連続勤務規制とは、休日なしで働ける日数に上限を置く仕組みのことです。
厚生労働省の労働基準関係法制研究会報告書は、2週間以上の連続勤務を防ぐ観点から、13日を超える連続勤務をさせてはならない旨の規定を労働基準法上に設けるべきだと述べています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。この記事では、連続勤務規制と勤務間インターバルの議論がいまどこにあるかを一次資料で確認し、法案の成立を待たずに社労士が顧問先と進められる6つの手順を整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は厚生労働省の公表資料で確認しています。
議論はいまどこにあるのか、現行法との距離
先に押さえたいのは、これが提言と審議の段階だという点です。研究会報告書は連続勤務の上限や勤務間インターバルについて方向性を示したものであり、その後の制度化は労働政策審議会労働条件分科会での審議に委ねられています。同分科会では、法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利を論点とする資料が第204回(令和7年10月27日)に示され、その後も審議が続いています(出典: 厚生労働省 労働時間法制の具体的課題について(労働条件分科会 第204回資料)、厚生労働省 労働政策審議会(労働条件分科会))。改正法の成立時期と施行日については、本稿の作成時点で確定した情報を確認できていないため、要確認としておきます。
現行法との距離も見ておきます。労働基準法第35条は、使用者が労働者に対して毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないと定め、第2項で4週間を通じ4日以上の休日を与える場合には第1項を適用しないとしています。報告書は、この4週4休の下で法定休日を偏らせれば長期間の連続勤務が生じてもそれだけで同法違反となるわけではないと整理し、脚注で、休日労働の扱いをせずに理論上最大48連勤が可能だと記しています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。ここが今回の議論の出発点です。
背景として報告書が挙げているのが、労災の認定基準です。精神障害の認定基準では、2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行ったことが心理的負荷となる具体的出来事の一つとして示されており、近年も同様の評価により支給決定を行った事案が生じているとされています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。13日という数字は、この2週間という線から逆算されたものです。あわせて報告書は、災害復旧等の真にやむを得ない事情がある場合の例外措置や、安全上やむを得ず必要な場合等の代替措置を労使の合意で可能とする措置についても検討すべきだと述べています。
勤務間インターバルは、現行では努力義務の位置にあります。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第2条は、事業主の責務として、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定を含む労働時間等の設定の改善を図るよう定めています。報告書は、この規定と労働時間等設定改善指針の記述が概念的な内容にとどまり、インターバルの時間数や対象者、導入上の留意事項は法令上示されていないと指摘したうえで、抜本的な導入促進と義務化を視野に入れた法規制の強化を検討する必要があるとし、その内容として勤務間インターバル時間11時間を原則としつつ、適用除外とする職種等の設定や、11時間を確保できなかった場合の代替措置について柔軟な対応を認める考え方を挙げています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。
普及の実態も数字で出ています。報告書は、2023年(令和5年)1月時点の導入企業割合が6.0%にとどまるとし、制度の導入予定がなく検討もしていない81.5%の企業のうち51.9%が、超過勤務の機会が少なく導入の必要性を感じないためと回答している点にも留意が必要だと記しています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書、いずれも厚生労働省の令和5年就労条件総合調査に基づく数値)。顧問先の多くにとって、これは自社に関係が薄い話に見えている、という前提から入る必要があります。
法案を待たずに進められる6つの手順
結論から言えば、いま着手する価値があるのは実態の可視化です。制度の中身が固まってから調べ始めると、対象の洗い出しだけで数か月かかる顧問先が出ます。順に見ていきます。
第1手順は、対象の絞り込みです。全顧問先を一斉に見るのではなく、シフト制、交替制、繁忙期に休日出勤が集中する業種を先に選びます。小売、宿泊、飲食、運輸、医療介護、警備、建設あたりが典型です。ここで対象を十社前後に絞ると、次の作業が現実的な工数に収まります。選定の理由も1行で残しておくと、後から範囲を広げるときの説明が楽になります。
第2手順は、データの型を決めることです。勤怠システムから出力するCSVの列を、社員コード、日付、始業時刻、終業時刻、休憩時間、勤務区分の6つに統一します。顧問先ごとにシステムが違っても、この6列に落とし込めば同じ処理が回せます。氏名は落とし、社員コードだけを残す形にしておくと、後述する守秘の整理が楽になります。
第3手順が、連勤の抽出です。日付の連続と勤務の有無だけを見て、休日を挟まずに勤務した日数の最大値を人ごとに出します。13日という線を意識するなら、10日以上の系列をすべて拾い、どの月に集中しているかを見ます。生成AIに任せるなら、次のような指示になります。
添付のCSVを読み、社員コードごとに「休日を挟まない連続勤務日数」を計算してください。
勤務区分が「出勤」「休日出勤」のいずれかの日を勤務日、それ以外を非勤務日として扱います。
出力は次の3つのシートを持つExcelにしてください。
シート1: 社員コード / 最大連続勤務日数 / その開始日 / 終了日
シート2: 連続勤務日数が10日以上だったすべての系列(社員コード / 開始日 / 終了日 / 日数)
シート3: 月別の該当人数
必ず、CSVに書かれた日付と勤務区分だけを根拠にしてください。
欠損や重複がある行は計算から外し、除外した行の一覧を別シートに残してください。
氏名などCSVに無い情報を補完しないでください。
第4手順は、勤務間インターバルの実測です。前日の終業時刻と翌日の始業時刻の差を計算し、報告書が原則として挙げる11時間を下回った回数を人ごとに集計します(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。日付をまたぐ深夜勤務がある顧問先では、退勤打刻の日付処理を先に確認しておくと数字が狂いません。
添付のCSVを読み、社員コードごとに「前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの時間」を
すべて計算し、11時間未満だった回数を集計してください。
条件:
- 前日が非勤務日の場合は計算対象から外してください
- 終業時刻が翌日にまたがるデータ(例 25:30 や翌日1:30)の扱いを、
どう解釈したかを最初に明記してから計算してください
- 出力は 社員コード / 11時間未満だった回数 / 最短だった時間 / その日付 の並びにしてください
- 判断に迷ったデータは計算に含めず、「要確認」として別に一覧化してください
第5手順は、就業規則との突き合わせです。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇などの事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出るべきことを定めています。現行の規定で休日と変形休日制がどう書かれているか、法定休日が特定されているかを確認します。報告書は、あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定することに取り組むべきだとも述べており、この論点は先に整理しておくと後の改定が軽くなります(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。
第6手順が、社労士による確認と顧問先への報告です。ここを工程に明示的に置きます。AIが出した集計は、計算の前提が正しいかどうかで結論が変わります。特に、深夜勤務の日付処理、休日出勤の勤務区分の扱い、打刻漏れの除外件数の3点は、有資格者が元データに戻って確認する箇所です。報告に載せるのは、該当人数と部署の偏りまでにとどめ、制度が確定していない段階での断定的な評価は避ける形が実務的です。社会保険の適用拡大に伴う洗い出しの進め方は、2026年10月の賃金要件撤廃で誰が加入対象になるかでも扱っています。
勤怠データを生成AIに渡す前に決めておくこと
論点は、データの性質、根拠条文、顧問先との合意の3つです。
勤怠データは、社員コードだけにしても個人データとしての性質が消えるわけではありません。顧問先の側で照合できる情報である以上、外部サービスへ渡す整理では、個人情報保護法第27条の第三者提供の制限と、同条第5項第1号が定める委託に伴う提供の位置づけが検討対象になります。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しており、入力データの取扱いを確認する起点になります(出典: 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等)。
社労士側の根拠条文も押さえます。社会保険労務士法第21条は、開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員が、正当な理由がなくてその業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならないと定め、その地位でなくなった後も同様としています。条文はこう定めているという事実であり、クラウドAIへの投入が直ちにこれに触れるかどうかは、投入するデータの内容と契約条件によって変わる論点です。
実務で採れる形は3つあります。1つ目は、氏名と部署名を落とし、社員コードのみで処理する運用です。2つ目は、入力データを学習に使わない契約形態のサービスを選ぶ運用です。3つ目は、顧問先との業務委託の範囲に、勤怠データの分析でAIを用いること、投入する項目、保存と削除の扱いを明記しておく運用です。この3つを組み合わせておくと、顧問先から問われたときに説明できる状態になります。
事務所規程に落とすなら、勤怠データを扱う手順を1本立てるのが分かりやすい構成です。投入前に落とす列、使用するサービス、処理後のファイルの削除時期、集計結果を顧問先へ出す前の確認者を並べます。サービス名や設定値は別紙の運用表に置き、規程本体には手順と責任者だけを書く形にすると、ツールを変えたときの改定が軽くなります。個人情報の取扱いに関する行政の動きは、個情委がオプトアウト届出事業者を実態調査でも整理しています。
起きやすい3つのつまずき
1つ目は、確定していない制度を確定として説明することです。研究会報告書は提言であり、労働条件分科会での審議は続いています。顧問先への説明資料に施行日を書くと、後で撤回する場面が出ます。いま書けるのは、議論されている内容と、自社の実態がその線からどれだけ離れているかまでです。
2つ目は、AIの集計を検算せずに出すことです。連勤の計算は、勤務区分の定義ひとつで結果が変わります。休日出勤を勤務日に数えるかどうかで、最大連勤日数は大きく動きます。前掲のプロンプトで解釈の明記を先に求めているのは、この検算を成立させるためです。数人分を手作業で追い、AIの出力と一致するかを確認する工程を挟みます。
3つ目は、氏名入りのシフト表をそのまま投入することです。現場から受け取るシフト表は、氏名と勤務記号だけのExcelであることが少なくありません。列を落とす作業を誰がやるかを決めていないと、急ぎの案件で省略されます。受領時に社員コードへ置き換える工程を、顧問先側の担当と合意しておく形が確実です。
工数と体制の見立て
初回の工数は、顧問先ひとつを単位に見ると、データの受領と整形が半日弱、集計と検算が数時間、報告資料の作成が数時間という規模感です。二巡目以降は、同じ列構成に統一できていれば整形の時間が大きく減ります。十社分をまとめて回すなら、初月に数日の枠を確保しておく見立てになります。ここは顧問先の勤怠システムの状況で変わるため、実測して更新する前提で置きます。
作業を軽くする鍵は、勤怠システムの出力形式を先に揃えることにあります。顧問先ごとに列名も日付の書式もばらばらのまま集計に入ると、整形が毎回発生します。受領の時点で、社員コード、日付、始業、終業、休憩、勤務区分の並びに直してもらうよう依頼できれば、二巡目からの作業はほぼ集計だけになります。依頼のハードルが高い顧問先には、事務所側で変換の手順書を用意し、担当者が同じ操作を繰り返せる形にしておく方法もあります。
費用面では、既存の生成AIの契約枠内で収まる作業がほとんどです。新たな支出が出るとすれば、勤怠システムのデータ出力機能の追加や、顧問先側の打刻運用の見直しに伴うものです。事務所としては、この作業を無償の付随サービスにするか、実態調査として単価を立てるかの判断が要ります。制度が動く前の実態把握は、動いた後の就業規則改定と一体で見積もれる業務です。
体制は、担当をひとりに固定するより、データ整形と集計を担う人と、結果を確認して顧問先に説明する社労士を分けるほうが回ります。前者は手順書があれば所内のスタッフでも担えます。後者は資格者の判断が入る部分であり、ここを兼務させると確認が形骸化しやすくなります。
例外と代替措置の設計が焦点になる
注視したいのは、報告書が例外措置と代替措置に紙幅を割いている点です。連続勤務については災害復旧等の真にやむを得ない事情や、安全上やむを得ず必要な場合の代替措置を労使の合意で可能とする措置の検討が挙げられ、勤務間インターバルについても適用除外とする職種等の設定や、11時間を確保できなかった場合の代替措置が論点として並んでいます(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。
これは、制度が動いたときに社労士の仕事が増える場所を示しています。一律の基準に合わせる作業ではなく、顧問先ごとに例外の要否を判断し、労使協定や就業規則に落とす作業になるからです。実態把握を先に済ませておけば、この設計に入る速度が変わります。
もうひとつ、導入企業割合6.0%という数字の読み方があります(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。多くの顧問先にとってインターバル制度は未経験の仕組みであり、制度の説明そのものが業務になります。現時点で自社の勤務実態を数字で示せる顧問先は少なく、その可視化を担えるのが顧問社労士だという位置づけです。
議論の射程がつながらない権利にも及んでいる点も見ておきたいところです。労働条件分科会の資料は、法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバルと並べて、つながらない権利を論点として示しています(出典: 厚生労働省 労働時間法制の具体的課題について(労働条件分科会 第204回資料))。勤務時間外の連絡をどう扱うかは、勤怠データには表れにくい領域です。実態把握の設計を組むときに、打刻に現れる労働時間と、現れない拘束を分けて考えておくと、次の論点が動いたときに手戻りが減ります。
よくある質問
連続勤務13日超の禁止は、もう決まったのですか
決まった事実は確認できません。13日を超える連続勤務をさせてはならない旨の規定を労働基準法上に設けるべきだと述べているのは、厚生労働省の労働基準関係法制研究会報告書です(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。その後の制度化は労働政策審議会労働条件分科会で審議されており、成立時期と施行日は要確認です。
いまの法律では、何日まで連続勤務できるのですか
労働基準法第35条は毎週少なくとも1回の休日を定め、第2項で4週間を通じ4日以上の休日を与える場合の例外を置いています。研究会報告書は、この規定の下で法定休日を偏らせた場合について、休日労働の扱いをせずに理論上最大48連勤が可能だと脚注で記しています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。
勤務間インターバル11時間は義務になりますか
現時点では努力義務です。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第2条が事業主の責務として終業から始業までの時間の設定を挙げています。報告書は義務化を視野に入れた法規制の強化の検討が必要だとし、11時間を原則としつつ適用除外や代替措置に柔軟性を持たせる考え方を示していますが、法令上の義務となるかは審議の結果によります(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。
顧問先から「うちは関係ない」と言われたらどうしますか
数字で確認する提案が有効です。報告書は、導入予定がなく検討もしていない81.5%の企業のうち51.9%が、超過勤務の機会が少なく必要性を感じないためと回答している点に留意が必要だとしています(出典: 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書)。実感と実態がずれている可能性があるため、まず1か月分の勤怠データで実測する流れを勧める形が採れます。
勤怠データを生成AIに入れてもよいですか
判断材料は3つです。使用するサービスのデータ利用条件、社会保険労務士法第21条が定める秘密を守る義務、そして個人情報保護法第27条の第三者提供と委託の整理です。実務では、氏名と部署名を落として社員コードのみで処理し、顧問先には投入する項目と保存期間を事前に説明しておく運用例があります。
就業規則はいつ改定すればよいですか
制度の内容が固まってからで間に合う部分と、いま整理できる部分に分かれます。法定休日の特定や変形休日制の記載の確認は、いまできます。連続勤務の上限やインターバルの条項は、法令の内容が確定してからでないと書きようがありません。実態把握を先に済ませ、改定作業だけを待つ順序が無駄になりません。
AIに就業規則の改定案を書かせても大丈夫ですか
たたき台としてなら使えますが、条番号と施行日の扱いに注意が要ります。生成AIは、存在しない条番号や未確定の施行日をもっともらしく出力することがあります。根拠資料に無い内容は書かせない制約をプロンプトに入れ、出力後に社労士がe-Gov法令検索の原文と突き合わせる工程を置く形が現実的です。
参考文献
- 厚生労働省 労働基準関係法制研究会報告書
- 厚生労働省 労働時間法制の具体的課題について(労働条件分科会 第204回資料)
- 厚生労働省 労働政策審議会(労働条件分科会)
- 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等
- e-Gov法令検索 労働基準法第35条(休日)
- e-Gov法令検索 労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
- e-Gov法令検索 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第2条(事業主等の責務)
- e-Gov法令検索 社会保険労務士法第21条(秘密を守る義務)
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