モデル終了とは、提供元による古いAIモデルの提供打ち切りのことです。
事務所で使い込んだプロンプトが、ある日いきなり別のモデルで動くようになる。これがいま数か月おきに起きています。OpenAIは2026年5月28日のモデルリリースノートで、OpenAI o3を90日間の終了猶予期間を経て2026年8月26日にChatGPTでの提供を終了すると公表しました(出典: OpenAI モデルリリースノート)。この記事では、モデルが入れ替わったときに事務所のプロンプト資産をどう再検証するかを7手順で整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、モデルの提供状況はOpenAIの公表資料で確認しています。
ChatGPTのモデル入れ替えが半年で4回起きた事実
まず、事実関係を時系列で押さえます。OpenAIのモデルリリースノートによると、2026年2月13日にChatGPTでGPT-4o、GPT-4.1、GPT-4.1 mini、OpenAI o4-miniの提供が終了しました(出典: OpenAI モデルリリースノート)。続いて3月11日にGPT-5.1 Instant、GPT-5.1 Thinking、GPT-5.1 Proが利用できなくなり、5月28日にはGPT-4.5とOpenAI o3の終了が予告されました。GPT-4.5は6月27日に終了し、o3は8月26日に終了する予定です。
ここで区別しておきたいのが、ChatGPTとAPIの違いです。同ノートには、これらの変更はChatGPTのみに適用され、APIには変更がないと明記されています(出典: OpenAI モデルリリースノート)。事務所の業務システムにAPI経由で組み込んでいる場合と、職員がChatGPTの画面でモデルを選んで使っている場合とでは、影響の出方が違います。前者は当面そのまま動き、後者は8月26日を境に選択肢が消えます。
もう一つ押さえておきたいのが、終了時に既存の会話がどう扱われるかです。GPT-5.1の終了時には、GPT-5.1を使用していた既存の会話は対応する現行モデルであるGPT-5.3 Instant、GPT-5.4 Thinking、GPT-5.4 Proで自動的に継続されると案内されました(出典: OpenAI モデルリリースノート)。会話が消えるわけではなく、応答するモデルが黙って入れ替わる形です。事務所として怖いのはここです。同じプロンプト、同じスレッド、なのに出力の癖が変わる。気づかないまま業務が回ってしまう構図になります。
現在のフラッグシップは、2026年7月9日にChatGPTへ順次提供が始まったGPT-5.6 Solです。コーディング、研究、科学、サイバーセキュリティ、コンピューター操作、デザインにわたる複雑な作業向けのリーズニングモデルと説明されており、無料、Go、およびログアウト中のユーザーは対象外とされています(出典: OpenAI モデルリリースノート)。モデル選定そのものの考え方はGPT-5.6を士業事務所でどう選ぶで扱いました。
プロンプト資産を再検証する7手順
事務所が持っているプロンプトは、書いた本人が思っている以上に特定のモデルの癖に依存しています。o3の終了を、資産の棚卸しをする機会として使う手順を並べます。
手順1は、どこに何があるかを数えることです。個人のChatGPT履歴の中、共有ドライブのテキストファイル、業務マニュアルの中、そして誰かの頭の中。この4か所に散らばっているのが普通です。まず一覧にします。この時点で、使われていないプロンプトが半分近く出てくる事務所もあります。
手順2は、業務影響度で三段階に仕分けることです。対外文書の下書きに使うもの、内部の調査や整理に使うもの、個人の作業効率化にすぎないもの。再検証の労力を全部に均等にかける必要はありません。対外文書に関わるものから着手します。
手順3は、モデル依存の記述を洗い出すことです。プロンプトの中に特定のモデル名が書いてある、思考時間の長さを前提にした指示が入っている、出力形式が特定のモデルの癖に合わせて調整されている。この3種類は、モデルが替わると壊れやすい箇所です。
手順4は、テストケースを固定することです。再検証とは、同じ入力を新旧のモデルに与えて出力を比べる作業です。そのための入力を先に決めておかないと、比較になりません。実務でよく来る典型例を数本、架空のデータで用意します。顧問先の実データをそのままテストケースに使うのは避けます。
手順5は、差分を人が読むことです。ここは自動化できません。新しいモデルの出力が、前より丁寧に見えても、事務所の書式や語彙から外れていれば手戻りが増えます。逆に、前より簡潔になったせいで必要な注記が落ちていることもあります。読むべきは、正確性、抜け漏れ、事務所の書式との整合の3点です。
手順6は、有資格者が承認する工程を通すことです。プロンプトを差し替えるという行為は、事務所の成果物の作り方を変える行為です。作った人がそのまま本番に入れる運用にせず、資格者が出力サンプルを確認してから切り替える。この一手間を工程として固定しておくと、モデル入れ替えのたびに同じ手順が回ります。
手順7は、次の終了に備えて記録を残すことです。どのプロンプトを、いつ、どのモデル向けに、どう直したか。この履歴があると、次のモデル終了のときに手順1からやり直さずに済みます。事務所内でのAI利用の権限と記録の設計は士業事務所のAI権限を階層別に決めるで整理しています。
手順4と手順5で使えるプロンプトを2本置きます。1本目は、既存プロンプトのモデル依存を洗い出すためのものです。
あなたはプロンプトの移植性を点検するレビュアーです。
以下のプロンプトを読み、次の観点で問題箇所を指摘してください。
1. 特定のAIモデル名やバージョンに依存した記述
2. モデルの思考時間や出力長の癖を前提にした指示
3. 出力形式が曖昧で、モデルが替わると崩れる可能性のある箇所
4. 前提条件が省略されていて、モデルの推測に依存している箇所
各指摘について、該当箇所の引用・理由・修正案の3点を必ず示してください。
修正案は、どのモデルでも同じ意図が伝わる書き方にしてください。
【点検対象のプロンプト】
(ここに既存のプロンプトを貼り付け)
2本目は、新旧モデルの出力を比較評価するためのものです。第三者的に読ませる用途で使います。
あなたは文書レビューの補助者です。
同じ指示から生成された2つの出力を比較し、次の表形式ではなく箇条書きで違いを示してください。
観点A: 事実関係の記載に差があるか。片方にしかない記述はどれか
観点B: 抜けている項目はどれか
観点C: 語調・敬語・書式の違いはどこか
観点D: 断定的すぎる表現、または根拠のない推測が入っている箇所はどこか
最後に、実務で使うならどちらを土台にすべきか結論を1文で述べ、
その判断で人が必ず目視確認すべき箇所を3点挙げてください。
【出力1】
(旧モデルの出力を貼り付け)
【出力2】
(新モデルの出力を貼り付け)
この2本を回したうえで、最終的にどちらのプロンプトを本番に据えるかを決めるのは有資格者です。比較作業をAIに任せても、採否の判断は人の側に残す。この線引きを工程図に書き込んでおくことをおすすめします。
モデル入れ替え時に守秘義務まわりで確認する3点
モデルの終了と移行は、技術の話に見えて、実は守秘義務の運用に触れます。整理しておきたい点を3つ挙げます。
1点目は、移行先のデータ取り扱い条件を確認することです。同じChatGPTでも、無料、Go、Plus、Team、Enterpriseでは学習利用の扱いや管理者設定が異なります。OpenAIは、GPT-5.6 Solについて、対象となる有料ChatGPTプランに順次提供され、管理対象ワークスペースでのアクセス可否は管理者設定によって異なる場合があると説明しています(出典: OpenAI モデルリリースノート)。モデルが替わるタイミングで、職員が個人アカウントに流れる事態が起きやすくなります。使えるモデルが減ったとき、人は代替を探すからです。
2点目は、根拠となる守秘義務の条文を事務所内で共有しておくことです。弁護士については弁護士法第23条が、弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています(出典: e-Gov法令検索 弁護士法第23条)。税理士については税理士法第38条が、正当な理由がなくて税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないと定めています(出典: e-Gov法令検索 税理士法第38条)。社会保険労務士については社会保険労務士法第21条に同趣旨の規定があります(出典: e-Gov法令検索 社会保険労務士法第21条)。モデル移行の場面で問題になるのは、条文の解釈よりも、どのデータがどのアカウントに入ったかを事務所が把握できているかどうかです。
3点目は、テストケースに実データを使わない運用を明文化することです。再検証は比較作業なので、同じ入力を何度も投げます。回数が増えるほど、顧問先情報が意図せず広がるリスクが上がります。架空データでテストケースを組む手間を惜しまないほうが、後の説明が楽になります。プロンプトに個人情報を入れる場合の判断枠組みはプロンプトに個人情報を入れる前に 士業事務所が決める運用ルール7項目にまとめました。
事務所規程に落とすなら、運用例として次の3項目が考えられます。第一に、業務で使うAIモデルとプランを事務所として指定し、指定外のアカウントで顧問先情報を扱わないこと。第二に、モデルの提供終了が告知されたら、対外文書に関わるプロンプトの再検証を期限内に完了させる担当を決めること。第三に、再検証の結果と承認者を記録として残すこと。いずれも事務所の規模と受任内容によって適した形が変わるため、そのまま流用するのではなく自分の事務所に合わせて調整する前提で扱ってください。
モデル終了でつまずく3つの型
一つ目の型は、終了の告知に気づかないケースです。OpenAIの告知はモデルリリースノートというヘルプページで行われており、事務所に個別通知が届くわけではありません。o3の場合、告知は5月28日、終了は8月26日で、間に90日の猶予がありました(出典: OpenAI モデルリリースノート)。この90日を使えるかどうかは、誰かが定期的にリリースノートを見ているかにかかっています。回避策は、月に一度、主要ベンダーのリリースノートを確認する担当を決めることです。
二つ目の型は、モデルが替わったことに気づかず出力の質の変化を見落とすケースです。既存の会話が現行モデルで自動的に継続される仕様のため、画面上は何も変わりません。回避策は、対外文書に使うスレッドについては、月初にテストケースを1本流して出力を確認する運用を入れることです。
三つ目の型は、慌てて別のモデルへ丸ごと乗り換えてしまうケースです。o3の終了はChatGPTに限った話で、APIには変更がないと明記されています(出典: OpenAI モデルリリースノート)。影響範囲を確かめずに事務所全体のツールを入れ替えると、再検証すべき対象が一気に膨らみます。回避策は、影響を受けるのがChatGPT画面での利用だけなのか、API連携も含むのかを最初に切り分けることです。
再検証にかかる工数の置き方
工数は、プロンプトの本数ではなく、対外文書に関わるプロンプトの本数で見積もるのが現実的です。以下の数字は公的な出典があるものではなく、編集部が置いた試算の目安として読んでください。1本あたり、テストケースの用意に30分、新旧比較の読み込みに30分、修正と再テストに1時間、資格者の承認に15分。この積み上げで、対外文書系が10本あれば概ね2日から3日の作業量になります。事務所の書式が細かいほど比較の読み込みが伸びます。
費用の側で見落としやすいのが、比較作業そのもののトークン消費です。新旧2モデルに同じ入力を投げるため、通常の業務より消費量が増えます。上位モデルを検証に使う場合は、この分を見込んでおくと予算の見立てがぶれません。モデルごとのコスト差の考え方はGemini 3.7 Flashの半額化と士業事務所のトークンでも触れています。
体制の面では、プロンプトを書ける人と、成果物の品質を判断できる資格者を組ませるのが早道です。片方だけだと、技術的には整っているが実務で使えないプロンプト、あるいは実務要件は正しいがモデルに伝わらないプロンプトのどちらかになります。
モデルの寿命が短くなる前提で事務所は何を持つか
ここ半年の推移を見ると、ChatGPTのモデル入れ替えは数か月単位で起きています。この頻度が続くなら、事務所が持つべき資産は特定モデル向けに最適化されたプロンプトそのものではなく、業務要件を言語化したドキュメントのほうです。何を入力し、何を出力させ、どこを人が確認するか。この3点が文章として残っていれば、モデルが替わるたびにプロンプトを書き直すのは短時間で済みます。
もう一つの論点は、事務所として複数のモデルを併用するかどうかです。単一ベンダーに寄せると運用は楽ですが、終了告知のたびに全業務が同時に影響を受けます。用途別に分散させると影響は小さくなる一方、規程と権限管理の手間が増えます。どちらを取るかは、事務所の人数と、AIを業務のどこまで組み込んでいるかで変わってきます。判断の軸を事前に決めておくと、次の告知が来たときに慌てずに済みます。
よくある質問
o3が終了するとAPI連携も止まりますか
止まりません。OpenAIのモデルリリースノートには、これらの変更はChatGPTのみに適用され、APIには変更がないと明記されています(出典: OpenAI モデルリリースノート)。ChatGPTの画面でモデルを選んで使っている場合と、業務システムにAPIで組み込んでいる場合を切り分けて確認してください。
終了後、o3で作った既存の会話はどうなりますか
過去の事例では、会話自体は残り、応答するモデルが現行のものへ自動的に切り替わりました。GPT-5.1の終了時には、既存の会話が対応する現行モデルで自動的に継続されると案内されています(出典: OpenAI モデルリリースノート)。
再検証はどのプロンプトから手を付けるとよいですか
対外文書の下書きに使っているものからです。出力がそのまま顧問先や行政機関に出る経路にあるものほど、モデルの癖の変化が実害につながりやすくなります。内部の整理用や個人の効率化用は後回しでも実務が回ります。
テストケースに顧問先の実データを使ってもよいですか
守秘義務との関係で慎重な扱いが求められる領域です。弁護士法第23条、税理士法第38条、社会保険労務士法第21条などにそれぞれ守秘義務の規定があり(出典: e-Gov法令検索 弁護士法第23条)、比較検証で同じ入力を繰り返し投げる性質を踏まえると、架空データで組む運用のほうが説明しやすくなります。
モデル終了の告知はどこを見れば分かりますか
OpenAIの場合はヘルプセンターのモデルリリースノートに掲載されます(出典: OpenAI モデルリリースノート)。事務所への個別通知は前提にできないため、月次で確認する担当を決めておく方法が現実的です。
猶予期間はどのくらいありますか
モデルによって異なります。o3は90日、GPT-4.5は30日の終了猶予期間が設定されました(出典: OpenAI モデルリリースノート)。短い場合を想定して、再検証の手順を先に固めておくほうが安全側に倒れます。
事務所のプロンプトを外部に持ち出せる形にしておく意味はありますか
あります。特定のツールの中だけにプロンプトを置くと、そのツールを離れるときに資産が残りません。業務要件と入出力の仕様を文章として別に持っておくと、モデルもツールも入れ替えやすくなります。
参考文献
- OpenAI ヘルプセンター モデルリリースノート
- OpenAI ヘルプセンター ChatGPT リリースノート
- e-Gov法令検索 弁護士法
- e-Gov法令検索 税理士法
- e-Gov法令検索 社会保険労務士法
※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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