次期オンライン申請サービス9月本格運用へ|士業の代行業務が変わる3点

デジタル庁が2026年8月17日、次期オンライン申請サービスの先行実証対象を更新。参加6自治体と対象9手続、9月以降の本格運用が士業の申請代行業務に与える3つの論点を整理します。

アナログ規制8,162件の99%が完了|士業の手続が変わる3論点

デジタル庁が次期オンライン申請サービスの先行実証対象を更新しました。

デジタル庁は2026年8月17日、行政手続のオンライン化のページを更新し、次期オンライン申請サービスの先行実証に参加する自治体と対象手続の一覧を、2026年7月31日時点の内容に差し替えました。次期オンライン申請サービスはマイナポータルの電子申請機能を刷新するもので、公表されているスケジュールでは2026年9月以降に本格運用が始まる予定です。申請書類の作成と提出を日常業務にしている行政書士・社会保険労務士・司法書士の事務所にとって、無視しづらい時期に入ってきました。本記事は公表資料に書かれている事実の整理にとどめ、個別の事案への当てはめや可否の判断には踏み込みません。

次期オンライン申請サービスの画面イメージ。申請状況の画面に公文書ダウンロードのボタンが配置されている

デジタル庁が更新した先行実証の中身

今回更新されたのは、実証に参加している自治体と、そこで受け付けている手続の一覧です。デジタル庁の公表資料によると、先行実証に参加しているのは横須賀市、裾野市、熊本市、菊池市、日出町、都城市の6自治体です。対象手続は出生連絡票、上下水道の使用開始の届出、出産育児一時金申請、重度心身障がい者医療費受給資格認定申請、出生届、児童手当の受給資格および児童手当の額についての認定請求、乳幼児医療費(子ども医療費)の助成、国民健康保険の加入届、国民健康保険の脱退届の9種類が並びます。

開始時期は手続によって分かれています。出生連絡票と上下水道の使用開始の届出が2025年4月、出産育児一時金申請と重度心身障がい者医療費受給資格認定申請が2025年6月、残る出生届・児童手当の認定請求・乳幼児医療費の助成・国民健康保険の加入届と脱退届が2026年4月からとなっており、この1年あまりで対象が段階的に広がってきたことが読み取れます。

この実証事業の位置づけは、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2025年6月13日閣議決定)に基づく自治体手続のオンライン化推進の一環です。デジタル庁は同ページで、次期オンライン申請サービスで実現したいこととして、住所や氏名や家族の情報を一度登録すれば申請のたびに入力し直さなくてよいこと、自治体等が保有する情報を申請フォームに転記して住民の入力負担と行政職員の審査負担を減らすこと、申請内容の補正連絡や通知書のオンライン送付によって手続のオンライン完結を目指すことの3点を挙げています。

士業事務所にとっての論点

ここで押さえておきたいのは、次期オンライン申請サービスが狙っているのが「書式の電子化」ではなく「入力そのものの削減」だという点です。従来のオンライン申請は、紙の様式を画面に置き換えたものが多く、入力の手間は申請者側に残っていました。自治体が保有する情報をフォームに転記する仕組みが動けば、そこが構造的に軽くなります。

この変化は、申請書の作成代行を収益の柱にしてきた事務所の単価構造に影響しうる論点です。入力の手間が減るほど、代行の対価として説明できる部分は「入力を肩代わりすること」から「どの制度を使うかの設計」「添付書類の要否と整合性の点検」「不備補正への対応」といった判断寄りの領域へ寄っていきます。実際、報酬体系を作業時間ベースから相談・設計ベースへ組み替える検討を始めている事務所もあります。

もっとも、今回対象になっている9手続は出生・児童手当・国民健康保険・医療費助成といった住民向けの手続が中心で、士業が業として受任する場面が多い許認可申請や社会保険の事業所手続とは範囲が異なります。現時点で直接業務が置き換わるという話ではなく、行政側の申請基盤がどの方向へ動いているかを示すシグナルとして読むのが実態に近いところです。関連する動きは許認可申請のAI効率化や行政書士のAI活用事例でも整理しています。

なお、マイナンバーカードの保有状況について、デジタル庁は行政手続のオンライン化のページで2025年12月末時点で国民の約8割が保有していると記載しています。オンライン申請の前提となる本人確認手段の普及が、実証から本格運用へ進む後押しになっている面はありそうです。

本格運用前の初動と、AIをどこに置くか

本格運用が2026年9月以降とされている以上、事務所側で今できることは限られますが、公表資料から読み取れる範囲で整理すると次のようになります。

第一に、自分の事務所が扱う手続が次期オンライン申請サービスの射程に入るかどうかを、デジタル庁が公表しているオンライン化を実施する行政手続の一覧で確認する段階です。同資料には地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき56手続が示されています。第二に、顧客の居住自治体や事業所所在地の自治体が実証に参加しているかを見ておくと、問い合わせを受けたときの初動が変わります。第三に、報酬表の中で「入力作業」と「判断・点検」がどう混ざっているかを棚卸ししておくと、単価構造の見直しが必要になったときに動きやすくなります。

AIの置き場所についても触れておきます。入力が自動化される領域とAIが得意な領域は、実はあまり重なりません。フォームへの転記は行政側の仕組みが担うようになる一方、要件の抜け漏れ点検、過去案件との突き合わせ、顧客への説明文の下書きといった作業は事務所側に残り、そこは生成AIの支援と相性が良い部分です。ただし顧客の氏名・住所・所得情報などをそのまま外部サービスへ入力する運用は守秘義務との関係で論点が生じるため、事務所としての取り扱い基準を先に決めてから使い始めている事務所が多いようです。この点は士業とAI利用規程のテンプレートで詳しく扱っています。

まとめ

デジタル庁は2026年8月17日、次期オンライン申請サービスの先行実証について、参加6自治体と対象9手続の一覧を2026年7月31日時点の内容へ更新しました(出典: デジタル庁 行政手続のオンライン化)。本格運用は2026年9月以降とされています。狙いは様式の電子化ではなく入力そのものの削減であり、申請代行の価値がどこに残るかを考え直す材料になります。

参考文献

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引用元: デジタル庁

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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