弁護士向け生成AIカンファレンス(10月2日)の前後で決める 法律事務所の持ち帰り7項目

GVA TECH・第一法規・FRAIMが10月2日に開く弁護士向け生成AIカンファレンスを題材に、法律事務所が参加の前後で決める持ち帰りの7項目を、公表資料の範囲で整理します。

弁護士向け生成AIカンファレンス(10月2日)の前後で決める 法律事務所の持ち帰り7項目

生成AI研修とは、生成AIの使い方を学ぶ社内外の学習機会のことです。

GVA TECH、第一法規、FRAIMの3社は、2026年10月2日(金)の18時から20時に、「弁護士のための生成AI実践カンファレンス」を開催すると発表しました。参加費は無料で、懇親会は別途8,000円と案内されています(出典:PR TIMES GVA TECH×第一法規×FRAIMが10月2日(金)に「弁護士のための生成AI実践カンファレンス」を開催)。本記事では、この種のカンファレンスや研修に参加する前後に、法律事務所が決めておく項目を、7つに整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、イベントの内容は主催者の公表資料で確認しています。なお、本記事の公開時点で、カンファレンスは開催当日です。当日の発言内容は確認しておらず、公表されたプログラムの範囲で書いています。

公表されているカンファレンスの概要と、確認できないこと

最初に、公表されている範囲を整理します。プレスリリースによると、名称は「弁護士のための生成AI実践カンファレンス〜汎用AIの基礎から法律事務所の最適解まで〜」で、開催日時は2026年10月2日の18時から20時です。登壇者は、こうの法律事務所の新井玲央奈弁護士、東京フィールド法律事務所の寺島英輔弁護士、FRAIM株式会社代表取締役社長兼CTOの宮坂豪氏の3名と案内されています。プログラムとして、生成AIの社会的普及と弁護士実務への実装における課題、単なる時短から仕事の質の向上へのシフト、実践的なプロンプト活用法と導入プロセス、判例リサーチから裁判書類作成までの3社連携の情報が挙げられています(出典:同プレスリリース)。

申込ページには、より細かい時間割が載っています。開会挨拶、AI活用が進まない理由と解決法、生成AIとの向き合い方、生成AIの始め方の実演の順で進み、途中に休憩が入る構成です(出典:ベンパル 弁護士のための生成AI実践カンファレンス)。

一方で、確認できない点もあります。1つ目は、開催形式です。プレスリリースでは、会場参加50名とオンライン参加500名の併用と読める記載があります。申込ページでは、オンライン開催のみと読める記載があり、2つの公表資料で表現が異なります(出典:PR TIMES、ベンパル、要確認)。2つ目は、アーカイブ配信の有無です。両方の資料で、確認できる記載が見当たりません(要確認)。3つ目は、当日の発言内容です。本記事の時点では、確認できていません。

つまり、事務所として確認できるのは、テーマの方向性と、登壇者、主催の構成までです。そのうえで、この種の機会を、事務所の導入計画にどう結びつけるかが、本記事の主題です。

参加する前に決める2項目と、持ち帰って決める5項目

ここからは、弁護士と事務職員で数名から十数名ほどの事務所が、外部のカンファレンスや研修を、事務所の生成AI導入に生かす場面を想定した運用例です。条文の当てはめや、特定のサービスの評価は行いません。どの項目をどう採るかは、各事務所の判断になります。

項目1は、参加の目的の言語化です。参加する弁護士が、何を持ち帰るのかを、参加の前に1行で書いておきます。たとえば、導入の進め方の整理、プロンプトの実例の確認、ツールの比較の材料、といった目的です。目的が決まっていると、当日の情報の取捨選択がしやすくなります。

項目2は、持ち込んでよい情報の線引きです。オンラインのカンファレンスでは、質問や事例の共有の場面があります。事務所の案件の具体的な情報を、チャットや質問フォームに書かないという取り決めを、参加者に周知しておく運用があります。守秘義務の観点では、案件を特定できる情報を、外部の場に出さないという整理が、出発点になります。

項目3は、持ち帰りの記録の形式です。参加した弁護士が、学んだ内容を、事務所の他の弁護士と事務職員に共有する形式を決めます。短い報告書にして、日付、参加者、聞いた内容、事務所として試したい項目、確認が必要な項目を書く方法があります。聞いた内容と、自分の考えを、分けて書くのがこつです。

項目4は、事務所で試す項目の選び方です。カンファレンスのプログラムには、実践的なプロンプト活用や導入プロセスが含まれています(出典:PR TIMES)。持ち帰った項目のうち、案件の機密情報を使わずに試せるものから始めます。たとえば、公開されている条文や判例を材料にした要約の下書き、架空の事案を使った書面の構成案の作成などです。

項目5は、ツールの選定の手順です。講演で紹介されるツールが、事務所に合うかどうかは、別に検討します。ICT教育ニュースなどの報道では、第一法規の判例体系、GVA TECHの裁判書類作成ツール、FRAIMのWordアドインが、各社の提供サービスとして紹介されています(出典:ICT教育ニュース 第一法規×GVA TECH×FRAIM「弁護士のための生成AI実践カンファレンス」10月2日開催)。選定の観点は、AI契約書レビューをどう選ぶか 事務所が置く7つの選定基準や、AIリーガルテック協会の4原則で読む AIツール選定 士業事務所が使う7つの確認観点でも整理しています。

項目6は、確認工程の設計です。判例や条文の引用を、AIの出力のまま書面に載せないために、出典の突き合わせを毎回行う工程を置く運用が考えられます。担当の弁護士が、原典を確認し、記録を残します。引用の誤りが問題になる場面は、研修でも取り上げられる論点であり、事務所の手順書に落とすことで、研修の内容が定着しやすくなります。

項目7は、研修の効果の確認です。研修に参加した後、事務所の生成AIの利用状況や、手順書の整備がどう変わったかを、一定期間後に点検します。点検の日程を、参加の前に決めておくと、参加が一度きりのイベントで終わりにくくなります。

次のプロンプトは、持ち帰りの報告書の骨子を作る例です。架空の事務所を想定しており、実在の案件の情報は入力しません。

あなたは法律事務所の研修報告の下書きを補助します。
架空の事務所「戊法律事務所」の弁護士が、生成AIのカンファレンスに参加した後に、事務所内で共有する報告書の骨子を作ります。
次の構成で、各項目に書くべき内容を3つ以内で挙げてください。

1. 参加の目的
2. 聞いた内容(事実のみ)
3. 事務所で試したい項目
4. 確認が必要な項目(要確認)
5. 次の点検の日程

聞いた内容は、私が貼り付けるメモ(下に貼り付け)にある事実だけを使い、メモにないことは補わないでください。

【メモ】
(ここに自分の聴講メモを貼り付ける)

次のプロンプトは、試す項目の優先順位を整理する例です。

あなたは法律事務所の生成AI導入の整理を補助します。
下に貼り付けた「試したい項目」の一覧(Aとします)を、次の観点で整理してください。

- 案件の機密情報を使わずに試せるか
- 確認の手間が大きいか小さいか
- 事務所の書面の品質に与える影響が大きいか

順位は断定せず、事務所が選べるように、観点ごとの見立てを出してください。Aに書かれていないことは補わないでください。

【A】
(ここに架空の項目の一覧を貼り付ける)

どちらも出力は下書きです。最終判断は、弁護士が行います。

開催後の1週間の動き方 持ち帰りを手順書に変える流れ

カンファレンスの後に何をするかを、日程の形で置いておくと、持ち帰りが形になりやすくなります。以下は運用例であり、特定の事務所の実態を示すものではありません。

当日の夜から翌日にかけては、聴講メモの整理をします。聞いた内容を事実として書いた部分と、自分の感想や解釈を書いた部分を、分けて残します。登壇者の発言を要約するときは、言い換えによって意味が変わっていないかを確認し、確信が持てない箇所には、要確認と書いておきます。後で主催者の資料やアーカイブが公開された場合に、突き合わせができるようにするためです。

翌々日から数日のうちには、報告書を事務所に共有します。報告書には、事務所として試したい項目を、3つ程度に絞って書きます。項目が多すぎると、どれも手がつかないまま終わるためです。試す項目ごとに、使う情報の区分、確認者、記録の方法を、あわせて書いておきます。

1週間ほどの間に、試す項目の最初の1つを、案件の機密情報を使わない形で実施します。たとえば、公開されている条文を材料にした要約の下書きを、AIに作らせ、弁護士が原典と突き合わせて、誤りの有無と手間を記録します。この記録が、事務所の確認工程を設計する際の、最初の材料になります。

実施の結果は、小さな報告として共有します。うまくいった点だけでなく、誤りが見つかった点、確認に時間がかかった点も、残しておきます。研修で紹介された方法が、事務所の業務にそのまま合うとは限らず、合わない点を記録しておくことが、次の検討の材料になるためです。

最後に、事務所の規程と手順書の、見直しが必要な箇所を洗い出します。AIの利用に関する規程が未整備の場合は、この機会に、最低限の項目から整える進め方があります。規程の項目は、AI事業者ガイドライン1.2版を事務所規程に反映する方法でも整理しています。

事務職員と共有するときの注意点

研修の持ち帰りを事務所に共有するとき、弁護士だけでなく、事務職員にも伝える場面があります。事務職員は、書面の作成補助や資料の整理で、AIを使う機会が多くなると考えられるためです。共有の際は、専門用語を避け、入力してよい情報と入れない情報の区分を、具体例で示します。

守秘義務は、弁護士個人だけでなく、事務所全体の運用の問題でもあります。事務職員が個人の判断でAIを使い始めることを防ぐため、利用を認めるサービスの一覧と、相談の窓口を、あわせて伝えておく運用があります。相談しやすい窓口があると、判断に迷った場面で、個人の判断に任されにくくなります。

また、研修の内容を共有する際は、特定のサービスの推奨と受け取られないよう、事実と事務所の検討事項を分けて伝えます。サービスの導入は、事務所としての検討と、所長の判断を経て決める事項であることを、共有の場で明示しておきます。

研修で得た材料を事務所に持ち込む前に決める3つのこと 守秘義務と規程

研修で学んだ内容を、事務所の運用に取り入れるときは、守秘義務の整理が欠かせません。ここでは、条文を確認したうえで、決めておく3つを示します。

1つ目は、業法上の守秘義務の確認です。弁護士法第23条は、弁護士又は弁護士であった者が、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています(ただし書で、法律に別段の定めがある場合を除いています)。外部のAIサービスへの入力が、この条文との関係でどう整理されるかは、契約内容と設定で変わる論点です。個別の当てはめは、弁護士の判断と、必要に応じて所属の弁護士会への確認が前提です。

2つ目は、個人情報保護法の関係条文の確認です。個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合に、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。同法第27条は、法令に基づく場合などを除き、本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。個人情報保護委員会は2023年6月2日に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表し、プロンプトに個人情報を含める場合には、利用目的の達成に必要な範囲かどうかを確認することや、事業者が機械学習に利用しないことを確認することを挙げています(出典:個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等)。

3つ目は、事務所の規程への反映です。運用例として、利用を認めるサービスの一覧、入力してよい情報の区分、依頼者への説明の方法、出力の確認者と記録、事故時の報告先を規程に書く方法があります。規程の雛形は、士業事務所のAI利用規程テンプレートも参考になります。

起こりうる失敗と回避策

資料の記載から想定される失敗を、架空のシナリオで示します。

1つ目は、参加しただけで終わってしまう失敗です。研修で聞いた内容が、事務所の他の弁護士や事務職員に共有されず、参加者の個人の知識にとどまる想定です。回避策は、報告書の形式と共有の場を、参加の前に決めておくことです。

2つ目は、研修で見たツールを、そのまま導入してしまう失敗です。デモの印象が強く、事務所の業務や守秘義務の体制との適合を確認しないまま、契約に進む想定です。回避策は、導入の前に、データの取扱い、保存場所、学習利用の有無、再委託の有無を、公式の資料で確認する手順を置くことです。

3つ目は、質問の場で案件の情報を出してしまう失敗です。オンラインの質問フォームに、具体的な事案の状況を書いてしまう想定です。回避策は、質問の際は、架空の事例に置き換えるルールを、参加者に周知することです。

費用・工数・体制の目安

参加費は、このカンファレンスについては、無料と案内されています(出典:PR TIMES)。ただし、導入するツールの費用は、各社の料金ページで確認する必要があります(要確認)。

工数の面では、参加の準備、報告書の作成、事務所内の共有、試す項目の検討が主な作業です。少人数の事務所では、参加者の準備が短時間、報告書の作成が数時間、所長の確認が数時間という規模感を、運用例として想定できます(自所での実測が前提で、要確認です)。体制は、参加した弁護士が報告し、所長が最終責任者として判断を下す分担が一例です。

今後の展望と独自考察

発表されたテーマには、単なる時短から仕事の質の向上へのシフトが含まれています(出典:PR TIMES)。この方向性が、法律事務所の導入計画で何を意味するかは、各事務所で考える論点です。

考えておきたいのは、時間の削減を測る指標と、質の向上を測る指標が異なる点です。時間は、作業の前後で比べられます。質は、誤りの数、確認にかかる手間、依頼者からの反応など、複数の観点で見る必要があります。事務所として、どの指標を使うかを、導入の前に決めておくと、研修で得た材料を、導入後の評価に結びつけやすくなります。ただし、これは本記事の考察であり、公表データで示されたものではありません(要確認)。

よくある質問

カンファレンスはいつ開催されますか。

2026年10月2日(金)の18時から20時です(出典:PR TIMES)。本記事の公開時点では、開催当日です。

参加費はかかりますか。

カンファレンスは無料で、懇親会は別途8,000円と案内されています(出典:同プレスリリース)。

会場参加とオンライン参加のどちらですか。

プレスリリースと申込ページで、表現が異なります。プレスリリースには会場とオンラインの併用と読める記載があり、申込ページにはオンライン開催と読める記載があります(要確認)。申込の前に、主催者の最新の案内をご確認ください。

後日の視聴はできますか。

公表されている資料からは、アーカイブ配信の有無は確認できませんでした(要確認)。

研修で得た内容を、依頼者に説明する必要はありますか。

説明の要否は、依頼者との契約内容と、AIに入力する情報の種類で変わります。守秘義務や個人情報保護法との関係は、弁護士の判断と、必要に応じて弁護士会への確認が前提です。

事務所で生成AIを試すとき、最初に何を決めますか。

運用例として、入力してよい情報の区分、利用を認めるサービス、確認者の記録を決める方法があります。案件の機密情報を使わない項目から始める進め方もあります。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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