AI社会実装を阻む規制・制度の情報募集に士業事務所が困りごとを出す前の7手順(10月30日17時締切)

AI社会実装を阻む規制・制度の情報提供募集(10月19日から30日17時)を一次情報で整理し、士業事務所が困りごとを書いて提出するまでの7手順を解説します。

AI社会実装を阻む規制・制度の情報募集に士業事務所が困りごとを出す前の7手順(10月30日17時締切)

規制・制度の情報提供募集とは、AIの活用を妨げる規制の困りごとを政府が集める取り組みのことです。

AIを事務所に入れようとして、書面での提出、対面での本人確認、押印や原本の扱いなどが壁になった経験は、士業の実務家なら思い当たるはずです。内閣府、デジタル庁、経済産業省などが、AIの社会実装を阻む規制・制度の情報提供を募集しています。この記事では、募集の内容を一次情報で整理し、士業事務所が困りごとを整理して提出するまでの7手順を示します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、募集の内容は内閣府の公表ページで確認しています。提出の可否や内容は各事務所の判断であり、本記事は法的な評価を行いません。

募集の概要 一次情報の整理

内閣府の公表ページによると、募集期間は令和8年10月19日(月)から10月30日(金)17時までです。提出はオンラインの情報提供フォームから行い、フォームは募集開始日から利用できます(出典: 内閣府 規制改革推進室 情報提供募集のページ)。

対象は、LLM、マルチモーダルAI、エージェントAI、フィジカルAIを開発、提供、利用する際に、規制や制度が障害となっている具体的な困りごとです。この募集は、2026年7月14日に閣議決定された人工知能基本計画を受けたもので、寄せられた情報は規制改革推進会議の審議や、計画の改定、府省庁横断的なルールの見直しに活用されると説明されています(出典: 同上)。

担当は、内閣府の規制改革推進室と人工知能政策推進室、デジタル庁、経済産業省の産業創造課です。寄せられた意見は所管の関係省庁に共有される場合があり、内容の確認のために各府省から連絡が入ることもあります。AI以外の規制改革に関する意見は、別の窓口である規制改革・行政改革ホットラインを使うと案内されています(出典: 同上)。

報道では、古川デジタル相が10月2日の閣議後記者会見で発表し、規制や制度には法律、政令、省令、規則、告示などが含まれると伝えられています(出典: 電波新聞デジタル)。

士業事務所が関わりやすい論点の見つけ方

士業の実務は、書面と手続きの積み重ねです。AIを業務に入れるとき、壁になりやすい場面は、事務所の外にある制度に起因することが少なくありません。たとえば、行政への申請が特定の様式や方法に限られている場合、本人確認の方法が対面や特定の手段に限られている場合、書類の保存の方法が定められている場合などです。

ここで挙げた場面は、募集の趣旨に沿った困りごとの例として編集部が想定したものです。実際に募集の対象になるかは、内閣府の案内で確認してください。また、何が規制や制度の障害であるかの判断は、個々の事案によって変わります。

提出前の7手順

手順1 困りごとを業務の場面で書き出す

最初に、AIを使おうとして止まった場面を、業務の言葉で書き出します。抽象的な「規制が厳しい」ではなく、どの業務のどの工程で、何ができなかったのかを書きます。募集の対象が具体的な困りごとである以上、場面の具体性が出発点になります。

手順2 AIの種類を特定する

次に、その場面で使おうとしたAIが、LLM、マルチモーダルAI、エージェントAIのどれに近いかを整理します。募集は、これらのAIを開発、提供、利用する際の困りごとを対象としています。士業事務所の場合は、LLMやエージェントAIの利用が中心になると考えられますが、実際の分類は事案ごとに確認することになります。

手順3 関係する規制・制度を特定する

困りごとの原因になっている規制や制度を特定します。法律、政令、省令、規則、告示のどれかを確認し、可能なら名称と該当箇所を控えます。条文を引用する場合は、e-Gov法令検索の原文で確認したものだけを使います。記憶で条番号を書くことは避けます。特定できない場合は、特定できないと正直に書いておくほうが、情報として有益です。

手順4 何が困るのかを影響で書く

規制の存在そのものではなく、それによってどんな影響が出ているかを書きます。作業の時間が増える、顧問先への対応が遅れる、費用がかかる、AIの導入を見送った、などです。数字を書く場合は、事務所内で実際に測った値だけを使い、推測の数字は入れません。数字がなければ、定性的な記述にとどめます。

手順5 顧問先や依頼者の情報を取り除く

提出する文面から、顧問先や依頼者を特定できる情報を取り除きます。困りごとの説明に事案の細部が必要でも、特定の個人や会社が分かる形にはしません。この点は、守秘義務の論点として次の章で整理します。

手順6 提出する内容を事務所内で確認する

提出する文面は、有資格者が内容を確認します。規制への見解や評価に踏み込みすぎていないか、事実と意見が混ざっていないかを見ます。意見を書く場合は、事務所の意見であることを明記します。

手順7 提出の記録を残す

提出した日、提出した内容、使った窓口を記録しておきます。後日、府省から内容の確認の連絡があったとき、何を出したかを見返せます。募集は、締切後の審議や計画の改定に使われるため、その後の動きも、公表ページで定期的に確認します。

書き方の例 架空の場面で考える

文面のイメージをつかむために、架空の場面で書き方を示します。実在の事務所や事案とは関係がありません。また、この例が募集の対象に当たるかどうかは、編集部が判断するものではありません。

ある小規模な事務所が、手続きの下書きにLLMを使おうとしたとします。業務の場面は、行政への申請書類の下書き作成です。使おうとしたAIはLLMです。障害になっていると考える点は、申請の受付が特定の方法に限られていて、AIが整えた書類をそのまま扱う流れに組み込みにくいことです。生じている影響は、AIで下書きの時間が短くなっても、受付の方法に合わせた再作成の手間が残ることです。事務所の意見は、受付方法の選択肢が増えれば、AIの活用が進めやすくなるというものです。

この例の文面は、五項目に沿って、事実と意見を分けています。特定の顧客や申請の中身は書いていません。規制の名称が特定できていれば、その名称を添えます。特定できていなければ、特定できていないことをそのまま書きます。

提出しないという判断も含めて考える

困りごとがあっても、提出しない判断はあり得ます。提出する内容が顧問先や依頼者の事案に深く結びついていて、一般化すると意味が失われる場合です。この場合は、事案を出さずに、同種の場面に共通する構造だけを書けるかを検討します。それも難しければ、提出を見送ります。

また、職能団体を通じて意見を出す方法もあります。個々の事務所が出すより、団体が会員の困りごとをまとめて出すほうが、守秘義務の観点で扱いやすい場合があります。団体が窓口を設けているかは、各団体の案内で確認してください。

事務所内で提出の可否を決める際は、誰が決めるのかを先に定めておくと、締切に間に合いやすくなります。募集期間は短く、10月19日から10月30日17時までです。提出したいと考えた職員がいても、確認の手順が決まっていなければ、期限を過ぎてしまいます。今のうちに、確認の担当者と日程を決めておくと、慌てずに済みます。

文面づくりを助けるプロンプト例

次のプロンプトは、手順1で書き出したメモを、事実と意見に分けて整理する補助です。顧問先の情報は入力しません。

以下は、AIを業務で使おうとして止まった場面のメモです。「業務の場面」「使おうとしたAI」「障害になっていると考える規制・制度」「生じている影響」「事務所の意見」の五項目に整理してください。メモに書かれていない内容は補わず、不明な項目は「要確認」と書いてください。規制の適否の評価は書かないでください。

【メモ】
(ここに匿名化したメモを貼り付ける)

もう一つは、文面から個人や会社を特定できる表現が残っていないかを点検するためのものです。

以下の文章について、個人名、会社名、住所、金額、日付など、特定の人や会社を特定できる可能性のある表現を抜き出してください。修正案は不要です。抜き出した表現と、その理由を一行ずつ書いてください。

【文章】
(ここに提出予定の文面を貼り付ける)

出力は下書きと点検の補助です。最終的な確認は、有資格者が行います。

守秘義務・規程上の論点

提出する文面に、事案の細部が入ると、守秘義務の問題が生じ得ます。弁護士法第23条は秘密保持の権利及び義務を、税理士法第38条は正当な理由がなく業務に関して知り得た秘密を洩らし、又は窃用してはならないことを、行政書士法第12条は正当な理由がなく業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならないことを、司法書士法第24条は正当な事由がある場合でなければ業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならないことを、社会保険労務士法第21条は秘密を守る義務を、それぞれ定めています。いずれもe-Gov法令検索の原文で確認しました。

個人データの取り扱いについては、個人情報保護法第27条が第三者提供の制限を定めています。ある文面がこれらの規定との関係でどう整理されるかは、個別の事情で判断が分かれます。本記事は当てはめを行いません。

運用の例として、提出する文面は事案を一般化して書く、特定につながる事実は省く、顧問先に関わる内容は書かない、提出前に所長か管理職が確認する、といった方法があります。また、事務所の名前を出すか出さないかも、事前に決めておきます。内閣府の案内は、各府省から内容確認の連絡がある場合があると説明しているため、連絡先として事務所の名前や連絡先を記入するかは、慎重に検討する事項です。

失敗例と回避策

一つ目は、困りごとが抽象的すぎて、情報として使われにくい例です。回避策は、手順1のとおり業務の場面で書くことです。

二つ目は、事案の細部をそのまま書いて、依頼者が特定できてしまう例です。回避策は、手順5のとおり、特定につながる情報を取り除くことです。

三つ目は、規制への不満を並べるだけで、影響が書かれていない例です。回避策は、手順4のとおり、影響を事実で書くことです。

費用・工数・体制

提出そのものに費用がかかるかは、公表ページに記載が見当たりません(要確認)。工数は、困りごとの書き出しと、文面の確認が中心です。体制としては、現場で困りごとに気づいた職員が下書きを書き、有資格者が確認し、所長が提出を判断する流れが考えられます。締切の10月30日17時から逆算して、事務所内の確認の日程を組んでください。

今後の展望と編集部の考察

募集の趣旨は、集めた情報を審議や計画の改定に活用することにあります(出典: 内閣府 規制改革推進室 情報提供募集のページ)。士業の実務家が現場の困りごとを出すことは、制度の見直しの議論に、実務の視点が入る機会になります。

今後の論点は、集まった情報がどのように整理され、どの規制や制度が見直しの対象になるかです。結果は公表ページや審議の資料で追うことになります。これは編集部の考察であり、特定の事務所への助言ではありません。

よくある質問

士業事務所でも提出できますか

募集の対象は、AIを開発、提供、利用する際の規制・制度の困りごとです。提出できる主体の範囲は、内閣府の公表ページで確認してください。

締切はいつですか

内閣府の公表ページでは、令和8年10月30日(金)17時までと案内されています。フォームは10月19日から利用できます。

顧問先の事例を書いてもよいですか

特定につながる情報は書かない運用が考えられます。可否は個別の事情で変わるため、本記事は当てはめを行いません。有資格者が判断してください。

AI以外の規制の意見はどこに出しますか

内閣府の案内は、AI以外の規制改革に関する意見は、規制改革・行政改革ホットラインを使うと説明しています。

提出した内容はどう使われますか

審議や計画の改定、府省庁横断的なルールの見直しに活用されると案内されています。個別の回答が返ってくるかは、公表ページに記載が見当たらず、要確認です。

参考文献

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本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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