LegalOnのプレイブックエージェントで契約審査基準を内製する7工程

LegalOnのプレイブックエージェントが強化され、契約書ひな形から審査基準を生成できるように。弁護士事務所が基準を内製する7工程と守秘の線引きを一次情報で整理します。

LegalOnのプレイブックエージェントで契約審査基準を内製する7工程

プレイブックエージェントとは、既存のひな形や自社基準から契約レビュー基準を生成するAIエージェントのことです。

契約レビューをAIに任せるかどうかではなく、レビューの判断基準を誰が持つかが、事務所の差になりつつあります。この記事では、LegalOn Technologiesが提供するプレイブックエージェントの仕様変更を一次情報で押さえたうえで、事務所の審査基準を内製する工程、顧客の契約書を投入する前に決めておく論点、体制の組み方までを整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、製品の仕様はベンダーの公表資料で確認しています。プレイブックエージェントは2026年3月16日に機能が強化され、既存の契約書ひな形をそのままアップロードしてプレイブックを自動作成できるようになったと公表されています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年3月16日)。

プレイブックエージェントが2026年に変えた前提

押さえるべき変化は、基準づくりの入口が広がったことです。LegalOn Technologiesの2026年3月16日付プレスリリースによると、プレイブックエージェントは企業がすでに保有する契約書ひな形(.docx)や自社基準(.docx / .xlsx)をもとに、契約レビューの基準となるプレイブック案を生成するAIエージェントです。従来は自社基準ファイルからの自動作成が中心でしたが、この強化により契約書ひな形を起点にプレイブックを作成・整備できるようになった、と説明されています。アップロードされたファイルをAIが解析して案を画面上に表示し、利用者が確認・編集したうえでプレイブックとして登録する流れです。

なぜこれが事務所にとって重要かというと、審査基準の整備コストが下がると、基準を持つこと自体のハードルが下がるからです。同リリースは背景として、プレイブック運用を始めるには契約書ひな形や審査基準を整理して所定の形式に整える必要があり、ナレッジの抽出や条項の整理、ファイル整形の作業が発生するため初期の作成コストが高くなりやすかった、と説明しています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年3月16日)。法律事務所が顧問先ごとに審査の勘所を持っていても、それが担当弁護士の頭の中にある限り、事務所の資産にはなりません。

製品全体の設計思想も同じ方向に動いています。LegalOnはUI/UXを刷新し、LegalOnアシスタントをプロダクトの中心に据えたAIエージェントネイティブな体験を提供すると公表しています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース)。画面の起点が機能メニューから対話へ移ると、利用者が最初に投げる指示の質がそのまま出力の質になります。事務所として指示の型を用意しているかどうかで、同じ製品を使っても成果物が変わる構造です。

連携面の動きも続いています。2026年9月9日には、法務リサーチから相談回答・契約書修正までを一つの会話上でつなぐLegalOnアシスタントが、Legalscapeが提供するLegal Intelligenceと連携し、書籍・法情報に基づくリサーチ結果を参照できるようになったと公表されました(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年9月9日)。翌9月10日にはSingapore Academy of Lawとの連携により、契約書テンプレート・条項など134ファイルをLegalOn上で提供すると公表されています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年9月10日)。基準・リサーチ・ひな形が同じ画面に集まる方向に製品が動いている、と読める材料です。

ツール選定の段階にいる事務所は、AI契約書レビューをどう選ぶか 事務所が置く7つの選定基準で整理した観点を先に通しておくと、この記事の工程がそのまま接続します。

事務所の審査基準をプレイブックに落とし込む7工程

基準の内製は、ツールを契約した日ではなく、何を基準と呼ぶかを事務所が決めた日から始まります。以下は、企業法務を扱う法律事務所が自事務所の審査基準を形にするための7工程です。

第1工程は、基準の対象を絞ることです。全契約類型を一度に扱おうとすると途中で止まります。取扱件数の多い類型から、業務委託契約、秘密保持契約、売買基本契約のいずれかひとつを選びます。件数の実績は請求データか案件管理台帳から拾えます。

第2工程は、素材の棚卸しです。プレイブックエージェントは契約書ひな形(.docx)と自社基準(.docx / .xlsx)を入力として受け付けると公表されています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年3月16日)。事務所に散らばっているひな形、過去の修正履歴が残るWordファイル、チェックリストのExcelを集め、どれを正とするかを先に決めます。ここで複数世代のひな形が混ざると、生成される基準もぶれます。

第3工程は、顧客情報の除去です。ひな形に相手方の社名や個別条件が残っていないかを確認し、架空のA社、B社に置き換えたうえで投入します。この判断は次章の守秘の論点と直結するため、工程として独立させておきます。

第4工程は、生成された案のレビューです。AIが生成した内容は画面上で確認しながら編集や追記、削除を行い、調整したうえで登録できると説明されています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年3月16日)。ここを流して登録すると、事務所の基準ではなく一般的な基準が事務所名で運用される状態になります。条項ごとに、譲れない線、交渉可能な線、相手方の案をそのまま受ける線の三段で見ていくと、確認が速く進みます。

第5工程は、判断の理由を残すことです。基準の各項目に、なぜその修正を求めるのかを1行で添えます。理由が書かれていない基準は、数年後に誰も触れなくなります。若手弁護士の教育材料としての価値も、理由の有無で大きく変わります。

第6工程は、弁護士による最終確認の位置づけです。プレイブックはレビューの出発点であって結論ではありません。AIレビューの結果に対し、どの類型を例外なくパートナーが確認するのか、どの範囲はアソシエイトの判断で完結してよいのかを、基準の運用ルールとして文書化します。責任の所在を工程表の上に置いておくと、後から経緯を説明できます。内製と外部依存の切り分けについては、法務AIに既製プロンプト40種 事務所が内製と外部依存を分ける7基準の整理が参考になります。

第7工程は、改定サイクルの固定です。法改正、重要な裁判例、顧客との交渉で通らなかった条項の3つを改定のトリガーに置き、四半期に一度の見直し日を年間予定に入れます。改定履歴を残しておくと、なぜ今この基準なのかを顧客に説明できます。

素材の棚卸しと基準の言語化には、生成AIを下書きに使う方法が現実的です。次のプロンプトは、ChatGPT、Claude、Gemini のいずれでも使えます。実在する顧客名や取引条件は入れません。

あなたは法律事務所の契約審査基準を整理するアシスタントです。
以下の条件で、業務委託契約のレビュー基準の骨子を作ってください。

# 前提
- 事務所: 企業法務を扱う法律事務所(弁護士5名)
- 対象: 受託者側に立つ業務委託契約
- 想定顧客: 架空のA社(ソフトウェア受託開発、従業員80名)

# 出力してほしいもの
1. 条項を「譲れない条項」「交渉可能な条項」「相手方案を受け入れ可能な条項」の3分類で列挙
2. 各条項について、修正を求める理由を1文で記載
3. 分類の判断が事案によって変わり得る条項は、その分岐条件を明記

法的評価の断定は避け、検討すべき論点の提示として出力してください。
表は使わず、分類ごとの箇条書きにしてください。

登録前のレビューを機械的に回すためのプロンプトも用意しておくと、担当者ごとのばらつきが減ります。

以下は、AIエージェントが生成した契約審査基準の案です。
法律事務所の弁護士が登録可否を判断するためのレビューメモを作成してください。

# 基準案
(ここに生成された基準案を貼り付け。固有名詞は A社、B社 に置き換えること)

# 出力形式
- 「そのまま登録してよい項目」「表現の修正が要る項目」「事務所として方針を決めてから登録する項目」の3分類
- 各項目について、判断の根拠を1文で記載
- 事務所の方針が必要な項目は、決めるべき論点を疑問文の形で書き出す
- 法令・裁判例に言及する場合は、条番号や事件名を推測で書かず、確認が必要な旨を明記する

顧客の契約書をAIに渡す前に決めておく3つのこと

最初に決めるのは、どのファイルを投入してよいかの線引きです。ひな形と個別案件の契約書は、守秘の観点でまったく性質が違います。

1つ目は、投入対象の定義です。事務所のひな形や一般に公開されている条項集は、顧客の秘密を含みません。一方、顧客から預かった契約書、交渉中のドラフト、相手方から届いた修正案は、案件そのものです。プレイブックの生成に使うのは前者に限り、後者は別のルールで扱う、という線引きを最初に文書化しておくと、判断がその都度ぶれません。

2つ目は、守秘義務の根拠を共通言語にすることです。弁護士法第23条は、弁護士または弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定め、法律に別段の定めがある場合はこの限りでないとしています。条文の当てはめは各事務所の弁護士の判断に属しますが、条文そのものを所属弁護士と事務職員が読んだ状態を作っておくことが、ツール運用の議論の前提になります。日本弁護士連合会が公表している生成AIに関する情報は、日本弁護士連合会のサイトで確認できます。

3つ目は、ベンダーのデータ取扱いの確認です。入力したファイルが学習に使われるのか、保持期間はどれだけか、どの範囲の担当者が閲覧し得るのかという3点を、LegalOn Technologies プライバシーポリシーと利用契約の条項から読み取り、確認日付とともに事務所内に記録します。個人データの取扱いを外部に委ねる場面では、個人情報の保護に関する法律第27条が第三者提供の制限を定め、同条第5項で、利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部または一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合について、提供を受ける者は第三者に該当しないものとすると規定しています。委託として整理するのか、顧客の同意を得る場面はどこかという判断は、個人情報保護委員会の公表資料に当たりながら事務所として固めておく論点です。

顧問先への説明では、利用するサービス名と提供元、投入するデータの範囲、学習利用の有無、最終的な判断は弁護士が行うという役割分担の4点を書面で渡す事務所があります。説明の場で、ひな形は投入するが個別案件の契約書は投入しない、という線引きを先に示せると、話が具体的になります。事務所規程に落とす際は、ツール名を直接書かず、事務所が承認したクラウドサービスの一覧を別表で管理する建て付けにしておくと、製品が入れ替わるたびに規程本体を改定せずに済みます。規程の作り方そのものは生成AI利用規程を職種別にどう変えるか 8士業の差分と作り方7手順に整理しています。

基準の内製で起きやすい3つのつまずき

1つ目は、生成された案をそのまま登録してしまうことです。AIが出す基準案は、一般的な契約実務としては妥当でも、その事務所が顧客との交渉で実際に通してきた線とは限りません。自事務所の交渉履歴と照らして、通らなかった条項をどう扱うかを人が決める工程を飛ばすと、基準が形だけになります。

2つ目は、基準の所有者を決めないことです。プレイブックは作った瞬間から陳腐化が始まります。誰が改定の責任を持つのかを決めていない事務所では、法改正があっても誰も触らず、古い基準でレビューが回り続けます。担当パートナーをひとり決め、改定履歴の管理まで任せる形が運用として素直です。

3つ目は、基準を顧客に説明できない状態のまま使うことです。顧客から、なぜこの条項の修正を求めるのかと問われたときに、AIが出した基準だからという説明はできません。第5工程で理由を1行ずつ残しておくことが、この場面で効いてきます。基準の内製は、業務効率の話であると同時に、説明責任の話でもあります。

費用と体制をどう見積もるか

LegalOnの料金体系は公表資料では明示されておらず、個別の見積もりによるものと見られます(本記事執筆時点で公表情報を確認できず、要確認)。したがって費用面の判断材料は、ライセンス費用そのものよりも、基準の整備に割く人の時間になります。

現実的な見積もりは、契約類型ひとつあたり、素材の棚卸しに半日、生成案のレビューに1日、理由の記載に半日、合計で2日程度を見込む形です。弁護士のタイムチャージで換算すれば、その金額がそのまま初期投資になります。3類型を整備するなら6日分、これを四半期ごとに見直す前提で年間の工数を置きます。

体制は、基準の所有者としてパートナーをひとり、素材の収集と生成の実務を担う事務職員またはアソシエイトをひとり置き、登録前の最終確認を担う弁護士という三者で回す形が、少人数の事務所でも成立します。重要なのは、生成を担う人と最終確認を担う人を分けることです。同じ人が作って同じ人が承認する構造では、レビューが形骸化します。

契約審査の基準をめぐって次に論点になること

基準が製品の内部に置かれるようになると、事務所の資産がベンダーのプラットフォーム上に蓄積されるという構造が生まれます。乗り換えの際に基準を持ち出せる形式で保全しておけるか、という論点が、今後の選定基準に入ってきます。.docxや.xlsxの原本を事務所側にも残しておく運用は、この観点で意味を持ちます。

もうひとつは、基準の粒度と弁護士の判断の関係です。基準を細かく作り込むほどAIレビューの精度は上がりますが、同時に、基準に書かれていない論点への感度が下がるおそれがあります。基準は判断の代替ではなく、判断の出発点として位置づける、という前提を事務所内で共有しておく必要があります。

製品側の動きも速く、リサーチ連携や海外の契約実務への対応が続いています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年9月10日)。半年単位で前提が変わる領域なので、基準の改定サイクルとは別に、製品仕様の変更を追う担当を決めておくと取り残されずに済みます。契約レビュー製品の比較についてはOLGAのAI契約レビュー刷新で何が変わるか 弁護士事務所が見る7つの判断軸も併せて参照できます。

よくある質問

プレイブックエージェントは何を入力として受け付けますか

契約書ひな形(.docx)と自社基準(.docx / .xlsx)です。これらをもとに契約レビューの基準となるプレイブック案を生成し、画面上で確認・編集したうえで登録できると公表されています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年3月16日)。

顧客から預かった契約書を投入してよいでしょうか

投入の可否は、事務所の守秘の運用とベンダーのデータ取扱いの両方を確認したうえで、各事務所が判断する事項です。弁護士法第23条は職務上知り得た秘密の保持を定めており、ひな形と個別案件の資料を同じ扱いにしない線引きを先に決めておく運用が、実務では採られています。

生成された基準はそのまま使えますか

出発点として扱う設計です。AIが生成した内容は画面上で編集や追記、削除ができると説明されており(出典: LegalOn Technologies プレスリリース 2026年3月16日)、自事務所の交渉実績と照らして弁護士が調整する工程が前提になります。

小規模な事務所でも内製する意味はありますか

判断材料は取扱件数と担当者数です。同じ契約類型を年間に何件扱っているか、その判断が特定の弁護士に集中していないかの2点で見ると、少人数の事務所ほど属人化の度合いが高く、基準を外に出す価値が大きい場面があります。まず1類型から始める形が現実的です。

UI刷新で何が変わりましたか

操作の起点が対話に移りました。LegalOnはUI/UXを刷新し、LegalOnアシスタントをプロダクトの中心に据えたAIエージェントネイティブな体験を提供すると公表しています(出典: LegalOn Technologies プレスリリース)。指示の出し方が成果物の質を左右するため、事務所として指示の型を持っておく意味が増しています。

導入にあたって顧客への説明は必要ですか

説明の要否と範囲は各事務所の判断ですが、利用するサービス名と提供元、投入するデータの範囲、学習利用の有無、最終判断は弁護士が行うという役割分担を書面で示す運用を採る事務所があります。説明を先に済ませておくと、後から経緯を問われたときに記録で答えられます。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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