米国の就業者の約20パーセントが、人に任せていた仕事をAIに任せ始めています。
調査機関のEpoch AIは2026年8月6日、就業する米国成人1,106人を対象にしたAIの業務利用に関する調査レポートを公表しました。焦点は「AIが人の代わりに何をしているか」ではなく、「これまで同僚や外注先に渡していた仕事のうち、どれがAIに移ったか」という点にあります。士業事務所も補助者や外部委託に作業を切り出して回してきた業態です。委任先の選択肢にAIが加わったとき、事務所の作業分担がどう変わるのかを考える材料として読める調査でしたので、速報として整理します。

調査で分かった4つの事実
調査は2026年7月10日から19日にかけて、Ipsos KnowledgePanelという住所ベースで抽出された確率標本パネル上で実施されました。対象は就業中の米国成人1,106人、質問対象となった業務タスクは米国労働省の職業データベースO*NETから選ばれた10種類です。
第一に、回答者の19.9パーセントが「同僚か外注先に渡していた業務のうち少なくとも1つを、いまはAIがほぼ全部または全部処理している」と答えています。タスク別ではデータ分析が7.1パーセントで最も多く、業務資料の読み込みが5.7パーセント、記録管理が5.3パーセントと続きます。
第二に、AIの利用そのものは10タスクすべてに広がっています。そのタスクを実際に担当している人のうちAIを使う割合は、記録管理の25パーセントからシステム・ソフトウェア設計の57パーセントまで幅があります。ただし大半は「タスクの一部を手伝わせている」状態で、ほぼ全部をAIに任せている割合はソフトウェア設計の10パーセントが最高、他のタスクでは7パーセントを下回ります。
第三に、時間短縮が起きる頻度は関与の深さと連動しています。AIが一部を担うタスクで時間が減ったとの回答は37パーセント、ほぼ全部または全部を担うタスクでは53パーセントに上がります。一方でAIを使ったタスクのおよそ6件に1件は、以前より時間が増えたとも報告されています(出典: Epoch AI 調査レポート)。
第四に、成果物の手直し量です。AIの出力のうち5.8パーセントが無修正、59.9パーセントが軽微な修正で採用され、合わせて約66パーセントが大きく直されずに使われています。大幅な作り直しは4.7パーセントにとどまりました。
士業事務所にとっての論点
この調査は米国の一般就業者が対象で、日本の士業実務をそのまま説明するものではありません。それでも、事務所の作業分担を考えるうえで3つの論点が浮かびます。
1つ目は、委任先の再設計です。記帳データの整理、書面の下読み、資料の要約といった、これまで補助者や外部委託に切り出してきた作業は、今回の調査で数値が高かった「データ分析」「資料の読み込み」「記録管理」と重なります。どの作業を誰に渡すかという設計を、AIを含めて引き直す段階に来ているという見方ができます。
2つ目は、検証工程の置きどころです。66パーセントが軽微な修正以下で採用されているという数字は、生産性の面では良い話に見えます。ただし士業の成果物は、依頼者と第三者に対して事務所の名前で出ていくものです。手直しが少ないことと、内容が確認済みであることは別の話になります。出力をそのまま通してよい作業と、有資格者の確認を挟む作業を線引きしておく事務所が増えています。
3つ目は、守秘義務とデータの取り扱いです。今回のレポートは、入力データが学習に使われるかどうかまでは扱っていません。事務所で扱う情報には依頼者の秘密が含まれますので、利用するツールごとにベンダーの公表ポリシーを確認したうえで、投入してよい情報の範囲を決める運用が前提になります。この点は調査結果からは確認できませんので、各事務所での確認が要る領域です。
今後の見方
Epoch AIは2026年4月にも、就業しているAI利用者の51パーセントが仕事での利用が私用と同等以上だとする調査を公表しています。今回はそこから一歩進んで、業務が人とAIの間で再配分されている様子を数字で示した内容です。レポート自体も「職そのものの自動化ではなく、タスクの再配分が起きている」という趣旨で結ばれています。
日本でも同種の調査が出てくれば、士業の業務区分に即した比較ができるようになります。当面は、自事務所のどの作業が「一部だけAIに任せる作業」で、どこから先が有資格者の判断領域なのかを言語化しておくことが、次の判断の土台になりそうです。
まとめ
米国の就業者の約20パーセントが、人に委任していた業務をAIに移していることが分かりました。データ分析、資料の読み込み、記録管理といった、士業事務所でも外注や補助者に切り出してきた作業が上位に並びます。委任先の再設計、検証工程の線引き、守秘義務とデータ取り扱いの確認という3点が、事務所側で整理しておく論点になります。
参考文献
- Epoch AI「One in five US workers now delegates tasks to AI instead of other humans」(2026年8月6日)
- Epoch AI Polling on AI Usage(調査手法・全設問・データファイル)
- Epoch AI「AI is a common workplace tool: half of employed AI users now use it for work」(2026年4月9日)
- O*NET OnLine(米国労働省 職業データベース)
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引用元: Epoch AI
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