Bank of Americaは、ネット銀行のログイン情報をAIエージェントへ渡さないよう顧客に求めました。
米大手銀行のBank of Americaが、顧客向けの一斉メールで、銀行のユーザー名とパスワードを「代理で操作するAI対応ツールやエージェント」を含む第三者と共有しないよう求めたことが、TechCrunchの2026年10月27日付の報道で明らかになりました。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている報道と関連資料のみを根拠にまとめています。米国の銀行の話ですが、事務所の業務でAIに認証情報を渡してよいのかという論点は、日本の士業事務所にも共通して関わってきます。
何が起きたのか、報道の事実関係
TechCrunchによると、Bank of Americaは「Protecting your finances in the AI World」という件名の顧客向けメールで、ユーザー名とパスワードを他者や外部サービスと共有しないよう呼びかけました。対象として、本人に代わって行動すると申し出るAI対応のツールやエージェントも明記されていると報じられています。メールには、認証情報を共有した場合、そのアクセスから生じた行為については本人が責任を負うことを念頭に置くよう求める趣旨の一文もあります。
同記事は、銀行側が懸念するリスクとして三つを挙げています。一つ目は、AIアシスタントが顧客の知らないうちに口座で操作を行う可能性です。二つ目は、銀行が不正アクセスと判断して、正規の顧客をアカウントから締め出す可能性です。三つ目は、AIアシスタントのセキュリティ上の欠陥によって認証情報が外部に漏れ、金銭目的の攻撃者に口座へ侵入される可能性です。
また記事は、ほとんどの銀行の口座規約では、ログイン情報を渡した相手の行動について顧客が責任を負う構成になっていると指摘しています。Bank of Americaは取材に対し、記事公開時点では回答していないとされています。メール全文は本稿の執筆時点で原典が確認できていないため、細かな文言は要確認です。
銀行業界で広がるAIエージェントへの警戒
この注意喚起は単発ではありません。Techliciousは2026年9月22日付の記事で、Bank of Americaが他の5行(Capital One、NatWest Group、ING Group、ASB Bank、Commonwealth Bank of Australia)とともに、AIエージェント向けの安全原則を公表したと伝えています。ここでいうAIエージェントとは、商品の検索や価格比較、代理購入までを自動で行うプログラムのことです。
同記事によると、銀行側は、利用者がAIに与える権限が大きいほど、なりすましや乗っ取りが起きたときの被害も大きくなると警告しています。さらに、どのエージェントが購入したのか、利用者が何を依頼したのか、注文が本人の意図と一致するのかを銀行が把握しにくく、不正の早期発見や返金対応が難しくなるとも述べています。
同じ記事が紹介するVisa依頼のHarris Poll調査(5月実施)では、消費者の72%がAIアシスタントを使ったことがある一方、AIに単独で支払い管理を任せてよいと答えたのは23%でした。便利さへの期待と、お金を任せることへの不安の差が、数字で見えている状況です。
士業事務所にとっての論点
ここから先は報道を踏まえた編集部の整理で、規範や法解釈を示すものではありません。士業事務所は、顧問先の銀行口座や会計ソフト、電子申告システム、登記・申請のオンライン手続きなど、多くの認証情報に日常的に触れます。そこにブラウザを自動操作するAIエージェントを導入しようとすると、今回の銀行が懸念した状況が事務所内でも起こりえます。
たとえば、AIエージェントにログインを任せるためにID・パスワードを入力したり、パスワードマネージャーを連携したりすると、認証情報がAIサービス側に渡ります。その扱いはサービスごとに異なり、入力した情報が学習に使われるのか、どの範囲で保存されるのかは、各ベンダーの公式ポリシーで確認する必要があります。今回の報道からは、特定のAIサービスがどう扱うのかは確認できません。
個人情報保護委員会は2023年6月に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。ScanNetSecurityの報道によると、事業者に対しては、個人情報を入力する際に利用目的の範囲内かを確認することや、提供事業者が入力データを機械学習に使わないかを確認することが示されたとされています。原典は個人情報保護委員会の公表ページで確認できます。認証情報そのものは個人情報とは別の論点ですが、AIへ何を入力するかを事前に整理するという考え方は共通します。
士業の場合は、さらに各職種の守秘義務が重なります。顧問先の口座にAIが入れる状態は、顧問先の情報へ第三者の仕組みが触れる状態でもあります。どの業務ならAIに任せ、どこからは人が操作するのかを、事務所ごとに線引きしておく段階だと言えます。
今後の展望と、現時点で確認したい点
銀行側のルールづくりはこれから進む見通しです。TechCrunchは、銀行や決済事業者がAIツールによる口座アクセスをどう許可するかを、まだ検討している段階だと伝えています。権限を限定して発行する仕組みが整えば、パスワードを渡さずにAIへ作業を委ねられる可能性があります。ただし現時点では、その仕組みが日本の金融機関でどう提供されるかは公表資料から確認できません。
現時点で、事務所の側で確認する対象としては、次のようなものがあります。
- 事務所で使っているAIツールが、ブラウザ操作や外部サービスへのログインを代行する機能を持っているかどうか
- 顧問先の金融機関や会計ソフトの利用規約に、第三者ツールへの認証情報の提供に関する定めがあるかどうか
- 認証情報を入力しなくても済むよう、閲覧専用の権限や連携機能など、権限を限定できる方法があるかどうか
こうした確認を済ませてからAIエージェントを試す事務所がある、というのが現状の整理です。
まとめ
Bank of Americaは、ネット銀行のログイン情報をAIエージェントに渡さないよう顧客へ求め、共有した場合の責任は本人にあるという趣旨も伝えたと報じられています。米国の事例ですが、認証情報を扱う機会の多い士業事務所にとっても、AIに任せる範囲を見直す材料になる話題です。日本国内の金融機関の対応や公式の指針は、確認できた時点で改めてお伝えします。
参考文献
- TechCrunch Bank of America kindly asks that you don’t share your banking password with your AI assistant
- Techlicious Bank of America warns AI shopping bots fraud
- 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について
- ScanNetSecurity 生成AIサービスの利用に関し個人情報保護委員会が注意喚起
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引用元: TechCrunch
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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