労災保険法等の改正で、2027年4月に遺族補償年金や時効の見直しが施行されます。
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。行政の見解は厚生労働省の公表資料で確認しています。厚生労働省は2026年9月29日、労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(第132回)を開催し、労災保険法改正に伴う政令案を審議します。2026年7月17日に公布された「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第60号)の施行に向けた動きで、社会保険労務士事務所にとっては顧問先への案内スケジュールを左右する内容です。

何が起きたか 労災保険法改正の全体像
厚生労働省が公表した概要資料によると、今回の改正は主に5つの柱からなります。第一に、遺族補償年金の支給要件から配偶者の性別要件を撤廃し、遺族が1人の場合の給付日数を給付基礎日額の153日分から175日分に増やします。第二に、脳・心臓疾患や精神疾患、石綿関連疾病など「容易に判断できない疾病」について、療養補償給付等の請求権の消滅時効を2年から5年に延長します。第三に、現在は任意加入とされている小規模な個人経営の農業・林業・水産業を労災保険の強制適用事業に統一します。第四に、一人親方等の特別加入手続を担う団体について、業務改善命令制度を新設して要件を法定化します。第五に、社会復帰促進等事業の給付決定に対する不服申立てを、労災給付と同じ労働保険審査官・審査会の審査体制に統一します。遺族補償年金の見直しなど大半の規定は2027年4月1日に施行される一方、農林水産業への適用拡大は「公布の日から5年を超えない範囲内で政令で定める日」からの施行とされ、具体的な期日は今後の政令で決まる仕組みです。
社労士事務所にとっての論点
2026年9月8日に開かれた第131回の同部会では、農林水産業の強制適用に関する政令案として「令和13年4月1日」(2031年4月1日)を施行日とする案が示されたと、社会保険労務士PSRネットワークが伝えています。この案の通りに決まれば、小規模な個人経営の農業・林業・水産業を顧問先に持つ事務所は、2031年4月に向けて労災保険の加入手続きが新たに必要になる顧客を洗い出す時間的余裕があることになります。一方、遺族補償年金の給付日数見直しや時効延長、特別加入団体の要件強化は2027年4月1日施行のため、対応の優先順位は明確に分かれます。9月29日の第132回部会では、政令改正等の案件についての諮問と、労働政策審議会の建議を踏まえた対応方針が議題とされており、農林水産業以外の関連政令についても具体化が進む見通しです。
今後の展望・初動アクション
政令の内容は審議会での諮問・答申を経て確定するため、現時点の期日案は変更される可能性があります。事務所としては、まず顧問先のうち遺族補償の対象になり得る労災案件や、脳・心臓疾患・精神疾患・石綿関連疾病で時効が問題になり得る案件を洗い出しておくと、2027年4月の施行に向けた初動が早くなります。農業・林業・水産業の顧問先については、2031年4月という時間軸を踏まえつつ、労災保険の加入義務化に備えた準備を早めに周知しておく事務所もあります。特別加入団体に関わる顧問先には、業務改善命令制度の新設という制度趣旨を伝えておくことも有効です。今後公表される政令・省令の内容は、厚生労働省の公表資料で確認しながら順次フォローしていく必要があります。
まとめ
労働者災害補償保険法等の改正により、遺族補償年金の見直しや時効延長などは2027年4月1日に、農林水産業への労災保険適用拡大は2031年4月1日を軸に施行される見通しです。具体的な政令の内容は2026年9月29日の労働政策審議会労災保険部会などでの審議を経て確定するため、社労士事務所は続報を確認しながら顧問先への案内準備を進める必要があります。
参考文献
- 厚生労働省「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号)について」
- 厚生労働省 労災保険法等改正の概要資料(PDF)
- 厚生労働省「第132回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」
- 社会保険労務士PSRネットワーク「令和8年労災保険法等改正法の施行に伴う関係政省令の改正等について案を示す」
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引用元: 厚生労働省
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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