案件情報APIとは、LegalOnの案件情報を自社システムと連携させる接続口のことです。
依頼企業の法務部門が、案件の受付から進捗共有までを自社システムとつなぐ動きが出てきたとき、法律事務所は何を確認しておけばよいか。株式会社LegalOn Technologiesは2026年10月1日に、LegalOnのマターマネジメントの案件情報を自社システムと連携できるAPIの公開を発表しました(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。この記事では、公表された範囲を整理したうえで、法律事務所の側が依頼企業との連携を受け入れる前に確認する7項目をまとめます。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。発表の本文は企業の法務部門による利用を前提にした書き方であり、法律事務所向けの提供条件は記載が見当たらないため、その点は要確認として扱います。
案件情報APIについて公表された範囲と、API連携の第三弾という位置付け
公表されている事実を先に切り分けます。発表によると、LegalOnのマターマネジメントにおける案件の登録、検索、取得、更新をはじめ、案件に関連するファイルやメッセージの連携が可能になります。扱える案件の項目として、案件名、依頼者、ステータス、担当者、カスタム項目が挙げられています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。
想定される用途は、社内のポータルやワークフローで受けた依頼を案件として自動登録すること、案件のステータスや担当者を複数のシステムで共有して転記を減らすこと、関連資料やコミュニケーションをシステム間で連携することです。発表は、二重入力や転記作業の削減を、このAPIの狙いとして示しています。なお、APIを使った外部システムとの連携には、連携機能の開発や実装が必要である旨の注記が付いています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。
このAPIは、LegalOnのAPI連携としては第三弾にあたります。第一弾は2026年2月に提供されたユーザー・組織情報のAPIです。第二弾は2026年7月13日に発表され、契約書ファイルや契約書に関する情報を、自社システムから登録、更新、取得できるAPIでした。第二弾の発表では、認証方式としてOAuth 2.0のclient_credentialsに対応し、操作できる範囲は利用者がロールを持つワークスペース内に限られると説明されています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 契約書ファイルや情報を自社システムと連携するAPIを公開)。第三弾の発表の本文には、認証方式やアクセス範囲、料金、データの取扱いに関する記載は見当たりません。第二弾と同じ仕組みを前提にしてよいかは、提供元に確認する事項です。
確認できていない点は、この記事の判断の限界でもあります。提供対象のプラン、料金、保存場所や保持期間などのデータ取扱い、開発者向けの仕様書の公開範囲は、発表の本文に書かれていません。以降の判断軸は、これらが開示された時点で更新される前提で読んでください。LegalOnのスキルやプレイブックを事務所の規程に組み込む論点は、すでに別の記事で整理しています(参照: LegalOnに弁護士設計のスキル40種超搭載、選ぶだけで使う7つの視点、LegalOnのプレイブックエージェントで契約審査基準を内製する7工程)。本記事は、案件の受け渡しという別の局面を扱います。
依頼企業のAPI連携を受け入れる前に法律事務所が確認する7項目
7項目は、連携の目的を決める作業から、記録と見直しの回し方までを順に並べています。各項目に、何を入力し、何が返るかを添えます。
確認項目1は、連携で何をなくしたいのかという目的の確認です。入力するのは、依頼企業から受ける案件の件数、受付の経路、転記が発生している場面です。返るのは、API連携で削減できる作業と、連携しても残る作業の区分です。発表が挙げる用途は二重入力や転記の削減ですが、事務所の側の削減効果は、受付の経路が何本あるかで変わります。目的が曖昧なまま連携を受け入れると、導入後に効果を説明できません。
確認項目2は、連携する項目の範囲です。発表が示す案件、ファイル、メッセージの三つのうち、事務所と共有する対象を決めます。入力するのは、依頼企業が連携を想定している項目の一覧です。返るのは、事務所が受け取る項目と、受け取らない項目の線引きです。メッセージは、案件のタイムライン上のやり取りであり、事務所の内部の検討メモが混ざらないよう、共有の対象かどうかを先に決めておく必要があります。
確認項目3は、依頼者を特定できる情報の扱いです。案件の項目には依頼者が含まれます。事務所が受け取る案件名や依頼者名が、第三者の目に触れる経路を確認します。入力するのは、連携先のシステムで案件情報を閲覧できる人の範囲です。返るのは、閲覧権限の一覧と、事務所側で見直したい点です。案件名に具体的な事件の内容が書かれている場合は、守秘の観点から、記載の粒度を依頼企業と調整する運用が考えられます。
確認項目4は、ファイルの受け渡しの経路です。APIで案件に関連するファイルを連携できるとされていますが、事務所が従来使っている受け渡しの方法との関係を整理します。入力するのは、現在の受け渡し方法と、保管場所の一覧です。返るのは、二重に保管されるファイルの有無です。同じファイルが複数のシステムに残ると、削除や保存期間の管理が複雑になります。
確認項目5は、ステータスと担当者の更新の責任です。APIで案件のステータスや担当者を更新できるため、事務所の担当弁護士が更新するのか、依頼企業の担当者が更新するのかを決めておく必要があります。入力するのは、現在のステータスの定義です。返るのは、更新の権限者の一覧です。更新が自動化されるほど、誤った更新が複数のシステムに広がりやすくなります。
確認項目6は、連携の開発を誰が持つかです。発表は、連携には開発や実装が必要だと注記しています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。依頼企業が開発を持つ場合でも、事務所が受け取る側の設定や確認作業を担うことがあります。入力するのは、連携の開発範囲の分担案です。返るのは、事務所の側に生じる作業の洗い出しです。
確認項目7は、障害と誤連携が起きたときの連絡経路です。誤った案件に別の依頼者のファイルが紐づいた場合の報告先、連携を一時停止する判断者、停止中の代替手段を決めておきます。入力するのは、起こり得る誤連携のシナリオです。返るのは、事務所の連絡手順です。最終的な確認と判断は、担当の弁護士が行います。
あなたは法律事務所の情報管理の補助です。以下は、架空の依頼企業A社が案件情報をAPIで事務所と連携する計画の概要です。
1. 連携される項目ごとに、事務所が受け取る必要があるかを整理する質問リストを作ってください。
2. 守秘義務の観点で、依頼企業に確認しておきたい事項を挙げてください。
条文の当てはめや、連携の可否の結論は出さず、確認すべき事項の整理にとどめてください。最終判断は担当の弁護士が行います。
以下は、事務所の案件受付から進捗共有までの現在の流れです。
API連携を導入した場合に、二重入力が減る工程と、むしろ確認作業が増える工程を分けて整理してください。
推測で効果を断定せず、確認が必要な前提条件を併記してください。
案件情報の連携で問われる弁護士の守秘義務と規程の論点
法律事務所にとっての中心的な論点は、守秘義務です。弁護士法第23条は、弁護士又は弁護士であつた者が職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています。案件情報が外部システムで連携されるとき、案件名、依頼者、担当者、ファイル、メッセージが、どのシステムのどのアカウントから閲覧できるかは、秘密の保持を考える際の事実関係の一部になります。この記事は条文を事案に当てはめません。確認すべき事実を整理することにとどめます。
個人情報保護法の側では、個人情報保護法第25条が、個人データの取扱いを委託する場合に、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています。個人情報保護法第23条は、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならないと定めています。連携の当事者は、依頼企業、LegalOn Technologies、事務所の三者です。個人データがどの当事者の管理下にあるのかを、契約や運用の記録で説明できるようにしておく考え方があります。
法律事務所が、依頼企業から案件情報の連携を打診された場合に、事務所の規程に書く事項の例を挙げます。連携を受け入れる依頼企業の承認手続、連携する項目の範囲、閲覧できる所属員の範囲、ファイルの保管場所と保存期間、誤連携が見つかったときの報告先です。これらは運用例であり、事務所の規模や取扱い案件の性質で適切な水準は変わります。個別の事務所に当てはめた規程の内容は、事務所の責任者と弁護士が判断してください。
データの取扱いについては、先に述べたとおり、発表の本文に保存場所や保持期間の記載が見当たりません。提供元のプライバシーポリシーや利用規約に定めがあるかどうかを確認し、確認日と内容を記録に残します。生成AIを使う場合の守秘義務の論点は、事務所のAI利用規程を作る手順として別の記事で整理しています(参照: 弁護士ドットコムのLegalBrainがClaude向けMCPコネクタに 法律事務所が接続前に決める7つの判断軸)。案件情報の連携は生成AIとは別の論点ですが、外部システムに秘密を預けるという構図は共通しています。
連携が事務所の運用で形骸化する失敗例と回避策
一つ目の失敗は、依頼企業側の都合で連携が先に進み、事務所の確認が追いつかないことです。連携の設定は依頼企業の側で行われるため、事務所が連携の開始を知るのが遅れる場合があります。回避策は、連携を開始する前に事務所へ通知する取り決めを、依頼企業との契約や覚書の段階で入れておくことです。
二つ目の失敗は、案件名に具体的な事件の内容や相手方の名前を書いたまま連携が始まることです。案件名は、連携先のシステムの一覧画面で広く表示される場合があります。回避策は、案件名の付け方のルールを依頼企業と事前に合わせることです。事件を特定できない略称や管理番号で運用する事務所があります。
三つ目の失敗は、ステータスの自動更新が、実際の案件の進行と食い違うことです。自動化された更新が誤っていても、画面上の表示は正しく見えます。回避策は、重要な節目のステータスについては、担当の弁護士の確認を経てから更新する運用にすることです。確認した日付と確認者を記録に残します。
費用と体制の見方
料金とプランの条件は、発表の本文に記載がなく、公表されていません。そのため、本記事では費用の数字を書きません。見積もりの考え方だけを整理します。費用は、ライセンスの追加料金の有無に加えて、連携の開発を誰が負担するかで大きく変わります。開発を依頼企業が持つ場合でも、事務所の側で受け取りの設定や確認の作業が生じます。
体制としては、連携の窓口を事務所の中で一人に決めておくと運用が安定します。弁護士本人が持つ場合と、事務局の責任者が持つ場合がありますが、守秘義務の最終的な責任は弁護士にあるため、連携の開始時と、項目の範囲を変えるときには、弁護士が内容を確認する工程を置きます。
今後の展望と独自の考察
LegalOnのAPIは、ユーザーと組織の情報、契約書、案件と、連携できる対象を段階的に広げています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。次に何が連携の対象になるかは、本文では示されていません。事務所にとっての論点は、依頼企業側のシステムが整備されるほど、事務所への案件の入り方が変わる可能性がある点です。受け取る側の窓口を、あらかじめ設計しておく価値があります。
もう一つの論点は、連携が増えるほど、事務所が説明すべき情報管理の範囲が広がる点です。依頼企業から情報管理の状況を問われる機会が増えたときに、連携の項目、閲覧者、保存期間を一覧にしておけば、説明の負担が下がります。
よくある質問
案件情報APIはいつ公開されましたか
発表の日付は2026年10月1日です。API連携としては第三弾にあたり、2026年2月と7月のAPIに続くものとされています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。
法律事務所もこのAPIを使えますか
発表の本文は、企業の法務部門による利用を前提にした書き方になっています。法律事務所が直接APIを使えるかどうかは、本文に記載が見当たらないため、提供元に確認する事項です。
認証方式は何ですか
第三弾の発表の本文に認証方式の記載は見当たりません。第二弾の契約書APIの発表では、OAuth 2.0のclient_credentialsに対応するとされています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 契約書ファイルや情報を自社システムと連携するAPIを公開)。
連携に開発は必要ですか
発表は、APIを使った外部システムとの連携には、連携機能の開発や実装が必要である旨を注記しています(出典: LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開)。
守秘義務との関係はどう考えればよいですか
弁護士法第23条は、職務上知り得た秘密を保持する権利と義務を定めています。連携で案件情報がどのシステムのどのアカウントから閲覧できるかを整理し、事務所の責任者と弁護士が個別に判断する事項です。
料金はいくらですか
発表の本文には料金の記載がなく、公表されていません。提供元に確認してください。
参考文献
- LegalOn Technologies お知らせ 案件情報を自社システムと連携可能なAPIを公開
- LegalOn Technologies お知らせ 契約書ファイルや情報を自社システムと連携するAPIを公開
- e-Gov法令検索 弁護士法第23条
- e-Gov法令検索 個人情報保護法第23条
- e-Gov法令検索 個人情報保護法第25条
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本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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