KSK2が9月24日稼働 税理士が備える帳簿整備7手順

国税庁の次世代システムKSK2が2026年秋に稼働します。AIによる調査対象の絞り込みを踏まえ、税理士事務所が帳簿データを整備する7つの手順を解説します。

KSK2が9月24日稼働 税理士が備える帳簿整備7手順

KSK2とは、国税庁が刷新する次世代の国税総合管理システムのことです。

国税庁の基幹システムが更新されるたびに、税理士事務所は提出書式や電子申告の仕様変更への対応に追われてきました。今回のKSK2は、単なるシステム更新にとどまらず、AIを活用したデータ分析による調査対象の絞り込みが実際の調査結果に表れ始めている点で、事務所の準備の仕方も変わってきます。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。国税庁のe-Tax案内ページによれば、KSK2に対応した申告書等の受け付けは2026年9月24日に始まる予定です。

KSK2を取り巻く2026年9月の状況

KSK2は、国税庁の基幹システムであるKSK(国税総合管理システム)を刷新するプロジェクトです。国税庁のe-Tax案内ページによれば、紙で提出される申告書等をAI-OCRで読み取ってデジタル化する仕組みが導入され、フォーム自体の様式もAI-OCRでの認識に適した形へ見直されています。対象となる1,936の様式について、2026年9月2日時点ですべて最終版が公開されたことも案内されています。e-Taxの仕様書類も、この更新に合わせて2025年1月以降、順次公開が進められてきました。

事務所側にとってより実務に直結するのは、調査対象の選定における生成AI・データ分析の活用です。国税庁が公表した令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要の内容を税理士法人が解説した記事によれば、法人税・消費税をあわせた追徴税額は3,407億円で前年から6.6%増え、1件あたりの追徴税額も634万円と15.4%増加し、過去10年で最も高い水準になったとされています。一方で実地調査の件数はおよそ5.4万件と前年から7.4%減っており、件数を絞り込みながら1件あたりの成果を高める傾向が読み取れます。この解説記事は、国税庁がAIを活用したデータ分析によって調査の必要性が高い法人を絞り込んでいると説明しており、特に資本金1億円未満の中堅企業が対象になりやすいと紹介しています。

士業のチカラでは以前、国税の処分通知が電子交付へ拡大する動きや、e-TaxのIP動的化によるファイアウォール対応、相続税の追徴予測AIについても取り上げてきましたが、KSK2はこうした個別の変化を束ねる基盤そのものの更新にあたります。調査対象の選定精度が上がっているとみられる以上、顧問先ごとの帳簿データの整備状況が、これまで以上に問われる局面に入っています。

公認会計士にとっても、監査業務の周辺でこの動きは無関係ではありません。上場・非上場を問わず、監査対象法人の税務コンプライアンス状況は監査リスクの評価材料のひとつであり、国税庁側の調査精度が上がるほど、追徴課税を受けた企業の開示対応や監査上の論点整理にも影響が及ぶ可能性があります。会計事務所が監査業務と税務顧問業務の両方を担っている場合は、KSK2の動向を両方の業務の観点から追っておく価値があります。

帳簿データを整備する7つの手順

KSK2の本格稼働に向けて、税理士事務所が顧問先の帳簿データを整えるうえでは、次の7つの手順が実務の目安になります。

1つ目は、法人税・消費税・源泉所得税の申告内容に矛盾がないかを横断的に確認することです。KSK2は税目をまたいだ情報照会がしやすくなる設計とされており、単独の税目だけを見て整合性を確認するやり方では見落としが生じやすくなります。2つ目は、売上の計上時期が請求書や納品書の日付と一致しているかを確認することです。計上時期のずれは、データ分析による異常検知で拾われやすい項目のひとつとして指摘されています。 特に決算期をまたぐ取引は、計上時期の判断が難しく、事務所側の確認が後回しになりがちな領域です。

3つ目は、役員関連費用について、業務との関連性を示す根拠資料が揃っているかを確認することです。交際費や旅費交通費など、按分の根拠が曖昧になりやすい費目は優先的に見直します。4つ目は、原価率や経費率が同業他社と比べて大きく外れていないかを確認することです。年度比較や同業比較による異常値検知は、データ分析の基本的な手法として紹介されています。5つ目は、紙で保管している証憑類を、事務所側でクラウド会計システムに早めに移行しておくことです。年度の途中からでもデータを整備しておくことで、調査が入った際に迅速な確認に対応しやすくなります。 紙の証憑が多い顧問先ほど、後からのデータ化に時間がかかるため、繁忙期を避けて早めに着手する事務所が増えています。

6つ目は、顧問先ごとに帳簿データの整備状況を事務所内で棚卸しし、優先的に手を入れるべき顧問先を絞り込むことです。すべての顧問先を同時に見直すのは現実的ではないため、資本金規模や業種、過去の申告内容から優先順位を付けます。7つ目は、これらの確認作業に生成AIを補助的に使い、事務所側の工数を抑えることです。ただし、AIによる下書きや一次チェックはあくまで補助であり、最終的な申告内容の判断は税理士本人が行う必要があります。

実務での進め方としては、まず顧問先の帳簿データを事務所内でAIに読み込ませ、年度比較や同業比較で目立つ変動がないかを洗い出し、次に該当箇所について顧問先へのヒアリングで背景を確認し、最後に必要な根拠資料を揃えておく、という3段階が現実的です。ここで欠かせないのが、有資格者による最終確認の工程です。AIが検出した変動は、あくまで確認すべき候補地点として扱い、実際にその変動に問題があるかどうかの判断は、税理士本人が顧問先の実情に照らして行います。

事務所内での帳簿確認作業には、生成AIに以下のようなプロンプトを使うと効率的です。プロンプト例の中の会社名はすべて架空のものです。

あなたは法人税務に詳しい税理士事務所のスタッフです。
以下は架空のB社(製造業、資本金3000万円)の
過去3期分の売上高・原価率・交際費の推移データです。
このデータから、前年比で大きく変動している項目を3つ挙げ、
それぞれについて顧問先にヒアリングすべき質問を作成してください。
断定的な結論は書かず、確認すべき論点として整理してください。
以下は架空のC社の役員交際費の一覧です。
業務との関連性を示す根拠資料(誰と、何のために、どこで)が
記載されていない項目を洗い出し、
顧問先に追加で確認すべき情報を箇条書きにしてください。

顧問先データをAIで確認する前に決めておくこと

生成AIの活用を勧める記事として、守秘義務との関係に触れないわけにはいきません。税理士については税理士法第38条が、税理士業務に関して知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らすことを禁じています。公認会計士については公認会計士法第27条が同様の秘密保持義務を定めています。顧問先の帳簿データを生成AIに読み込ませる場合、そのAIサービスが入力データを学習に使う設計かどうかを、各社の公式ドキュメントで確認しておく必要があります。

顧問先への説明・同意取得の実務としては、事務所がどのAIツールを使って帳簿データを確認しているか、データがどこに保存されるかを、顧問先にあらかじめ伝えておく段取りが現実的です。特に、複数期分の売上・原価データや役員関連費用の詳細といった機微な情報を扱う場合は、口頭での説明にとどめず、顧問報酬に関する説明資料などに一文添えておくと、後日の確認がしやすくなります。

事務所の規程に落とし込む際は、規範を断定するのではなく運用例として示す形が使いやすいところです。たとえば、顧問先の帳簿データをAIに読み込ませる際は、社名や取引先名を仮名に置き換えたうえで分析にかける、という運用ルールを採る事務所も出てきています。どこまで匿名化するかは、AIツールのデータ利用ポリシーと、事務所として許容できるリスクの度合いによって変わります。

帳簿整備でつまずいた事務所の失敗例と回避策

1つ目は、KSK2の本格稼働を目前にして慌てて帳簿を整理しようとし、過去数年分をまとめて確認する作業に追われてしまう失敗です。直前の駆け込み対応は、確認漏れや誤りを生みやすくなります。回避策は、優先順位の高い顧問先から段階的に確認を進め、稼働日までに全件を終わらせようとしないことです。

2つ目は、AIが検出した数値の変動を、そのまま顧問先に「問題がある」と伝えてしまう失敗です。数値の変動には、事業拡大や取引先の変更など、正当な理由があることも多く、AIの検出結果を断定的に伝えると、顧問先との関係を損ねる可能性があります。回避策は、AIの検出結果を確認すべき論点として伝え、背景をヒアリングしたうえで判断する姿勢を保つことです。

3つ目は、顧問先の帳簿データをAIに読み込ませる際、社名や取引先名を伏せずにそのまま入力してしまう失敗です。事務所側が便利さを優先し、匿名化の手順を省略してしまうケースが起こり得ます。回避策は、AIに読み込ませる前のデータ加工を事務所内の標準手順として定めておくことです。

4つ目は、AIによる一次チェックの結果を過信し、税理士本人の確認を省略してしまう失敗です。データ分析はあくまで異常の可能性がある箇所を洗い出す手段であり、実際にその変動が問題かどうかの判断には、顧問先の事業内容や取引の背景を知る税理士本人の目が欠かせません。回避策は、AIの検出結果と最終判断を明確に分け、最終判断の記録を事務所内に残しておくことです。

導入費用・工数・運用体制の目安

帳簿データの整備自体に大きな新規費用が発生するわけではありませんが、クラウド会計システムへの移行が済んでいない顧問先については、移行の初期費用と、事務所側の入力支援の工数がかかります。生成AIを使った一次チェックの工数は、顧問先ごとに、過去3期分のデータを読み込ませて変動箇所を洗い出す作業まで含めて、数時間程度を見込む事務所が多いようです。運用体制としては、担当者がAIの検出結果を一次確認し、顧問先への連絡が必要な項目については税理士本人が最終判断する二段構えが現実的です。 顧問先数が多い事務所ほど、優先順位付けの基準を事前に決めておかないと、確認作業が特定の担当者に偏ってしまう懸念もあります。事務所全体で確認の分担ルールを共有しておくことが、運用を継続するうえでの実務上のポイントになります。 また、AIによる一次チェックを外部のクラウドサービスで行う場合は、利用料が新たに発生することもあるため、事務所の年間予算に組み込んでおくと運用が安定します。

今後の展望と独自考察

KSK2の稼働と、データ分析による調査対象の絞り込みが同時期に進んでいることは、偶然の一致というより、システム基盤の更新が調査の精度向上を支える設計として位置づけられていることを示唆しています。実地調査の件数を絞り込みながら1件あたりの追徴税額を積み上げる傾向(出典)が今後も続くのであれば、事務所側の対応も、調査が来てから慌てて動くものから、日頃の帳簿整備で備えるものへと重心が移っていくと考えられます。KSK2の本格稼働後、実際の調査の運用がどう変わるかは、現時点では未確認であり、稼働後の実務動向を継続して確認する必要があります。

よくある質問

KSK2が稼働すると、これまでより調査が厳しくなりますか

結論として、件数を絞り込みながら1件あたりの追徴税額が増えている傾向が、公表されている調査事績から読み取れます。調査対象に選ばれる確率そのものが一律に上がるかどうかは、現時点では未確認です。

AIによるデータ分析はどの範囲まで対象になりますか

国税庁が公表した資料の解説によれば、年度比較や同業比較によって数値の異常を検出する手法が紹介されています。ただし、具体的な検出ロジックの詳細は公表されておらず、この点は要確認です。

顧問先の帳簿データをAIに読み込ませてよいですか

判断の基準は、そのAIツールが入力データを学習に使わない設定になっているか、そして社名や取引先名を匿名化してから読み込ませているかです。両方を満たしたうえで、事務所の一次チェックに使う運用が現実的です。

AIが検出した数値の変動は、顧問先にどう伝えればよいですか

結論として、断定的に伝えるのではなく、確認すべき論点として伝える姿勢が実務に合っています。背景をヒアリングした結果、正当な理由があると分かるケースも多いため、決めつけずに確認する順序を守ります。

KSK2への移行で、これまでの申告データの扱いはどうなりますか

過去の申告データそのものが失われるわけではなく、新しいシステムへ引き継がれる形になると案内されています。事務所側で過去のやり取りを個別に保存し直す必要は基本的にありませんが、e-Taxの仕様変更に伴う送信方法の違いは確認しておく点になります。

事務所が独自に導入しているクラウド会計システムはKSK2に対応しますか

freeeやマネーフォワードなど主要なクラウド会計システムは、e-Tax仕様の更新に合わせて各社が対応を進めるとみられます。ただし対応状況はサービスごとに異なるため、利用しているシステムのベンダーへ個別に確認しておくことが実務上のポイントになります。

個人事業主の顧問先もKSK2の影響を受けますか

法人だけでなく、所得税の申告事績についても同様にデータが蓄積される仕組みのため、個人事業主の顧問先も無関係ではありません。ただし、公表されている調査事績の解説は法人税・消費税が中心のため、個人事業主向けの影響の程度は要確認です。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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