ガバメントAI源内が全府省庁18万人へ 行政書士が読む申請実務の6論点

デジタル庁のガバメントAI源内が全府省庁約18万人へ広がる動きを、行政書士の申請実務の視点から整理し、申請書を要件対応型に組み替える5ステップと守秘義務の論点を解説します。

ガバメントAI源内が全府省庁18万人へ 行政書士が読む申請実務の6論点

源内とは、デジタル庁が展開する政府職員向けの生成AI利用環境のことです。

申請の相手方である役所の側に、生成AIが入り始めています。デジタル庁は、政府職員向けの生成AI利用環境である源内について、2026年度中に全府省庁約18万人の政府職員が利用可能とする予定を示しました(出典: デジタル庁 ガバメントAI 源内をオープンソースとして公開します)。この記事では、行政書士が申請実務の側からこの動きをどう読み、事務所の運用に何を反映するかを6つの論点に分けて扱います。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。

源内は何であって、何でないのか

まず前提を揃えます。源内は、デジタル庁や中央省庁で展開されている生成AI利用環境で、大きく2種類のシステムで構成されています。利用者が直接さわるWebアプリケーションである源内Webと、生成AIを活用したマイクロサービスである行政実務用AIアプリです(出典: デジタル庁)。

背景には法律と閣議決定があります。2025年5月に人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律が成立し、同年12月に人工知能基本計画が閣議決定されました。この計画では、隗より始めよの観点から、政府自らが先導的にAIを利活用する方針が示されています(出典: デジタル庁)。源内は、その方針を実装したものという位置づけです。詳細はデジタル庁のガバメントAIの政策ページにまとめられています。

ここで押さえておきたいのは、源内が審査そのものを代替する仕組みとして公表されているわけではない、という点です。公表されている機能は、汎用の対話や要約に加えて、法制度に関する調査支援や過去の国会答弁の検索といった、職員の作業を支援する方向のものです。申請の可否を機械が決める、という話ではありません。行政書士の立場で顧客に説明するときは、この線を明確にしておく必要があります。

もうひとつの重要な動きが、2026年4月24日のオープンソース公開です。デジタル庁は源内の一部を商用利用可能なライセンスで公開し、地方公共団体や政府機関における類似のAI基盤の重複開発を防ぐこと、調達仕様書を作成する際に参照・指定できるようにすることを目的として挙げています(出典: デジタル庁)。つまり、この基盤は中央省庁だけの話ではなく、自治体窓口にも広がり得る構造になっています。行政書士が日常的に接する自治体の窓口業務にも、同種の仕組みが入ってくる可能性がある、ということです。

なお、公開されなかったものも明示されています。実際の源内で参照している内部マニュアル類、デジタル庁が権利を保有しない大規模言語モデルや書籍、稼働中の生ログは公開対象外とされています(出典: デジタル庁)。中身のナレッジは公開されず、器だけが公開された、と理解しておくと実態に近くなります。

申請実務の側から見た3つの変化の方向

行政書士にとっての関心は、申請書がどう扱われるかです。公表資料から言い切れることは限られますが、方向としては3つが考えられます。

第一が、審査担当者の調査時間の短縮です。法制度に関する調査支援や過去の国会答弁の検索が職員側で使えるようになると、前例照会や制度解釈の確認にかかる時間が縮む可能性があります。これは申請人にとっては処理期間の短縮につながり得る変化です。標準処理期間の考え方は行政手続法第6条に置かれており、審査基準については同法第5条が定めています。運用の速度が変われば、事務所側のスケジュール設計も変わります。

第二が、申請書の記載に対する読み取りの均質化です。職員の側がAIの支援を受けて内容を整理するようになると、書き方の巧拙よりも、記載内容の過不足そのものが問われる方向に寄る可能性があります。曖昧な表現で幅を持たせる書き方より、要件との対応関係が明確な書き方が有利になる、という見立てです。ただしこれは推測を含む論点であり、公表資料から断定できるものではありません。

第三が、自治体窓口への波及です。オープンソース公開の目的に重複開発の防止と調達での参照が挙げられている以上、自治体が同種の環境を導入する流れは想定できます。自治体ごとに導入時期と使い方がばらつくため、当面は窓口によって対応の質に差が出る期間が続くと見込まれます。次期オンライン申請サービスをめぐる変化と合わせて追う必要があり、こちらは次期オンライン申請サービス9月本格運用へで扱いました。

3つのうち、事務所として今すぐ手を打てるのは第二です。第一と第三は行政側の都合で進むため、待つしかありません。第二は、申請書の作り方という自分たちの領域の話です。

3つの方向のうち、行政書士の側から見て一番読みにくいのは第一です。処理期間は制度と人員配置と申請件数で決まる部分が大きく、調査時間が縮んだからといって、そのまま処理期間の短縮につながるとは限りません。むしろ、削れた時間が精査に回れば、審査の目が細かくなる方向にも働き得ます。どちらに振れるかは、当面は案件ごとに見ていくしかありません。

読み違えを避けるために有効なのは、事務所として処理期間の実績を記録しておくことです。許認可の種類ごとに、受理から処分までの日数を案件単位で残しておけば、運用が変わったときに数字で気づけます。感覚で語ると、変わっていないのに変わったと思い込んだり、その逆が起きたりします。記録は、行政側の変化を検知するためのセンサーとして働きます。

申請書の記載を要件対応型に組み替える5ステップ

ここからは手順です。有資格者である行政書士が最終確認する工程を第4ステップに固定しています。

第1ステップは、扱う許認可の要件の分解です。根拠法令、審査基準、標準処理期間、添付書類の一覧を並べ、要件ごとに何を示せば充足を説明できるかを整理します。この作業は原典に当たる必要があるため、生成AIでは代替できません。

第2ステップは、既存の申請書の点検です。過去に作成した申請書を、第1ステップの要件一覧に照らして、どの記載がどの要件に対応しているかを対応表にします。ここで対応が付かない記載が見つかれば、それは削るか書き換える候補になります。

第3ステップは、生成AIによる対応表の下書き作成です。要件一覧と、匿名化した記載例を渡して、対応関係を整理させます。

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以下の「要件一覧」と「記載例(匿名化済み)」を突き合わせ、
(1)どの要件に対応しているか (2)対応が不明確な記載
(3)要件に対して記載が不足している箇所 の3つに整理してください。

制約:
- 法的な結論や充足の可否を判断しないこと。対応関係の整理だけを行うこと
- 条番号や審査基準の番号を推測で書かないこと。入力に無ければ「要確認」と書くこと
- 実在の個人名・法人名・住所を出力に含めないこと
- 各項目は2行以内

要件一覧:
{根拠法令と審査基準から人が抜き出した要件を貼り付け}

記載例(匿名化済み):
{申請書の記載を、固有名詞と数値を伏せた形で貼り付け}

第4ステップは、行政書士による確認です。第3ステップの出力に含まれる条番号と審査基準の記述を、e-Gov法令検索と所管庁の公表資料に当てて突き合わせます。生成AIは条番号を作文することがあり、改正で条ずれが起きている場合もあります。ここは省けません。

第5ステップは、書式への反映です。対応が不明確だった記載を、要件との対応が読み取れる表現に書き換えます。事務所の標準書式を持っている場合は、書式そのものを更新し、次の案件から適用します。

以下の「確認済みの改善点」だけを使って、申請書の該当箇所の文案を作ってください。

条件:
- 確認済みの改善点に無い事項を追加しない
- 断定的な法的評価を書かず、事実の記載に徹する
- 1項目あたり150字以内、記載の根拠となる要件を末尾に括弧書きで添える
- 固有名詞と具体的数値はプレースホルダのままにする

確認済みの改善点:
{第4ステップで行政書士が承認した項目のみを貼り付け}

2本のプロンプトに共通するのは、生成AIに要件の充足を判断させていない点です。対応関係の整理と文案の作成だけを任せ、判断は行政書士が行う構造にしてあります。

5つのステップのうち、生成AIが工数を削るのは第3ステップと第5ステップです。第1ステップの要件分解、第2ステップの点検、第4ステップの確認は人の作業として残ります。この内訳を先に把握しておくと、導入の期待値がずれません。要件分解を一度やってしまえば同じ許認可には繰り返し使えるため、初回の負荷は大きくても、扱う件数が多い業務ほど回収が早くなります。

進め方としては、扱う件数の多い許認可を1種類だけ選び、第5ステップまで通してみるのが実務的です。複数の許認可を並行して進めると、要件分解の途中で止まりやすくなります。1種類を通しきると、要件一覧と対応表という資産が残り、2種類目以降は同じ型を当てるだけになります。

守秘義務と、事務所側でAI基盤を作る場合の論点

行政書士については、行政書士法第12条が秘密を守る義務を定めています。依頼者の申請書や添付書類を外部のAIサービスへ入力する行為は、この条文の枠組みと、依頼者との契約上の取り決めの両面から検討する論点になります。前掲のプロンプトで固有名詞と数値を伏せるよう指定しているのは、この検討を先送りしたまま作業を進められるようにするためです。

事務所として決めておきたいのは3点です。第一に、入力してよい情報の粒度です。依頼者名、法人名、住所、在留カード番号、資本金額などを含む情報は入力しない、という基準まで下ろします。第二に、使うツールとプランの確認です。API経由の入力を既定でモデル学習に用いない旨はOpenAIのAPI Data Usage Policiesに、商用利用時の取扱いはAnthropicの商用利用規約に記載があります。第三に、記録の残し方です。誰がどの案件でどのツールを使ったかを追える形にしておかないと、後から検証できません。

ここで、源内のオープンソース公開が事務所にとって持つ意味に触れておきます。公開されたものには、行政実務用の検索拡張生成の開発テンプレートや、最新の法律条文データを参照して回答する法制度に関するAIアプリの再現可能な実装が含まれています(出典: デジタル庁)。事務所が自前で条文参照型のAIを組む場合、これらは参照実装として使える可能性があります。

ただし、実装を自前で持つ判断は慎重に行う必要があります。運用の主体になるということは、データの保管場所、アクセス権限、更新の責任をすべて自分たちで負うということです。小規模な事務所であれば、既存のサービスを守秘義務の観点から選定して使うほうが、総合的な負荷は小さくなります。デジタル庁の調達側の考え方はデジタル庁DS-920が2.0版へ 官公需支援で読む生成AI調達の7論点にまとめました。

つまずきやすい3つの落とし穴

1つ目は、源内が審査を自動化するものだと誤解して依頼者に説明してしまうことです。公表されている機能は職員の作業支援の方向であり、申請の可否を機械が決めるという説明は公表資料から読み取れません。回避策は、依頼者への説明では公表されている事実の範囲にとどめ、推測部分は推測として明示することです。

2つ目は、処理期間が短くなる前提でスケジュールを組んでしまうことです。導入の進み方は府省庁や自治体によって差が出ると見込まれ、当面はばらつきが残ります。回避策は、従来の標準処理期間を前提にスケジュールを組み、短縮は結果として受け取ることです。

3つ目は、オープンソースが公開されたからといって、中身のナレッジまで手に入ると考えてしまうことです。実際に参照している内部マニュアル類は公開対象外とされています。回避策は、公開されたのは器であって中身ではない、という理解を持つことです。法制事務への生成AI導入の動きはデジタル庁が法制事務に生成AI4ツール投入でも扱いました。

費用と工数、そして誰が持つか

事務所側の費用は、汎用の生成AIのライセンスと人件費が中心です。源内のオープンソースを自前で動かす場合はクラウドの利用料と構築の工数が加わりますが、小規模な事務所が最初に選ぶ道ではありません。

工数の重心は、第1ステップの要件分解と、第4ステップの行政書士による確認です。要件分解は許認可の種類ごとに一度やれば資産になるため、扱う件数の多い業務から着手すると回収が早くなります。第3ステップと第5ステップの下書きは生成AIで短縮できますが、要件を読む工数と確認工数は削れません。

体制としては、要件分解を担当するベテラン、入力の抽象化と下書き作成を担当するスタッフ、最終確認を行う行政書士の3役を分けておくと、記録を追える形になります。報酬設計への影響としては、書類作成そのものの単価より、要件の設計と説明の部分に価値が寄っていく方向が見込まれます。料金設計の見直しについては在留手数料が永住20万円へ 行政書士が2026年10月に備える7つの料金設計も参考になります。

自治体への波及が本番になる

中央省庁での展開は、行政書士の日常業務からすると少し遠い場所の話です。実務に効いてくるのは、自治体窓口に同種の仕組みが入ったときです。オープンソース公開の目的に、地方公共団体における重複開発の防止と、調達仕様書での参照が挙げられている以上、この流れは進むと見るのが自然です。

そのとき論点になりそうなのは、自治体ごとの運用差です。同じ器を使っても、参照させるナレッジは各自治体が用意するため、回答の質は自治体によって変わります。窓口相談で得られる回答の精度に差が出れば、行政書士が事前に論点を整理して持ち込む価値は、むしろ上がります。

もうひとつは、行政側の判断根拠の可視性です。職員がAIの支援を受けて調査した結果が、審査の過程にどう位置づけられるかは、公表資料からは読み取れません。将来的に、審査の理由提示との関係が論点になる可能性があります。理由の提示については行政手続法第8条に規定があり、AIの関与がこの枠組みにどう反映されるかは、今後の実務で整理が進む部分です。

よくある質問

源内が導入されると申請の審査は自動化されますか

公表資料からは、そのようには読み取れません。デジタル庁が示している機能は、汎用の対話や要約に加えて、法制度に関する調査支援や過去の国会答弁の検索といった職員の作業を支援するものです(出典: デジタル庁 ガバメントAI)。審査の判断そのものを代替する仕組みとしては説明されていません。

いつから全府省庁で使えるようになりますか

デジタル庁は、2026年度中に全府省庁約18万人の政府職員が生成AIを利用可能とする予定を示しています(出典: デジタル庁)。実際の展開時期や、どの業務で使われるかは府省庁によって差が出る可能性があります。

自治体の窓口にも同じ仕組みが入りますか

オープンソース公開の目的として、地方公共団体や政府機関における類似のAI基盤の重複開発を防ぐことが挙げられています(出典: デジタル庁)。導入するかどうかは各自治体の判断であり、時期や範囲は現時点では確定していません。

事務所で源内のオープンソースを使えますか

商用利用可能なライセンスで公開されているため、技術的には利用できます。ただし、運用の主体になるとデータの保管場所やアクセス権限、更新の責任をすべて自分たちで負うことになります。小規模な事務所では、既存のサービスを選定して使うほうが総合的な負荷は小さくなる場面が多くなります。

依頼者の申請書を生成AIに入力してよいですか

事務所として先に線を引く問題です。行政書士法第12条の秘密を守る義務と、依頼者との契約上の取り決めの両面から検討する論点になります。実務上は、固有名詞と具体的数値を伏せた形にしてから入力する運用から始めると、検討が単純になります。

申請書の書き方を変える必要はありますか

要件との対応関係が読み取りやすい記載にしておくことは、AIの有無にかかわらず有効です。審査基準は行政手続法第5条に基づいて定められ公にされるものですから、それに沿った構成にすることは従来から筋の通った作り方です。AIの導入は、その重要度を押し上げる方向に働くと見込まれます。

情報を追いかけるには何を見ればよいですか

デジタル庁のガバメントAIの政策ページと、デジタル庁の公式noteが入口になります。技術面の記事は今後も追加される予定が示されているため、事務所内で確認担当を決めて定期的に見る運用にしておくと、取りこぼしが減ります。

参考文献

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本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

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