務所が読む7つの論点で整理しています。

顧問先への説明と、繁忙期に向けたスケジュール

内製化は、事務所の内側の工程の変更ですが、顧問先にとっては、証憑を渡す方法や、処理の流れが変わる場合があります。たとえば、顧問先が領収書を撮影して共有フォルダに入れる運用へ移るなら、撮影の方法や、フォルダの命名の規則を伝える必要があります。書類の渡し方が変わる時期は、閑散期のうちに案内し、繁忙期の直前に慣れない操作を求めない配慮が考えられます。

スケジュールの組み方の例として、繁忙期の数か月前に対象の顧問先を絞って試行し、試行の結果をもとに手順書を直し、繁忙期の前に全体の運用を固める流れがあります。事例では、導入から約2か月でAI-OCRを活用する体制を構築したとされていますが、事務所によっては、顧問先への説明や手順の整備に、より時間がかかる場合もあります。余裕を持った日程を組み、外部委託の契約は、切り替えの結果が確かめられるまで残しておく運用が考えられます。

また、繁忙期には、通常の業務に加えて、問い合わせの対応も増えます。AI-OCRの読取の誤りに関する顧問先からの問い合わせや、フォルダの操作に関する質問に、誰が答えるかも決めておきます。窓口を1つにしておくと、担当者ごとに回答が異なる事態を避けられます。

導入後の点検と記録の残し方

内製に切り替えた後は、処理の質を点検する仕組みが欠かせません。点検の項目として、AI-OCRの読取の誤りの件数と種類、確認に要した時間、修正後に会計ソフトへ渡したデータの整合、顧問先から指摘を受けた件数が考えられます。繁忙期の前後で同じ様式で記録すると、翌年の見直しの材料になります。

記録は、事務所のAI利用の台帳と結び付けておくと、依頼者や顧問先から質問を受けたときに説明しやすくなります。誰が、どの顧問先の証憑を、どのツールで処理したかが追えるようにしておく運用です。操作の履歴の取得方法は、ツールごとに異なるため、導入前に確認する項目です(要確認)。事務所のAI利用の記録の残し方は、事務所のAI利用ログを監査調書と同じ発想で残す運用でも扱っています。

証憑の処理は、消費税の区分の確認など、後続の作業にもつながります。区分の確認をAIで補助する事務所の検討は、マネーフォワードの消費税区分チェックエージェントを税理士事務所が試す7手順で整理しています。証憑の入口から申告書の作成まで、どの工程にAIを置き、どこで人が確認するかを、通しで設計しておくと、部分ごとの最適化に留まりません。

7つの判断軸

以上を、外部委託の見直しに使う7つの判断軸としてまとめます。

1つ目は、自事務所の費用の実態です。過去の繁忙期の件数、費用、納品日数を数字にします。

2つ目は、事例の数字の読み方です。削減額は、内訳が非公表です。自事務所の式で計算し直します。

3つ目は、確認工程の設計です。AI-OCRの誤りを、誰が、どの項目について確認するかを決めます。税理士の最終確認を工程に明記します。

4つ目は、データの取り扱いの確認です。処理を担う事業者、保管場所、学習利用、削除の手順を、書面で確認します(要確認)。

5つ目は、会計ソフトとの連携です。使用中の会計ソフトとのデータの受け渡しを、実際の操作で試します。弥生会計との組み合わせで分業を実現した別の導入事例も、提供会社から公表されています(出典:PR TIMES 株式会社SoLabo)。

6つ目は、繁忙期の運用です。全面の切り替えではなく、外部委託を一部残す設計も含めて考えます。

7つ目は、契約と退出の設計です。ツールの利用を止める場合に、データをどう取り出し、削除するかを、導入前に確認します。

導入で起こりがちな失敗と回避策

失敗の1つ目は、他事務所の削減額を、そのまま自事務所の期待値にしてしまうことです。事務所の規模、顧問先の構成、証憑の種類で結果は変わります。回避策は、過去の実績で式を組み、試行の結果で置き換えることです。

失敗の2つ目は、AI-OCRの読取結果を、確認せずに仕訳へ流してしまうことです。金額や日付の誤りは、申告の数字に直結します。回避策は、確認する項目と担当を手順書に書き、税理士の最終確認を外さないことです。

失敗の3つ目は、繁忙期の直前に、全顧問先で切り替えてしまうことです。操作に慣れる前に量が増え、かえって滞ります。回避策は、閑散期に対象を絞って試し、段階的に広げることです。

失敗の4つ目は、外部委託の契約を解約した後に、内製が回らなくなることです。回避策は、外部委託の契約を一定期間残し、切り替えの結果を確かめてから整理することです。

費用・工数・体制

TaxSysの料金は、今回のプレスリリースの範囲では確認できません。最新の料金は、提供会社の公式資料で確認してください(要確認)。工数は、事例では導入から約2か月でAI-OCRを活用する体制を構築したとされており、試行の期間の目安として参照できますが、自事務所の規模で同じになるとは限りません。

体制としては、導入責任者を税理士の中から置き、証憑処理の運用を担う職員を決めます。会計ソフトの連携の確認には、日常の入力を担う職員の参加が要ります。

今後の展望と独自考察

事例が示すのは、外部委託の費用の削減に加えて、納品待ちの時間が繁忙期の業務の流れを変える、という視点です。費用の比較に時間の観点を加えると、内製化の評価が変わる場合があります。

論点になるのは、次の3点です。1つ目は、削減額の見立てを、事務所の式で置き換えられるか。2つ目は、AI-OCRの確認作業が、税理士と職員のどこに集まるか。3つ目は、共通の基盤を複数の事務所が使う流れの中で、顧問先の情報の管理を事務所としてどう担保するかです。提供会社は、共通のインフラを業界全体で構築する考え方を示しており、事務所は、その基盤をどう選び、どこまで任せるかの判断を求められます。

よくある質問

約170万円の削減は、どの事務所でも見込めますか。

見込めるとは限りません。内訳や算定の条件は公表されておらず、事務所の規模や証憑の量で結果は変わります。自事務所の過去の実績で計算する運用があります(要確認)。

外部委託はやめて内製に切り替えるのがよいのでしょうか。

事例は一つの選択を示すものです。外部委託を一部残す設計も含め、自事務所の費用と時間の実測で判断する運用が考えられます。

AI-OCRの結果は、そのまま使えますか。

読取の誤りを含み得るため、確認の工程を置く運用があります。確認する項目と担当は、事務所の手順として決めます。

顧問先の証憑をクラウドに入れる際、税理士法上の守秘義務はどうなりますか。

税理士法第38条は、業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないと定めています。個別の入力との関係は契約と設計によるため、本記事では判断していません。

導入にはどのくらいの期間がかかりますか。

事例では導入から約2か月で体制を構築したとされています。事務所の規模で異なるため、目安として参照してください(出典:PR TIMES 株式会社SoLabo)。

料金はいくらですか。

今回の資料の範囲では確認できません。提供会社の公式資料で確認してください(要確認)。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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