厚生労働省は、組織再編に伴う労働関係の調整を扱う部会の第8回議事録を公表しました。
厚生労働省は、労働政策審議会労働条件分科会の「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」第8回(2026年9月14日開催)の議事録を厚生労働省のサイトで公表しました。M&A調査会社へのヒアリングと、ドイツ・フランス・イギリスなど諸外国の労働法制の紹介が中心です。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しており、議事録に書かれていない評価や当てはめは加えていません。
何が公表されたか:部会の開催概要と議題
公表された議事録によると、部会は2026年9月14日10時から12時まで、厚生労働省の会議室で開かれました。担当は労働基準局労働関係法課で、議題は「M&A調査会社からのヒアリング」と「組織再編に関する諸外国の労働法制について」の2点です。公益代表、労働者代表、使用者代表の各委員が出席し、参考人として株式会社レコフデータの代表取締役社長らが出席しています。
部会そのものの位置づけは、厚生労働省の審議会ページから確認できます。議事録の時点では、結論や制度改正の方向性が示されたわけではなく、実態把握と海外制度の整理の段階にあります。
ヒアリングで示されたM&Aの規模と形態
レコフデータの説明として、議事録には次の数値が記載されています(出典はいずれも議事録)。2025年のM&A件数は5,115件で、そのうちグループ内再編は1,336件でした。M&A金額は37兆9,082億円で、過去最高とされています。形態別では、買収と事業譲渡の合計が2,875件で、全体の56.2%を占めました。
会社分割の利用については、M&A全体の約3%にあたる161件、グループ内再編の約23%にあたる308件と説明されています。事業承継M&Aは1,000件超、投資ファンドによる日本企業への投資は1,100件超、破綻関連のM&Aは年20件前後、ESGなどを目的としたM&Aは年350件から400件とも紹介されました。
傾向としては、事業譲渡では未上場企業の割合が上場企業を上回り、グループ内再編では上場企業の割合が高いとされています。見通しについては、大きな外的ショックがなければM&A市場は増加傾向が続くという認識が示され、中小企業の事業承継M&Aは今後5年程度拡大するとの見方も出ました。一方で、未上場企業のM&Aは公表義務がなく、把握が難しいという説明も議事録に残っています。
諸外国の労働法制:事務局が整理した論点
事務局は、労働政策研究・研修機構(JILPT)による「企業組織再編に関する労働法制 ドイツ、フランス、イギリス」の調査を紹介しました。報告書は取りまとめ中と記載されています。対象国の根拠として、EUの事業移転指令(1977年)、ドイツ民法典、フランス労働法典、イギリスのTUPE(1981年制定、2006年に全面改正、2014年と2024年にも改正)が挙げられました。個別の条番号は議事録の紹介にとどめ、本記事では扱いません。
整理された主な論点は、事業移転時の労働契約の自動承継、労働者による承継拒否、労働条件の変更、労働者代表への情報提供と協議、労働協約の承継、事業移転を理由とする解雇の扱いです。イギリスについては、2025年雇用権法が2026年10月に施行予定で、「解雇と再雇用」による条件変更を制約する規定を設けると説明されています。
アメリカについては、池田委員から、契約自由の原則に基づく随意的雇用が労働契約の大原則であるという説明がありました。使用者は理由を問わず解約でき、条件変更に応じない労働者を解雇して新しい条件で別の人を雇う形で変更が実現しうる、という内容です。なお、公開されている議事録の本文はこの箇所で途切れています(要確認)。
士業事務所にとっての論点
この議論は、M&Aや会社分割、事業譲渡に関わる社会保険労務士、弁護士、司法書士、税理士、中小企業診断士の業務と接点があります。事業承継M&Aが中小企業で広がるという見方が示されているため、承継時の労働契約や労働条件の扱いが、今後の議論の対象になることが想定されます。
現時点では、議事録に制度の方向性は示されていません。事務所としては、部会の次回以降の資料や、JILPTの報告書の公表を確認する段階です。生成AIで議事録や海外資料を要約する場合は、顧客の案件情報を入力しない運用や、原典の公表資料で数値を照合する運用を採る事務所があります。
今後の展望と確認ポイント
- 部会のページで、次回以降の開催案内と資料が公表されるかを確認する段階です
- JILPTの報告書が取りまとめられたあとの公表内容を確認するという対応があります
- 事務所の取扱案件のうち、会社分割や事業譲渡が絡むものの件数や傾向を把握しておくという考え方があります
- イギリスの2025年雇用権法の施行状況は、議事録では予定として紹介されているため、施行の有無は要確認です
まとめ
厚生労働省は、組織再編に伴う労働関係の調整を扱う部会の第8回議事録を公表しました。2025年のM&A件数5,115件という実態と、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカの制度の整理が示されています。制度改正の方向性は未提示で、今後の資料公表が確認のポイントです。
参考文献
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引用元: 厚生労働省
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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