米政府がAI学習は公正利用と法廷で主張 日本の士業が読む著作権3論点

米国政府がニューヨーク・タイムズ対OpenAI訴訟に意見書を提出し、AI学習はフェアユースに含まれ得ると主張しました。日本の著作権法30条の4との違いと、士業事務所が押さえる3つの論点を整理します。

米政府がAI学習は公正利用と法廷で主張 日本の士業が読む著作権3論点

米政府は2026年9月、AI学習はフェアユースだとする意見書を提出しました。

米国のニューヨーク・タイムズ対OpenAI訴訟に、米国政府が20ページの意見書を提出したとTechCrunchが2026年9月2日に報じました。著作物を許諾なく大規模言語モデルの学習に使う行為について、米国著作権法のフェアユース(公正利用)に含まれ得るという立場を、政府自身が裁判所に示した形です。AI学習と著作権の扱いは、顧問先から士業事務所への照会が増えている領域でもあります。本記事は公表資料と報道をもとに事実関係を整理したもので、個別の事案についての法的判断を示すものではありません。

法律書と裁判記録が積まれた机

何が起きたか 米政府がAI学習をめぐる訴訟に意見書を提出

提出されたのは、ニューヨーク・タイムズがOpenAIらを訴えた著作権訴訟に対する米国政府の意見書です。文書は裁判所の記録として公開されており、全20ページで構成されています。

意見書は「米国は、世界的にAI利用の実務と手続の標準を定める、強固で競争力のある人工知能産業を発展させ続けることに強い関心を有する」と述べ、2025年1月に署名された大統領令「Removing Barriers to American Leadership in Artificial Intelligence」を引きながら、AI分野での米国のリーダーシップ維持を理由に挙げています。さらに、フェアユース法理の誤解にもとづいて大規模言語モデルの開発を制約すれば、創造的・科学的な進歩が妨げられるとも記されています。

ここで押さえておきたいのは、この意見書が判決ではないという点です。TechCrunchも、審理はニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所で進んでおり、意見書の作成者に管轄権はないと明記しています。政府の見解が裁判所の分析に影響を与える可能性はあるものの、個々の学習行為の適否は、なお裁判所が事件ごとに判断する構造に変わりはありません。

士業事務所にとっての3つの論点

第一に、米国の動きがそのまま日本の判断枠組みになるわけではない、という切り分けです。日本では、著作権法第30条の4が「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」を定め、情報解析のための利用を例示しています。ただし同条には、著作物の種類や用途、利用の態様に照らして著作権者の利益を不当に害する場合を除く旨のただし書きが置かれています。米国のフェアユースは4要素の総合考慮による一般条項であり、条文の構造そのものが異なります。文化庁もAIと著作権に関する考え方を公表しており、顧問先への説明では日米を分けて整理する必要があります。

第二に、学習の段階と生成物の利用段階では、議論の層が違うという点です。今回の意見書が扱っているのは主に学習データの取り込みであり、出力された生成物が既存著作物と類似する場合の扱いは別の論点として残ります。生成物側の管理については、生成AIの著作権侵害は誰の責任か 士業事務所が組む成果物管理7体制でも整理しています。

第三に、学習データの入手経路が争点として残る点です。TechCrunchによれば、Anthropicが作家らに15億ドルを支払う和解が承認された件では、学習行為そのものではなく、違法なシャドウライブラリから書籍を入手した点が問題とされました。担当したアルサップ判事は、モデルの学習を人が本を読む行為になぞらえるコメントも残しています。米国の一連の司法判断の流れはAI学習と著作権|米国の3判決が分けた「学習」と「入手」の境界線で扱っています。また、権利者側からの提訴も続いており、ソニーとワーナーがAnthropicを提訴 士業が読む著作権4論点のような動きも並行しています。

なお、今回の意見書はモデル開発者による学習データの取り込みに関する議論であり、事務所が業務でAIツールに入力したデータが学習に使われるかどうかとは別の問題です。入力データの取扱いは各ベンダーの公表ポリシーで確認する領域であり、今回の意見書によって各社の方針が変わったという記述は、現時点の公表資料からは確認できません。

今後の動きと事務所での扱われ方

まず、この訴訟自体の帰趨が当面の焦点になります。政府の意見書が裁判所の判断にどこまで反映されるかは、今後の審理の推移を見る段階です。

事務所の現場では、次のような対応を採るところがあります。顧問先からの照会に備えて、米国の動きと日本の著作権法の枠組みを分けて説明できる資料を用意する。導入済みのAIツールについて、学習データの出所と入力データの学習利用の可否をベンダーの公表資料で確認し直す。生成物を成果物に組み込む際の確認手順を、記録が残る形でチェックリストに落とす。いずれも、判決を待たずに着手できる範囲の整理です。

日本国内でも、文化庁の考え方や個別の裁判例の蓄積によって、実務の相場観は動いていきます。海外の動向を追いながら、国内の一次情報を起点に説明を組み立てる姿勢が、当面は現実的な進め方になりそうです。

まとめ

米国政府がAI学習をフェアユースの範囲に含め得るとする意見書を提出しました。ただしこれは判決ではなく、日本の著作権法第30条の4とは条文構造も異なります。学習段階と生成物の利用段階、そして学習データの入手経路という3つの層を分けて整理することが、顧問先への説明でも事務所のツール選定でも起点になります。

参考文献

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引用元: TechCrunch

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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