83年未解読のエニグマ暗号をGPT-6で解いたと開発者が公表しました。
1941年7月10日にドイツ軍の兵士がエニグマ暗号機で暗号化した82文字の無線電文について、開発者のCarter Leffenが、OpenAIのGPT-6 Astraを使って解読したとする詳細な検証資料を公開しました。The Decoderが2026年9月17日に報じています。この電文は傍受記録のアーカイブに未解読として長く残っていたもので、解読が成立しているかどうかの独立検証はこれからです。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。数値と経緯は公開されたケーススタディと報道で確認しています。
82文字の電文が解けるまでに起きたこと
解読の決め手になったのは計算量ではなく、探索範囲を絞る手がかりでした。
問題の電文はMVUEHというタグで、傍受されたドイツ陸軍電文のアーカイブに未解読として記載されていたものです。エニグマ暗号機の1日あたりの設定は約159垓通りあり、すべてを順に試す総当たりは初めから選択肢になりませんでした。実際、同じ日に判明していた鍵をあてはめる方法も、自動探索も、有用な結果を返さなかったと公開資料には書かれています。
転機になったのは、同じ日に送られた別の電文がすでに解読済みで、そこに「Rosenow」という地名が2回続けて含まれていたことでした。未解読の電文にも同じ地名が出るのではないかという見込みを立て、それを探索の手がかりに使ったと説明されています。あわせて、ある文字がその文字自身に暗号化されることはないというエニグマの既知の性質を使い、候補となる位置を早い段階で絞り込んでいます。
ある位置で条件がすべて整い、そこから機械の設定を計算したところ、残る68文字が意味の通るドイツ語になりました。内容は、行軍路の指示を求め、即時の無線返信を要請するものだったとされています。アーカイブに別途残っていた電文ヘッダーが、算出された設定と符合したことも根拠として挙げられています。
整っていない出力のほうが、真正性の根拠になった
この事例で士業事務所の実務に引きつけて読めるのは、出力の見た目の整い方と、その内容が正しいかどうかが別物だという点です。
解読された本文には、打ち間違いとみられる崩れが残っていました。BITTEであるはずの箇所がBTTEになっていたり、送信者の名前とみられる語がWASCHBBSCHという形で現れていたりします。Leffenは、こうした誤りこそが解読の真正性を示すと述べています。作り出された結果であれば、むしろ誤りのない文章になりやすいからです。
生成AIの出力は、たいてい読みやすく整った形で返ってきます。整っているという印象が、そのまま内容の確からしさの印象にすり替わりやすい点は、士業事務所がAIの下書きを扱う場面でも同じ構図になります。今回の事例は、その逆転を分かりやすく示したものとして読めます。
作業の分担も示唆的です。GPT-6 Astraと複数の専門エージェントは、歴史資料の検索、探索プログラムの作成、既に解読済みの電文との照合といった役割を担いましたが、目標の設定と進め方の判断はLeffen自身が行ったと説明されています。「暗号を解くことよりも、問題と解法を説明するウェブサイトを作ることに99倍の労力をかけた」と本人が語っている点も、成果物そのものより説明と記録の整備に時間が寄るという実務感覚に近いものがあります(The Decoder)。
なお、今回の公開資料からは、入力したデータがモデルの学習に使われるかどうかについての記述は確認できません。事務所が同種のツールを業務に持ち込むかを判断する場面では、OpenAIの企業向けプライバシー方針のようなベンダーの公表資料で個別に確認する段階です。
再現できることと、確定したことは別に置かれている
今回の公表で注意深く扱われているのは、検証の射程がどこまでかという線引きです。
プロジェクトページでは、コード、探索に使ったデータ、3Dのエニグマ・シミュレータがダウンロードできる形で公開されています。ただし提供されているパッケージは、計算を検証し鍵の探索手順を再現するためのものであって、その電文の歴史的な同一性や、導かれた解が唯一の解であることを証明するものではないと明記されています。解読が成立しているかどうかは、公開された資料を専門家が評価するかどうかにかかっている、という整理です。
この線引きは、AIを使った作業の成果を外に出すときの考え方としても読めます。手順を再現できることと、結論が確定したことは別の段階にあります。事務所がAIの出力を下敷きに何かを作成する場面でも、どこまでが再現可能な手順で、どこからが人の確認によって確からしさを担保した部分なのかを分けて記録しておく進め方を採る事務所があります。
今後は、同じ進め方が他の未解読電文にも適用されるのか、そして約10時間にわたる自律的な作業がどこまで一般的な問題で通用するのかが、注目される点になります。エニグマは1932年にポーランドの数学者Marian Rejewskiによって初めて破られた暗号機であり、その後の解析の蓄積があったうえでの今回の結果でもあります。先行するFrode Weierud、Geoff Sullivan、Olaf Ostwaldらの暗号解析上の貢献の上に成り立っていると、公開資料にも記されています。
まとめ
83年間未解読だったエニグマ電文について、GPT-6 Astraを使って解読したとする検証資料が公開されました。効いたのは総当たりの計算力ではなく、探索範囲を絞る手がかりを人が置いた点です。出力の崩れが真正性の根拠になったこと、再現可能性と結論の確定を分けて示していることは、士業事務所がAI出力を扱う際の読み方としても参考になります。
参考文献
- The Decoder OpenAI’s GPT-6 Astra decrypts a Nazi radio message in ten hours that went unsolved for 83 years
- MVUEH Enigma Solved(Carter Leffenによるケーススタディと検証パッケージ)
- Crypto Cellar 1941年の傍受ドイツ陸軍電文リスト
- Crypto Cellar 傍受電文の暗号解析に関する論考
- OpenAI Enterprise privacy(入力データの取り扱いに関する公表資料)
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引用元: The Decoder
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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