373年解けなかった暗号をAIが44分で解読 士業が読む3つの含意

Claude Fable 5.1が1653年由来の未解読暗号を44分で解読。Vals AIの公表内容を整理し、資料横断・検証条件の設計・未確認の明示という士業視点の3論点を解説します。

373年解けなかった暗号をAIが44分で解読 士業が読む3つの含意

Claude Fable 5.1が373年未解読の暗号を44分で解読しました(出典: Vals AI)。

法務・税務・金融領域のAI評価を手がけるVals AIが2026年8月31日、AnthropicのClaude Fable 5.1に「未解読の暗号をひとつ選んで解いてほしい」という開いた指示だけを与えたところ、1653年の書物に印刷されて以来解かれてこなかった暗号を44分で解いたと公表しました。士業の明日の業務手続が変わる話ではありません。ただ、AIがどういう種類の問題で成果を出しはじめたのかを示す事例として、事務所のツール選定や技術追従の判断材料になります。以下は公表資料をもとに、士業のチカラ編集部が事実関係を整理したものです。

44分・176kトークン・人の口出しゼロで解けた

Vals AIの公表によると、対象はスコットランドの著述家サー・トマス・アーカートが1653年の著作『Logopandecteision』の末尾に残した「Cyphral Distich」と呼ばれる数字の並びです。32個の数字が2行、合計64個だけが手がかりで、それ以外の鍵は残されていませんでした。この暗号は1899年の雑誌『Notes and Queries』で公開の問題として提示され、20世紀の暗号研究文献にも登場し、暗号史研究者クラウス・シュメーの「未解読暗号トップ50」にも挙げられてきたものです。

Fable 5.1がたどり着いた答えは、44分・約176,000トークン・人からの追加指示ゼロで出たとされています(出典: Vals AI)。頻度分析や換字といった従来の手法はどれも通じませんでしたが、モデルは別の見方に切り替えました。鍵は本の外にあるのではなく、本そのものだったという見方です。

暗号の直前には、アーカートが「32の願い(Proquiritations)」を並べています。i番目の数字はi番目の願いを指し、その数字を単語の順番として使い、選ばれた単語の頭文字を取る。この規則を当てはめると、2行の英文が現れました。各行がちょうど32文字で、行末が and と land で韻を踏む二行詩になっており、内容も王党派だったアーカートの立場と整合します。答えが正しいかどうかを、答え自身の形が裏づける構造になっていた点が重要です。

同じ著者が1652年の『The Jewel』に残した285個の数字による大型の暗号についても、Fable 5.1は同じ発想でほぼ全体を復元したと報告されています。ただしVals AIは、9文字分は読める英語にならなかったこと、位置159以降はページが1つずれること、確認には原本か1983年の校訂版が要ることを、そのまま書き添えています。

なぜこの1件が注目されているのか

注目されている理由は、解き方が派手だったからではなく、その逆だからです。Vals AIの筆者は「The answer was simple in hindsight.」と書いています(Vals AI)。ヒント自体は難しくなく、人間が数十年見落としていただけでした。

筆者は数か月にわたり他のフロンティアモデルにも同種の課題を与えてきたものの、検証できる解答は得られなかったと述べています。一方で、他のモデルなら解けないという意味ではない、とも書いています。Fable 5.1が優れていたのは暗号解読の腕前ではなく、多数の未解読暗号の中から「これは手が届きそうだ」と当たりをつけ、行き詰まった問題は切り上げ、見込みのある一つを掘り続けた点だと整理されています。

つまり、これまで「誰かが何日もかけて地味な資料を読み込む気力を出せるか」で止まっていた種類の問題が、機械の持久力で動きはじめたという話です。数学の定理証明ではなく、古文書や忘れられた論点といった領域でこれが起きたことが、今回の新しさにあたります。

士業事務所の視点で拾える3つの論点

第一に、鍵は資料の外ではなく中にあった、という構図です。事務所の案件でも、答えが別紙や附則、経過措置、過去の議事録の中に眠っていて、そこまで読み切る時間が取れないという場面があります。AIが得意になりつつあるのは、まさにこの「全部当たり続ける」作業です。手元資料をどこまで機械に横断させるかは、事務所ごとに検討が始まっている段階です。

第二に、検証条件を先に決められたかどうかです。今回の解答が信用を得たのは、各行32文字ちょうどで韻を踏むという、あらかじめ決まった合格条件を満たしたからでした。AIの出力を業務で使うときも、何をもって正しいとみなすかを先に決めておけるタスクかどうかが、実際の使いどころを分けます。旧字体や手書き資料の読み取りのように、原本と突き合わせて確認できる作業は、この条件を満たしやすい部類です。関連して、申告書様式の読み取りをAI OCRで点検する記事もあわせて参照ください。

第三に、未確認を未確認のまま書いてあることです。Vals AIは大型の暗号について、読めなかった9文字と、原本を当たる必要があることを隠さずに記載しました。生成AIの出力を対外文書に載せる際の扱い方として、この書き方は参考になります。この論点はAI生成物の透かしと対外文書の運用でも整理しています。

なお、事務所で同種の使い方を試す場合、入力した資料がモデルの学習に使われるかどうかはプランと契約によって異なります。今回のVals AIの公表資料は評価目的の実験を報告したものであり、業務データの取扱いについては触れていません。導入判断の際は、利用するプランの公式ポリシーを個別に確認することになります。Fable系モデルのコスト面の変化についてはClaude Fable 5.1の価格と制約の変化を扱った記事を参照ください。

今後の動き

Vals AIは、より難度の高い未解読暗号を将来の実験候補として挙げつつ、現時点のモデルでは現実的な時間で解ける水準にはないという見立ても示しています。今回のように「検証可能で、誰も本気で粘っていない問題」が次々と処理されていくのか、それとも自己検証の効かない領域で誤答が積み上がるのかは、これから出てくる事例を見ていく段階です。士業の現場としては、検証条件を設計できる仕事から順に機械に渡していく、という順番が現実的な線になりそうです。

まとめ

Vals AIは、Claude Fable 5.1が1653年由来の未解読暗号を44分で解いたと公表しました。鍵は本の中にあり、答えは自己検証できる形をしていました。士業の視点では、資料横断の持久力、検証条件の設計、未確認の明示という3点が読みどころです。

参考文献

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引用元: Vals AI

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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