電子取引の一問一答が令和8年7月版へ 税理士が回す7点検

国税庁の電子帳簿保存法一問一答が令和8年7月版に更新されました。電子取引データの保存要件を顧問先ごとに点検する7手順と、生成AIに任せる範囲・税理士が持つ判断の線を整理します。

電子取引の一問一答が令和8年7月版へ 税理士が回す7点検

電子取引データ保存とは、やり取りした取引情報を電子のまま残す制度のことです。

顧問先の保存要件を最後に点検したのはいつでしょうか。国税庁は電子帳簿保存法一問一答を令和8年7月版に更新し、電子帳簿・電子書類関係、スキャナ保存関係、電子取引関係の3冊を公開しています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答(Q&A))。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。この記事では、更新された一問一答を手元に置きながら、顧問先の保存状況を生成AIで整理していく7つの点検を扱います。

令和8年7月版で押さえておく更新の輪郭

国税庁の一問一答は、電子帳簿保存法の運用について問答形式で見解を示した資料です。令和8年7月版として、電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係、スキャナ保存関係、電子取引関係の3冊が公開され、あわせて変更箇所を明示した版も同じページで配布されています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答(Q&A))。変更箇所が分かる版が出ているので、前回版との差分だけを追う読み方ができます。

電子取引関係の版は、通則、適用要件、重加算税の加重措置の除外措置、その他という4部構成で、問1から問102まで並んでいます(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月)。第1部と第2部は制度の骨格で、これまでの版から連続しています。実務で読み込む価値が高いのは第3部の重加算税の加重措置の除外措置で、告示やPeppolインボイスに関する問が並びます。

制度の骨格を確認しておきます。同資料の問1は、所得税および法人税の保存義務者が取引情報を電磁的方式により授受する取引を行った場合に、その取引情報を電磁的記録により保存する制度であると説明しています(出典: 同資料)。ここでいう取引情報とは、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項を指すと同資料の問2は整理しています。

保存の要件は、真実性と可視性の2つの軸で組まれています。同資料の問18は、システム概要書の備付け、見読可能装置の備付け等、検索機能の確保という3つに加えて、改ざん防止のための措置として4つの選択肢を挙げています。タイムスタンプが付された後の授受、速やかにタイムスタンプを付すこと、訂正削除の記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利用すること、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて備え付け運用することの4つです(出典: 同資料)。中小の顧問先で最も現実的なのは、4つ目の事務処理規程を定める方法です。

士業のチカラでは、会計事務所側の受け皿づくりをAI-OCRと自動仕訳を会計事務所に入れる7判断軸でも扱いました。読取と仕訳の自動化を進める前提として、顧問先側のデータがどう保存されているかを把握しておくと、後戻りが減ります。

顧問先の保存状況を洗い出す7つの点検

以下は、顧問先ごとの点検を7つに分けた進め方です。生成AIは資料の整理と下書きに使い、要件に当てはまるかどうかの判断は税理士が行います。

第1点検は、電子で受け取っている書類の棚卸しです。同資料の問5は、電子メールでのPDF受領、ホームページからのダウンロード、電子請求書のクラウドサービス、クレジットカードや交通系ICカードの利用明細を活用したクラウドサービス、EDIシステム、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機、記録媒体を介した受領を挙げ、いずれも電子取引にあたる整理を示しています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月)。ここまで広いという前提で顧問先に聞き取りを行うと、抜けが減ります。

第2点検は、メールの扱いです。同資料の問6は、電子メールで授受される情報のすべてが取引情報になるわけではないとし、取引情報が含まれていないメールを保存する必要はないと述べています。本文に取引情報が書かれている場合はそのメールを、添付ファイルで授受された場合は添付ファイルのみを保存すればよいという整理です(出典: 同資料)。全部残すか全部捨てるかの二択で悩んでいる顧問先には、この線引きを渡すだけで作業量が変わります。

第3点検は、紙と電子が混在している場合です。同資料の問16は、電子データと書面の内容が同一で、書面を正本として扱うことを社内で取り決めている場合には、その書面の保存のみで足りるとし、書面で受領した取引情報を補完する情報が電子データに含まれるなど内容が同一でない場合には両方の保存が必要になると整理しています(出典: 同資料)。取決めの有無が分かれ目になるため、顧問先に文書があるかを確認します。

第4点検は、検索機能です。同資料の問19は、請求書データのファイル名に日付、取引先、金額を規則性をもって表示する方法、取引先ごとや月ごとのフォルダに格納する方法、事務処理規程を定めて運用する方法を組み合わせる例を示し、索引簿を作成して管理する方法も可能としています(出典: 同資料)。さらに問51と問21は、判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下で、ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合などに、検索機能の確保が不要になる取扱いを説明しています(出典: 同資料)。顧問先の規模によって、やることが変わる部分です。

第5点検は、従業員の立替払いです。同資料の問12は、従業員が支払先から領収書を電子データで受領した行為も、会社の行為として行われる場合には会社としての電子取引にあたるとし、会社として取りまとめて保存することが望ましいとしたうえで、集約までの一定の間は従業員の端末に保存しつつ、日付、金額、取引先の検索条件に紐づく形で管理することも認められると述べています(出典: 同資料)。経費精算まわりは漏れが起きやすいので、ここは個別に確認します。

第6点検は、間に合っていない場合の道筋です。同資料の問93は、令和6年1月1日以後に行う電子取引について、要件に従って保存することができなかったことに相当の理由があると所轄税務署長が認め、税務調査等でデータと出力書面の提示や提出に応じられるようにしている場合の取扱いを説明しています(出典: 同資料)。これは保存自体が不要になる話ではないため、顧問先への説明では、データは残したうえでの話であると明確に伝えます。

第7点検は、税理士による最終確認です。ここまでの6つはAIに整理させられますが、その顧問先の実態が要件を満たす状態にあるかを判断する工程は人が持ちます。判断の根拠になった問番号を記録に残しておくと、翌年の点検が短くなります。

顧問先へのヒアリングシートを作るときは、次のプロンプトが使えます。

あなたは会計事務所の業務整理を手伝うアシスタントです。
顧問先に電子取引データの保存状況を聞き取るための質問案を、次の6区分で作ってください。
(1) 電子で受け取っている書類の種類と経路
(2) メールと添付ファイルの保存方法
(3) 紙と電子が重複している書類の取決め
(4) ファイル名や索引簿など検索のための工夫
(5) 従業員の立替払いの扱い
(6) 改ざん防止のために採っている措置
各質問は、はい・いいえで終わらず、実際の運用が言葉で返ってくる形にしてください。
法令の当てはめや可否の判断は書かないでください。

聞き取り結果を整理するときは、次のプロンプトが使えます。

以下は顧問先へのヒアリング結果です。
次の3つに仕分けて箇条書きにしてください。
(1) 事実として記録されている運用
(2) 記載が曖昧で追加確認が必要な点
(3) 記録に出てこなかった論点
推測で補わず、書かれていないことは「記載なし」と明記してください。
要件を満たすかどうかの評価は書かないでください。

ヒアリング結果:
(ここに貼り付ける)

2つ目のプロンプトで評価を書かせない設計にしているのは、判断を税理士の側に残すためです。AIに評価まで書かせると、その文章が独り歩きして顧問先に渡ってしまいます。

顧問先データをAIに通す前に決めておく守秘義務の線

顧問先の請求書や領収書のデータには、取引先名、金額、口座情報が含まれます。これを整理するために生成AIへ入力するのであれば、入力の範囲と入力先のサービスの仕様を先に決めておく必要があります。

根拠条文を確認しておきます。税理士法第38条は、税理士が正当な理由がなく税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、または窃用してはならないこと、税理士でなくなった後も同様であることを、秘密を守る義務として定めています。この条文と生成AIの利用との関係は、入力先の仕様と契約内容によって整理が変わる領域です。だからこそ、ツールごとにデータの取扱いを確認して記録に残す運用が意味を持ちます。

外部サービスへ顧問先の個人データを渡す場面では、個人情報の保護に関する法律第27条の第三者提供の制限が論点になります。同条は本人の同意を原則としたうえで、利用目的の達成に必要な範囲内で取扱いを委託することに伴って提供される場合について、提供先を第三者に該当しないものとする規定を置いています。生成AIの利用がこの委託の構成に乗るかどうかは、規約と契約の内容次第です。

実務としては3つを決めておくと動きやすくなります。ひとつ目は、取引先名や金額を入れる場合と、様式や手順の一般論だけを入れる場合を分けることです。ヒアリングシートの作成や制度の整理は後者で足ります。ふたつ目は、入力してよい範囲を顧問契約や覚書のどこに書くかを決めることです。みっつ目は、入力の記録を残す形式を決めることです。士業のチカラでは、税理士が生成AIに入れてよい情報の範囲で線の引き方を整理しています。

事務処理規程についても触れておきます。同資料の問33は、規則に規定する正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規程について、具体的にどのような規程を整備すればよいかという問を立てています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月)。この規程の下書きを生成AIに作らせる事務所は増えていますが、雛形として公開されているものが一次資料の側にあるため、まず原典を取り、そのうえで顧問先の実態に合わせて差分を書く順序のほうが早く終わります。

現場で起きやすい3つのつまずき

ひとつ目は、旧版のQ&Aを根拠に説明してしまうことです。一問一答は改訂が重ねられており、令和8年7月版として3冊が公開されています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答(Q&A))。生成AIは古い版の記述を学習している可能性があるため、問番号と本文は最新版のPDFで突き合わせます。

ふたつ目は、検索要件の緩和を過大に読むことです。判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下という基準に触れる問がある一方で、令和5年度の税制改正前は1,000万円以下という基準だったことも同資料は注記しています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月)。どの期間の取引かで適用される基準が変わるため、顧問先への説明では対象期間を先に確定させます。

みっつ目は、AIが作った説明文をそのまま顧問先へ送ってしまうことです。制度の説明は言い回しひとつで意味が変わります。士業のチカラでは、生成AIの条番号と施行日は疑う ダブルチェック7工程で、原典に戻る工程の作り方を扱いました。

点検にかかる工数と体制の置き方

顧問先ごとの点検は、ヒアリングシートの作成を事務所で1回だけ行い、それを使い回す形にすると、2回目以降が軽くなります。聞き取り自体は月次巡回の時間に組み込める分量です。整理と下書きをAIに寄せ、税理士の時間は判断と説明に集中させる配分が現実的です(出典: 士業のチカラ編集部による業務設計の想定であり、公表された調査に基づく数値ではありません)。

体制面では、点検の記録をどこに残すかを先に決めます。顧問先ごとのフォルダに、確認日、確認した問番号、判断、次回の宿題を1枚にまとめておくと、担当者が替わっても引き継げます。記帳工程の権限設計まで踏み込む場合は、記帳を担うAIエージェントの権限をどう分けるかもあわせて参照できます。

重加算税の加重措置の除外措置が持つ意味

令和8年7月版の電子取引関係には、重加算税の加重措置の除外措置に関する問が並んでいます。特定電子計算機処理システムを使用した電子取引データの授受、令和7年国税庁告示第2号に関する事項、Peppolインボイスの受領と発行、除外措置の適用を受けるための届出書といった論点が扱われています(出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月)。

ここから読み取れるのは、データの受け渡し経路そのものが制度上の評価対象になってきているという流れです。会計ソフトのAPI連携やRPAでの取得についての問も置かれています。顧問先がどの経路でデータを受け取っているかを把握することは、業務効率の話であると同時に、適用関係を考える材料でもあります。届出の要否や期限は個別の事情で変わるため、実際の適用検討は原典と所轄への確認を前提に進める領域になります。

よくある質問

令和8年7月版はどこで確認できますか

国税庁のサイトで確認できます。電子帳簿保存法一問一答のページに、電子帳簿・電子書類関係、スキャナ保存関係、電子取引関係の3冊と、それぞれの変更箇所を明示した版が並んでいます。差分だけを追いたい場合は、変更箇所入りの版から読むと早く済みます。

検索機能を確保しなくてよい場合があるのですか

一定の場合について、検索機能の確保が不要になる取扱いが示されています。国税庁の一問一答は、判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合や、電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理したものを提示・提出できるようにしている場合を挙げています。対象期間によって基準が異なるため、どの期間の取引かを先に確定させる読み方になります。

顧問先の請求書データを生成AIに読ませてもよいのでしょうか

事務所ごとの判断になります。論点は、入力先のサービスがデータをどう扱うかと、税理士法第38条の秘密を守る義務との関係をどう整理するかの2点です。規約でデータの学習利用と保存期間を確認し、入力してよい範囲を先に決めて記録に残す運用が現実的です。

事務処理規程は自分たちで作れますか

国税庁の一問一答には、正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規程についての問が置かれ、サンプルの参照先も案内されています。原典のサンプルを取ってから、顧問先の実態に合わせて修正する順序が手戻りの少ない進め方です。

従業員の立替経費はどう扱えばよいですか

国税庁の一問一答は、従業員が電子データで領収書を受領した行為も、会社の行為として行われる場合には会社としての電子取引にあたるとしています。会社として取りまとめて保存することが望ましいとしつつ、集約までの一定の間は従業員の端末に保存し、日付、金額、取引先の検索条件に紐づく形で管理することも認められると述べています。

保存が間に合っていない顧問先にはどう説明しますか

まず、データを残すこと自体は前提であると伝えるところからです。国税庁の一問一答は、要件に従って保存できなかったことに相当の理由があると所轄税務署長が認め、データと出力書面の提示や提出に応じられるようにしている場合の取扱いを説明しています。個別の当てはめは所轄との関係で決まるため、事実関係を整理して相談する流れになります。

AIに一問一答を読ませて要約させてもよいですか

要約自体は作業として成り立ちますが、問番号と本文の突き合わせは人が行う前提で使うほうが安全です。生成AIは旧版の記述や存在しない問番号を出力することがあります。顧問先に渡す文書に載せる前に、最新版のPDFで該当箇所を開いて確認する工程を固定しておくと、事故が減ります。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

記載内容に誤りを見つけられた場合は、お問い合わせよりご指摘ください。確認のうえ速やかに訂正し、訂正履歴を記事内に残します。編集方針の詳細は運営者情報をご覧ください。