Hark が2026年8月5日、ブラウザ操作AIエージェント Handoff を発表しました。
米国のAIスタートアップ Hark が2026年8月5日、ブラウザを人間と同じ手順で操作するAIエージェント Hark Handoff を研究プレビューとして公開しました。指示を出すと専用の仮想環境でブラウザを立ち上げ、クリックと入力を重ねてタスクを最後まで進める設計です。士業事務所の日常業務にも、電子申請や各種オンラインサービスなど、ブラウザの中だけで完結する作業が少なくありません。本記事は Hark の公表資料と報道をもとにした事実の整理です。ブラウザ操作AIエージェントの現在地と、事務所がツールを見るときの確認ポイントを順に整理します。

ブラウザを人間と同じ手順で操作するエージェント「Handoff」
Hark Handoff は、公開APIを持たないWebサイトを画面操作で扱うことを狙ったエージェントです。同社は公式記事 Introducing Hark Handoff で、リクエストごとに専用の仮想コンピュータを立ち上げ、その中にブラウザ・ファイルシステム・ターミナルを用意すると説明しています。決まったサイト向けのスクリプトではなく、その場でページを見て判断しながら進めるアプローチだと位置づけています。
技術的な特徴は、出力がカーソルとキーボードの入力そのものである点です。画面上のx座標とy座標を狙ってクリック・入力・スクロールを行い、ブラウザの状態を直接変えていくと記載されています。既存のアカウントを接続すれば、保存済みの住所や設定を踏まえて本人に代わってログインする構成も示されています。
性能について同社は、ブラウザ操作系の3つのベンチマークでフロンティア級の結果を示したと公式記事で述べています。人手評価のリーダーボード Online-Mind2Web で首位に立ち、平均で GPT 5.4 を8ポイント、Opus 4.8 を2ポイント上回ったという説明です。学習は事後学習から着手し、現在は中間学習の段階、事前学習は年内を予定しているとされています。
一方で TechCrunch は、CEO の Brett Adcock が公開したデモ動画について、工程の一部しか映っていないため有効性は判断できないと留保をつけています。同社は2026年5月に7億ドルのシリーズAを調達しており、プラットフォームの提供は夏の終わりを予定、現在はウェイトリストを受け付けている段階です。
なぜブラウザ操作エージェントが注目されるのか
理由は、仕事の大半がブラウザの中で起きているのに、その大半にAPIが用意されていないからです。Hark は約300万スクリーン分の利用時間を調べたところ、利用者が過ごした時間の74.9%がブラウザ内だったと公式記事で公表しています。そのうえで、公開APIを提供しているサイトは1000に1つ未満であり、DoorDash、Target、Walmart、OpenTable、Zillow、LinkedIn といった日常的に使われるサービスには消費者向けAPIが存在しないと指摘しています。
API連携が使えるならそちらのほうが速くて安定しますが、届く範囲は業務全体のごく一部にとどまります。残りに手を伸ばすなら人間と同じように画面を操作する方式が候補になる、という整理です。社内システムやSaaSをAIから扱う接続規格であるMCPと事務所システムの連携とは、競合ではなく補完の関係にあります。
同社はこの方式の難しさも書いています。ボット対策やポップアップ、広告は自動化を止めるために存在しており、インターネットはエージェントにとって敵対的な環境だという説明です。1セッションごとに新しい摩擦が生まれ、安定した前提に頼れないまま判断を重ねる必要がある、と課題を認めています。コスト面では、競合するフロンティアモデルと比べてトークン単価が1桁低いとされ、レイテンシにはブラウザ側の待ち時間が約10秒加わるとの注記もあります。ブラウザ操作エージェントには Google、OpenAI、Anthropic のほか、Browser Use、Polar、Strawberry、Aside といったスタートアップが取り組む、競争の集中した領域です。
士業事務所がツール選定で確認する3点
この種のエージェントを事務所で見るとき、公表資料から確認できる論点は主に3つです。いずれも Hark のプライバシーポリシー(2026年3月5日最終更新)に記載があります。
1点目は、入力してよいデータの線引きです。同ポリシーは、社会保障番号、金融口座番号、政府発行のID番号、健康・生体・遺伝情報、犯罪歴などの機微な個人情報をサービス上で提供しないよう利用者に求めています。士業事務所が日常的に預かる資料は、この範囲と重なる部分があります。事務所側の運用ルールと突き合わせる作業が最初の関門になります。
2点目は、画面に映るものがどこまで送信されるかです。同ポリシーには、ブラウザ拡張の Browser Operator と「My Browser」コネクタを有効にした場合、利用者が許可したページの内容(ログイン済みの有料サービスや認証済みサービスの内容を含む)を読み取り、処理のため Hark のサーバへ送信すると書かれています。あわせて、ログイン認証情報自体は保存しないこと、コネクタを無効化すればアクセスを取り消せることも明記されています。
3点目は、記録されるログの粒度です。サンドボックス環境については、アップロードまたは生成されたファイル、実行されたシェルコマンドとその出力、コード、タスク実行ログを、デバッグとセキュリティの目的で収集すると記載されています。利用目的にはサービスの改善・開発および調査研究が含まれ、モデルの学習に関する説明は別文書の Non-User Privacy Notice に案内されています。日本語環境での挙動や国内の行政系Webシステムでの利用可否は、公表資料からは確認できません(要確認)。
守秘義務の条文も確認しておきます。弁護士法第23条は「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う」と定めています。
税理士法第38条は「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない」と定めています。外部サービスに何を渡すかを事務所の情報管理体制の設計問題として先に整理し、ツールを試すのはその後、という順番を採る事務所もあります。判断材料として、生成AIの情報漏洩事例と事務所のAI利用ガイドラインの作り方もあわせてご覧ください。
今後の動き
当面の焦点は、研究プレビューで示された数字が実際の利用でどこまで再現されるかです。ベンチマークは決められた課題を解く力を測るものですが、日々の業務は課題の切り出し方から曖昧で、公開待ちの段階では第三者が検証できる材料も限られます。
もう1つの焦点は、自律的に動くエージェントの制御です。英国のAI安全研究機関のテストでは、エージェントが指示されていない行動を取った事例が報告されており、AIエージェントの想定外の挙動は業界全体の課題として残っています。画面操作型は、送信ボタンや決済まで到達しうる分だけ、権限をどこで区切るかの設計が重くなります。事務所での本格利用を考えるなら、AIエージェントの業務活用で整理した権限設計と記録の残し方が土台になります。
まとめ
Hark は2026年8月5日、ブラウザを画面操作で扱うAIエージェント Handoff を研究プレビューとして公開しました。公開APIを持つサイトが1000に1つ未満という前提のもとで、人間と同じ手順を取る方式に賭けた発表です。提供は夏の終わりの予定で、事務所としてはまず、入力可能なデータの線引きと送信範囲、ログの粒度を公表資料で確認する段階にあります。
参考文献
- Hark「Introducing Hark Handoff」
- Hark「Privacy Policy」(2026年3月5日最終更新)
- TechCrunch「Hark previews its browser use agent for completing tasks」
- e-Gov法令検索「弁護士法」
- e-Gov法令検索「税理士法」
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引用元: TechCrunch
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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