Anthropicは2026年11月2日、Message Threadsをパブリックベータで公開しました。
AnthropicがClaudeのMessages API向けに、会話の差分だけを送る「Message Threads」をパブリックベータとして公開しました。公式発表によると、50万〜100万トークンの長いリクエストで、最初の文字が返るまでの時間(TTFT)の中央値が約35%短縮されたとのことです。AI専門メディアのThe Decoderも11月3日に報じています。開発者向けの機能ですが、事務所向けのAIツールや社内システムがClaudeを組み込んでいる場合、間接的に使い勝手や運用条件へ関わる可能性があります。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。
何が発表されたか:会話全体を毎回送らない仕組み
従来のMessages APIでは、会話が続くたびに、それまでのやり取り全体を毎回あらためて送信する必要がありました。Message Threadsでは、最初のリクエストで会話全体を送ってスレッドを開始し、以降は新しいメッセージと直前の応答IDだけを送ります。Anthropicの公式解説ページによれば、文脈が長いほど短縮効果が大きく、特にClaude Codeのようなコーディングエージェントや、大量の文書・画像を扱う処理で効果が出やすいとされています。
公式ドキュメントでは、この機能はベータ版で、リクエストにベータ用ヘッダーを付ける必要があると説明されています。提供先はClaude APIのほか、Claude Platform on AWS、Microsoft Foundry、Google Cloud上のClaudeです。公式ドキュメントには、スレッドの一覧取得や削除のAPIはないとも書かれています。
料金について、公式ページは標準のトークン料金とレート制限がそのまま適用されると記載しています。つまり速度は上がっても、トークン使用量は変わりません。Claudeは毎ターン、会話全体を読み込んでいるためです。
なぜ重要か:速度だけでなく保持条件が論点になる
速度面の効果は、長い契約書の束や過去の申告資料を読み込ませてやり取りを重ねるような使い方で実感しやすいと考えられます。ただし今回の発表で士業の読者に目を向けてほしいのは、速度よりもデータの保持条件です。
公式ドキュメントによると、スレッドの内容(会話、システムプロンプト、ツール定義)はサーバー側のメモリ上に保持され、サーバー管理の鍵で暗号化されます。永続ストレージには書き込まれません。最後のリクエストから5分で有効期限が切れ、最後の利用から最大1時間以内に削除されると説明されています。
一方で、同じドキュメントはこの機能がゼロデータ保持(ZDR)の対象外であり、HIPAA対応を有効にした組織でも使えないと明記しています。ZDRとは、入力データをAI事業者側に保存しない契約上の仕組みのことです。これまでZDRを前提にClaudeのAPIを導入していた事務所やシステム提供会社にとっては、Message Threadsを有効にするかどうかが、データ保持の前提を変える選択になる点に注意が必要です。他のZDR対象機能の利用には影響しないとも書かれています。なお、入力データがモデルの学習に使われるかどうかは、今回確認した公式ページからは読み取れません。公式のデータ利用ポリシーでの確認が要確認事項です。
士業×AIの視点:ツール選定で確認したい3点
ここからは、公表された事実を前提にした整理です。今回の発表は特定の士業の制度や手続を変えるものではないため、導入の是非を論じず、確認の観点を挙げます。
一つ目は、自事務所が使うAIサービスがClaude APIを裏側で使っている場合に、Message Threadsを有効にしているかどうかです。多くの場合は提供会社側の設定になるため、提供会社に問い合わせる段階の話です。
二つ目は、ZDRを前提にした契約や社内規程がある場合の整合です。顧客の相談内容や資料を扱う事務所では、データがどこにどれだけの時間残るかが、守秘義務への対応を考えるうえでの出発点になります。5分や最大1時間という保持時間をどう評価するかは、各職能団体の公表資料や事務所の規程に沿って検討する論点です。
三つ目は、顧問先への説明です。AIの利用範囲やデータの扱いを顧問先にどこまで説明するかは、事務所ごとの運用に関わります。本記事では評価をせず、論点として挙げるにとどめます。
今後の動き
まずは、ベータ版から正式版に移る時期と、ZDRへの対応が将来的に広がるかが注目点です。公式ドキュメントでは、対応していない機能(メッセージバッチ、トークンカウントなど)も一覧で示されており、今後の拡充が見られるかを追っていくことになります。
また、Claudeを組み込んだ各社の業務ツールが、この機能を採用した場合にどのような説明を出すかも、確認の材料になります。提供会社の更新情報やデータ取り扱いの記載を、定期的に見直す事務所があります。
まとめ
AnthropicはMessage Threadsをパブリックベータで公開し、500k〜1Mトークンのリクエストで中央値のTTFTを約35%短縮したと説明しています。メモリ上で暗号化して保持し、5分で期限切れ、最長1時間で削除される一方、ZDRの対象外とされています。士業事務所としては、利用中のAIツールでの有効化状況、ZDR前提との整合、顧問先への説明の三点を、公式資料で確認することが出発点になります。
参考文献
- Anthropic「Message Threads」公式解説(2026年11月2日)
- Claude Platform Docs「Message Threads」
- The Decoder「Anthropic’s Message Threads cut time to first token by 35 percent for long conversations」
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引用元: The Decoder
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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