英国の求人はAI関連と経験者に集中し、会計など事務職では二桁減となりました。
求人市場が「AIを使える経験者」と「それ以外」に割れ始めています。英国の求人サイトIndeedの集計をもとにFortuneが2026年8月2日に報じた内容は、会計や事務といったホワイトカラー職の求人が二桁減という数字を含んでおり、日本の士業事務所の採用にも重なる論点を含みます。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。数値は報道元の原文で確認し、日本の制度に置き換えられない部分は英国の話として明示します。
英国で何が起きているか
英国の求人総数は減り、その内訳が大きく偏っています。Fortuneが報じたIndeedの集計によると、英国企業の求人件数は2025年1月と比べて約10パーセント減少しました(出典: 前掲Fortune記事)。ただしこの減少幅は、職種ごとの差を覆い隠しています。
同記事によれば、ソフトウェア開発者の求人は14パーセント増と反転しました。増加分の多くはシニア職とAIに直接関係する職種が占めています。一方で、小売や製造から、会計やマーケティングのように代替されやすいホワイトカラー職まで、求人は二桁の減少です。製造業の求人は2022年6月と比べて58パーセント減、前年夏と比べても18パーセント低い水準にあります(出典: 前掲Fortune記事)。
Indeedのシニアエコノミストであるジャック・ケネディは、この状況を「英国の労働市場は二つの速度に分かれつつある」と述べています。需要が職種全体に均等に広がるのではなく、経験者とAIに直結する職務へ集中しているという整理です。詳しい分析はIndeed Hiring Labの年央レポートにまとめられています。
しわ寄せは新規参入者に向かっています。同記事は、英国の若年失業率が10年以上ぶりの高さにあり、イングランド銀行総裁のアンドリュー・ベイリーがこれを「採用も解雇も少ない経済」の帰結だと述べたことを伝えています。
日本の士業事務所にとっての論点
ここからは英国の数字をそのまま日本に当てはめず、構造だけを取り出して考えます。求人が減ったのは会計やマーケティングという「代替されやすい」と見なされた職種であり、増えたのはAIに直結する職務でした。士業事務所の採用でいえば、補助者・パラリーガル・記帳スタッフといった定型業務の担い手をどう位置づけるか、という問いに置き換わります。
第一の論点は、入口の人材をどう育てるかです。英国で起きたのは、経験のある人に需要が集中し、経験を積む入口が細るという循環でした。事務所でAIによる下書きや整理を前提にすると、若手が手を動かして覚える工程が減ります。定型業務を減らしたぶん、確認と判断の工程で意図的に経験を積ませる設計を置かないと、5年後に有資格者に上がる層が育ちません。
第二の論点は、求人票に何を書くかです。AIツールを使える人材を求めるのか、AIが出した成果物を検証できる人材を求めるのかで、必要な要件は変わります。士業事務所で価値を持つのは後者の比重が高く、そこは資格や実務経験の記述と切り離して書いたほうが伝わります。
第三の論点は、採用より育成という選択です。この点は士業事務所のAI人材 採用より育成が現実的な理由と進め方で詳しく扱っています。既存スタッフの業務にAIを組み込む進め方は士業事務所のAI導入の進め方 90日で回す6ステップと体制づくりも参考になります。

事務所が今の段階で採れる動き
いま着手できることは3つに整理できます。
ひとつは、事務所内の業務を「AIに寄せる工程」と「人が経験を積む工程」に仕分ける作業です。仕分けをしないままツールを入れると、削れる作業から順に消えていき、結果として育成の場が失われます。
ふたつめは、求人票と面接の評価軸の見直しです。AIツールの操作経験そのものより、出力の誤りに気づけるか、根拠を確認する習慣があるかを見る事務所が出てきています。
みっつめは、既存スタッフの職務再設計です。定型入力の担い手だった人に、確認・検証・顧問先対応のどこを引き受けてもらうかを先に決めておくと、ツール導入時の摩擦が小さくなります。
いずれも英国の数字が日本でそのまま再現される前提の話ではありません。ただ、AIが定型業務を吸収したときに入口の職が細るという構造は、士業の補助業務にも当てはまりうる論点です。
まとめ
英国の求人はAI関連職と経験者に集中し、会計を含む事務系職種は二桁減となりました。日本の士業事務所にそのまま当てはまる数字ではありませんが、定型業務が減ったときに育成の入口をどう確保するかという問いは共通します。仕分け、評価軸、職務再設計の3点が当面の着手点です。
参考文献
- Fortune AI is creating a two-speed jobs market in the UK, Indeed says
- Indeed Hiring Lab Indeed’s 2026 Mid-Year UK Jobs & Hiring Trends Report
- HR Review UK hiring falls as AI skills become increasingly important across the workforce
- 士業のチカラ 士業事務所のAI人材 採用より育成が現実的な理由と進め方
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引用元: Fortune
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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