ソニーとワーナーがAnthropicを提訴 士業が読む著作権4論点

ソニーとワーナーの音楽出版社がAnthropicを提訴しました。訴状が挙げる学習データの入手経路と請求内容、日本の著作権法との違いを士業向けに4つの論点で整理します。

ソニーとワーナーがAnthropicを提訴 士業が読む著作権4論点

ソニーとワーナーの音楽出版社がAnthropicを著作権侵害で提訴しました。

2026年8月28日、ソニー・ミュージックパブリッシングとワーナーチャペル・ミュージックが、Claudeを開発するAnthropicと共同創業者2名を相手取り、米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に訴えを起こしました(出典: Music Business Worldwide)。この記事は公表された訴状と報道をもとに事実関係を整理したもので、法的な当てはめや助言をするものではありません。生成AIの著作権をめぐる争いが音楽出版の分野でも大手3社すべてに広がった、という業界動向としてお読みください。

何が起きたか

まず事実関係です。この提訴を最初に報じたMusic Business Worldwideによれば、訴えを起こしたのはソニー・ミュージックパブリッシングとワーナーチャペル・ミュージックで、被告にはAnthropicのほか共同創業者のダリオ・アモデイとベンジャミン・マンが個人として名を連ねています。同社は訴状の原文もPDFで公開しています。

原告側は訴状で、被告らが著作物を大規模に不正取得したとする主張を展開し、それを「史上最大級かつ最も露骨な知的財産の窃取」と表現しています。TechCrunchは、Anthropicが公開前の時点でコメントに応じていないと伝えています。同社の反論は執筆時点の公表資料からは確認できないため、要確認としておきます。

音楽出版の分野でAnthropicが訴えられたのはこれが初めてではありません。MBWによれば、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング、コンコード、ABKCOが2023年10月にナッシュビルで約500曲を対象に提訴し、その後カリフォルニアへ移送されました。同じ原告らは2026年1月に2万件超の楽曲を対象とする2件目を、BMGが2026年3月に493曲を対象とする3件目を、ラウンドヒル・ミュージックが8月17日に4件目を起こしています。今回の提訴により、大手音楽グループ3社の出版部門がそろって係争当事者になりました。

訴状が並べている主張

今回の訴えは、学習データの「集め方」に焦点を当てている点が特徴です。MBWが報じた訴状の内容によれば、請求は4つの訴因で構成され、トレントによる直接侵害を被告3者に、トレントへの寄与侵害をアモデイとマンの個人2名に、直接侵害と著作権管理情報の除去または改変をAnthropicに対して主張しています。原告は陪審審理を求めるとともに、侵害された著作物の複製物の廃棄と、Claudeの学習データの開示を要求しています。

具体的な取得経路として訴状が挙げるのは、2021年6月にマンがBitTorrentを用いてLibrary Genesisから少なくとも500万冊の海賊版書籍をダウンロードしたこと、2022年7月にAnthropicの従業員がPirate Library Mirrorからさらに200万冊以上を取得したことです。MBWによれば、これらの数字はいずれも書籍著者らが起こした Bartz v. Anthropic の認定に由来します。ほかに、歌詞をライセンス提供しているMusixMatchやLyricFindからのスクレイピング、古書の裁断を伴うスキャン作業、Common Crawl・The Pile・Books3の利用も主張に含まれています。

請求額は、故意の侵害1件あたり最大15万ドル、著作権管理情報の除去1件あたり最大2万5000ドルの法定損害賠償です。MBWは対象が「数万件」に及ぶとされることから理論上の請求規模が数十億ドル台になり得ると伝えています。訴状は、書籍著者との間で成立した15億ドルの和解にも触れ、その金額では抑止にならないという主張を展開しています。

なお、この訴訟は学習データの取得方法をめぐるものであり、利用者が入力したデータの学習利用とは別の論点です。Claudeに入力した内容の取り扱いは、Anthropicのプライバシーポリシーと商用利用規約で確認する領域になります。

法廷を思わせる木槌と台

士業事務所が読むときの論点

米国の訴訟なので、日本の事務所の実務がこれで直ちに変わるわけではありません。それでも、押さえておくと後で効いてくる論点が4つあります。

1つ目は、争点が「学習してよいか」から「どう入手したか」へ移っている点です。書籍著者の事件では、著作物を学習に用いること自体は認められる一方で、海賊版経由の取得は別に扱われました。生成AIの著作権をめぐる議論を追う際、入力の可否と入手経路の適法性を分けて読むと整理しやすくなります。この点は米国のAI学習と著作権をめぐる3判決でも触れています。

2つ目は、日本と米国で前提となる規定が別建てだという点です。日本には情報解析のための利用について著作権法第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)が置かれており、米国のフェアユースの判断枠組みとは条文の構造が異なります。海外の判決や訴状をそのまま国内の事案に重ねて読むと、話がずれていきます。日本国内の考え方は文化庁の考え方を踏まえた確認事項にまとめています。

3つ目は、出力側の主張も含まれている点です。原告は、Claudeが歌詞をそのまま再現すること、先行訴訟の後に追加されたガードレールが再プロンプトで回避され得ることも主張しています。事務所が生成AIの出力をそのまま成果物に流用していないか、既存の著作物と重なっていないかを見る作業は、未管理の著作物を扱う手順の延長線上にあります。

4つ目は、学習データの出どころが係争の対象になり始めているという流れです。先日取り上げた1000万時間の動画データセット公開や、古書の裁断スキャンをめぐる論点と同じ方向を向いています。顧問先から「このAIは何を学習しているのか」と聞かれる場面は、今後増えていくと考えられます。

今後の動き

注目点は3つあります。Anthropicがどのような答弁を行うか、先行する3件との併合や移送がどう扱われるか、そして個人被告として名指しされた共同創業者2名の位置づけがどうなるかです。いずれも執筆時点では公表資料から確認できないため、続報を待つ段階です。日本の権利者団体や文化庁がこの提訴に反応するかどうかも、あわせて要確認としておきます。

まとめ

音楽出版の大手グループがそろってAnthropicとの係争当事者になりました。争点は学習の可否よりも学習データの入手経路に寄っており、出力側の再現性も主張に含まれています。日本には情報解析に関する別建ての規定があるため、米国の議論をそのまま持ち込まずに読み分ける姿勢が役に立ちます。

参考文献

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引用元: TechCrunch

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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