デジタル庁は2026年9月1日、設立5年の成果を公表しました。
デジタル庁が2026年9月1日に公開したデジタル庁設立5年 ~デジタルで変わる、一人ひとりの暮らし~は、2021年9月の発足から5年間の取組を一枚のページに整理したものです。マイナンバーカードの普及やガバメントAIの展開が並ぶなかで、士業事務所の申請実務に最も近いところにあるのが法人ベース・レジストリです。本記事は公表資料に記載された事実を整理したもので、個別の手続で添付書類が省略できるかどうかは所管する行政機関にご確認ください。

デジタル庁が公表した設立5年の成果
今回の公表は、暮らし・行政手続・事業者と自治体・生成AIとデータ利活用という4つの柱で成果を並べる構成になっています。数字で見ると、マイナンバーカードの保有枚数は2021年9月1日時点の交付4,761万枚から2026年7月末時点で約1億418万枚に達し、マイナ保険証の登録件数は9,000万件を超えてカード保有者の91パーセントに相当すると説明されています(出典: デジタル庁設立5年)。
生成AIの領域では、政府職員向けの利用環境としてガバメントAI「源内」を各府省庁に展開していることが挙げられています。この点は先日のデジタル庁の生成AI利用ガイドライン2.0でも取り上げました。今回の成果報告は、行政側のAI活用が実証段階から常設の基盤へ移りつつあることを、政府自身の言葉で確認できる資料になっています。
もうひとつ、事業者側の入口としてGビズIDの普及が挙げられています。法人と個人事業主が1つのIDで複数の行政手続システムにログインできる共通認証基盤で、電子申請を代理する事務所にとっては顧問先ごとのアカウント管理が実務そのものになっている領域です。
士業実務に効く3つの変化
結論から言えば、今回の成果報告のなかで士業事務所の作業量に直結するのは法人ベース・レジストリです。デジタル庁は法人ベース・レジストリの提供を2026年3月24日に開始したと公表しており、商業法人登記情報を行政機関等がオンラインで参照できるようにする仕組みだと説明しています。
変化の1つ目は、添付書類です。行政機関等が登記情報にオンラインでアクセスできるようになることで、さまざまな手続で登記事項証明書の添付が不要になっていくとデジタル庁は説明しています。許認可や補助金の申請を数多く扱う行政書士事務所では、証明書の取得代行と有効期限の管理が定型作業として残っていたはずで、ここが減る意味は小さくありません。
2つ目は、申請項目の入力です。登記事項証明書と同一の申請項目を行政機関の申請システム上にあらかじめ自動表示するプレプリントが想定されており、事業者側の入力の手間と、行政職員による申請情報と証明書の突合の双方が軽くなると整理されています。転記ミスの発生源そのものが減る設計です。
3つ目は、変更届出です。法人の名称や所在地が変わった場合、従来は変更登記の申請に加えて各制度への届出が別途必要でしたが、行政機関等がデータ連携で変更登記に係るデータを入手した場合はこれらの届出が不要になる、というのが公表された方向性です。政策効果の試算でも、変更届出の省略は2030年度までの累計で310.9億円と最大の項目に置かれています(出典: デジタル庁 法人ベース・レジストリ)。
規模感も示されています。デジタル庁 法人ベース・レジストリによれば、整備・利用により年間約2,000万件の手続が効率化され、5年間で累計約447.8億円分の負担が軽減されると見込まれています。利用の事前申込は2026年3月時点で地方自治体900自治体・約1万2,000課室、府省庁14府省庁・約4,000課室とされており、受け皿は先に広がっている状況です。
今後の展望と事務所の初動
士業事務所の側から見ると、当面は「いつ、どの手続から実際に省略できるようになるか」を追う段階です。デジタル庁のページでは活用事例の詳細資料は準備中とされ、行政手続への導入を求める意見募集も案内待ちの状態です。全国一斉に切り替わるのではなく、自治体や府省庁ごとに順次適用が進む見込みで、この点は所管庁への確認が要る領域です。
現場では、次のような対応を採る事務所があります。ひとつは、顧問先ごとに登記事項証明書の取得回数と実費を1年分だけ棚卸ししておくことです。省略が進んだときに、報酬内訳のどこが消えるのかを先に把握できます。もうひとつは、変更登記が発生したときの届出先リストを事務所内で更新しておくことです。届出が不要になる制度と残る制度が混在する期間が想定されるため、リストの粒度が実務の速さを決めます。
3つ目として、申請システムの操作記録を残す運用に切り替える動きもあります。証明書という紙の証跡が減る分、いつ誰がどのデータを参照して申請したかが事務所側の説明材料になるためです。生成AIで申請書のドラフトを作る運用を併用している事務所では、参照した情報の出所を記録に残す設計が、行政手続オンライン化の進展と合わせて重みを増しています。この論点は行政手続のオンライン化率と事務所のツール選定でも整理しました。
なお、法人ベース・レジストリに記録されているのは、商号、目的、本店及び支店の所在場所、資本金の額、取締役の氏名、代表取締役の氏名及び住所等、会社法その他の法令の規定により登記すべき事項だと公表されています。代表者の住所など個人に関わる情報が含まれる以上、事務所側でこれらを生成AIに入力する場面では、入力データがモデルの学習に使われるかどうかをツール側の公表ポリシーで先に確認しておく運用が広がっています。デジタル庁の公表資料からは、士業事務所側のAI利用に関する取扱いは確認できません。参考としてガバメントAI「源内」と行政書士の申請実務もあわせてご覧ください。
今後については、2026年7月に決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画で、国や自治体におけるAXとDXの基盤高度化が掲げられています。アナログ規制の見直しと合わせて、士業事務所の「取りに行く仕事」が「参照される仕事」へ置き換わる流れが続くかどうかが、当面の注目点です。
まとめ
デジタル庁の設立5年報告で士業実務に最も近いのは、2026年3月に提供が始まった法人ベース・レジストリです。登記事項証明書の添付省略、申請項目の自動表示、変更届出の省略という3つの変化が示され、5年間で累計約447.8億円の負担軽減が見込まれています(出典: デジタル庁 法人ベース・レジストリ)。適用は手続ごとに順次進むため、いま棚卸ししておくべきは自事務所の証明書取得業務と届出先リストです。
参考文献
- デジタル庁 デジタル庁設立5年 ~デジタルで変わる、一人ひとりの暮らし~
- デジタル庁 法人ベース・レジストリ
- デジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画
- デジタル庁 ガバメントAI「源内」
- デジタル庁 GビズID
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引用元: デジタル庁
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。
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