SSBJ開示準備を欧州企業に学ぶ、会計士協会がNovo Nordiskへインタビュー

日本公認会計士協会が2026年9月30日に公表したNovo Nordiskへのインタビューを整理。ダブル・マテリアリティ評価やデータ整備に約1年半を要した実務など、SSBJ開示準備の論点を解説します。

SSBJ開示準備を欧州企業に学ぶ、会計士協会がNovo Nordiskへインタビュー

日本公認会計士協会は2026年9月30日、Novo Nordiskへのサステナビリティ開示インタビューを公表しました。

日本公認会計士協会(JICPA)は2026年9月30日、サステナビリティ開示インタビュー企画の一環として、デンマークの製薬会社Novo Nordisk A/Sへのインタビューを公表しました。日本の有価証券報告書には、2027年3月期からSSBJ基準に基づくサステナビリティ開示が導入される予定で、対象企業の準備が本格化しています。この記事では、公表された資料をもとに要点を整理します。なお、筆者はインタビュー全文を評価する立場になく、内容は公表資料の範囲でお伝えします。会計士、税理士、社労士など、企業の開示や内部統制に関わる士業の方の情報収集にお役立てください。

公表されたインタビューの概要

JICPAのお知らせページによると、この企画の目的は、EU法令に基づくサステナビリティ開示がすでに実施されている欧州の企業から、先行する実務を学ぶことです。ページ本体は短い告知にとどまり、詳細はPDFのインタビュー資料に掲載されています。

PDFでは、Novo NordiskでESGレポーティングを担当するアソシエイトディレクターのHelle Bjerring Becker氏が、JICPAのテクニカルディレクターである森洋一氏の質問に答える形式です。取り上げられている論点は、報告書の想定読者、ダブル・マテリアリティ評価、ガバナンス体制、データ管理、第三者アシュアランスの五つに大別できます。

想定読者について同氏は、投資家と規制当局が主要な読者としつつも、現従業員や将来の従業員、患者団体、医療関係者も重要だと述べています。読者に企業の優先事項を明確に伝えることを重視している点が印象的です。

ダブル・マテリアリティ評価とガバナンスの実務

ダブル・マテリアリティとは、企業が社会や環境に与える影響と、社会や環境の変化が企業に与える影響の両面から重要課題を見極める考え方です。インタビューによると、同社は春に評価を実施し、夏までに取りまとめています。

特徴的なのは、マテリアルと判断したトピックを「優先課題」と「その他のマテリアル」に区分している点です。欧州のサステナビリティ報告基準(ESRS)が求めるトピックの開示は変わらないものの、優先順位を明示することで読者に伝わりやすくしているとされています。評価の過程では、社内の専門家によるスコアリング、投資家との対話、全社的なリスク管理(ERM)との連携が行われています。

ガバナンスについては、監査委員会が四半期ごとにESRS対応の進捗を確認し、10月頃にサステナビリティ・ステートメントの初稿をレビューし、ダブル・マテリアリティ評価の結果を承認するという流れが紹介されています。取締役会は、アニュアルレポート全体の最終承認を担い、年末前に資料一式が配付される運用だそうです。報告書全体の統合性と一貫性を確認する役割が、取締役会に置かれています。

データ管理と第三者アシュアランスをめぐる発言

データ管理では、必要なデータがそもそも存在しない場合が多かったと語られています。例として、製品包装のリサイクル可能性のデータが挙げられました。体制の構築には約1年半を要し、各部署に「データ・オーナー」を置き、ITシステムを整備して、過去2〜3年にわたりデータを継続的に収集しているとのことです。

方針として、報告のためだけのデータは作らず、経営管理や意思決定にも活用できる価値を持たせる、という考え方が示されています。開示対応を単なる作業で終わらせない姿勢といえます。

第三者アシュアランスについては、アシュアランス業務の実施者から、財務報告では一部の事業所のみを含めないという扱いはしないとの指摘を受け、対象範囲を拡大して精度を改善した例が紹介されています。同氏はアシュアランス業務の実施者を、開示内容をともに磨き上げる「スパーリング・パートナー」と表現しています。また、アシュアランスの導入によって、根拠の乏しい環境訴求のような主張が排除された、とも述べています。アシュアランスチームには、財務諸表監査の経験者と、温室効果ガスの算定に詳しいサステナビリティ専門家が入っているそうです。

士業事務所にとっての論点

このニュースは、とくに公認会計士と、上場企業やその関連会社を顧客に持つ事務所に関わります。SSBJ基準の詳細はサステナビリティ基準委員会(SSBJ)の公表資料で確認する段階で、適用対象や時期の細目は、公表資料で要確認です。

税理士や社労士、行政書士の事務所にとっては、顧客企業から人的資本やデータ整備に関する相談が増える可能性があります。今回のインタビューは、先行企業でも必要なデータがそもそも存在せず、整備に約1年半を要したという実例として参照できます。データの棚卸しを早めに始める企業があるかどうかが、今後の注目点です。

今後の展望と初動として確認できること

2027年3月期の導入に向けて、JICPAは今後も同様のインタビュー企画を公表するとみられますが、具体的な予定は現時点の公表資料からは確認できません。

事務所の現場では、次のような点を確認する段階にあります。

  • SSBJの公表資料で、顧客企業が適用対象となる時期の見通しを確認する
  • 顧客企業が、開示に必要なデータの保有状況を把握しているかを聞き取る
  • 第三者アシュアランスを受ける場合の範囲について、公表されている議論を追う
  • JICPAのお知らせページで、続編のインタビューが出ていないかを確認する

まとめ

JICPAが公表したNovo Nordiskへのインタビューは、ダブル・マテリアリティ評価の進め方、監査委員会と取締役会の関与、データ整備に約1年半を要した経緯、第三者アシュアランスの受け止め方を具体的に伝えています。日本でのSSBJ基準の導入を控え、先行事例として関係する士業が押さえておく価値のある資料です。

参考文献

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引用元: 日本公認会計士協会

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

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