日税連が令和9年度税制改正建議書を提出 電子申告の環境整備4項目と論点

日税連が2026年8月27日に令和9年度税制改正建議書を関係省庁へ提出。重要建議項目9本と建議項目42本のうち、電子申告を基本に据えた納税環境整備4項目と書式標準化の要点を整理します。

日税連が令和9年度税制改正建議書を提出 電子申告の環境整備4項目と論点

日税連は8月27日、令和9年度税制改正建議書を関係省庁に提出しました。

日本税理士会連合会(日税連)は2026年8月28日、令和9年度税制改正に関する建議書を8月27日に関係省庁へ提出したことをお知らせで公表しました。建議書そのものは令和8年6月25日の第1回理事会で決定されたもので、今回はそれが実際に各省庁へ届けられた段階です。本稿は公表資料と建議書の原文を読んだうえで、税理士事務所の実務、とりわけ電子申告と書式の標準化にかかわる部分を中心に整理します。士業のチカラは有資格者による確認を経ていない媒体です。個別の判断は所属の税理士会や顧問の専門家にご確認ください。

税務書類とノートパソコンを前に確定申告のデータを確認している様子

何が提出されたのか 建議書42項目の全体像

提出されたのは「令和9年度税制改正に関する建議書」で、重要建議項目9本と、税目別に並ぶ税制改正建議項目42本で構成されています。提出先は財務大臣、財務省主税局長、国税庁長官、総務大臣、総務省自治税務局長、経済産業大臣、中小企業庁長官の7者です。原文は日税連が建議書のPDFとして公開しており、決定時の告知は令和9年度税制改正に関する建議書についてにまとまっています。

この建議は、税理士会に建議の権限を与える税理士法の規定に基づくものです。e-Gov法令検索で条文を確認すると、税理士法第49条の11が「建議等」として税理士会が権限のある官公署に建議できることを定めており、第49条の15がその規定を日本税理士会連合会に準用しています。建議書自身も冒頭で、他団体の税制改正要望とは異なり「独立した公正な立場からの、申告納税制度の理念にそった内容となっている点で特徴的」だと位置づけを説明しています。

重要建議項目9本の顔ぶれは、取引相場のない株式の評価の適正化、法人版事業承継税制の一般措置に代わる新たな猶予制度の創設、相続で取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合の所得税の扱い、消費税の複数税率制度の廃止と直接給付への転換、給付付き税額控除の一本化、給与支払報告書と所得税確定申告書の書式見直し、中小企業者等の法人税率の特例の期限延長、雑損控除の控除順序の見直し、少子化対策の税制面での検討という並びです。

電子申告を基本に据える 納税環境整備の4項目

事務所の作業手順に最も近いのは、建議項目37の「税務手続においては電子申告等の活用を基本とし、そのための課題を具体的に分析・検討し、制度及びシステムの両面での積極的な環境整備を行うこと」です。ここには4つの柱が置かれています。

1つ目は、申告に必要な情報のオンライン確認です。建議書は、紙で届く証明書類について電磁的方法で受け取る選択肢を広げること、マイナポータルに格納された情報へ納税者の親族や税理士がアクセスしやすくすること、マイページに載る税務情報を増やすことを挙げ、納税者と代理人である税理士が円滑に使える仕組みの検討を求めています。2つ目は、e-Taxの接続障害が起きた場合の扱いです。個別の申請による期限延長ではなく、対象者の範囲と期日を指定する方法を検討するよう促しています。

3つ目は支払調書制度の見直しです。現行では支払調書を本人に交付する扱いになっておらず、慣行として写しが渡っている実態があると建議書は指摘し、その情報が電子的に本人へ提供され、申告データに連動する仕組みの構築を求めています。4つ目は、電子申告を標準的な申告方法と位置づけたうえでの提出書類の書式見直しです。あわせて重要建議項目6では、申告情報の数値化と標準化を進め、自由記述を減らすことで資料合算事務の生産性を上げる方向が示されています。

期限まわりでは、電子申告で行った場合に法人税と消費税の申告期限および納期限を事業年度終了の翌日から3月以内とすること(項目20)、所得税の確定申告期限を3月15日から3月31日とすること(項目11)、償却資産について電子申告の場合に限り法人税の申告期限を選べる制度の早期実現(項目36)が並びます。電子申告の普及状況について建議書は、法人税申告等では定着した感があるものの、所得税申告や相続税申告では定着しているとは言い難いという見方を示しています。日々の電子取引データの扱いについては、青色65万円の要件が2027年から拡がる 税理士が今から進める7つの準備やPeppol電子インボイスと電帳法の保存要件 税理士が組む7つのAI点検工程でも扱っています。

士業事務所とAI活用から見た論点

AIを業務に組み込む立場から読むと、建議書の中で目に留まる箇所が3つあります。

第一に、書式の数値化・標準化と自由記述の削減という方向です。自由記述が減って項目が構造化されるほど、機械が読み取れるデータの比率は上がります。生成AIやRPAで前処理を回している事務所にとっては、入力側の土台が整うかどうかを左右する話です。第二に、マイナポータルの情報へ税理士がアクセスしやすくするという提案です。実現すれば資料回収の工程そのものが変わる可能性がありますが、現時点では建議の段階であり、制度化されたわけではありません。

第三に、納税環境整備・その他の4「租税回避行為への対応」に置かれた一文です。建議書は、近年、税理士でない者が税に関する個別具体的な税務アドバイスを行う事例が見受けられるとしたうえで、税理士法への抵触関係を明確にし、違反行為に厳正に対処することを求めています。この記述はAIやツールを名指ししたものではありません。建議書のどこにも生成AIという語は出てきません。ただ、税務に関する出力を返すツールが増えている状況を踏まえると、この論点が今後どのように整理されるかは注目に値します。事務所内のルール整備については日税連の内部規律指針にAI利用ルールを足す 税理士事務所の7工程も参考になります。

なお建議書は、税制に対する基本的な視点の5番目で、デジタル環境下における質問検査権の行使場面でのルールの明確性にも触れています。データが事務所と顧問先のあいだをどう行き来するかという論点は、今後の議論の材料になりそうです。

今後の展望と初動アクション

建議書はあくまで建議であり、この段階で制度が変わったわけではありません。今後は各省庁での検討を経て、年末の税制改正大綱にどこまで反映されるかという流れになります。実務側で今の時点で採れる動きとしては、次のようなものが考えられます。

顧問先向けの説明資料を用意している事務所では、重要建議項目9本のうち自分の関与先に関係するテーマ(事業承継、株式評価、消費税、賃上げ促進税制など)を先に洗い出しておく段階です。電子申告の運用を見直している事務所では、項目37の4つの柱を、自所の現在の資料回収フローと突き合わせて差分を眺めておくという進め方があります。情報収集そのものをAIで回している事務所では、原典のPDFを読み込ませたうえで要約させ、そのあと原文に戻って裏取りするという二段構えが取られています。その手順は税制改正の情報収集をAIで回す 税理士事務所の6工程と原典確認のルールで整理しています。

年末に向けた消費税まわりの動きはインボイス経過措置は50%ではなく70% 10月改正を顧問先に説明する6工程もあわせてご覧ください。

まとめ

日税連は8月27日、令和9年度税制改正建議書を関係省庁に提出しました。重要建議項目9本と建議項目42本からなり、電子申告を基本に据えた納税環境整備の4項目、書式の数値化・標準化、申告期限の見直しなどが並びます。制度化はこれからですが、事務所のデータ処理とAI活用の前提条件にかかわる内容が含まれています。

参考文献

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引用元: 日本税理士会連合会

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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