会計事務所の生成AI利用率は75%へ、ルール未整備は70% 白書2026から読む利用規程の7判断軸

ミロク情報サービスの会計事務所白書2026(生成AI利用率75%、ルール未整備70%)を材料に、税理士・会計事務所のAI利用規程を整える7つの判断軸を、守秘義務とあわせて整理します。

会計事務所の生成AI利用率は75%へ、ルール未整備は70% 白書2026から読む利用規程の7判断軸

AI利用規程とは、事務所がAIを使う範囲と確認手順を定めた社内の取り決めのことです。

ミロク情報サービスの会計事務所白書2026によると、生成AIを利用している会計事務所は75%で、2024年の39%から伸びました(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。一方で、利用ルールが未整備の事務所は70%に上ります。本記事では、この調査の数字を材料に、税理士事務所や会計事務所がAI利用規程を整える際の判断軸を7つに整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、調査の数値は発表元のプレスリリースで確認しています。

白書2026が示した数字を整理する

まず、調査の概要を確認します。調査はミロク情報サービスが実施し、会計事務所の職員212名と、企業のバックオフィスやIT担当者、事業主606名の合計818名が対象です。公表日は2026年9月17日で、調査期間は2026年7月10日から31日と説明されています(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。

会計事務所の生成AI利用率は、2024年の39%から2026年に75%へ上がりました。企業や事業主の利用率は55%から84%へ上がっています。有料版を使っている会計事務所は46%、企業は36%です(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。事務所のほうが有料版の比率が高い点は、業務での利用が進んでいることを示す数字として読めます。

利用の広がりに対して、周辺の整備は追いついていません。会計事務所の70%が、AI利用のルールが未整備だと回答しています。企業や事業主でも、過半数が未整備です。生成AIの利用に対する不安では、機密情報の漏洩が最多で、会計事務所の55%、企業や事業主の48%がこれを挙げています(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。

出力の確認については、会計事務所の52%が、別の情報源で常に確認すると回答しています。企業や事業主では35%です。相談先については、会計事務所の74%、企業や事業主の76%が自分で調べると答えており、組織的な支援を受けずに導入している様子がうかがえます(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。

この数字から、利用は広がる一方で、ルールと確認の手順が個人の判断に任されている事務所が多い、という構図が見えます。ただし、調査の標本は会計事務所の職員212名です(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。全国の会計事務所を代表する数字かどうかは、公表資料の範囲では確認できません(要確認)。自事務所の判断材料として使う際は、傾向を知る材料として扱い、期待値や目標値には置き換えない運用が考えられます。

利用規程に書く7つの判断軸

以下は、税理士と職員を合わせて数名から十数名ほどの事務所が、AI利用規程を初めて整える場面を想定した運用例です。条文の当てはめや、規程の内容の妥当性の評価は行いません。どの項目を採り、どこまで書くかは、各事務所の判断になります。

1つ目の判断軸は、利用してよいツールの範囲です。無料版と有料版では、入力データの扱いが異なる場合があります。白書では有料版の利用が46%と示されていますが(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)、有料版であればデータの扱いが安全だと決まるわけではありません。ツールごとに、提供事業者の公式資料で、入力データの学習への利用と保存の扱いを確認し、確認した日付を規程の付表に残す運用があります。

2つ目は、入力してよい情報の区分です。顧問先の名称や金額、従業員の氏名など、情報を区分けし、区分ごとに入力の可否を決めます。最初は、匿名化した情報と公開情報だけを対象にし、運用が安定してから範囲を広げる段階的な設計が考えられます。

3つ目は、用途の区分です。リサーチ、文書の下書き、議事録、仕訳の補助など、用途ごとに、AIの出力をどう扱うかを決めます。判断を含む用途ほど、確認の工程を厚くする設計が考えられます。

4つ目は、確認の手順です。白書では、会計事務所の52%が別の情報源で確認すると答えています(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。裏を返せば、それ以外の事務所は、確認の方法が明確でない可能性があります(要確認)。確認の手順は、誰が、何を原典として、どの段階で確認するかを書面にしておくと、職員による差が出にくくなります。

5つ目は、記録の残し方です。どのツールに、どの種類の情報を入力したかを、事務所として把握できる状態にします。個々の入力内容をすべて記録するのが難しければ、用途の一覧と、利用するツールの一覧を台帳にする方法があります。

6つ目は、顧問先への説明です。AIを補助に使うこと、入力する情報の範囲、最終の確認は税理士や公認会計士が行うことを、顧問契約の書面や案内に書いておく方法があります。

7つ目は、見直しの周期です。AIのサービスは仕様や利用条件が頻繁に変わります。規程を作って終わりにせず、半年に1度など、見直しの時期を決めておく運用が考えられます。

規程づくりの手順とプロンプト例

規程を作る流れを、運用例として示します。まず、現状の把握から始めます。職員に、いま使っているAIのツールと用途を、匿名で書き出してもらいます。白書では、相談先として自分で調べる比率が74%と示されており、事務所が把握していない利用が存在する可能性があります(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。

次に、書き出された利用を、前節の7つの判断軸に沿って整理し、規程の案を作ります。この段階で、生成AIを下書きの補助に使うことができます。ただし、規程の案は、事務所の実態に合わせて、税理士や公認会計士が最終的に判断します。

続いて、案を職員と共有し、実際の業務で運用できるかを確認します。運用が難しい項目は、書き方を変えるか、除きます。規程が実態と離れていると、守られないままになります。

最後に、規程の運用を始め、1か月から3か月ほどで見直します。見直しの際は、規程に反する利用が見つかった場合に、個人を責めるのではなく、規程の側を直す視点で扱うと、報告が出やすくなります。

規程の案を作る補助として、生成AIに渡すプロンプトの例を2本示します。どちらも架空の設定で、実在の顧問先の情報は含みません。

あなたは会計事務所のAI利用規程の起案を補助します。
架空の事務所(税理士と職員の少人数)の規程案の見出しと各項目の書くべき内容を作ってください。

- 見出しは、対象ツール、入力してよい情報、用途、確認手順、記録、顧問先への説明、見直しの7つです
- 各見出しに、決めるべき事項を3つ以内で挙げてください
- 法令の条文や数字は書かず、事務所が公的資料で確認すべき項目を末尾に列挙してください
- 断定的な表現は避けてください
あなたは会計事務所の職員向けAI利用ルールの点検を補助します。
以下の架空の運用例について、ルールの抜けや曖昧な点を指摘してください。

- 運用例: 職員が必ず上長に確認してから、顧問先の資料をAIに入力する
- 確認してほしい観点: 誰が確認するか、確認の記録は残るか、入力できる情報の区分は明確か
- 指摘は箇条書きにし、改善案は事務所が選べるように複数示してください

守秘義務・規程上の論点

AI利用規程の中心にあるのは、守秘義務です。白書では、不安の最多が機密情報の漏洩で、会計事務所の55%がこれを挙げています(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。ここでは、士業ごとの守秘義務の条文と、事務所として確認する項目を整理します。

税理士法第38条は、税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないと定め、税理士でなくなった後も同様としています。公認会計士法第27条も、公認会計士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならないと定めています。これらの条文を、AIツールへの入力にどう当てはめるかは、サービスの契約や設計によって異なります。本記事では判断せず、個別の事案は有資格者の判断に委ねます。

個人情報の面では、個人情報保護法第27条が、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています(例外が列挙されています)。クラウドのAIサービスに個人データを入力する場合に、この条文との関係がどう整理されるかは、個人情報保護委員会の公表資料などで、個別に確認する論点です(要確認)。

規程に落とす際の確認項目を挙げます。1つ目は、ツールごとの、入力データの保管場所、学習への利用の有無、ログの保存期間です。公式資料の日付を残します。2つ目は、顧問先の同意の取り方です。顧問契約に条項を入れる方法と、個別に同意書を取る方法があります。3つ目は、職員が私物の端末や個人のアカウントを使うことの可否です。この点は、白書で相談先が自分で調べるに偏っていることから、実態の確認が先になります。4つ目は、事故が起きた際の報告の経路です。誰に、いつまでに報告するかを決めておくと、初動が遅れにくくなります。

事務所の規程は、士業事務所のAI利用規程テンプレートや、事務所のAIガイドラインの作り方でも扱っています。あわせて参照すると、項目の抜けを確認しやすくなります。

失敗例と回避策

規程づくりで起こりがちな失敗を、3つ挙げます。いずれも運用上の一般的なシナリオで、特定の事務所の事例ではありません。

1つ目は、規程を作ったものの、現場の実態と離れていて、守られないケースです。禁止の項目が多すぎると、職員が申告せずに使い続ける状況が生まれます。回避策は、現状の利用を先に把握し、使ってよい範囲を明示して、使い方の相談窓口を置くことです。

2つ目は、有料版の契約をもって、データの扱いの確認を終えたことにしてしまうケースです。白書では有料版の利用が46%と示されていますが(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)、有料かどうかと、データの扱いは別の論点です。回避策は、契約の種別ごとに、公式資料で入力データの扱いを確認し、確認日を残すことです。

3つ目は、AIの出力を、確認せずに書面に使うケースです。存在しない条番号や、古い制度の記述が混じるおそれがあります。回避策は、条文はe-Gov法令検索の原文で、通達や制度は国税庁などの公表資料で、公開や提出の前に確認する工程を、規程に入れることです。確認の記録は、元のファイルに残します。

費用・工数・体制

規程づくりそのものに、ライセンス費用はかかりません。工数としては、現状の把握、案の作成、職員との確認、顧問先への案内の整備が発生します。小規模な事務所では、担当の税理士または公認会計士が、数週間かけて進める設計が考えられます。工数の実測は、事務所ごとに異なるため、本記事では数字を示しません(要確認)。

体制としては、規程の責任者を、税理士または公認会計士の中から置き、運用の窓口を職員の中から決めます。窓口は、ツールの利用申請の受付と、台帳の更新を担います。見直しの周期に合わせて、年に1回か2回、利用状況を共有する場を設けると、運用が続きやすくなります。

費用の面では、有料版の契約が、規程の運用を支える場合があります。白書では、会計事務所の46%が有料版を使っていると示されています(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。ただし、費用はツールとプランによって異なるため、各社の公式の料金ページで確認します(要確認)。

今後の展望と独自考察

白書の数字から読めるのは、利用が先に広がり、ルールが後から追いかける構図です。ここで論点になるのは、次の3点です。

1つ目は、規程が、個人の判断に任されている運用を、事務所の運用に変えられるかです。白書では、相談先が自分で調べるに集中しており、事務所内で知見が共有されていない可能性があります。2つ目は、顧問先への説明を、規程と合わせて整えられるかです。顧問先の側でも、生成AIの利用が84%に広がっており(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)、事務所のAIの使い方を、顧問先が尋ねる場面が増える可能性があります。3つ目は、出力の確認の水準を、事務所として揃えられるかです。

AIのツールを選ぶ視点は、会計事務所向けAIエージェントの比較で整理しています。規程とツールの選定を、並行して進める際の参考になります。

よくある質問

白書の75%という数字は、全国の会計事務所の傾向と言えますか。

標本は会計事務所の職員212名です(出典:PR TIMES 会計事務所白書2026)。全国を代表する数字かどうかは、公表資料の範囲では確認できません(要確認)。傾向を知る材料として扱う運用があります。

有料版を使っていれば、データは学習に使われませんか。

有料版かどうかと、データの扱いは、別の論点です。提供事業者の公式資料で、入力データの学習への利用と保存の扱いを、プランごとに確認する運用があります(要確認)。

AI利用規程には何から書けばよいですか。

対象ツールと、入力してよい情報の区分から書く運用があります。この2つが決まると、用途や確認の手順を、順に決めやすくなります。

顧問先の資料をAIに入力する際の守秘義務はどうなりますか。

税理士法第38条や公認会計士法第27条が、業務上知り得た秘密に関する義務を定めています。個別の入力との関係は、契約と設計によるため、本記事では判断していません。

規程は職員にどう周知すればよいですか。

案の段階で職員と共有し、実際に運用できるかを確認する運用があります。研修や、使い方の共有の場を、定期的に設ける方法もあります。

規程は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか。

AIのサービスは変化が早いため、半年に1度などの周期を決める運用があります。大きな仕様の変更があった際に、随時見直す方法もあります。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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