改正行政書士法19条1項の報酬要件 AI時代の書類作成で確認する6論点

2026年1月1日施行の改正行政書士法第19条第1項と両罰規定の整備を一次情報で整理し、生成AIで書類作成が容易になった環境で事務所と顧問先が確認する6論点をまとめました。

改正行政書士法19条1項の報酬要件 AI時代の書類作成で確認する6論点

改正行政書士法第19条第1項とは、報酬を得た書類作成の制限を明確化した規定のことです。

生成AIで申請書類の下書きが数分で作れるようになったいま、報酬を得て他人の書類を作る行為の線引きはどこにあるのか。2026年1月1日に施行された改正行政書士法は、この問いに関わる条文の趣旨を明確化しました。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁および日本行政書士会連合会の公表資料で確認しています。

2026年1月1日に施行された改正 押さえる3つの柱

改正の全体像から確認します。行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)は令和7年6月13日に公布され、令和8年(2026年)1月1日から施行されました。この日付と経緯は日本行政書士会連合会の会長談話に記載があり、総務省の行政書士制度のページからも改正の位置づけを確認できます。

柱の1つ目は、使命規定の創設です。行政書士法第1条は、行政書士について、その業務を通じて行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とする、と定めています。他士業法にある使命規定と同じ位置づけの条文が置かれたことになります。

柱の2つ目が、本記事の主題である第19条第1項の明確化です。同条第1項は、行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない、と定めています。改正で加わったのは、いかなる名目によるかを問わず報酬を得てという文言です。日行連の会長談話は、コロナ禍において行政書士でない者が給付金等の代理申請を行い多額の報酬を受け取っていた事例が散見されたことを背景として挙げ、会費・手数料・コンサルタント料・商品代金といったどのような名目であっても対価を受領して業として書類を作成することは同項に違反すると説明しています。

柱の3つ目が、両罰規定の整備です。行政書士法第23条の3は、法人の代表者または法人もしくは人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し所定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても各本条の罰金刑を科すと定めています。第19条第1項に違反した者に対する罰則は同法第21条の2に置かれ、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。会長談話は、この両罰規定に第19条第1項の違反に対する罰則が加えられ、所属する法人に対しても100万円以下の罰金刑が科されることになったと説明しています。

なお第19条第1項にはただし書があり、他の法律に別段の定めがある場合のほか、定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験または能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合が除かれています。具体的な手続と者の範囲は行政書士法施行規則などの下位法令で定まる構造になっているため、実務では省令の内容まで確認することになります。

生成AIで書類が作れる時代に19条1項をどう読むか 事務所が確認する6論点

結論から書くと、生成AIの普及で変わったのは条文ではなく、報酬を得て書類を作る行為の見た目です。以前は書類作成の作業そのものに時間がかかったため、誰が作ったかは工数の所在から推測できました。いまは下書きが数分で出るため、コンサルティングの成果物として提供したのか、書類作成そのものを請け負ったのかが外形から分かりにくくなっています。事務所が確認したい論点を6つに整理します。

第1の論点は、AIツールの提供と書類作成の代行の境目です。顧客が自分で入力して自分で出力を得るツールを提供する形と、事務所や事業者が顧客に代わって入力し完成した書類を渡す形とでは、行為の性質が変わります。前者はツールの提供、後者は書類作成に近づきます。どちらの形で提供しているかを、自社のサービス説明と実際の運用の両方で確認しておく必要があります。

第2の論点は、名目の設計です。改正で明確化されたのは、名目にかかわらず対価を受領している事実が見られるという趣旨です。したがって、システム利用料やサブスクリプション料金として受け取っていれば大丈夫、という整理は成り立ちにくくなります。料金の名称ではなく、その対価が何に対して支払われているかを説明できるかどうかが問われます。

第3の論点は、生成AIの出力をそのまま納品物にしていないかです。AIが作った文案を人が確認せずに渡している場合、提供しているのは書類そのものです。ここに手数料が発生していれば、第19条第1項の適用が問題になり得ます。行政書士事務所であれば業務範囲の問題は生じませんが、顧問先の事業会社が同様のサービスを外部に提供している場合は論点になります。

第4の論点は、事務所側のAI利用が業務範囲の説明とずれていないかです。行政書士がAIを使って書類を作ること自体を制限する規定は、公表されている法令の範囲では見当たりません。ただし行政書士法第10条は信用または品位を害する行為の禁止を定めており、内容を確認しないまま納品する運用は別の問題を呼びます。業務範囲と非弁の線引きは行政書士のAI活用と業務範囲 非弁行為の線引き6論点と事務所の規程で整理しています。

第5の論点は、顧問先への注意喚起です。特に、補助金申請の支援や在留資格関係の手続支援を事業として行っている顧問先は、改正の趣旨を知らないまま従来の運用を続けている可能性があります。登録支援機関として特定技能外国人の支援を行う法人が、支援業務の一環として在留諸申請の書類まで作成し対価を得ている場合、その対価が何に対するものかの整理が要ります。この点は個別の事実関係によって評価が分かれるため、顧問先には一次情報を示したうえで、必要なら専門的な検討を促す形が実務的です。

第6の論点は、社内でAIツールを導入した顧問先の運用です。自社の従業員が自社の許認可申請書類を作る行為は他人の依頼を受けたものではありませんが、グループ会社や取引先の書類まで作って対価を得る形になると、性質が変わります。AIツールの導入によって作業が簡単になったぶん、こうした横展開が起きやすくなっています。

顧問先へのヒアリングに使えるプロンプトの例を示します。顧問先を特定できる情報は入れず、架空の設定に置き換えています。

あなたは事実整理を補助するアシスタントです。法的な結論は出さず、確認事項の列挙だけを行ってください。

前提(架空):
- A社は製造業向けに補助金申請の支援サービスを提供している
- 料金体系は月額のコンサルティング料と成功報酬の2本立て
- 申請書類の文案はA社が作成し、顧客が内容を確認して提出している

依頼:
1. この事業の実態を把握するために、A社へ確認すべき事実を20個列挙してください。
2. 各項目について、なぜその事実が必要になるかを1文で添えてください。
3. 法令の条番号は書かないでください。適法性の判断も書かないでください。
4. 出力は確認事項の一覧のみとし、結論は必ず書かないでください。

自事務所のサービス説明を点検するためのプロンプトも挙げます。

以下のサービス説明文について、記載と実際の運用がずれやすい箇所を洗い出してください。

出力形式:
- 誰が作業を行うのかが曖昧な記述を抜き出す
- 対価が何に対して支払われるのかが不明確な記述を抜き出す
- 成果物として何を渡すのかが書かれていない箇所を抜き出す

条件:
- 適法性の判断はしないでください
- 抜き出した箇所と、その理由だけを出力してください

サービス説明文:
(ここに貼る)

いずれのプロンプトも、AIに結論を出させず、人が確認すべき事実を漏れなく拾わせる使い方です。法令の当てはめは有資格者が担う工程として残します。生成AIに適法性の判断まで求めると、それらしい結論が返ってくるぶん、確認が甘くなります。列挙までに用途を限定しておくと、出力が誤っていても工程としては壊れません。

6つの論点を通して見ると、共通しているのは、誰が何をして、その対価として何を受け取っているかという事実の整理です。条文の解釈から入ると議論が抽象的になりますが、事実の整理から入れば、顧問先の担当者とも同じ土俵で話せます。事務所側の準備としては、この整理をヒアリングシートの形にしておくのが現実的です。項目は、作業の実施主体、成果物の形態、対価の名目、対価の算定根拠、提出者、修正対応の範囲の6つに絞れば、初回のヒアリングで足ります。

生成AIをこのヒアリング自体に使うこともできます。録音の書き起こしから上記6項目に対応する記述を抜き出させ、記載が無い項目を空欄として返させる使い方です。抜き出しは機械的な作業なので誤りが起きにくく、空欄が残った項目だけを人が追加でヒアリングすれば、確認漏れが減ります。書き起こしに顧問先の固有名詞が含まれる場合は、入力前に置換する工程を挟みます。

顧問先の事業情報をAIに入れる前に決める守秘義務と線引き

行政書士法第12条は、行政書士について、正当な理由がなくその業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならないと定めています。同法第19条の3は、行政書士または行政書士法人の使用人その他の従業者にも同趣旨の義務を定めています。補助者が生成AIを使う場面でも、この条文が及ぶ範囲は変わりません。

決めておきたい1つ目は、入力してよい情報の範囲です。顧問先の商号、代表者名、許認可番号、取引先名、申請の可否に関わる個別事情は、原則として入力対象から外す運用を採る事務所があります。業種と規模、申請の類型といった構造情報だけを残せば、論点の洗い出しには足ります。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、入力内容と利用目的の関係を確認する視点が示されています。

2つ目は、使用するツールの契約形態です。無料版と業務用契約ではデータの扱いが異なることが多く、Anthropicは商用向けサービスにおける学習利用の扱いを公式のプライバシーセンターで説明しています。事務所が実際に契約している形態のドキュメントを確認したうえで、所内で使えるツールを列挙します。

3つ目は、誰がどの工程を担うかです。情報の切り分けと素材の整形は補助者、法令に触れる判断と最終文言は行政書士、という分け方が一般的です。階層ごとの権限設計は士業事務所の生成AI権限設定 有資格者と補助者で分ける5階層のルールで整理しています。

4つ目は、記録です。どの案件でどのツールに何を入力したかを案件記録に残しておくと、後から顧問先に説明を求められたときに範囲を絞り込めます。記録がないと、問題が起きたときに全案件を洗い直すことになります。記録の粒度は、ツール名と入力した情報の種別、出力を何に使ったかの3項目で足ります。入力内容そのものを保存すると、今度はその保存先の管理が新たな論点になるため、種別の記録に留める運用を採る事務所があります。

5つ目は、顧問先から預かった原本データの扱いです。定款や登記事項証明書、許認可の写しといったファイルをそのままアップロードする操作は、意識せずに行われがちです。ファイルには本文以外に作成者情報や編集履歴が残っていることがあり、テキストを貼り付ける場合と含まれる情報量が違います。アップロード機能を使う場面を棚卸しし、許可する範囲を限定しておくと、確認の対象が有限になります。

規程に落とすときは、禁止事項を並べるより、この工程ではこの操作をするという手順書の形にしたほうが守られやすくなります。禁止だけを並べると、書かれていない操作の可否が現場で判断されてしまい、事務所としての統制が効かなくなります。

事務所と顧問先で起きやすい3つの失敗

1つ目の失敗は、生成AIが出した条番号をそのまま説明資料に載せてしまうことです。行政書士法は改正で条文が動いており、古い条番号を自然な文章の中に混ぜて出力することがあります。回避策は、法令名と条番号が出てきたら例外なくe-Gov法令検索の原文に当たることです。改正直後は特に、モデルの学習時点が改正前である可能性を疑ってかかります。

2つ目の失敗は、顧問先への注意喚起を口頭だけで済ませることです。改正の趣旨は、伝えた側は伝えたつもりでも、受け取る側の担当者が交代すれば消えます。一次情報のURLを添えた短い文書を渡し、社内で共有できる形にしておくほうが残ります。日行連の会長談話は、改正法の施行日前であっても同様の行為は同項に違反することになると説明しており、この点は誤解が生じやすい箇所です。

3つ目の失敗は、料金表の名称だけを書き換えて済ませてしまうことです。名目にかかわらず対価の受領が見られるという趣旨が明確化された以上、名称の変更で整理がつく構造ではなくなりました。実際に何を提供し、その対価として何を受け取っているかを説明できる形に、業務フローのほうを揃える必要があります。報酬体系そのものの組み替えについてはタイムチャージから月額固定へ AI時代の士業報酬を組み替える6論点が参考になります。

業務範囲と料金表の見直しにかかる工数

費用面では、生成AIの利用料そのものより、サービス説明と料金表の点検にかかる時間のほうが大きくなります。所員が数名の事務所であれば、点検の対象は自事務所の説明文と、注意喚起が必要な顧問先のリストアップに絞られます。ツール選定にあたっては、Anthropicのプライバシーセンターのようなデータ取扱いのドキュメントと料金を並べて比較します。

初期の工数は3つに分かれます。第一に、自事務所のサービス説明と実際の運用を突き合わせる点検。第二に、顧問先のうち書類作成の受託に近い事業を行っている先の洗い出し。第三に、注意喚起の文面づくりです。第二の作業は業種と契約類型で機械的に絞り込めるため、AIに候補の抽出条件を整理させると早くなります。

運用の持ち手も決めておきます。改正法令の追跡は所長が持ち、顧問先への案内は担当者が持つ、という形をとる事務所があります。総務省の行政書士制度のページと日行連のお知らせを定期的に見る担当を決めておくと、次の改正に気づくのが遅れません。

効果の測り方についても触れておきます。今回の点検は売上に直結する作業ではないため、工数だけがかかったように見えがちです。指標にするなら、点検した顧問先の件数と、説明資料を渡した先の件数を残しておくのが実務的です。次に同種の改正が来たときに、どの範囲へ案内すればよいかが即座に分かるようになり、2回目以降の工数が下がります。

なお、業務範囲の説明資料そのものを生成AIで作る場合も、条番号を含む記述は例外なく原文を確認します。改正直後は、モデルの学習時点が改正前である可能性が高く、旧条文の内容をそのまま出力することがあります。資料の見た目が整っているほど、この誤りは見落とされます。

施行から半年 いま論点になっていること

施行から半年が経ち、論点は条文の理解から運用の点検へ移ってきました。第一に、ただし書で除かれる手続と者の範囲が省令でどう定まっているかを、実際の案件に照らして確認する作業が残っています。電磁的記録の作成という要件が入っているため、オンライン申請の普及度合いによって影響を受ける手続が変わります。

第二に、生成AIを組み込んだ申請支援サービスが増えるにつれ、ツールの提供と書類作成の代行の境目が、これまでより細かい粒度で問われるようになっています。顧客が入力するのか事業者が入力するのか、出力をそのまま提出できる形で渡すのか下書きとして渡すのか、といった設計の差が意味を持ちます。

第三に、両罰規定が整備されたことで、法人としての管理体制が問われる構造になりました。従業者が個別に行った行為であっても、法人の業務に関するものであれば法人にも罰金刑を科す旨が第23条の3に定められています。顧問先が自社の従業者に何を任せているかを把握しているかどうかが、これまで以上に効いてきます。

よくある質問

改正行政書士法はいつから施行されましたか

2026年1月1日からです。行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)は令和7年6月13日に公布され、令和8年1月1日から施行されたことが日本行政書士会連合会の会長談話に記載されています。

第19条第1項に何が加わったのですか

他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、という文言です。e-Gov法令検索の行政書士法で第19条第1項の原文を確認できます。会長談話は、名目を問わず対価を受領して業として書類を作成することが同項に違反する旨を明確化したものと説明しています。

罰則はどう変わりましたか

第19条第1項の違反に対する罰則は同法第21条の2に置かれ、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。加えて第23条の3の両罰規定により、法人に対しても各本条の罰金刑を科す旨が定められています。

行政書士が生成AIで書類を作ってもよいですか

公表されている法令の範囲では、行政書士がAIを補助的に使うこと自体を制限する規定は見当たりません。ただし出力の確認を経ずに納品する運用は、行政書士法第10条が定める信用失墜行為の禁止との関係で論点になり得ます。確認工程を業務フローに組み込む運用が現実的です。

登録支援機関が申請書類を作る場合はどうなりますか

個別の事実関係によって評価が分かれるため、一律の答えはありません。確認したいのは、支援業務の対価として受け取っているのか、書類作成の対価として受け取っているのかという点です。日本行政書士会連合会の会長談話が示す趣旨を踏まえ、必要に応じて専門的な検討を求める形が実務的です。

顧問先にどう伝えればよいですか

一次情報のURLを添えた短い文書で伝える形が残ります。総務省の行政書士制度のページと日行連の会長談話を示し、自社のサービス説明と実際の運用が一致しているかを点検してもらう構成にすると、担当者が交代しても内容が引き継がれます。

ただし書で除かれる手続はどこで確認できますか

総務省令で定められる構造になっているため、行政書士法施行規則などの下位法令を確認します。あわせて総務省が公表した改正法の公布通知も、改正の趣旨を追ううえでの一次資料になります。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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