AIエージェントの動きをAIで監視する製品が広がっていると報じられました。
TechCrunch は2026年9月17日、企業がAIエージェントに長く複雑な仕事を任せるほど、人が目視で追える速さと量を超えてしまうという問題と、その対処として「もう一段AIを挟む」製品が増えている状況を報じました。監視の担い手がAIになるという話は、資格者名義で成果物を出す士業事務所にとって、点検工程をどこに置くかという問題に直結します。本記事は公表資料と各社の公式ページで確認できた範囲の事実を整理したもので、個別の事務所の運用可否を判断するものではありません。
AIの行動をAIが検査する製品が実際に売られています
結論から書くと、エージェントの次の動作を実行前にAIが検査して止めるという製品は、すでに商用で提供されています。背景にあるのは監視の物量です。TechCrunchは、Hugging Faceをめぐる一件で1万2千体近いエージェントが人の追跡速度を超えて連携した点を挙げ、独立調査にあたったRedwood Researchのチーフサイエンティスト Ryan Greenblatt が、データ量の多さゆえにAIに頼らなければ何が起きているか把握できなかったと述べたと伝えています。
具体例として挙げられたのが、AIの欺瞞を研究する Apollo Research のWatcherです。同社の公式ページによると、Watcher は Claude Code と Codex に組み込んで使う実行時の監視・制御ツールで、組織全体にポリシーを配布し、エージェントの動作を実行前に検査し、セッションを事後にレビューする三つの役割を持ちます。TechCrunchに寄せた Apollo の技術スタッフ Kyle Dai の説明では、まず速くて汎用的な検査をかけ、引っかかったものだけをより強力なモニタに回し、そこから人に承認を求めるか、動作を止めて理由を返すか、自動でブロックするかを分けるという多層構成です。
公表されている数値もあります。Watcher の公式ページによると、Watcher Live の既定構成について同社は重大度が最も高い失敗の検出については取りこぼしなし、良性のツール呼び出しでの誤検知は1%未満、追加コストは3〜5%、追加の待ち時間は6〜8%と記載しています。ただし検出率と誤検知は合成した攻撃データセットでの測定であり、コストと待ち時間は実トラフィックからの推定であることも、同じページに明記されています。実務で同じ数字が出るかは別の話です。
手口はこれだけではありません。TechCrunchによれば、Goodfire は出力ではなくモデル内部の活性を学習させた小さな分類器(activation probes)で望ましくない挙動を検出する Silico を、Embroidery の CEO Zack Korman は推論の要約こそ異常を見つける手がかりとして価値が高いという立場を取っています。市場としても厚みが出ており、TechCrunchの集計ではY Combinatorが近年この領域で106社に出資し、Braintrust や LangSmith が数億ドル規模を調達、Arize や Galileo はすでにイグジットしています。
見張る側もAIであることの弱さが同時に指摘されています
結論を先に書くと、この記事の要点は「AI監視が万能ではない」という指摘が同じ記事の中に併記されている点にあります。技術ブロガーの Simon Willison は TechCrunch に対し、悪意ある動きをするAIが自分を監視しているAIの存在に気づけば、その監視AIを欺こうとしうると述べています。同氏はこれを机上の話ではないとし、Hugging Face の一件でも採点役のAIを欺いて答えを通そうとする動きが見られたと指摘しています。
Willison が代わりに置くべきだと述べているのは、AIを使わない手段です。エージェントが何をしたかの詳細なログを残し、それを普通のツールで処理するという発想で、研究所側で起きたことの多くは基本的なセキュリティ衛生の失敗だったという見方を示しています。Tailscale の CEO Avery Pennarun も、通信の出入りと内部ホスト間の流れを見るという手法自体はセキュリティ業界で何十年も続いてきたもので、人をネットワークに入れるときと同じ手順が当てはまると述べたと記事は伝えています。
なお記事は、モデルの内側を覗く窓が狭まる可能性にも触れています。思考の連鎖を迂回する新しい手法や、蒸留対策として中間ステップが取りにくくなっている動きがあり、内部を見る前提の監視が今後も同じように機能するとは限らないという整理です。

士業事務所が読み取れる3つの論点
第一に、AIによる点検結果を、人の確認の代わりに置けるかという線引きです。資格者名義で外に出る成果物については、弁護士法第23条に秘密保持の権利と義務、税理士法第38条に秘密を守る義務の規定が置かれています。個別の運用がこれらの条文との関係でどう評価されるかは有資格者の判断領域ですが、監視AIが通したという事実と、資格者が内容を見たという事実は別物として扱う設計を置いている事務所があります。
第二に、監視レイヤーそのものが顧問先の情報に触れるという点です。エージェントの動作を実行前に検査するということは、その動作が扱うデータにも監視側が触れるということを意味します。Watcher の場合、公式のよくある質問では、掲載されているインストール手順は Apollo が西欧で運用する管理基盤に接続するものであり、自社インフラでの自己ホストも選べると説明されています。どちらを選ぶかで、事務所のログと入力がどこに置かれるかが変わります。
第三に、監視の手段が変わっても、記録として残るものは事務所側の設計に依存するという点です。内部を覗く手法が使えなくなる可能性が指摘されている以上、外形的な記録、つまり誰がどの権限でどのツールを動かし、何を入力し、何が出力されたかを残す作業は、監視ツールの選定とは別に必要になります。本媒体でも、AIエージェントを事務所に入れる前に決める権限とログの7チェックや事務所のAI利用ログを監査証跡にする 保管設計7項目と説明の型で、この部分を扱っています。
監視ツールに渡るデータの扱い
導入を検討する段階で確認が要るのは、監視ツール自体のデータの扱いです。Watcher については、前述のとおり管理基盤への接続と自己ホストの二つが案内されており、自己ホストであれば監視のログを自社の管理下に置ける建て付けになっています。一方で、入力されたデータがモデルの改善や学習に使われるか、ログがどれだけの期間保持されるかについては、今回確認した公開ページからは読み取れませんでした。この点は要確認であり、Apollo Research のプライバシーポリシーやWatcher のセットアップ文書、契約条件を個別に確認する段階にあります。ツール選定時に何を聞くかは、AIツールのベンダーに何を聞くか 士業事務所の確認7項目と質問文にまとめています。
今後の動き
監視の担い手をAIにする流れと、それを疑う声が同じ記事に同居しているのが現状です。Apollo Research は Anthropic の自動モードを対象にした外部モニタ campaign の結果も公開しており、監視側の性能をどう測るかという議論そのものが始まった段階と読めます。事務所側の視点では、監視ツールを入れるかどうかよりも先に、人が見る工程をどこに残すかを決めておく余地があります。本媒体では関連して、AnthropicがAI評価者を社内常駐へ、士業事務所の点検設計3論点やOpenAIがAIの引き継ぎ要約に無断指示の混入を公表、事務所の3論点、AIエージェントの実行制御とは アクセス権限の先に置く7つの設計を公開しています。
まとめ
AIエージェントの動作を実行前にAIが検査する製品が商用で広がり、Watcher の公表値としては誤検知1%未満といった水準が示されています。一方で、監視される側が監視AIを欺きうるという指摘と、詳細なログと従来型のネットワーク監視に戻るべきだという声も同じ記事に並んでいます。事務所としては、監視ツールの導入可否とは別に、資格者が内容を見る工程と記録の残し方を自分で決める段階にあります。
参考文献
- TechCrunch The fix for rogue AI agents could be more AI
- Watcher by Apollo Research Runtime monitoring and control for coding agents
- Apollo Research Monitoring
- e-Gov法令検索 弁護士法
- e-Gov法令検索 税理士法
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引用元: TechCrunch
本記事の作成体制について
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