AIが会計士12名に圧勝、Mercor調査で正答率37%対100%の差

Mercorの調査で会計士12名の平均正答率は約37%、Claude Opus 5は20回すべて100%でした。簡略化された課題である点や測定対象外の領域も含め、公表内容を整理します。

AIが会計士12名に圧勝、Mercor調査で正答率37%対100%の差

Mercorは2026年10月1日、AIが若手会計士の月次決算課題で全試行100%の正答率を出したと公表しました。

米国のAI人材企業Mercorが、免許を持つ公認会計士12名と最新AIモデルに同じ月次決算の課題を解かせた比較調査を公表しました。会計士の平均正答率は約37%で、Claude Opus 5は20回の試行すべてで100%だったと報告されています。会計・税務・労務に関わる士業の方にとって、AIの実力を数字で測る材料になりそうです。本記事では公表された事実を整理し、結果をどこまで読み取れるかを、一次情報とThe Decoderの報道をもとにまとめます。なお、本記事は公表資料の要約であり、特定の業務判断を示すものではありません。

何が起きたか:12名の会計士とAIを同じ課題で比較

調査を公表したのは、AI訓練用の専門家人材を扱うMercorです。Mercorの調査記事「Human Baselines for Benchmarks」によると、公表日は2026年10月1日で、著者はAden Barton氏です。報道としてはThe Decoderが2026年10月2日に取り上げています。

参加したのは、免許を持つ公認会計士12名です。会計実務の経験は平均で約5年半とされています。課題は、実在の会計ベンチマークであるAPEX-Accountingのタスクを簡略化した、四つの月次決算シナリオです。企業の作業ファイルから正しい数値を探し、計算し、結果の表を作成するという内容でした。

結果は、会計士の平均正答率が約37%で、個人差は0%から約90%まで大きく広がりました。所要時間は多くが30分から180分でした。これに対しClaude Opus 5は、20回の試行すべてで正答率100%となり、いずれも10分未満で完了したと報告されています。最良の会計士でも、中位から上位のフロンティアモデルを下回ったとのことです。

コストの試算も示されています。正答基準1件あたりの費用は、Claude Opus 5が約0.21ドル、会計士が米国の中央値賃金に基づく試算で約10.35ドルで、約49倍の差があるとされています。

数字をどう読むか:過去の推移と、測っていないこと

過去との比較も公表されています。Mercorによると、GPT-4oの正答率はほぼ0%で、o3は2025年春に会計士の平均を超え、GPT-5は約69%でした。The Decoderは、約18か月前の最良モデルが会計士の平均である約37%を下回っていたことを伝えています。一部の低価格モデルやオープンウェイトモデル(Qwen3.5-122Bなど)は、今も平均を下回るとされています。

一方で、Mercor自身が限界を明記しています。測定したのは、詳細への注意力、ファイルの検索、指示への厳密な従順さといった、AIが得意とする技能に限られます。同僚への相談や業務文脈の蓄積がない環境だったため、会計士にとっては実際より難しい条件でした。顧客とのやり取り、適切な質問、暗黙知の蓄積といった実務の重要な部分は測っておらず、結果は会計士が代替可能であることを意味しないと書かれています。

本格版のAPEX Accountingについては、The Decoderが次のように報じています。160タスク、10の模擬企業からなり、平均11年の経験を持つ専門家40名以上が作成したベンチマークです。採点基準の達成率は、Claude Opus 5.5が61.8%、Fable 5.1が61.0%、GPT-6 Astraが57.9%と記載されています。Mercorによると、ほぼ60%のタスクでは、どのモデルも完全な解答に至りませんでした。簡略版では満点が出る一方で、本格版では6割前後にとどまるという差は、課題の設計次第で結果が大きく変わることを示しています。

士業×AIの視点:読み取れる範囲と確認が必要な点

この調査は、特定の製品を士業事務所に導入する話ではありません。ツールの選定を考える際の判断材料として、読み取れる範囲を整理しておきます。

まず、構造化された月次決算の突合や集計のように、資料から数値を探して計算する作業では、AIの精度が会計士の平均を上回る結果が報告されたという点です。次に、同じ報告の中で、顧客対応や暗黙知は測定対象外とされている点です。さらに、本格版のベンチマークでは完全解答に至らないタスクが多く残っている点も見逃せません。

入力した資料がAIの学習に使われるかどうかといったデータの取り扱いについては、今回の公表資料からは確認できません。事務所で実際にツールを検討する場合は、各ベンダーの公式ポリシーを個別に確認する段階になります。

今後の動き:注目したいポイント

Mercorは、今後のフロンティア評価の目的が、既存の人間の仕事をどれだけ再現できるかから、これまで不可能または高コストだった作業を可能にできるかへ移るべきだという立場を示しています。ベンチマークはモデルの失敗を誘うために難しくなる傾向があり、人間単独では完了できないタスクが増える可能性にも触れています。

今後は、簡略版と本格版の差がどう縮まるか、会計以外の領域でも同様の人間基準の比較が出てくるかが注目点です。Mercorはリーダーボードを公開しており、APEX Accountingリーダーボードで最新の数値を確認できます。数値は更新される可能性があるため、引用する際は確認時点を明記するのが無難です。

まとめ

Mercorの調査では、会計士12名の平均正答率が約37%だったのに対し、Claude Opus 5は20回すべてで100%、所要時間は10分未満と報告されました。ただし課題は簡略化されたもので、顧客対応や暗黙知は測定対象外です。数字の大きさだけでなく、何を測った調査なのかを併せて見ることが大切です。

参考文献

※士業のチカラでは、士業事務所向けにAI活用の情報を発信しています。ご相談は下記からお問い合わせください。
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引用元: The Decoder

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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