経理AI Forwardとは、マネーフォワードが開く経理向けの無料オンライン講演会のことです。
顧問先の経理担当者が、生成AIの話題を持ち込んでくる場面が増えていませんか。経理向けのオンライン講演会が2026年10月20日と21日に開かれます。この記事では、公開されているプログラムを手がかりに、会計事務所の税理士や公認会計士が、視聴の前に整理しておきたい5つの問いをまとめます。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。前提として、開催概要は主催のマネーフォワードのイベントページに掲載されています(出典: マネーフォワード 経理AI Forwardイベントページ https://biz.moneyforward.com/seminar/28669/ )。なお、講演の内容そのものは、記事の執筆時点で未実施のため、本記事は評価を書きません。
開催概要と、プログラムから読み取れること
イベントページによると、形式はZoomによるオンラインで、アーカイブ配信が付きます。Day1は2026年10月20日の火曜日、Day2は10月21日の水曜日で、どちらも12時5分から16時30分までです。途中の入退室は自由で、参加費は無料です。申込の締切は10月21日の11時30分とされています。主催は株式会社マネーフォワードです(出典: マネーフォワード 経理AI Forwardイベントページ https://biz.moneyforward.com/seminar/28669/ )。
ページには、セッション名、登壇者、配信スケジュールは変更や中止になる可能性があるとの留意点も記載されています。視聴を予定している場合は、直前にページを再確認してください。
対象者として挙げられているのは、生成AIの活用を始めたい、または広げたい経理・管理部門の担当者、月次決算の早期化や問い合わせ対応、開示業務へのAI活用に関心がある担当者、AI前提の経理組織設計や人材育成に課題を持つ部門長、経営者、情報システム・DX部門の担当者です。つまり、主な聞き手は事業会社の経理部門であり、会計事務所は想定の中心ではありません。この点は、事務所が視聴するときの視点を決める材料になります。
Day1の最初のセッションは、AIエージェントが変える、バックオフィスと企業経営の未来というテーマで、Anthropic Japanのアプライド AI 本部長と、マネーフォワードの執行役員が登壇する予定と記載されています。Day1にはほかに、ChatGPTとCopilotを使った経理実務の入門、経理担当者の1日を生成AIで置き換える実践デモ、マネーフォワードの経理部門の活用事例、経理キャリアに関する会議が並びます。Day2は、SaaSとAIエージェントで変わる経理実務、入門と実践デモの再配信、経営への影響に関するセッションです(出典: 同ページ)。
顧問先が視聴する可能性が高いのは、実践デモや事例のセッションです。顧問先がそこで見たやり方を事務所に持ち込んだときに、どう受け止めるかを前もって決めておくと、会話が噛み合いやすくなります。
事務所が視聴前に整理する5つの問い
視聴の目的を、事務所の側から整理します。
問い1は、顧問先が自社で行う経理作業のうち、AIに任せる範囲が広がったとき、事務所の月次業務の前提がどう変わるかです。たとえば、顧問先が仕訳候補をAIで作ってから事務所に渡す運用になれば、事務所の側は入力代行から、確認と例外処理へ比重が移ります。この変化は、報酬設計にも関わります。月次の記帳代行に何分かけているかを、顧問先ごとに洗い出しておくと、変化の影響を数字で捉えられます。
問い2は、AIが作った数字を、誰がどこまで確かめるかです。実践デモでは、AIの出力をそのまま使う場面と、人が見直す場面が示される可能性があります。事務所は、顧問先の資料を預かる立場として、確認工程の責任分担を明確にしておく必要があります。有資格者しか行えない判断と、AIや事務スタッフに任せられる作業の線引きは、記事の末尾で整理します。
問い3は、顧問先が使うAIツールのデータの扱いです。顧問先がどのサービスに帳票や取引明細を入力しているかは、事務所が把握しておきたい情報です。入力されたデータが学習に使われるかどうかは、ベンダーの公式文書で確認する事項です。
問い4は、AIエージェントが権限を持つ範囲です。講演のテーマに、AIエージェントが挙がっています。エージェントが会計ソフトの操作を代行するようになれば、権限の設計が論点になります。この点は、別の記事で整理しています(参照: マネーフォワードAI Cowork 月次仕訳の判断軸)。
問い5は、事務所自身の学び方です。無料の講演会は、情報収集の入口として有用ですが、聞いた内容をそのまま事務所に適用することはできません。主催企業の製品を前提にした説明が含まれる可能性もあるため、他社の製品との比較や、一次情報の確認は別に行う必要があります。
視聴メモの取り方と、生成AIによる整理手順
アーカイブ配信があるため、リアルタイムで全てを聞き取る必要はありません。事務所として、視聴後に次の流れで整理する運用を提案します。
手順1は、視聴するセッションを決めることです。事務所の関心に近い、事例と実践デモを優先します。手順2は、視聴中に、気づいた点を5つの問いに沿って書き留めることです。手順3は、メモを生成AIで整理することです。この際、講演の内容を書き起こした文章や、非公開の資料は入力しない運用が安全側です。入力するのは、自分で書いたメモだけにします。
以下は私が視聴した講演で取ったメモです。次の5つの観点に分けて整理してください。
観点は、業務範囲の変化、確認工程、データの扱い、権限、事務所の学び方です。
メモにない内容は足さず、聞き取れていない箇所は「要確認」と書いてください。
【メモ】
(ここに自分で書いたメモを貼り付け)
手順4は、整理した内容を、事務所の定例会議で共有することです。手順5は、顧問先に伝える内容と、伝えない内容を分けることです。講演の内容を、主催者の許可なく資料に転載することは避けます。
もう一つ、整理用のプロンプトを示します。顧問先に聞く質問を洗い出すためのものです。
次の観点に沿って、顧問先の経理担当者に確認したい質問を10個作ってください。
観点は、利用しているAIサービスの種類、入力しているデータの範囲、AIの出力を確認する担当者、社内ルールの有無です。
架空の顧問先を想定し、特定の会社名は使わないでください。
出力された質問案は、事務所の有資格者が加除します。顧問先への質問は、事務所の業務範囲に収まる内容かを確認してから使います。
守秘義務・規程上の論点
講演で見聞きした事例を事務所に取り込む前に、守秘義務の整理を済ませておく運用が考えられます。税理士については税理士法第38条が、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は窃用してはならないと定めており、税理士でなくなった後も同様とされています。公認会計士については公認会計士法第27条が、秘密を守る義務を定めています。これらの条文を、事務所の個別の運用に当てはめる作業は、有資格者の判断事項です。
視聴メモや整理用のAIに、顧問先の名称や数字を入れないことが、最も単純な対策になります。講演で示された事例は、他社の事例であり、自事務所の顧問先の情報ではありません。メモに顧問先の情報が混ざったときは、そのメモを生成AIに入力せず、手元で整理します。
個人情報の観点では、個人情報保護法第27条が第三者提供の制限を定めています。個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、入力する情報の範囲に注意するよう示しています(出典: 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について)。
事務所のAI利用規程に足す観点は、別の記事で整理しています(参照: 生成AI利用規程を職種別にどう変えるか 8士業の差分と作り方7手順)。規程に書く項目の例として、視聴した外部講演の内容を事務所内で共有する際の範囲、主催者の資料の取り扱い、顧問先に推奨するツールの範囲があります。特定のツールを顧問先に推奨するかどうかは、事務所の責任者が決める事項です。
失敗例と回避策
一つ目は、講演で聞いた事例を、顧問先にそのまま当てはめる失敗です。他社の事例は、規模や業種、会計処理の前提が異なります。回避策は、事例を聞いたときに、前提条件をメモに残し、自事務所の顧問先に当てはまる条件かを別に検討することです。
二つ目は、主催企業の製品を前提にした説明を、一般論として受け取る失敗です。回避策は、製品名が出たセッションは、製品の機能の説明と、一般的な考え方の説明を、メモの段階で分けておくことです。
三つ目は、視聴した内容を、公表資料として確認せずに顧問先へ伝える失敗です。回避策は、顧問先に伝える前に、出典となる公開ページを確認し、日付と内容を照合することです。
四つ目は、無料の講演会の登壇者や所属を、記事や資料に誤って記載する失敗です。登壇者や所属は変更になる可能性があるため、引用する際は、公式ページの最新の記載を確認します。
費用・工数・体制
参加費は無料と記載されています(出典: マネーフォワード 経理AI Forwardイベントページ https://biz.moneyforward.com/seminar/28669/ )。視聴にかかる時間は、各日とも4時間台の枠が設定されていますが、途中入退室は自由とされているため、関心のあるセッションに絞って視聴できます。
工数は、視聴時間に加えて、メモの整理と事務所内での共有の時間がかかります。担当者を一人決め、視聴とメモ整理を任せ、定例会議で共有する形にすると、全員が長時間視聴する必要がなくなります。アーカイブ配信がある点も、日程調整を楽にします。
今後の展望と独自考察
この講演会のように、経理部門向けのAI活用の情報発信が増えると、顧問先の経理担当者の期待値も変わります。月次の早期化や、問い合わせ対応の自動化が、事業会社の側の目標として語られるようになったとき、会計事務所に求められる役割は、作業の代行から、判断と確認の支援に移る可能性が論点になります。
一方で、事務所の側から見れば、顧問先の取り組みの質が揃わない状況が続きます。AIを積極的に使う顧問先と、使わない顧問先が混在するとき、事務所の業務フローを一本化できるかが課題になります。
事務所としては、講演会の情報を、自事務所の判断軸に引き寄せる作業が重要になります。そのために、本記事の5つの問いのように、見るべき観点を先に決めておく方法が、役に立つと考えられます。
よくある質問
質問1は、参加費はいくらかという点です。無料と記載されています(出典: マネーフォワード 経理AI Forwardイベントページ https://biz.moneyforward.com/seminar/28669/ )。
質問2は、アーカイブ配信はあるかという点です。アーカイブ配信付きと記載されています。両日とも同一の視聴URLで配信される旨も、ページに書かれています。
質問3は、申込の締切はいつかという点です。2026年10月21日の11時30分と記載されています(出典: マネーフォワード 経理AI Forwardイベントページ)。
質問4は、会計事務所の関係者も対象かという点です。対象者として明記されているのは、事業会社の経理・管理部門の担当者、部門長、経営者、DX部門の担当者です。会計事務所が対象外とは記載されていませんが、対象として明示もされていないため、申込の可否は主催者の案内で確認してください。
質問5は、講演の内容をブログや資料に載せてよいかという点です。主催者の資料や講演内容の転載については、規約や案内の確認が前提になります。本記事では、開催概要の事実のみを公式ページから引用しています。
質問6は、AIの出力を事務所がどう確認するかという点です。確認工程の分担は、事務所で決める事項です。有資格者が最終判断を行い、AIは下書きや整理に使うという構図が、運用例として示されます。
参考文献
- マネーフォワード 経理AI Forwardイベントページ https://biz.moneyforward.com/seminar/28669/
- e-Gov法令検索 税理士法第38条
- e-Gov法令検索 公認会計士法第27条
- e-Gov法令検索 個人情報保護法第27条
- 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について
※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。
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