厚生労働省は2026年9月29日、介護保険の預貯金等把握に関する中間とりまとめ素案を示しました。
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。厚生労働省老健局は9月29日、第4回の検討の場を開き、「介護保険制度における預貯金等の把握等に係る検討の場 中間とりまとめ(素案)」を資料として示しました。テーマは、低所得の施設入所者らを対象とする補足給付で、市町村が行う預貯金等の確認事務をどう軽くするかです。この記事では、公表された自治体アンケートの数字と、素案に並んだ負担軽減策を整理し、介護事業者や利用者家族の相談を受ける社会保険労務士、行政書士、税理士などの事務所が押さえておきたい点をまとめます。
何が公表されたか:第4回の検討の場と素案の骨子
厚生労働省の検討の場のページによると、この検討の場は2026年5月27日の第1回から始まり、6月30日に市町村へのヒアリング、7月29日に自治体アンケート結果の取りまとめを経て、9月29日の第4回で中間とりまとめの素案について意見交換を行う流れです。資料によると、構成員は市の介護保険担当課長等3名、町村の担当課長等2名、老健局介護保険計画課長らです。
検討の場の設置は、令和7年12月25日の社会保障審議会介護保険部会の意見で、預貯金等の把握の正確性と事務負担の両面から、まず現行の補足給付での確認事務の実態を把握し、保険者との実務的な検討の場を設けるべきとされたことが背景にあると、素案の資料に記載されています。素案はあくまで「たたき台」の位置づけで、内容は今後変わり得ます。
数字で見る自治体の事務負担
素案に載った自治体アンケートは、全国1,574保険者のうち1,566保険者が回答しています(回答率99.5%)。令和6年度に補足給付の事務に従事した職員は合計3,882人で、1保険者あたりの中央値は2人でした。負担限度額認定の申請は合計1,094,033件、そのうち51,728件が不認定で、預貯金額の変動が理由の不認定は8,019件と示されています。補足給付の認定者数は令和6年度末時点で約85万人とされています。
金融機関への照会は34,534人分で行われ、照会の結果として不認定になったのは3,778件です。照会方法は、本店等一括照会を675保険者(約43%)が、オンライン預貯金照会を198保険者(約13%)が実施していました。回答までの日数は、本店等一括照会が平均17.0日、オンライン照会が平均9.3日で、オンラインのほうが短いという結果です。不正が検知されて介護保険法に基づく徴収金を課した例は、29保険者で116件でした。
素案に並んだ負担軽減策
素案は事務負担の軽減策として、9項目を挙げています。主なものは次のとおりです。
- オンライン預貯金照会の活用促進。政府が令和7年6月2日に決定した共通化推進方針に基づき、令和8年8月にExcelマクロやRPAの活用を含む導入のポイントを周知したと記載されています。
- 非課税年金の照会業務の負担軽減。令和8年7月31日付の通知で、マイナンバーによる情報連携を行った場合の非課税年金情報の算出方法を示したとされ、介護保険システムの標準仕様書の見直し検討にも触れています。
- 介護情報基盤の活用。令和10年4月1日からの本格運用が予定され、限度額認定証の発行廃止の検討が要望として紹介されています。
- 金融機関照会の効率化と添付書類の簡素化。照会は全件実施を想定せず、サンプル調査や疑義がある場合に行う運用が事務連絡で示されてきたと説明しています。
- 負担限度額認定の有効期限を2年とする運用。29保険者が実施しており、事務負担の軽減というメリットと、期間中の変動による過誤調整の増加というデメリットの両方が記されています。
- このほか、郵送・オンライン申請の活用、認定証更新時期の変更案、AIやRPAによる申請情報入力の削減などが挙がっています。
素案はさらに、資産状況をより正確に把握するには、マイナンバーを預貯金等に付番し全金融機関に照会できる仕組みが必要で、国は将来的な導入を目指して付番等を進めるべきだとも述べています。
根拠条文と士業事務所にとっての論点
素案は、不正が検知された場合の徴収金について介護保険法第22条第1項を挙げています。e-Gov法令検索の介護保険法で同条第1項を確認したところ、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、市町村はその給付の価額の全部又は一部を徴収できると定め、特定入所者介護サービス費などの場合は、厚生労働大臣の定める基準により、不正に受けた額の百分の二百に相当する額以下の金額を徴収できるとしています。条文の内容の紹介にとどめ、個別事案への当てはめは行いません。
今回の公表は市町村の事務に関するもので、士業事務所に新たな手続を求めるものではありません。一方で、施設入所者の家族から申請書類や預貯金の確認について相談を受ける行政書士や税理士の事務所、介護事業者の顧問を務める社会保険労務士の事務所にとっては、今後の運用が変わり得る動きとして把握しておく材料になります。たとえば、通帳写しの添付が毎年不要になる、有効期限が2年になるといった運用は、素案では市町村の判断で地域の実情に応じて行うものとして整理されています。実際の取扱いは市町村ごとに異なり得るため、相談を受けた際に各市町村の案内を確認するという対応を採る事務所があります。
今後の動き
今回の資料は中間とりまとめの素案で、確定版ではありません。最終的な取りまとめの内容や時期は、今回の公表資料からは確認できません。負担軽減策のうち、標準仕様書の見直しや介護情報基盤の活用などは、国において検討するという書き方にとどまっており、実施時期は示されていません。今後の公表は、厚生労働省の検討の場のページで確認できます。
まとめ
厚生労働省は2026年9月29日、介護保険における預貯金等の把握に関する検討の場の第4回で、中間とりまとめ素案を示しました。自治体アンケートでは、オンライン預貯金照会の平均回答日数が9.3日と、本店等一括照会の17.0日より短いことなどが示され、素案にはオンライン照会の活用、有効期限2年の運用、添付書類の簡素化など9項目の軽減策が並びました。確定版ではないため、今後の公表を確認していく段階です。
参考文献
- 厚生労働省「第4回介護保険制度における預貯金等の把握等に係る検討の場の資料について」
- 厚生労働省「介護保険制度における預貯金等の把握等に係る検討の場」
- 厚生労働省 中間とりまとめ(素案)資料1(PDF)
- e-Gov法令検索 介護保険法
※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/
引用元: 厚生労働省
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。
記載内容に誤りを見つけられた場合は、お問い合わせよりご指摘ください。確認のうえ速やかに訂正し、訂正履歴を記事内に残します。編集方針の詳細は運営者情報をご覧ください。