GPT-6.1 Solとは、Astraに迫る性能を低コストで狙うOpenAIのモデルのことです。
新しいモデルが出るたびに、事務所の業務プロンプトをそのまま載せ替えてよいのか。この問いに手順で答えられる事務所はまだ多くありません。本記事では、GPT-6.1 Solを本番業務の標準モデルにする前に、過去のプロンプトと出力を使って新旧の差を確かめる回帰テストの7手順を整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、ベンダーの仕様は各社の公式ドキュメントで確認しています。OpenAIの公式モデルページは、GPT-6.1 SolのAPI料金を入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルとしています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。
GPT-6.1 Solの公表内容と2026年のモデル更新サイクル
GPT-6.1 Solは、複雑な業務や専門的な作業を、上位モデルより低いコストで処理することを狙ったモデルです。OpenAIのモデルページは、このモデルを複雑なコーディング、コンピュータ操作、専門業務に向くモデルとして位置づけています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。
公開時期は2026年9月です。報道によると、OpenAIのリリースノートは2026年9月29日付で、ChatGPTのWorkとCodexではProユーザーから提供を始め、Plus、Business、Enterprise、Eduへ広げるとされています(出典: The Decoder系メディアMixedの報道)。同じ報道は、APIではResponses、Chat Completions、Batchの各エンドポイントに対応すると伝えています。
仕様面では、コンテキストウィンドウが1,050,000トークン、最大出力が128,000トークンです(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。知識のカットオフは2026年4月30日とされています(出典: 同モデルページ)。士業の業務では、この日付が重要です。カットオフ以降の法改正や通達は、モデル単体では把握していない前提で使う必要があるからです。
価格面では、入力272Kトークンを超える長いプロンプトに別の料金体系が設けられています。モデルページによると、272Kトークンを超える場合はリクエスト全体の入力とキャッシュの料金が2倍、出力が1.5倍になります(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。大量の判例や帳簿を一度に読ませる使い方では、この境目を意識した設計が論点になります。
なお、同じモデルページは、CodexとChatGPT Workでの既定のコンテキストを500Kトークンとし、サブスクリプション利用には長文の追加料金がかからないと説明しています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。画面で使うかAPIで使うかによって、費用の考え方と扱える資料の量が変わる点は、切替の検討で押さえておきたい違いです。
上位モデルとの関係では、報道はGPT-6 Astraの料金を入力100万トークンあたり10ドル、出力50ドルと伝えています(出典: Mixedの報道)。同報道によれば、OpenAIは自社の事実性テストで、事実誤りを含む回答の割合がGPT-6 Solの11.4%から7.7%に下がったとしています。ただし、意図的に難しい設問を使ったテストで、独立した検証かどうかは明らかにされていません(出典: 同報道)。ベンダーの自己評価は、事務所の業務での精度を直接示すものではありません。
2026年は、主要ベンダーが数か月単位で新モデルを出し、旧モデルの提供終了を告知する年になりました。事務所が依存するモデルを洗い出す方法はGPT-5.5提供終了に備えた依存モデル洗い出しの記事で整理しています。モデル更新が続く以上、切替のたびに使える検証の型を事務所で持っておくことが、今回の論点の中心です。
過去プロンプトで回すGPT-6.1 Sol回帰テストの7手順
回帰テストとは、モデルを替えたときに、以前うまくいっていた処理が崩れていないかを確かめる作業です。士業事務所の場合、新しいモデルの得意分野を探すより、既存業務の品質が落ちないことを先に確かめるほうが実務に合います。ここでは、弁護士事務所と税理士事務所を想定した7手順を示します。
手順1 モデルに依存している業務を棚卸しする
最初に、どの業務がどのモデルで動いているかを一覧にします。ChatGPTの画面で職員が使っている業務と、APIで自動化している業務は分けて書きます。入力は職員への聞き取りと、APIの利用ログです。出力は業務名、使っているモデル、利用者、頻度、出力の使い道の一覧です。出力が顧問先や裁判所、税務署に直接届く業務ほど、検証の優先度を上げます。
手順2 過去の実案件から検証セットをつくる
次に、過去にうまくいった入力と出力の組を、業務ごとに集めます。これが検証セットです。顧問先名や個人名は、甲、乙、A社などに置き換えてから保存します。件数は業務の種類ごとに少数から始め、運用しながら足していきます。検証セットの作り方の詳細は実案件から検証セットを作る7手順で解説しています。
弁護士事務所なら、秘密保持契約のレビュー、内容証明の下書き、判例要旨の整理などが候補になります。税理士事務所なら、顧問先向けの税制改正案内、月次の質問への回答下書き、決算前の確認事項リストなどが候補です。いずれも、過去に有資格者が手を入れて完成させた最終版を、正解例として一緒に保存しておくと評価が楽になります。AIの出力と最終版を並べれば、どこを人が直したかが見え、評価観点の手がかりにもなります。
検証セットには、うまくいった事例だけでなく、過去にAIが誤った事例も含めます。存在しない条番号を出した事例や、適用時期を取り違えた事例は、新しいモデルでも同じ誤りが出ないかを見る良い材料です。
手順3 業務ごとの評価観点を決める
評価観点は、業務ごとに3から5つに絞ります。共通して入れたいのは、条番号や日付、金額などの事実の正確性、指示した形式の遵守、断定の強さの3つです。弁護士事務所の契約書レビューなら、指摘漏れと過剰な指摘の両方を見ます。税理士事務所の顧問先向け案内文なら、税制の適用時期と対象者の書き方を重点的に見ます。
手順4 新旧モデルに同じ入力を流す
同じ検証セットを、現行モデルとGPT-6.1 Solの両方に流します。比較を公平にするため、システムプロンプトと推論の強さの設定はそろえます。モデルページによると、GPT-6.1 Solは推論の強さをlowからmaxまでの段階で指定でき、既定はmediumです(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。既定値のまま比べるのか、業務に合わせて変えるのかも記録に残します。
手順5 新旧の出力の差分を抽出する
出力の差分は、AIに一次整理させると作業が速くなります。ただし、差分の要約は判定ではありません。どちらが正しいかの判断は、次の手順で人が行います。
あなたは士業事務所でAIモデルの切替を検証する担当者です。
以下は同じ入力に対する、旧モデルの出力(出力A)と新モデルの出力(出力B)です。
次の観点で差分だけを箇条書きで整理してください。
1. 法令名・条番号・日付・金額の記載の違い
2. 出力Aにあって出力Bにない指摘、またはその逆
3. 断定の強さの違い(言い切り表現の有無)
4. 指示した形式(見出し・文字数・箇条書き)からの逸脱
どちらが正しいかは判断しないでください。
原典との照合が必要な箇所には「要照合」と付けてください。
【入力】(匿名化済み)
【出力A】
【出力B】
手順6 有資格者が合否を判定する
差分の一覧をもとに、有資格者が業務ごとに合否を判定します。判定の基準は、現行モデルと同等以上かどうかです。事実の誤りが一つでも新たに出た業務は、プロンプトの調整か、切替の見送りを検討します。この工程を職員だけで完結させず、出力に責任を持つ有資格者が最終判断を行う構図を手順書に明記しておきます。
判定の記録には、次のようなプロンプトで評価表の下書きをつくる方法があります。
以下の差分一覧をもとに、業務ごとのモデル切替判定表の下書きを作ってください。
表ではなく、業務ごとに次の項目を箇条書きで出力してください。
- 業務名
- 検証件数
- 新たに生じた事実誤りの件数(差分一覧から数えられる範囲)
- 形式逸脱の有無
- 判定欄(空欄のまま残す。判定は有資格者が記入する)
- 判定者欄(空欄のまま残す)
判定欄と判定者欄は必ず空欄で出力してください。
【差分一覧】
手順7 段階的に切り替え、戻し方を決めておく
合格した業務から順に切り替えます。全業務を一度に替えると、問題が出たときに原因の切り分けが難しくなります。APIで使っている場合は、モデル名を設定ファイルで管理し、旧モデルにすぐ戻せる状態にしておきます。切替日、対象業務、判定者、戻した場合の理由を記録し、次のモデル更新時の検証セットに反映します。
顧問先情報を検証に使う前の守秘義務と規程の論点
回帰テストでは、過去の実案件を検証セットに使います。ここが守秘義務との接点です。過去の入力と出力には、顧問先の秘密が含まれている可能性が高いためです。
各士業法は守秘に関する規定を置いています。弁護士法第23条は秘密保持の権利及び義務を定め、税理士法第38条は秘密を守る義務を定めています。検証のために過去案件を外部のAPIへ送ることが、これらの規定との関係でどう評価されるかは、各事務所が所属会の見解も踏まえて判断する論点です。
API側のデータ取扱いは、OpenAIの公式ガイドで確認できます。ガイドによると、APIに送られたデータは、明示的にオプトインしない限り、2023年3月1日以降はモデルの学習や改善に使われない扱いです(出典: OpenAI Your data ガイド)。一方で、不正利用監視のログは最大30日保持されると説明されています(出典: 同ガイド)。学習に使われないことと、一定期間保持されることは別の論点として整理しておきます。
保持を避けたい場合の選択肢として、ガイドはZero Data RetentionとModified Abuse Monitoringを挙げています。いずれも事前の承認が要り、対象になるかは営業窓口への問い合わせで確認する仕組みです(出典: OpenAI Your data ガイド)。データの保存地域については、日本を含む地域でのデータ保存が選べる一方、推論処理を地域内で行う選択肢は米国、欧州、UAEに限られると説明されています(出典: 同ガイド)。日本国内での処理を顧問先に説明している事務所は、この違いを確認する段階が要ります。
ChatGPTの画面で使う場合は、APIとは別に、契約プランごとの設定を確認します。個人向けプランを職員が業務で使っていると、事務所として管理できない経路が生まれます。プラン別の設定確認は生成AIに依頼者情報を入れる前の5点チェックを参照してください。
匿名化は、固有名詞の置換だけでは足りない場合があります。事件の経緯や取引の金額、所在地の組み合わせから、当事者が推測できることがあるためです。検証に必要なのは文書の構造と論点であって、当事者を特定できる情報ではありません。金額は桁をそろえた架空の数値に、日付は相対的な表現に置き換えるなど、事務所で置換のルールを決めておくと作業が安定します。
事務所規程に落とす場合、次のような条項を置く事務所があります。検証セットは匿名化した状態でのみ保存すること、検証に使うAPIキーは本番と分けること、検証結果の記録の保存期間、モデル切替の判定者を有資格者とすること、の4点です。顧問先への説明では、モデルの切替そのものより、切替前に品質を確かめる工程があることを伝えるほうが安心材料になります。
GPT-6.1 Sol切替でよくある失敗と回避策
1つ目の失敗は、ベンダーの評価結果を見て検証を省くケースです。ベンチマークの数値は、ベンダーが選んだ設問での結果です。事務所の契約書や申告関連の文書で同じ傾向が出るとは限りません。回避策は、少数でも自分の業務の検証セットで確かめることです。
2つ目は、出力が良くなったように見えて、断定が強くなっていたケースです。新しいモデルは文章が滑らかになり、読みやすさが上がることがあります。その一方で、条件付きで書くべき箇所を言い切る出力が混ざると、顧問先向けの文書では誤解のもとになります。手順3で断定の強さを評価観点に入れておくと、この変化を拾えます。
3つ目は、長い資料をまとめて読ませた結果、想定外の費用が出るケースです。272Kトークンを超えるとリクエスト全体の単価が上がる体系のため、大量の資料を一度に入れる設計は費用が跳ねやすくなります。回避策は、資料を分割して要約を重ねる設計にするか、事前に入力トークン数を見積もる工程を入れることです。
4つ目は、知識のカットオフを意識せずに最新制度の質問をするケースです。モデル単体の知識は2026年4月30日時点までとされています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。それ以降の改正は、検索機能や事務所の資料を参照させる設計にし、原典との照合を手順に残します。照合の手順は生成AIの条番号と施行日を疑うダブルチェック7工程で整理しています。
回帰テストの費用・工数・体制
API料金は、検証セットの規模であれば大きな負担になりにくい水準です。GPT-6.1 Solの料金は入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドルで、BatchやFlexは標準より50%低い料金とされています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。検証は急ぎの処理ではないため、Batchの利用も選択肢になります。
逆に、速度を優先する設定は料金が上がります。モデルページは、Fastモードを標準の2倍、Ultrafastを6倍の料金とし、地域内処理を使う場合は10%の上乗せがあると説明しています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。本番の業務でどの設定を使うかも、検証の段階で決めておくと、切替後の費用の見通しが立てやすくなります。
費用の中心は、人の時間です。検証セットの準備、差分の確認、有資格者の判定が主な作業になります。初回は検証セットづくりに時間がかかりますが、2回目以降のモデル更新では同じセットを再利用できます。最初の切替で型をつくることが、次の更新の工数を下げます。
体制は、事務局の担当者が手順1から5を回し、有資格者が手順6を担う分担が組みやすい形です。APIで業務を自動化している事務所では、設定ファイルの管理者を一人決めておくと、手順7の戻しが速くなります。外部のITベンダーに任せる場合でも、判定欄を有資格者が埋める工程は事務所側に残します。
モデル更新が続く時代の事務所の論点
今後の論点は、モデルを選ぶ力より、モデルを替える仕組みのほうに移っていきます。主要ベンダーの更新間隔が短くなるほど、毎回ゼロから検討する方式では追いつきません。検証セット、評価観点、判定記録の3点がそろっている事務所は、新モデルの公表から短い期間で切替判断に進めます。
もう1つの論点は、ChatGPTの画面とAPIで提供時期や設定が異なる点です。報道によると、GPT-6.1 SolはChatGPTのWorkとCodexで先に提供され、Chatへの提供は後になるとされています(出典: Mixedの報道)。職員が使う画面と、事務所が自動化に使うAPIで、使えるモデルがずれる期間が生じます。どちらの経路で何を使っているかを記録しておくことが、顧問先への説明の土台になります。
3つ目の論点は、ベンダーをまたいだ比較です。回帰テストの型は、OpenAIのモデルに限らず、ClaudeやGeminiへの切替検討にもそのまま使えます。同じ検証セットで複数のベンダーのモデルを比べられるようにしておくと、価格改定や提供終了の告知があったときに、乗り換え先の判断を短い期間で済ませられます。特定のベンダーに依存しすぎない体制づくりという意味でも、検証セットは事務所の資産になります。
よくある質問
GPT-6.1 Solに切り替えれば精度は上がりますか
業務によって異なるため、自分の事務所の検証セットで確かめる必要があります。OpenAIは自社テストで事実誤りの割合が下がったと説明していますが、意図的に難しい設問を使ったテストです。契約書や申告関連の文書での精度は、事務所の検証で判断します。
検証セットは何件くらい用意すればよいですか
業務の種類ごとに少数から始め、運用しながら足していく方法が現実的です。最初から網羅を目指すと準備だけで止まります。過去に誤りが出た事例や、判断が分かれやすい事例を優先して入れると、少ない件数でも差が見えやすくなります。
APIに送った検証データは学習に使われますか
OpenAIの公式ガイドでは、明示的なオプトインがない限り学習には使われない扱いとされています。ただし、不正利用監視のログは最大30日保持されると説明されています。保持も避けたい場合は、Zero Data Retentionなどの選択肢について、承認の可否を確認する段階になります。
ChatGPTの画面で使う場合も回帰テストは要りますか
画面で使う業務でも、定型化しているものは検証の対象にする価値があります。案内文や議事録要約のように同じ型を繰り返す業務は、モデルが替わると出力の形が変わりやすいからです。過去の入力と出力を保存しておけば、画面利用でも同じ手順で比較できます。
長い資料を読ませるときの注意点は何ですか
入力が272Kトークンを超えると、リクエスト全体の単価が上がる点に注意が要ります。モデルページでは入力とキャッシュが2倍、出力が1.5倍とされています(出典: OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ)。資料を分割して処理する設計にするか、事前にトークン数を見積もる工程を入れると費用を管理しやすくなります。
推論の強さはどの設定で比べればよいですか
まずは現行の運用に近い設定で比べ、そのうえで業務ごとに調整するのが扱いやすい順序です。GPT-6.1 Solは推論の強さをlowからmaxまで選べ、既定はmediumとされています。推論を強めると精度が上がる場合がある一方、処理時間と費用も増えるため、業務ごとに必要な水準を検証で見極めます。
検証で不合格になった業務はどうすればよいですか
現行モデルのまま運用を続け、プロンプトの調整を試すのが一般的な流れです。旧モデルの提供終了が告知されている場合は、別のモデルを候補に加えて同じ検証を回します。判定の記録を残しておけば、次の候補でも比較の基準として使えます。
参考文献
- OpenAI GPT-6.1 Sol モデルページ
- OpenAI Your data ガイド
- OpenAI API Pricing
- Mixed GPT-6.1 Solの料金と性能に関する報道
- e-Gov法令検索 弁護士法
- e-Gov法令検索 税理士法
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本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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