厚労省がTHP指針改正案を公表、がん検診5種を健康保持増進措置に追加へ

厚生労働省が2026年8月4日にTHP指針の改正案を公表しました。がん検診5種を含む二次予防への範囲拡大、両立支援の明記、PHR活用の追記まで、社労士業務への影響を整理します。

厚労省がTHP指針改正案を公表、がん検診5種を健康保持増進措置に追加へ

厚生労働省がTHP指針の改正案を含む報告書案を公表しました。

顧問先の健康管理と就業規則に関わる社会保険労務士に向けた速報です。厚生労働省は2026年8月4日、「事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」第4回の資料を公開し、報告書案とあわせてTHP指針(事業場における労働者の健康保持増進のための指針)の新旧対照表案を示しました。健康保持増進措置の範囲をがん検診等の二次予防まで広げる内容で、第4回検討会は2026年8月5日14時から開かれます。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は厚生労働省の公表資料で確認しています。

公表されたのは報告書案とTHP指針の新旧対照表案

公表されたのは報告書案、その概要案、そしてTHP指針の新旧対照表案です。厚生労働省の第4回検討会 資料ページによると、第4回は2026年8月5日14時から16時まで中央合同庁舎5号館で開催されます。検討会は2026年4月24日の第1回から始まり、第3回(2026年7月3日)に続いて今回も報告書案が議題になっています(出典: 報告書(案))。

THP指針は昭和63年9月1日に公示され、直近では2026年2月10日に改正されている指針です。根拠になるのは労働安全衛生法第70条の2第1項で、同項は「厚生労働大臣は、第六十九条第一項の事業者が講ずべき健康の保持増進のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする」と定めています(出典: e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。その第69条第1項は、健康教育や健康相談などの措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努める旨を定めた努力義務の規定です。

改正案の柱は二次予防への範囲拡大

改正案の柱は、健康保持増進措置の範囲を二次予防まで広げる点にあります。従来のTHP指針は生活習慣改善による発症予防、いわゆる一次予防が中心でしたが、改正案は健康診断等による疾病の早期発見・早期治療、つまり二次予防も健康保持増進対策の一環として取り組むことを明記しています。

対象となる健康課題として挙げられたのは、がん、女性特有の健康課題(月経不順、月経困難症、過多月経、月経前症候群、更年期障害等)、歯科疾患、骨粗しょう症、眼科疾患の5分野です。取組方法としては、事業者自らまたは医療保険者と連携した健康診断の機会を活用した検診機会の提供と、労働者が居住する市町村で健康増進法に基づき実施されている検診の受診勧奨および受診のための休暇の付与の2つが示されました。新旧対照表案には、国が市区町村の検診として推奨している5つのがん、すなわち胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診と、その結果に基づく精密検査の受診勧奨も書き込まれています(出典: 報告書(案))。

推進のための具体策として列挙されたのは、啓発パンフレットの配布、ポスターや社内サイトへの掲示、全労働者を対象としたメールや社内通達の発出、健康診断実施者への精密検査受診勧奨の業務委託、検診費用の助成、そして検診受診に対する特別休暇の付与などです。制度設計に落ちる項目が並んでいる点が、社労士業務との接点になります。

社労士事務所にとっての論点は就業規則と両立支援

顧問業務との距離が近いのは2点です。1点目は、就業形態にかかわらず全ての労働者が対象であることを明確化する記載が趣旨の部分に入ったことです。非正規雇用労働者を含めた対象の取り方が、指針の文面として整理されます。2点目は、治療と就業の両立支援がTHP指針上に明記されたことです。報告書概要案には、労働施策総合推進法の改正により事業主の取組が努力義務化され、2026年4月1日に施行されたと記載されています(出典: 報告書の概要(案))。今回の指針改正案は、その流れを産業保健の側から受ける整理として読めます。

特別休暇の付与や検診費用の助成が推進策として並ぶ以上、顧問先で採用する場合は休暇制度と費用負担の規定をどこに置くかという設計論点になります。就業規則の点検作業そのものをAIで補助する考え方は就業規則の作成とチェックをAIで行う設計で整理していますので、あわせて参照いただけます。

PHRと健康情報の取扱いという新しい論点

もう一つ見落とせないのが、健康情報の扱いです。新旧対照表案には、事業者が労働者に対してデジタルツール等を活用し、生涯にわたる自身の保健医療情報(PHR:Personal Health Record)の把握に努めるよう促すことも考えられる、という一文が新たに加わりました。第4回の参考資料には「民間PHR事業者による健診等情報の取り扱いに関する基本的指針」も配布されています。

スマートフォンで健康データを確認する人

指針は個人情報の保護への配慮の項で、個人情報の保護に関する法律と、労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針(平成30年9月7日 公示第1号)を挙げています。がん検診の結果まで事業場で扱う範囲が広がるとすれば、取得目的、保管方法、アクセス権限、外部委託先の管理といった設計が実務の焦点になります。生成AIで健康相談の記録を要約するといった運用を検討する事業場も今後は出てくると見られますが、健康情報をどのツールに入力するかは、顧問先への説明と同意の取り方を含めて事前に整理しておきたい領域です。士業事務所の側でも、顧問先の健康情報を扱う場面での守秘義務と情報管理の線引きを確認しておく段階といえます。事務所業務でAIをどこまで使うかの整理は社労士のAI活用事例にまとめています。

今後の展望と事務所の初動

指針改正の公示日は、新旧対照表案では「令和8年〇月〇日」と空欄のままです。したがって施行時期は要確認の段階です。報告書案は第4回でとりまとめに向けた議論の対象になっており、確定後に指針の公示という流れが想定されます。

国の今後の取組としては、産業保健総合支援センターや労働災害防止団体と連携した中小企業への支援、経済産業省が推進する健康経営との連携、「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」の改定、そして改正後の取組状況を把握する事業所調査が挙げられています。手引きの改定は、顧問先に配布している資料の差し替えが発生する箇所です。

初動として、検討会ページと報告書案に目を通して改正の方向を押さえる、衛生委員会の議題として二次予防の扱いを取り上げるかを顧問先と相談する、特別休暇や費用助成を導入する場合の就業規則の条文案を仮置きしておく、健康情報の取扱規程の棚卸し範囲を確認する、という順で準備を始めている事務所があります。公示前に規程を確定させるのではなく、指針の確定を待って詰める段取りを採る例が多いようです。

まとめ

厚生労働省は2026年8月4日、THP指針の改正案を含む報告書案を公表し、2026年8月5日の第4回検討会で議論します(出典: 厚生労働省 第4回検討会 資料ページ)。改正案は健康保持増進措置の範囲をがん検診等の二次予防まで広げ、就業形態を問わず全労働者が対象であることを明確化し、治療と就業の両立支援を明記し、PHRの活用を促す内容です。公示日は空欄のままのため、施行時期は要確認です。

参考文献

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引用元: 厚生労働省

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

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