金融庁は監査基準の改訂公開草案を公表し、意見募集を始めました。
金融庁は2026年10月16日、企業会計審議会監査部会がまとめた「監査基準の改訂について(公開草案)」を公表し、意見募集を開始しました。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認する方針です。今回の草案は、継続企業の前提に関する監査手続と監査報告書の記載を見直す内容で、公認会計士や監査法人の実務だけでなく、上場会社の経理部門を顧問先に持つ税理士にも関わる話題です。公表段階は草案であり、確定したものではない点を先にお伝えします。
何が公表されたのか
金融庁の公表ページによると、公表日は令和8年10月16日で、発表元は企業会計審議会の監査部会です。ページには別紙として、公開草案の本文と監査基準(抄)の新旧対照表の二つのPDFが掲載されています。意見の提出期限は令和8年11月16日(月曜)17時必着で、郵送のほか、e-Govの意見募集ページからも提出できると案内されています。電話での意見は受け付けておらず、個別の回答も行わないと記載されています。
草案が取り上げているテーマは大きく二つです。一つは継続企業の前提、もう一つは不正への対応です。公開草案の本文は、継続企業の前提に関する国際監査基準が改訂されたことを背景に挙げています。改訂の内容として、経営者の評価に対する監査人の検討手続の拡充、評価期間の見直し、監査報告書の記載事項の改正が示されています。
継続企業の前提に関する改訂案
草案によると、これまでの実務では、監査人が検討する合理的な期間は決算日から少なくとも1年とされてきました。改訂案では、財務諸表の公表の承認日から少なくとも1年間について評価することを求めています。承認日の定義は、適用される企業会計基準に定めがあればそれに従い、なければ監査人が適切に判断するとされています。経営者側の評価期間については、企業会計基準委員会(ASBJ)が検討中であると草案に書かれています。
監査報告書の記載も変わる案です。重要な不確実性が認められる場合に独立した区分を設けて記載する点は現行どおりです。新たに、重要な不確実性が認められない場合にも、国際監査基準との整合を図るため、独立した区分を設けて継続企業の前提に関する事項を記載するとされています。上場会社等の監査で、経営者が重要な不確実性は認められないと結論づける際に重要な判断を行っている場合などには、経営者の評価を監査人がどう検討したかを説明として記載する、という整理です。
新旧対照表で確認できる変更は、報告基準の六「継続企業の前提」の第1項の文言です。旧基準の「重要な不確実性が認められる場合において」という書き出しが削除され、継続企業を前提とする判断を条件に、不確実性が認められないときと認められるときで場合分けする書きぶりに改められています。どちらの場合も経営者の評価を検討した上で、という趣旨の文言が加わっています。そのほかの項目は新旧対照表で略とされており、今回の表では変更点として示されていません。
不正対応と実施時期
不正への対応については、草案は国際監査基準の改訂内容を整理した上で、結論として監査基準等の改訂は行わないとしています。その理由として、我が国の不正リスク対応基準が、国際監査基準に先駆けて同様の対応を既に求めている点が挙げられています。不正又は不正の疑いが識別された場合の手続や、不正に関連する監査上の主要な検討事項(KAM)の見出しといった個別の対応は、実務の指針で対応することが適切とされています。
あわせて草案は、近時の不正会計事案を踏まえ、不正は一義的には経営者の責任であると述べています。既存の制度的対応として、内部統制報告制度、監査法人のガバナンス・コード、上場会社等の監査に関する登録制が挙げられ、監査人には職業的懐疑心の重要性の再認識を求める内容になっています。
実施時期は、令和10年(2028年)3月決算に係る財務諸表の監査からとされています。出典は上記の公開草案の本文です。実施にあたっては関係法令の所要の整備が適当とされ、日本公認会計士協会には、早急に実務の指針を作成することが要請されています。
士業事務所にとっての論点
直接の影響を受けるのは、上場会社等の監査を担う公認会計士と監査法人です。承認日後1年という評価期間の考え方や、重要な不確実性が認められない場合の記載は、監査の進め方や監査報告書の書きぶりに関わります。税理士や中小企業診断士にとっては、顧問先や支援先が上場会社や会計監査の対象会社である場合に、継続企業の前提に関する経営者の評価や開示がより丁寧に問われる可能性がある、という点が背景情報になります。ただし、これらは草案の段階であり、最終的な内容は意見募集の結果を踏まえて決まります。事務所の実務への具体的な影響は、現時点では要確認です。
今後の展望と確認したい点
今後の流れとして、意見募集の締切が11月16日、実施が2028年3月決算からとされています。確認の目安は次のとおりです。
- 意見募集の結果と、それを踏まえた草案の修正の有無
- ASBJが検討している、経営者の評価期間と開示に関する基準の動き
- 日本公認会計士協会が作成する実務の指針の公表時期
草案の別紙は、項目名や見出し番号に沿って整理されており、条文番号を前提とした記述はありません。詳細の確認は、金融庁の掲載資料をご覧ください。
まとめ
金融庁は2026年10月16日、監査基準の改訂公開草案を公表しました。継続企業の前提では、評価の対象期間を財務諸表の公表の承認日から1年とする案と、重要な不確実性が認められない場合の監査報告書の記載が柱です。不正対応については基準の改訂を行わず、実務の指針で対応する整理です。意見募集は11月16日までで、実施は2028年3月決算からとされています。
参考文献
- 金融庁 「監査基準の改訂について(公開草案)」の公表について
- 金融庁 監査基準の改訂について(公開草案)(別紙1)
- 金融庁 監査基準(抄)新旧対照表(別紙2)
- e-Gov パブリック・コメント 意見募集ページ
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引用元: 金融庁
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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