上場会社監査事務所の適格性ガイドライン改正、収益認識の不正リスク着眼点を新設

日本公認会計士協会は2026年8月6日、上場会社等の監査事務所向け適格性ガイドラインを改正しました。収益認識の不正リスク着眼点の新設など3つの改正点と、監査事務所の初動を整理して解説します。

上場会社監査事務所の適格性ガイドライン改正、収益認識の不正リスク着眼点を新設

日本公認会計士協会は8月6日、上場会社監査の適格性ガイドラインを改正しました。

日本公認会計士協会(JICPA)は2026年8月6日、「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正を公表しました。このガイドラインは、上場会社等の監査を担う監査事務所向けの自己点検ツールです。財務書類の監査証明業務を遂行できる体制を備えているか、監査事務所自身がセルフアセスメントする際の着眼点と判断基準を示します。今回の改正では、収益認識に関する不正リスクの識別・評価という論点が新たに加わりました。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。

書類とノートパソコンが置かれた会計事務所のデスク

上場会社等監査人向けガイドラインの改正が公表されました

日本公認会計士協会の品質管理委員会は2026年8月6日、常務理事会の承認を経て、上場会社等の監査を行う監査事務所向けガイドラインの改正を公表しました。改正の背景には、上場会社等監査人登録制度があります。

上場会社等監査人登録制度は2023年4月1日から運営されています。根拠となる法律(公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律、令和4年法律第41号)は2022年5月18日に公布されました。上場会社等の財務書類や内部統制報告書の監査証明業務を行う監査法人・公認会計士は、上場会社等監査人名簿への登録が必要になります。日本公認会計士協会はこの点を公式に案内しています。

登録を受けようとする事務所や登録済みの事務所には、監査証明業務を遂行するに足りる体制の有無が問われます。この体制は公認会計士法第34条の34の14などに定められています。日本公認会計士協会は品質管理レビューを通じて、この体制を備えているかどうかを確認します。着眼点・判断基準を示すのが、2023年6月29日に策定・公表されたガイドラインです。監査事務所自身がセルフアセスメントに使う実務ツールとしての役割も持っています。

監査事務所にとっての論点は3点です

改正点は3つあります。対象になるのは、主に上場会社等監査人名簿への登録事務所です。

1点目は、監査業務編の新設です。収益認識に関する不正リスクの識別及び評価、並びに対応手続に関する着眼点・判断基準が新たに加わりました。これまでのガイドラインには無かった論点です。

2点目は、監査事務所編の見直しです。運用状況に関する事項を含め、着眼点・判断基準が新設または変更されました。

3点目は、監査ファイルの最終的な整理後における改ざん防止策についてです。紙面を原本としている場合の判断基準が変更されました。電子化が進む一方で、紙の監査調書を原本として扱う事務所には確認が必要な変更です。

日本公認会計士協会は改正に先立ち、2026年6月15日から7月3日まで会員・準会員向けに公開草案を示し、意見を募っていました(出典: 日本公認会計士協会)。寄せられた主なコメントの概要と対応も、改正版とあわせて公表されています。

事務所の初動は自己点検の再実施になります

対象になるのは上場会社等監査人名簿に登録している、または登録を検討している監査事務所です。改正されたガイドラインの本文と新旧対照表を確認し、セルフアセスメントを再度実施する段階に入ります。

日本公認会計士協会は、ガイドラインに記載する状況に該当していないかを自ら点検するよう案内しています。不備が見つかった場合には、自主的な改善策を直ちに立案・実行するよう求めています。収益認識の不正リスクは新設項目のため、既存の監査手続がこの着眼点をどこまでカバーしているかを洗い出す作業から始める事務所があるとみられます。

紙の監査ファイルを原本として運用している事務所は、改ざん防止策の判断基準の変更点を確認する段階です。電子的な調書管理に一本化している事務所への影響は限定的とみられますが、紙と電子が混在する運用の事務所は確認する範囲が広がります。

このガイドライン自体は、法令や実務指針等の要求事項をすべて網羅するものではないと日本公認会計士協会は明記しています。品質管理レビューで不備事項となりやすい論点の集積という位置づけです。

まとめ

日本公認会計士協会は2026年8月6日、上場会社等の監査を行う監査事務所向けの適格性確認ガイドラインを改正しました(出典: 日本公認会計士協会)。収益認識の不正リスクに関する着眼点の新設、監査事務所編の見直し、監査ファイルの改ざん防止策の判断基準変更が主な内容です。上場会社等監査人名簿に登録している事務所は、改正版に沿ったセルフアセスメントの実施が次の段階になります。

参考文献

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引用元: 日本公認会計士協会

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

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