記帳から月次監査までのAI活用とは、仕訳の作成から点検までを、AIで補助する運用のことです。
近畿税理士会が主催する業務デジタル化ミニフォーラム「AI×税理士」に、ミロク情報サービスが出展すると、2026年9月9日に報じられました。大阪が9月17日、京都が10月6日、神戸が11月10日の日程です(出典:財経新聞 ミロク情報サービス 近畿税理士会のAIフォーラムに出展)。本記事では、出展される製品の公開情報を材料に、会計事務所が記帳から月次監査までのAI活用を検討する際の判断軸を7つに整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、製品の内容は提供元の公開資料で確認しています。特定の製品の優劣や、導入の是非の評価は行いません。
出展の概要と製品の位置付け
報道によると、フォーラムの副題は、AIに何を任せ、何を人が担うのか、とされています。開催は、大阪がドーンセンター、京都が京都経済センター、神戸が三宮コンベンションセンターで、各会場とも10時30分から16時45分の時間帯です(出典:財経新聞 ミロク情報サービス 近畿税理士会のAIフォーラムに出展)。開催の日程や会場は、変更される場合があるため、参加を検討する場合は、主催者の案内で確認します(要確認)。
出展される製品は4つです。AI-OCR入力は、紙の通帳やレシート、領収書などをOCRで解析し、仕訳データを自動で生成する機能です。AI仕訳は、銀行口座やクレジットカードの取引データから、仕訳を自動で作成する機能です。MJS AI監査支援は、仕訳と残高をチェックするシステムです。ACELINK NX-Proは、会計事務所向けのERPシステムと説明されています(出典:財経新聞 ミロク情報サービス 近畿税理士会のAIフォーラムに出展)。
MJS AI監査支援について、提供元の製品ページでは、仕訳明細のルール設定、監査の実行、AIによる仕訳チェックの3つの機能が示されています。ルールは、システム標準のルールと、会計事務所が独自に設定するルールを組み合わせて、自動でチェックする仕組みです。月次監査業務の効率化が対象で、ACELINK NX-Pro 会計大将との連携も示されています(出典:ミロク情報サービス MJS AI監査支援)。
同じ製品ページには、AIによる出力結果は人による確認が前提であること、システムは提案を行い、最終的な判断と修正は担当者が行うことも書かれています。価格は公開されておらず、導入の規模によって異なると説明されています(出典:ミロク情報サービス MJS AI監査支援)。費用の見込みは、提供元への問い合わせで確認する論点です(要確認)。
記帳から月次監査までの流れを分けて考える
会計事務所の業務は、記帳、月次の確認、決算、申告と続きます。今回の出展製品は、このうち記帳と月次監査の部分に位置付けられています。流れを分けて考えると、AIに任せる範囲を決めやすくなります。
記帳の入口は、証憑や取引データの取り込みです。紙の証憑はAI-OCRで、銀行やカードのデータはAI仕訳で、それぞれ仕訳の候補にします。ここでは、読み取りの誤りや、勘定科目の候補の誤りが、後の工程に影響します。入口の精度が、後の確認の負担を左右します。
月次の確認は、作成された仕訳や残高を点検する工程です。MJS AI監査支援は、この工程にルールとAIを組み合わせる設計です。点検の対象は、勘定科目の誤りや、残高の異常などが考えられます。AIが示す指摘は、あくまで確認の入口であり、最終的な判断は担当者が行います。
この2つの工程の間で、誰が、何を、どの段階で確認するかを決めておくと、AIを導入しても、責任の所在があいまいになりにくくなります。
会計事務所が選ぶ7つの判断軸
以下は、税理士と職員を合わせて数名から十数名ほどの事務所が、記帳から月次監査へのAI活用を検討する場面を想定した運用例です。製品の評価や、導入の推奨は行いません。
1つ目の判断軸は、現在の作業時間の実測です。記帳の入力、月次の確認にかかっている時間を、数件分記録します。導入の効果は、自事務所の数字で測ります。
2つ目は、顧問先の証憑の形式です。紙が多いのか、データで受け取れるのかによって、AI-OCRとAI仕訳の使い分けが変わります。
3つ目は、既存の会計システムとの関係です。出展される製品の一部は、特定のERPシステムとの連携が前提になっています。現在使っているシステムとの関係を、提供元の資料で確認します(要確認)。
4つ目は、AIの提案を、誰が、どの段階で確認するかです。製品ページにも、人による確認が前提と書かれています。確認の担当と記録の方法を、手順書にしておきます。
5つ目は、ルール設定の運用です。MJS AI監査支援は、事務所独自のルールを設定できる設計と説明されています。ルールを誰が作り、誰が更新するかを決めておくと、運用が属人化しにくくなります。
6つ目は、データの取り扱いです。クラウドサービスとして提供されるため、顧問先のデータの保管場所、アクセスの権限、ログの扱いを、提供元の資料と契約で確認します。
7つ目は、費用と体制です。価格が公開されていない製品は、問い合わせで見積を取る運用が考えられます。導入後の運用を担う職員も、あらかじめ決めておきます。
フォーラムの活用と情報収集
フォーラムは、複数の製品を同じ場で比べられる機会として使えます。参加する際は、事前に、自事務所の課題を書き出しておくと、質問の観点が定まります。
例えば、現在の記帳で時間がかかっている工程、月次の確認で見落としが起きやすい箇所、顧問先の証憑の形式を、質問の元にします。製品の説明を聞く際は、デモの条件と、自事務所の業務との違いに注意します。デモは、整った条件で行われる場合が多く、実際の証憑は、読み取りにくいものが混じります。
また、他の事務所の参加者との情報交換も、判断材料になります。同じ製品を使っている事務所の運用や、つまずいた点を聞ける場合があります。ただし、他の事務所の数字や評価は、条件が異なるため、自事務所の判断の参考にとどめます。
プロンプト例
導入の検討を整理する場面で、生成AIを補助に使う例を2本示します。どちらも架空の設定で、顧問先の情報は含みません。
あなたは会計事務所のAI導入検討の整理を補助します。
架空の事務所(税理士と職員の少人数)の、記帳から月次確認までの流れを、工程ごとに整理してください。
- 工程ごとに、現在の作業の内容、AIが補助できる可能性のある部分、人が確認する部分を書いてください
- 製品名や数字は書かず、事務所が提供元の資料で確認すべき項目を末尾に列挙してください
- 断定的な表現は避けてください
あなたは会計事務所のAI製品の説明会で使う質問リストの作成を補助します。
架空の事務所が、AI-OCRとAI仕訳の説明を聞く場面を想定し、質問の案を10個以内で作ってください。
- 観点: 読み取りの精度の確認方法、誤りが出た際の修正の手順、データの保管場所、既存システムとの連携、費用の見積の取り方
- 質問は、答えが具体的になるように書いてください
守秘義務・規程上の論点
記帳から月次監査までのAI活用では、顧問先の取引データや証憑を、クラウドのサービスに渡す場面が出てきます。守秘義務との関係を整理します。
税理士法第38条は、税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないと定め、税理士でなくなった後も同様としています。公認会計士法第27条も、公認会計士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならないと定めています。これらの条文を、個別の製品の利用にどう当てはめるかは、契約と設計によって異なります。本記事では判断せず、個別の事案は有資格者の判断に委ねます。
個人情報の面では、個人情報保護法第27条が、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています(例外が列挙されています)。クラウドサービスへのデータの預け方が、この条文との関係でどう整理されるかは、個人情報保護委員会の公表資料などで、個別に確認する論点です(要確認)。
事務所として確認する項目を挙げます。1つ目は、提供元のデータの取り扱いです。保管場所、委託先、AIの学習への利用の有無、ログの保存期間を、公式資料と契約で確認し、確認日を残します。2つ目は、顧問先への説明です。クラウドのAIサービスを使うこと、取り扱うデータの範囲を、顧問契約や案内で伝える運用があります。3つ目は、職員のアクセス権限です。誰が、どの顧問先のデータを扱えるかを、権限の設定で管理します。
規程の作り方は、士業事務所のAI利用規程テンプレートや、事務所のAIガイドラインの作り方で扱っています。
失敗例と回避策
記帳から月次監査へのAI活用で起こりがちな失敗を、3つ挙げます。いずれも一般的なシナリオで、特定の事務所の事例ではありません。
1つ目は、AIの仕訳の候補を、確認せずに確定してしまうケースです。勘定科目の誤りが、決算まで残るおそれがあります。回避策は、確認の担当と、確認する範囲を、手順書にしておくことです。
2つ目は、監査支援のルールを、更新せずに放置するケースです。顧問先の業種や取引の形が変わると、古いルールでは、指摘が増えすぎたり、見落としが出たりします。回避策は、ルールの見直しの時期と担当を決めることです。
3つ目は、導入後の効果を測らないケースです。効率化したかどうかが分からず、費用に見合うかの判断ができません。回避策は、導入前に記録した作業時間と、導入後の作業時間を、同じ方法で比べることです。
費用・工数・体制
製品の価格は、MJS AI監査支援の製品ページでは公開されておらず、導入の規模によって異なると説明されています(出典:ミロク情報サービス MJS AI監査支援)。ほかの製品も含め、費用は、提供元への問い合わせで確認します(要確認)。
工数としては、現状の作業時間の記録、製品の比較、試用、ルールの設定、職員への研修が発生します。体制としては、導入の責任者を、税理士または公認会計士の中から置き、運用の窓口を職員の中から決めます。
今後の展望と独自考察
税理士会がAIをテーマにフォーラムを開き、会計ソフトの提供元が出展する流れは、AI活用が、個別の事務所の工夫から、業界の共通の課題になりつつあることを示します。論点になるのは、次の3点です。
1つ目は、AIに任せる範囲と、人が担う範囲の線引きです。フォーラムの副題も、この点を問うています。2つ目は、記帳の入口の精度と、月次の確認の設計を、どう組み合わせるかです。3つ目は、導入した後の運用を、事務所内でどう継続するかです。
AIツールの選び方は、会計事務所向けAIエージェントの比較でも整理しています。製品を検討する際の参考になります。
よくある質問
フォーラムは、会員でなくても参加できますか。
参加の条件は、報道の範囲では確認できません。主催者の案内で確認する運用があります(要確認)。
AI-OCRとAI仕訳は、何が違いますか。
報道では、AI-OCR入力は、紙の通帳やレシート、領収書などを解析して仕訳データを生成する機能、AI仕訳は、銀行口座やクレジットカードの取引データから仕訳を作成する機能と説明されています(出典:財経新聞 ミロク情報サービス 近畿税理士会のAIフォーラムに出展)。
AIの出力は、そのまま使えますか。
製品ページには、人による確認が前提と書かれています。確認の担当と記録の方法を、事務所の手順として決める運用があります。
顧問先のデータをクラウドに預ける際の守秘義務はどうなりますか。
税理士法第38条や公認会計士法第27条が、業務上知り得た秘密に関する義務を定めています。個別の利用との関係は、契約と設計によるため、本記事では判断していません。
費用はどれくらいですか。
MJS AI監査支援の価格は、製品ページでは公開されていません。提供元への問い合わせで確認する運用があります(要確認)。
まず何から始めればよいですか。
記帳と月次確認の作業時間を、数件分記録するところから始める運用があります。そのうえで、フォーラムや資料で、製品の情報を集めます。
参考文献
- 財経新聞 ミロク情報サービス 近畿税理士会のAIフォーラムに出展
- ミロク情報サービス MJS AI監査支援
- e-Gov法令検索 税理士法
- e-Gov法令検索 公認会計士法
- e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律
※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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