月額980円の税務顧問を競合として読む 税理士事務所が報酬を見直す前の7つの確認

月額980円の税務顧問サービスの公開情報を事実ベースで読み、料金構造と対象条件を整理。税理士事務所が自所の報酬を見直す前の7つの確認項目を、守秘義務の論点とあわせて解説します。

月額980円の税務顧問を競合として読む 税理士事務所が報酬を見直す前の7つの確認

低価格AI税務顧問とは、顧問料を極小に抑えてAIで処理する税務サービスのことです。

顧問料の最低額が月額980円という税務サービスが公表されたとき、自所の報酬表をどう見直せばよいのか。この記事では、ソルビス税理士法人のみんなの税務顧問の公開情報を事実ベースで読み解き、自所の報酬設計を点検する7つの確認項目に整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、サービス内容は運営法人の公式サイトとインタビュー記事で確認しました。公式サイトには、顧問料が月額980円(税込)、年商1,000万円以下の法人と個人事業主が対象と記載されています(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。

なお、本記事は特定の事務所の優劣や、報酬の水準の当否を論じるものではありません。公開情報から読み取れる範囲で構造を整理し、自所の判断材料にしていただくことを目的としています。

公開情報から、料金の構造を分解して読む

まず、見出しの数字だけでなく、総額の構造を読みます。公式サイトによると、月額顧問料は980円(税込)、月間記帳代行料は100件あたり2,980円(税込)から、申告料は39,800円(税込)、月間会計システム料は980円(税込)です。会計システムはマネーフォワードまたはfreeeが利用できるとされています。これらを年額に直すと、980円の12か月分、2,980円の12か月分、申告料、980円の12か月分の合計で99,080円となり、公式サイトに示された年額の目安と一致します(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。

つまり、月額980円は料金の一部であり、記帳代行、申告、会計システムの費用を含めた総額の目安は、年間で約10万円という構造です。インタビュー記事でも、オプションを含めた場合の目安として年間10万円程度と語られています(出典: 税理士.ch ソルビス税理士法人インタビュー(2025年12月22日))。

対象や条件にも制約があります。公式サイトでは、対象は年商1,000万円以下の小規模な法人・個人事業主です。年商が1,000万円を超えた場合は、1,000万円超過ごとに10万円が加算されるとされています。提供形態は、税務顧問、記帳代行、確定申告のオールインワンのみで、確定申告だけの依頼はできないと記載されています(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。

対応業種も限定されています。IT、サービス業、卸売業、小売業、農業、介護・福祉業のほか、製造業は原価計算が不要な場合、不動産業は仲介業のみ、建設業は下請けと一人親方のみなど、条件が付されています(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。この条件設計は、AIによる処理が成立しやすい取引の型に、対象を絞り込んでいると読むことができます。

運用の流れとAIの位置づけ

インタビュー記事によると、顧客は指定のGoogleドライブのフォルダに、領収書やレシートの画像を保存します。AI-OCRがその画像を読み取って仕訳を行い、別のAIが仕訳をチェックします。申告書など税額に直結する部分には、現時点で人間のチェックが必須とされています(出典: 税理士.ch ソルビス税理士法人インタビュー)。

一方、公式サイトの記載は、AIの具体的な用途や範囲を示していません。仕訳入力は運営側が行い、必要に応じて顧客に確認すると書かれ、決算書と申告書は税理士が作成して品質をチェックすると記載されています。担当税理士の人数や、AI出力の検証手順といった詳細は、公式サイトに記載がありません(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。この記載の有無は、公開情報の限界として押さえておく点です(要確認)。

開始時期については、運営法人のプレスリリースに、2025年8月1日から提供を開始する旨の記載があります(出典: VOIX 記事)。

価格の数字を読むときの三つの視点

低価格のサービスを読むとき、価格そのものよりも、価格に含まれていない部分を確認する視点があります。一つ目は、最低額と総額の差です。月額の最低額は顧問料の部分であり、記帳代行、申告、会計システムの費用が別に積み上がる構造は、先に見たとおりです(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。二つ目は、オプションの範囲です。法定調書や年末調整、償却資産税、源泉税の納付書、給与計算などはオプションとされ、各オプションの料金は公式サイトに記載がありません。三つ目は、条件を超えたときの加算です。年商が1,000万円を超えた場合の加算は、事業が成長した顧問先の扱いに関わります(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。

自所の料金表を読み直すときも、同じ三つの視点が使えます。最低額と総額が顧問先にどう伝わっているか、付随業務が料金表のどこに載っているか、顧問先が成長したときの料金の動き方はどうなっているか。この三点を、顧問先から見た分かりやすさで点検します。

自所の報酬を点検する7つの確認項目

ここからは、競合の動きを受けて、自所の報酬設計を点検するための確認項目です。結論として、価格を合わせるか否かは事務所の経営判断であり、本記事は方向を示しません。判断の前に、事実を整理する作業が先にあります。

確認項目の一つ目は、自所の顧問先の層との重なりです。年商が小さく、取引が単純で、紙の領収書とレシートが中心の顧問先は、公開されたサービスの対象条件と重なる層です。自所の顧問先を年商と取引の型で並べ、重なる層がどのくらいあるかを数えます。数え方は、顧問先の台帳から、年商区分、業種、記帳の方式を抜き出す作業になります。

二つ目は、自所の報酬の内訳です。顧問料、記帳代行料、決算申告料、年末調整や法定調書などの付随業務を、顧問先ごとに分けて整理します。公開された料金は、これらが分解されていました。自所の請求が、どの作業の対価として顧問先に説明されているかを、同じ粒度で書き出します。

三つ目は、作業時間の実測です。記帳代行や月次チェックに、一件あたり何分かかっているのかを実測します。実測の方法は、一か月分の作業を、顧問先ごと、工程ごとに記録する形が考えられます。実測なしに報酬を動かすと、後から根拠を説明できません。

四つ目は、有資格者にしかできない部分の線引きです。税理士法第2条は、税理士の業務として、税務代理、税務書類の作成、税務相談を挙げ、あわせて財務書類の作成や会計帳簿の記帳代行などの事務を業として行えることを定めています(出典: e-Gov法令検索 税理士法)。自所の業務のうち、どこが税理士業務で、どこが付随業務なのか、どこをAIが下書きし、どこを人が最終確認するのかを、工程表に書き出します。

五つ目は、AIを入れた場合の品質確認の設計です。公開情報では、仕訳を別のAIがチェックし、申告書には人間のチェックを置くとされています。自所が同様の仕組みを検討する場合も、AIの出力を誰がどの時点で確認し、確認の記録をどこに残すのかを、決めておく必要があります。この点は、関連する記事も参考になります(関連: AIによる税務報酬の設計を整理した記事、freee Agent Hubと記帳エージェントの論点)。

六つ目は、顧問先への説明です。報酬を変える場合も、変えない場合も、顧問先から「他所は安い」と聞かれたときの説明を用意します。説明の中身は、自所が提供する業務の範囲、確認の体制、相談への対応です。他所のサービスの評価や、優劣の断定は避け、自所の提供内容を事実で説明する形が考えられます。

七つ目は、守秘義務とデータの置き場所です。後述するとおり、AIで処理する流れは、顧客の資料を外部サービスへ置く工程を含みます。その設計を、報酬の見直しと同時に点検します。

小規模事務所と中規模事務所で、見るべき点は変わるか

所員が少ない事務所では、一人の税理士が営業から最終確認までを担うため、作業時間の実測が報酬設計の最大の根拠になります。所員が多い事務所では、顧問先の層ごとに、担当者の配置と報酬を組み合わせて検討することになり、層ごとの採算を見える化する作業が先行します。いずれの場合も、実測の数字は自所のデータであり、他所の公開情報に置き換えられません。

点検の結果を、どう記録して次に活かすか

点検の結果は、一枚の文書にまとめておきます。文書の項目は、顧問先の層と件数、層ごとの作業時間の実測、報酬の内訳、AIで下書きできる工程と人が確認する工程、顧問先への説明文、データの置き場所と管理の方法です。この文書は、報酬を動かす場合の根拠になるだけでなく、動かさない場合にその理由を説明する根拠にもなります。

文書は年に一度は読み返し、AIサービスの料金や機能が変わったときに更新します。更新の担当と時期を決めておくと、点検が一度きりで終わりません。他所の公表情報を参照した場合は、参照した日付と出典のURLを併記し、後から情報が変わっていないかを確かめられる形にします。公表情報は、運営法人の判断で変更され得るためです。

実測と工程表を作る手順

具体的な手順に落とします。入力は、直近の月次の作業記録と請求の内訳です。返ってくるのは、顧問先の層ごとの作業時間と、報酬の内訳の対応表です。

手順1は、顧問先の台帳から、年商区分、業種、記帳方式、請求の内訳を抜き出します。手順2は、層ごとに代表的な顧問先を数件選び、一か月分の作業を工程ごとに記録します。手順3は、工程のうちAIが下書きできる部分と、有資格者の確認が必要な部分に色分けします。手順4は、色分けした工程表を見ながら、報酬の内訳を見直す必要があるかを判断します。有資格者による最終確認は、手順4の判断そのものに置きます。

次のプロンプト例は、台帳の抜き出し結果を整理させるためのものです。顧問先名は架空のA社、B社を使います。

以下は、当事務所の顧問先の層ごとの集計メモです(顧問先名は架空)。
年商区分、業種、記帳方式ごとに、件数と月あたりの作業時間の合計を整理してください。
結論や報酬額の提案はせず、集計の抜けや矛盾の指摘だけをしてください。
メモ:
A社: 年商区分 小, 業種 サービス, 記帳 レシート画像, 月次作業 120分
B社: 年商区分 小, 業種 小売, 記帳 POS連携, 月次作業 90分
(ここに、仮名化した集計メモを貼る)

次のプロンプト例は、顧問先からの質問に対する説明文の下書きを作る際に、断定を避ける表現を確認させるためのものです。

顧問先から「他の税務顧問サービスは月額が安いと聞いた」と聞かれた場面を想定します。
当事務所が提供する業務の範囲(記帳の確認、決算申告、相談対応)を事実だけで説明する文案を作ってください。
他所のサービスの優劣を断定する表現は避け、価格の比較表現も使わないでください。
最後に、文案の中で出典の確認が必要な箇所を列挙してください。

いずれの出力も下書きです。説明文は、有資格者が内容を読んで、自所の実態に合っているかを確かめてから使います。

顧客資料をAIに入れる前に決めておく、守秘義務と規程の論点

公開された運用の流れでは、顧客が領収書やレシートの画像をクラウド上のフォルダに保存し、AI-OCRが読み取ります(出典: 税理士.ch インタビュー)。自所が同様の流れを採る場合、資料の置き場所と、AIサービスへの入力が、守秘義務の論点になります。

税理士については、税理士法第38条が、正当な理由がなく税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、または窃用してはならないと定めています。税理士でなくなった後も同様とされます。この条文は、事務所の所員の扱いや、委託先の選定の設計に関わる論点になります。個人情報の面では、個人情報保護法第23条が個人データの安全管理措置を、第25条が委託先の監督を定めています。

規程に何を書くかについて、運用例を挙げます。AI-OCRや会計ソフトなど、顧客の資料を預けるサービスの一覧と、各サービスのデータ利用ポリシーの確認日。顧客に説明する書面の様式。画像の保存期間と削除の手順。AIの出力を確認する担当者と、確認の記録の残し方。これらをどう定めるかは、事務所の判断です。個人向けプランの業務利用の論点は、別の記事で整理しています(関連: 個人向け生成AIプランの業務利用を点検する記事)。

失敗例と回避策

一つ目の失敗例は、他所の価格だけを見て報酬を動かし、後から採算の根拠を説明できなくなる例です。回避策は、先に作業時間を実測し、報酬の内訳ごとに根拠を残すことです。

二つ目は、AIの出力をそのまま顧問先に出してしまう例です。仕訳の誤り、科目の誤分類、金額の読み取り誤りは、AI-OCRで起こり得ます。回避策は、確認の工程を設計に含め、確認者の記録を残すことです。公開情報でも、申告書など税額に直結する部分には人間のチェックが置かれています。

三つ目は、顧問先への説明がないまま、資料の置き場所を変える例です。クラウドの保存先やAIサービスを変えた際に、顧問先に説明がないと、後から信頼関係に影響が出る場合があります。回避策は、変更前に説明書面を用意することです。

費用・工数・体制

AIサービスの導入費用は、サービスごとに料金体系が異なります。この記事では金額を示さず、各社の公式の料金ページでの確認を前提とします(要確認)。工数については、顧問先の台帳整理と作業時間の実測が、事務所の規模にもよりますが、数週間から一か月ほどかかる場合があります。体制としては、有資格者のうち一人が、実測の取りまとめと報酬設計の責任を持つ形が考えられます。

今後の展望と独自考察

低価格のAI税務サービスが登場しても、顧問先が求める価値は、価格だけで決まるわけではありません。公式サイトの記載でも、チャット相談には人間の担当者が対応し、決算書と申告書は税理士が責任をもって作成すると示されています(出典: みんなの税務顧問 公式サイト)。つまり、AIで処理する部分と、有資格者が担う部分の分け方が、各所の設計の違いになります。今後の論点は、自所がどの部分を価値として提供するのかを、顧問先に言語化できるかどうかです。

よくある質問

月額980円のサービスに、自所の報酬を合わせるべきですか。

結論は、事務所の経営判断です。本記事は方向を示しません。先に、作業時間の実測と、顧問先の層の重なりを確認する作業があります。

AIで記帳を処理するサービスは、税理士法の観点で論点になりますか。

税理士法第2条は、税理士の業務と付随業務を定めています。AIの利用の当否を直接定める条文を、本記事は確認していません。具体的な当てはめは、有資格者や所属の税理士会へ確認してください。

顧問先に「他所は安い」と言われたら、どう説明しますか。

他所のサービスの評価は避け、自所が提供する業務の範囲、確認の体制、相談への対応を、事実で説明する形が考えられます。説明文は、有資格者が内容を確かめてから使います。

公開情報の数字は、そのまま自所の検討に使えますか。

運営法人が公表した条件であり、自所の事情とは異なります。前提となる対象、業種の制限、提供形態を確認したうえで、参考情報として使う位置づけです。

AI-OCRに顧客の領収書を入れるとき、何を確認しますか。

データの利用ポリシー、保存先、保持期間、委託先としての管理を確認します。個人情報保護法第25条は委託先の監督を定めており、サービスの契約内容を踏まえた検討になります。

年商1,000万円以下の顧問先が多い事務所は、何から始めますか。

顧問先の台帳から、年商区分と記帳方式を抜き出し、層の重なりを把握する作業から始める運用が考えられます。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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