Claude.mdとは、Claude Codeに事務所の決まりごとを渡す指示ファイルのことです。
月次の試算表レビューで、毎回同じ確認事項を口頭やチャットで伝え直していないでしょうか。この記事では、Claude Codeに事務所の決まりごとを読み込ませるCLAUDE.mdというファイルを題材に、会計事務所が月次試算表のレビューにAIを組み込むときの設計を、公開されている二つの事例記事から読み取れる範囲で整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、ツールの仕様は提供元の公式ドキュメントで確認しました(確認日は2026年10月5日)。事例記事には時間短縮の数値が書かれていないものがあり、本記事も根拠のない時間短縮の数字は示しません。
先に結論を述べます。CLAUDE.mdは、事務所の手順や禁止事項をAIに毎回読ませるための文章であり、守らせる仕組みそのものではありません。守秘義務に関わる制限は、文章に書くだけでなく、権限の設定で担保する二重の設計が論点になります。
CLAUDE.mdと会計事務所の月次業務を取り巻く状況
まず、CLAUDE.mdの位置づけを提供元の説明で確認します。Anthropicの公式ドキュメントは、Claude Codeの各セッションが新しいコンテキストから始まり、知識を持ち越す仕組みの一つとして、利用者が書くCLAUDE.mdを挙げています。同ドキュメントは、CLAUDE.mdと自動メモリの両方を、強制される設定ではなくコンテキストとして扱うと説明しています(出典:Anthropic Claude Code Docs How Claude remembers your project、2026年10月5日確認)。つまり、CLAUDE.mdに書いた禁止事項は、AIの振る舞いを方向づける文章であり、技術的な遮断ではありません。同ドキュメントは、行動を止めたい場合の別の仕組みにも触れています。
次に、会計事務所での使い方を扱った公開記事を二つ確認します。税理士法人辻総合会計グループの記事(2026年5月17日公開)は、Claude Codeを、いきなり自動化する道具ではなく、所内の手順、チェックリスト、データ整形、レビュー資料作成を標準化するための実行支援ツールとして位置づけています。効率化の対象として、試算表チェック、仕訳レビュー、顧問先確認事項の整理、月次コメント作成、所内マニュアル整備を挙げています(出典:税理士法人 辻総合会計グループ Claude Codeと会計事務所の月次業務、2026年10月5日確認)。
株式会社AI Orchestraの記事(2026年8月11日公開、同月25日更新)は、集める、比べる、例外を出す、下書きするの4工程をAIに任せ、税務判断と対外説明の確定を人に残す方針を示しています。月次試算表のレビューについては、前月や前年同月との比較、増減科目の抽出、コメント案をAIが担当し、増減理由、経営への含意、顧問先への表現を人が確定する分業を提示しています(出典:AI Orchestra Claude Code活用ガイド 税理士・会計事務所向け、2026年10月5日確認)。
二つの記事は、AIに任せる範囲と人が確定する範囲を分ける点で共通しています。一方で、具体的な時間短縮の数値は、辻総合会計グループの記事には書かれていません。AI Orchestraの記事も、具体的な削減時間を示さず、毎月30分以上かかる反復業務を一つ選んで小さく始める進め方を示すにとどまります(出典:AI Orchestra Claude Code活用ガイド 税理士・会計事務所向け、2026年10月5日確認)。数字がない以上、読み手の事務所での効果は、導入して計測するまで分かりません。
会計事務所の業務の範囲も、条文で確認しておきます。公認会計士法第2条は、公認会計士の業務として、財務書類の監査または証明を挙げ、あわせて財務書類の調製、財務に関する調査や立案、相談に応ずることもできると定めています(出典:e-Gov法令検索 公認会計士法第2条)。税理士法第2条は、税理士の業務として、税務代理、税務書類の作成、税務相談を挙げています(出典:e-Gov法令検索 税理士法第2条)。月次試算表のレビューコメントが、どの業務の記録にあたるかは、事務所と資格者が整理する論点です。AIは下書きを作る役割にとどまり、確定は有資格者が行うという構図を、ルールの冒頭に置きます。
事務所ルールをCLAUDE.mdに定義する7つの設計
ここからは、編集部が整理した設計の観点です。二つの公開記事の内容と提供元の仕様を組み合わせたもので、特定の事務所の運用を再現したものではありません。想定は、税理士と補助者あわせて数名で、月次の試算表レビューが十数社分ある事務所です。
設計一。AIの役割を一文で書きます。CLAUDE.mdの冒頭に、AIは下書きと比較の作業を担当し、増減理由の判断と顧問先への説明は人が確定する、と書いておきます。辻総合会計グループの記事は、AIは文章の下書き、人は判断と説明責任という役割分担を強調しています(出典:税理士法人 辻総合会計グループ Claude Codeと会計事務所の月次業務、2026年10月5日確認)。この一文が、以後のすべてのルールの土台になります。
設計二。入力してよいデータの範囲を決めます。同じ記事は、入力を禁止する情報として、氏名、個人番号、給与、医療情報、顧問先名、取引先名、ID、パスワード、APIキーを列挙しています(出典:同記事)。事務所の規程に近い粒度で、入力禁止の一覧をCLAUDE.mdにも書き写します。一覧はAIへの注意書きになると同時に、新しく入った補助者への教材にもなります。
設計三。読み取りと書き込みを分けます。AI Orchestraの記事は、四つの線引きとして、入力は匿名化したデータから始めること、読み取りと書き込みを分けること、元のデータを上書きしないこと、実行日時と確認者をログに残すことを挙げています(出典:AI Orchestra Claude Code活用ガイド 税理士・会計事務所向け、2026年10月5日確認)。会計ソフトから出力したCSVを読み取り専用のフォルダに置き、AIの出力は別のフォルダに書かせる、といった設計がこれにあたります。
設計四。月次試算表レビューの型を書きます。CLAUDE.mdに、レビューの手順を番号付きで定義します。たとえば、前月と前年同月の比較、増減が大きい科目の抽出、コメント案の作成、確認事項の一覧化という順序です。AIに任せる範囲は、AI Orchestraの記事が示す比較、抽出、コメント案までにとどめます。次のプロンプト例は、試算表の比較結果から、レビューコメントの下書きを作る用途です。顧問先名や金額は、架空の数字に置き換えて使います。
あなたは会計事務所の補助者です。以下の比較表から、月次試算表レビューのコメント案を作ってください。
条件:
- 増減が大きい科目ごとに、数字の変化だけを事実として書く
- 増減の理由は推測で書かず、「理由は顧問先に確認」と記載する
- 税務上の判断や助言は書かない
- 最後に、顧問先へ確認する事項を一覧にする
- 資料にない数字は使わない
比較表:
(ここに架空のA社の比較表を貼り付ける)
設計五。確認する人と記録を決めます。AI Orchestraの記事が挙げるログの考え方に沿って、誰が、いつ、どの資料を入力し、誰が出力を確認したかを、実行のたびに記録する手順をCLAUDE.mdに入れます。確認者の欄が空のままでは、顧問先に出さない運用にします。
設計六。顧問先への表現の変換を分けます。レビューコメントの内部版と、顧問先に伝える版は、別のものとして扱います。次のプロンプト例は、内部向けのコメントを、顧問先の経営者に伝える文章に直す用途です。
次の内部向けコメントを、経営者が読む説明文に書き直してください。
条件:
- 専門用語は、初出のときだけ一文で補足する
- 数字は変更しない
- 原因を断定する表現は使わない
- 書き換えで意味が変わりそうな箇所は、そのまま残してコメントを付ける
内部向けコメント:
(ここに架空のコメントを貼り付ける)
設計七。効果の測り方を決めます。辻総合会計グループの記事は、導入効果の指標として、月次コメントの作成時間、差し戻しの件数、レビューでの指摘件数を挙げています(出典:税理士法人 辻総合会計グループ Claude Codeと会計事務所の月次業務、2026年10月5日確認)。時間だけでなく、差し戻しと指摘の件数も見ることで、短縮が品質の低下と引き換えになっていないかを確認できます。
顧問先データを扱う前に決めておく守秘義務と規程の論点
月次試算表には、顧問先の財務情報が含まれます。守秘義務の条文を確認します。税理士法第38条は、税理士が正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、または窃用してはならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 税理士法第38条)。公認会計士法第27条は、公認会計士が正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 公認会計士法第27条)。どちらの条文も、資格を失った後についても同様の定めを置いています。
個人データの扱いについては、個人情報保護法の条文が関係します。第23条は、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを定めています(出典:e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律第23条)。第25条は、個人データの取扱いを委託する場合の委託先の監督を定めています(出典:e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律第25条)。AIサービスの提供元が委託先にあたるかどうかは、契約とサービスの仕組みによって整理が変わります。要確認の項目です。
ツール側のデータの扱いは、提供元の公式ドキュメントで確認します。Anthropicのドキュメントは、Claude Codeの利用について、Free、Pro、Maxの個人向けプランでは、モデル改善にデータを使うことを許可した場合に5年間、許可しない場合に30日間の保持期間が適用されると説明しています。Team、Enterprise、APIの商用の利用者は、標準で30日間の保持期間であり、コードやプロンプトを生成モデルの学習に使わないという既存の方針を維持すると説明しています(出典:Anthropic Claude Code Docs Data usage、2026年10月5日確認)。顧問先の情報を扱うなら、どのプランで契約しているかによって、確認すべき条件が変わります。プランの条件は改定されることがあるため、確認日を記録します。
CLAUDE.mdの書き方と権限設定の関係も、規程に落とします。前掲のAnthropicのドキュメントが、CLAUDE.mdを強制される設定ではなくコンテキストとして扱うと説明している以上、入力禁止のデータは、文章で指示するだけでなく、アクセスできるフォルダの範囲を絞る設定でも守る運用が考えられます。読み取り専用のフォルダにはデータを置き、顧問先名を含むデータは最初から置かない、といった設計です。
事務所の規程に入れる項目の例を挙げます。一つ目は、使ってよいサービスとプランです。二つ目は、入力禁止の情報の一覧です。三つ目は、有資格者の確認工程と、確認者の記録です。四つ目は、顧問先への説明の方法です。五つ目は、事故が起きたときの連絡先と手順です。関連する論点は、会計事務所のAIエージェント比較や士業事務所がMCPサーバーを構築する手順でも扱っています。
失敗例と回避策 事務所ルールを定義したあとに起こりやすいこと
起こりやすい失敗を三つ挙げます。いずれも公開事例で起きたという意味ではなく、同じ設計で一般に想定される場面です。
一つ目は、CLAUDE.mdが長くなりすぎる場合です。Anthropicのドキュメントは、指示が具体的で簡潔なほど、AIが一貫して従いやすくなると説明しています(出典:Anthropic Claude Code Docs How Claude remembers your project、2026年10月5日確認)。禁止事項や手順を詰め込みすぎると、重要な項目が埋もれます。回避策は、役割、入力禁止、レビューの型、確認者の記録という最小限の項目に絞ることです。
二つ目は、文章の禁止事項だけで安心してしまう場合です。顧問先名を含むデータをうっかり読み込ませる事故は、文章の注意書きだけでは防げません。回避策は、読み取れるフォルダの範囲を絞る設定と、匿名化したデータだけを置く運用を組み合わせることです。
三つ目は、確認者の記録が形骸化する場合です。確認者の欄に名前だけが入り、実際には照合されていないという状態です。回避策は、確認者が何を照合したかの項目を、記録の様式に入れることです。たとえば、数字を元の試算表と照合した、税務上の判断が入っていないか見た、といった項目です。
費用・工数・体制
Claude Codeの利用料金は、契約するプランによって異なります。料金は、提供元の公式ページで確認し、確認日を記録します。ここでは、金額を示さず、見積もりの項目を整理します。
一つ目は、ライセンスの費用です。使う人数分のプランの料金を、提供元の公式ページで確認します。二つ目は、初期の構築工数です。CLAUDE.mdの作成、フォルダの設計、匿名化の手順づくり、試用の時間を見込みます。AI Orchestraの記事は、小規模な実装を5営業日で行う進め方を示しています(出典:AI Orchestra Claude Code活用ガイド 税理士・会計事務所向け、2026年10月5日確認)。この日数は、同社の記事が示す一つの進め方であり、読み手の事務所に当てはまるとは限りません。三つ目は、運用の担当です。CLAUDE.mdの更新、利用状況の確認、規程の見直しを、誰が持つかを決めます。
小さな事務所では、所長が兼務することが多いでしょう。その場合は、月に一度、CLAUDE.mdの見直しと、差し戻しの件数の確認を、予定に入れておきます。
今後の展望と考察 ルールを書くことが事務所の標準化になる
CLAUDE.mdを書く作業は、AIのための設定であると同時に、事務所の手順を文章にする作業でもあります。辻総合会計グループの記事が、所内の手順やチェックリストを標準化するための道具としてClaude Codeを位置づけているのは、この点に通じます(出典:税理士法人 辻総合会計グループ Claude Codeと会計事務所の月次業務、2026年10月5日確認)。
編集部の考察として、論点は二つあります。一つ目は、ルールの属人化です。CLAUDE.mdを一人の担当者だけが書いている状態では、その人が抜けたときに運用が止まります。複数人でレビューし、更新の履歴を残す体制が論点になります。二つ目は、顧問先への説明です。生成AIを月次レビューの下書きに使っていることを、顧問先にどこまで伝えるかは、事務所の方針として整理する論点です。
よくある質問
CLAUDE.mdに書けば、AIは禁止事項を守りますか。
文章の指示は、AIの振る舞いを方向づけますが、強制ではありません。Anthropicのドキュメントは、CLAUDE.mdをコンテキストとして扱うと説明しています。守秘義務に関わる制限は、アクセスできる範囲の設定とあわせて設計します。
月次試算表のレビューは、どこまでAIに任せられますか。
公開事例が示す範囲は、比較、増減科目の抽出、コメント案の作成です。増減の理由や顧問先への表現の確定は、人が行う分業が示されています。どこまで任せるかは、事務所の規程で決めます。
時間短縮の効果は、どのくらい見込めますか。
二つの公開記事には、具体的な削減時間は書かれていません。導入前のコメント作成時間を実測し、導入後と比べて判断します。差し戻しや指摘の件数もあわせて記録します。
顧問先名を伏せれば、データを入力してよいのですか。
名称を伏せても、数字や取引の内容から顧問先が特定される場合があります。守秘義務と個人情報保護法の整理が必要な論点であり、サービスの契約内容も踏まえて、事務所で判断します。
個人向けプランで顧問先のデータを扱ってもよいですか。
プランによって、データの保持やモデル改善への利用の条件が異なります。顧問先の情報を扱う前に、提供元の公式ドキュメントで条件を確認し、事務所の規程で使ってよいプランを定めます。
参考文献
- Anthropic Claude Code Docs How Claude remembers your project
- Anthropic Claude Code Docs Data usage
- e-Gov法令検索 税理士法
- e-Gov法令検索 公認会計士法
- e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律
- 税理士法人 辻総合会計グループ Claude Codeと会計事務所の月次業務
- AI Orchestra Claude Code活用ガイド 税理士・会計事務所向け
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