スマート変更登記と検索用情報の申出 司法書士が10月5日までに整える7工程

スマート変更登記と検索用情報の申出について、令和8年10月5日から国籍等が追加されます。司法書士事務所が書式・ヒアリング・案内文を整える7工程と、AI活用時の守秘義務の論点を整理します。

スマート変更登記と検索用情報の申出 司法書士が10月5日までに整える7工程

スマート変更登記とは、登記官が職権で住所等の変更登記を行う仕組みのことです。

検索用情報の申出に、国籍等の情報が加わります。法務省は、令和8年10月5日以降に検索用情報の申出をする場合は国籍等の情報についても申し出る必要があるとされたと案内しています(出典: 法務省 検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係))。この記事では、スマート変更登記の仕組みを押さえたうえで、事務所が期日までに整える7工程と、生成AIを案内文や確認表の作成に使う場面を整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。

義務化と職権登記がセットで動く構図

結論から書きます。令和8年4月から始まった住所等変更登記の義務は、検索用情報の申出とセットで設計されています。申出を済ませた所有者は、その後の変更について自分で申請しなくても義務違反に問われない建て付けです。

法務省の案内によれば、令和8年4月1日から、不動産の所有者は氏名・住所の変更日から2年以内に変更登記をすることが義務付けられるとともに、この義務の負担軽減のため、所有者が変更登記の申請をしなくても登記官が住基ネット情報を検索し、これに基づいて職権で登記を行うスマート変更登記が開始しました(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。

根拠となる条文も押さえておきます。不動産登記法第76条の5は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称または住所について変更があったときは、その変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないと定めています。職権登記の側は同法第76条の6が定めており、登記官は法務省令で定める場合に職権で変更の登記をすることができるとしたうえで、所有権の登記名義人が自然人であるときはその申出があるときに限るという但書が置かれています。この但書にあたるのが検索用情報の申出です。

登記官が住基ネット情報を検索するためには、所有者から氏名・住所のほか、生年月日等の検索用情報をあらかじめ申し出てもらう必要があると案内されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。申出の経路は2つです。ひとつは登記申請と同時に行う同時申出で、令和7年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記の申請の際には所有者の検索用情報を併せて申し出ることが必要になっています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。もうひとつは、既に所有権の登記名義人である者が登記申請とは別に行う単独申出です。

対象外となる場合も明示されています。法人は検索用情報を申し出ることができないとされ、海外居住者は申出をしても職権による住所等変更登記の対象とならないため、変更の日から2年以内に自分で登記申請をする必要があると案内されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。義務違反の効果は不動産登記法第164条に定めがあり、第76条の5の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは5万円以下の過料に処するとされています。条文の当てはめは有資格者の判断に属しますので、顧客への説明では条文の内容を示すところまでにとどめる運用が安全です。

10月5日までに事務所が整える7工程

先に結論です。10月5日の変更点は、申出情報に国籍等が加わることです。実務としては、受任時のヒアリング票と添付書面の案内を差し替えれば足ります。差し替え漏れが出るとしたら、書式ではなく口頭の案内のほうです。

第一工程は、書式と記載例の入れ替えです。法務省は、令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記の申請をする場合の記載例と、単独申出の記載例・様式を公表しています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。事務所内で使っている旧版の様式を回収し、新版に差し替えます。共有フォルダに旧版が残ったままだと、繁忙期に旧版が使われます。

第二工程は、国籍等の定義の共有です。案内によれば、ここでいう国籍等とは、所有権の登記名義人となる者の国籍の属する国または出入国管理及び難民認定法に規定する地域をいい、地域名については台湾、ヨルダン川西岸地区及びガザ地区が該当するとされています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。この情報は、登記名義人に相続が生じた場合に適用される準拠法を確認する上で基礎となる情報だと説明されています。なぜ聞くのかを事務職員が理解していれば、顧客への説明も変わります。

第三工程は、添付情報の案内の更新です。国籍等を証する情報として、日本国籍を有する方については本籍地が記載された住民票の写しや戸籍の附票の写し、外国籍の方については国籍または地域が記載された住民票の写し、旅券、在留カード、特別永住者証明書などが挙げられています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。登記申請では従来から住所を証する情報を提供しますので、これで兼ねられる場合には追加の添付情報は生じないとも案内されています。この点を押さえておくと、顧客に余分な書類を取りに行かせずに済みます。

第四工程は、メールアドレスの取扱いの徹底です。申出情報に含めるメールアドレスは、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を所有権の登記名義人に確認する際の宛先になります。案内は、代理人による申請の場合を含め、登記名義人となる者本人のみが利用しているメールアドレスを申請情報の内容とするよう求めています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。事務所のアドレスを入れないという一点を、ヒアリング票に明記しておきます。アドレスがない場合の書き方も公表されています。

第五工程は、単独申出の案内資料の整備です。単独申出の手続は、押印・電子署名が不要で、専用のソフトウェアを使わずにWebブラウザ上で手続ができ、必要な添付書面は多くの場合身分証明書の写しのみ、登録免許税等の費用がかからないと整理されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。既存の顧客に案内する価値が高い手続です。管轄の異なる複数の不動産についても、いずれかの不動産の所在地を管轄する登記所にまとめて申し出ることができるとされています。

第六工程は、過去の変更経緯の確認です。登記簿に記録されている氏名・住所に変更があり、その経緯を住基ネットで確認できない場合には、戸籍の附票や戸籍の証明書などの提出が必要になります。案内では、変更日が平成22年10月5日以降であれば原則として書類の提出は不要とされています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。受任時にこの線で仕分けておくと、追加書類の依頼が一度で済みます。

第七工程は、完了メールの扱いの説明です。申出に不備がなかった場合、申出のあったメールアドレス宛に、申出手続が完了した旨、立件の年月日と立件番号、不動産番号、認証キー、申出を受けた登記所の表示を記録した電子メールが送信されます。認証キーは、メールアドレスを変更する際に必要となる10桁の番号等の符号だと説明されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。顧客がこのメールを迷惑メールとして処理してしまう事態を避けるため、届くメールの見え方を事前に伝えておきます。法務省と登記・供託オンライン申請システムは、フィッシングメールへの注意喚起も掲載しています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。

顧客向けの案内文を作る場面で使えるプロンプト例を挙げます。出力はそのまま使わず、有資格者が内容を確認してから送る前提です。

あなたは司法書士事務所の顧客向け案内文の下書き担当です。
以下の制度説明メモをもとに、既存のお客様へ送る案内文の下書きを作成してください。

出力の制約:
- 900字以内、ですます調
- 制度の名称と手続の名称を正確に書く(略称を作らない)
- 費用の有無、必要書類、手続の所要感の3点を必ず含める
- 法的な評価や断定はしない。制度の内容の説明にとどめる
- お客様ご自身で判断が必要な箇所は「ご相談ください」と書く
- 条番号を書く場合は「原文未確認」と付記する

制度説明メモ: {ここに貼る}

もう1本、受任時のヒアリング票を組み立てるための指示です。

あなたは司法書士事務所の受付フロー設計担当です。
以下の申出要件のメモから、受任時のヒアリング項目を作成してください。

出力する項目:
1. お客様に口頭で確認する項目(質問文の形で)
2. お預かりする書類の候補(どの場合に必要かの条件付きで)
3. 事務所側で確認する項目(登記簿の記載との突き合わせ箇所)
4. 対象外となる可能性がある場合の確認点

実在の顧客名や個人情報は出力に含めないでください。
要件に書かれていない前提を補わないでください。
不明な点は「要確認」と出力してください。

申出要件のメモ: {ここに貼る}

申出情報にAIを噛ませる前に固める守秘義務の論点

結論を先に置きます。検索用情報は、氏名・住所・生年月日・メールアドレス・国籍等がひとまとまりになった情報です。確認すべきは、この束をどこまで外部サービスの処理経路に乗せるかという一点です。

申出が必要となる検索用情報の具体的な内容として、氏名、氏名の振り仮名、住所、生年月日、メールアドレス、国籍等が挙げられています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。このうち国籍等は、本人の属性に関わる情報です。生年月日と住所と組み合わさることで、特定性はかなり高くなります。案内文の下書きや様式の整理にAIを使う場面と、個々の顧客の情報を入力する場面は、分けて設計しておく必要があります。

司法書士の守秘義務は司法書士法第24条に定めがあり、司法書士または司法書士であった者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならないとされています。条文は漏示を禁じる形であり、特定のツールの利用を対象にしたものではありません。個別の場面への当てはめは有資格者の判断に属します。

個人情報の側では、個人情報保護法第23条が安全管理措置を定め、取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを求めています。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しており、入力が利用目的の達成に必要な範囲に収まっているかという観点が示されています(出典: 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等)。

実務としての線引きは、入力するものを類型で決めるのが扱いやすくなります。制度の説明文、様式の記載例、事務所内の手順書は、個人を特定する情報を含みませんので、AIに渡しても情報の性質は変わりません。一方、個々の顧客の氏名・住所・生年月日・国籍等が並んだ情報は、束のまま外部に出す必要がある場面がほぼありません。整理の作業をAIに任せたい場合でも、識別情報を伏せた形で構造だけを渡す方法が取れます。

事務所規程に落とすなら、4項目が候補になります。ひとつは、検索用情報を含む書類をAIに入力しない旨を明記すること。ひとつは、案内文や手順書の作成については利用を認め、有資格者の確認を経て発信する旨。ひとつは、事務職員が使う場合の範囲と承認者。もうひとつは、使ったツール名と用途を記録に残す旨です。登記ノウハウをAIに継承させる前に置く前提でも触れたとおり、事務所の知見を形にする作業と、顧客情報を扱う作業は経路を分けておくほうが後が楽になります。

顧客への説明は、案内文の末尾に一文を添える形で足ります。文書の作成補助にAIを利用していること、内容は司法書士が確認していること、お預かりした情報を外部の学習に提供していないこと。この3点です。説明の設計は成果物へのAI利用をどこまで伝えるかで整理しています。

現場で起きやすい3つのつまずき

ひとつめは、同時申出の漏れです。所有権の保存や移転の登記では、申請時に検索用情報を併せて申し出ることが必要とされています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。件数が多い時期に、旧版の様式で作成したまま進めると、補正が発生します。回避策は、様式のファイル名に改定日を入れ、旧版を共有フォルダから外すという単純な運用です。

ふたつめは、メールアドレスの取り違えです。代理人による申請でも、登記名義人本人のみが利用しているメールアドレスを申請情報の内容とするよう案内されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。高齢の顧客でメールを使っていない場合の書き方も公表されていますので、ヒアリング票にその選択肢を用意しておきます。アドレスがない場合は、登記官が確認する際に住所へ書面が送付されることになると説明されています。

みっつめは、対象外の見落としです。法人と海外居住者は、この仕組みの外に置かれています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。相続や売買で名義人が海外に移った案件では、申出を済ませたから安心という説明が誤解を生みます。受任時の確認項目に、居住地と法人・自然人の別を明示的に入れておきます。本人確認そのものの論点は不動産登記の本人確認を生成AI偽造の前提で組むで整理しました。

費用と工数、既存顧客への展開

費用面では、単独申出そのものに登録免許税等の費用がかからないと案内されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。事務所が代理して行う場合の報酬設計は各事務所の判断になりますが、手続が軽い分、単価も軽くなります。まとまった件数を扱うことで成り立つ性格の業務です。

工数面では、書式の差し替えとヒアリング票の更新に半日、案内文の作成に半日、既存顧客リストの抽出に事務所の管理状況次第で数時間から1日というのが目安です。案内文をAIで下書きし、有資格者が確認する流れにすると、文面づくりの時間は圧縮できます。

既存顧客への展開では、過去に所有権移転の登記を受任した顧客のうち、令和7年4月21日より前に名義人になった方が主な対象になります。案内の優先順位は、不動産を複数所有している方、転居の可能性がある方から付けると効果が出やすくなります。まとめて申出ができる仕組みがありますので、複数物件の所有者ほど手続の価値が大きくなるためです。夜間のオンライン申請環境については登記・供託オンライン申請の夜間フローも参考になります。

制度が回り始めた後に来る論点

今後の焦点は、申出をした後の運用に移ります。登記官が職権で登記を行う可否を本人に確認する仕組みである以上、確認のメールや書面に本人が応じなかった場合の扱いが実務上の論点になります。現時点で公表されている案内の範囲では、確認を経て職権登記が行われる流れが示されています。

もうひとつは、事務所の顧客管理の粒度です。申出を済ませた顧客と、まだの顧客を区別して管理できているか。完了メールに記録された立件番号や不動産番号を、事務所側でどう保管するか。紙のファイルに綴じるだけでは、数年後に探せなくなります。AIを使うかどうかとは別に、検索できる形で残す設計が要ります。

最後に、相続案件との接続です。国籍等の情報が求められる理由として、相続が生じた場合に適用される準拠法の確認が挙げられています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。今回の申出で国籍等を把握しておくことは、将来の相続登記の受任時に効いてきます。相続登記を受任から申請まで回す工程と併せて、事務所の記録の持ち方を見直す機会になります。

よくある質問

10月5日から何が変わりますか

検索用情報の申出に国籍等の情報が加わります。法務省は、令和8年10月5日以降に検索用情報の申出をする場合は国籍等の情報についても申し出る必要があるとされたと案内しています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。

検索用情報を申し出ると登記の義務はどうなりますか

法務省は、検索用情報の申出を済ませておけば、住所等変更登記が義務化された後も義務違反に問われることがなくなる制度だと案内しています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。対象となる不動産は、申出をした不動産に限られます。

法人や海外にお住まいの方も対象ですか

法人は検索用情報を申し出ることができないとされています。海外居住者は申出をしても職権による住所等変更登記の対象とならず、変更の日から2年以内に自身で登記申請をする必要があると案内されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。

単独申出の手続はどのくらい手間がかかりますか

法務省の案内では、押印・電子署名が不要で、Webブラウザ上で手続ができ、必要な添付書面は多くの場合身分証明書の写しのみ、登録免許税等の費用がかからないと整理されています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。

過去の住所変更の書類はどこまで必要ですか

登記簿の記載との経緯が住基ネットで確認できない場合に追加の書類が必要になります。案内では、変更日が平成22年10月5日以降であれば原則として提出は不要とされています(出典: 法務省 検索用情報の申出について)。

顧客の検索用情報を生成AIに入力してもよいですか

法的な評価は個別の事情によるため、記事として結論は出しません。確認の順序としては、入力の必要性を業務から逆算し、使うツールのデータ取扱いを公式文書で確かめ、顧客への説明と同意の設計を固めたうえで、根拠条文に照らして有資格者が判断する流れになります。

AIはこの業務のどこで使えますか

顧客向け案内文の下書き、受任時ヒアリング票の組み立て、事務所内の手順書の整備といった、個人を特定する情報を含まない文書の作成が着手しやすい領域です。個々の顧客の申出情報そのものを扱う工程とは経路を分ける運用が取れます。

参考文献

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本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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