電子取引の重加算税10%加重が外れる条件 税理士が顧問先に出す7工程

電子取引データの重加算税10%加重が一定要件で外れる改正について、財務省の大綱をもとに除外要件と届出、顧問先への案内をAIで下書きする7工程、守秘義務の線引きを税理士向けに整理しました。

電子取引の重加算税10%加重が外れる条件 税理士が顧問先に出す7工程

適用除外とは、要件を満たす電子取引データを加重対象から外す扱いのことです。

請求書をメールで受け取っているだけの顧問先から、なぜ重加算税の話が出てくるのかと聞かれたとき、事務所として答えを持っているでしょうか。本記事は、電子取引データに課される重加算税の加重措置から一定のデータが外れる仕組みと、その判定を顧問先向けの案内に落とすまでの手順を扱います。士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、改正の内容は財務省の公表資料で確認しています。根拠は財務省 令和7年度税制改正の大綱(7/9)の納税環境整備の項です。

令和7年度改正で電子取引データの重加算税がどう変わるのか

結論から言えば、電子取引データについて隠蔽仮装があった場合の重加算税の上乗せが、一定の要件を満たすデータについては外れる方向に整理されました。上乗せの割合は10%で、申告所得税・法人税・消費税が対象です(出典: 財務省 令和7年度税制改正の大綱(7/9))。

前提を押さえておきます。電子取引を行った保存義務者に電磁的記録の保存を求めているのは電子帳簿保存法第7条です。重加算税そのものは国税通則法第68条が定めており、隠蔽または仮装に基づく過少申告に対して過少申告加算税に代えて課される仕組みになっています。そのうえで、電磁的記録に記録された事項に関する申告漏れ等について上乗せを行う加重措置が電子帳簿保存法第8条に置かれています。今回の見直しは、この上乗せの対象範囲を絞る方向の改正です。

大綱が示す除外の条件は、あらかじめ届出書を提出していることに加えて、次の四つを満たす形でデータを授受・保存していることです。第一に、記録事項の訂正・削除の事実と内容を確認できるシステム(訂正削除ができないものを含む)を使って授受と保存を行うこと。第二に、金額に係る記録事項を訂正・削除したうえで帳簿に記録した場合に、その事実と内容を確認できるシステムを使うこと。第三に、請求書・納品書等の重要書類に通常記載される事項について、電子取引データの記録事項と帳簿の記録事項の関連性を相互に確認できるようにしておくこと。第四に、これらのシステムを使って授受・保存を行ったことを確認できるようにしておくことです(出典は前掲の大綱)。

ここで効いてくるのが、特定電子計算機処理システムという枠です。大綱は、これを国税庁長官の定める基準に適合するシステムと説明しています。そして基準の中身として挙げられているのが二つのデータ経路です。ひとつは、仕入明細書または適格請求書に記載すべき事項について、デジタル庁が管理する仕様に従って提供された電子取引データ。もうひとつは、金融機関等が預金者・貯金者の委託を受けて行う為替取引の取引情報、つまり口座間の資金移動データです。前者はデジタル庁のデジタルインボイス(Peppol)に関する取組が土台になります。

適用時期も押さえておきます。加重措置の除外は令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について、青色申告特別控除の要件に関する部分は令和9年分以後の所得税について適用されると大綱は記しています(出典は前掲の大綱)。所得税側の論点は青色65万円の要件が2027年から拡がる 税理士が今から進める7つの準備で別途整理しているので、本記事は加重措置の側に絞ります。

除外要件を満たすかを判定し顧問先へ案内する7工程

判定の出発点は、顧問先がどの経路でデータを受け取っているかの棚卸しです。生成AIに任せられるのは整理と下書きまでで、届出の要否や案内文の確定は有資格者が行う前提で組みます。

第一工程は、顧問先ごとのデータ受領経路の一覧化です。メール添付のPDF、取引先ポータルからのダウンロード、EDI、デジタルインボイス、口座の入出金明細といった経路を並べ、それぞれの件数感と金額規模を並記します。ここは既存の資料を読み込ませれば生成AIで下書きできます。

第二工程は、経路ごとに今回の基準に当たり得るものを仕分けることです。大綱が基準として挙げているのはデジタルインボイス仕様に従って提供されたデータと、金融機関の為替取引データの二系統です。この二つに乗っているかどうかで、そもそも検討に入るかが変わります。

第三工程は、利用中のシステムの機能確認です。訂正・削除の事実と内容を確認できるか、帳簿側の記録との関連性を相互にたどれるか、授受と保存が同じシステム上で完結しているか。ベンダーの公開ドキュメントを読み、確認できない項目はベンダーへの照会リストに落とします。

第四工程は、帳簿側の整備状況の確認です。第三の要件は電子取引データと国税関係帳簿の記録事項をひも付けて追えることを求めているため、仕訳の摘要や証憑番号の付け方が実務上の焦点になります。ここはAI-OCRと自動仕訳を会計事務所に入れる7判断軸と精度検証で整理した自動仕訳の設計と地続きです。

第五工程は、届出の要否と時期の整理です。除外は事前の届出書提出が前提になっているため、いつ出すか、誰が出すかを顧問先ごとに決めておく必要があります。様式や提出方法の細目は今後の省令・国税庁の公表を待つ部分があり、この点は要確認として扱います。

第六工程は、顧問先への案内文の下書きです。ここで生成AIを使います。専門用語をそのまま投げると顧問先が読めないので、何が変わるのか、自社は対象になり得るのか、いつまでに何を決めるのか。この三点に絞らせます。

あなたは会計事務所の文書作成を手伝うアシスタントです。以下の事実だけを根拠に、
顧問先向けの案内文を600字程度で作成してください。

前提事実:
- 電子取引データの隠蔽仮装に対する重加算税の10%上乗せについて、一定の要件を
  満たすデータを上乗せの対象から外す改正が令和7年度税制改正の大綱で示された
- 除外には事前の届出書提出と、訂正削除の事実確認・帳簿との関連性確認などの
  要件充足が前提とされている
- 適用は令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税から

条件:
- 宛先は甲社の経理担当者。専門用語は初出で一言の補足を付ける
- 断定的な法的評価は書かず、「確認が必要な点」として列挙する
- 必ず末尾に「詳細は担当者までご確認ください」と入れる
- 事実として与えていない数値や日付は書かない

第七工程は、有資格者による最終確認と確定です。AIの下書きは事実の取りこぼしと言い過ぎの両方を起こします。とくに対象になる、対象外になる、と言い切る表現が混ざりやすいので、判定の結論部分は有資格者が書き直す運用にしておくと安全です。案内文の確定後に、顧問先ごとの検討メモを残しておくと、翌期の見直しが軽くなります。

システム機能の確認では、ベンダー資料を読み解く作業が重くなります。次のような形で論点を抽出させると、照会リストの精度が上がります。

次のベンダー公開資料の抜粋を読み、以下の4項目それぞれについて
「記載あり」「記載なし」「読み取れない」のいずれかで分類し、根拠となる
記載箇所を引用してください。推測での補完は行わないでください。

1. 記録事項の訂正・削除の事実と内容を確認できる機能があるか
2. 金額を訂正・削除して帳簿に記録した場合に、その事実と内容を確認できるか
3. 電子取引データの記録事項と帳簿の記録事項の関連性を相互に確認できるか
4. 授受と保存を同一システム上で行ったことを確認できるか

出力は項目ごとに「分類 / 引用 / 照会が必要な点」の3行構成にしてください。

顧問先データをAIに渡す前に引く守秘義務の線

先に結論を書くと、判定作業でクラウドの生成AIに渡してよいのは、取引先名や金額を外した経路と機能の情報までに留める設計が扱いやすくなります。電子取引データそのものには取引先名・数量・単価が入っており、税理士業務で知り得た秘密に含まれる部分が大きいためです。

根拠条文を確認しておきます。税理士法第38条は、正当な理由がなくて税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、または窃用してはならないと定めています。税理士でなくなった後も同様とされています。条文が禁じているのは秘密を洩らすことと窃用することであり、外部サービスの利用がこの範囲に入るかは、利用形態と同意の有無を含めて個別に検討される論点です。事務所としては、条文をそのまま読んだうえで、入力範囲を自分たちで決めておく実務が現実的です。

実務上の切り分けは三段階で考えられます。第一段階は、法令・大綱・ベンダー資料といった公開情報のみを入力する作業。ここには顧問先情報が入らないため、制約は軽くなります。第二段階は、顧問先を特定できない形に加工した情報を入力する作業。業種と経路の組み合わせだけを渡し、社名と金額を落とす形です。第三段階は、実データを入力する作業で、ここは顧問先への説明と同意、そして入力先の選定が前提になります。

入力先の選定では、ベンダーが入力データを学習に使うかどうかの確認が起点です。多くの事業者向けプランでは学習利用をしない旨が公表されていますが、プランや設定によって扱いが変わるため、契約単位で公式ドキュメントを確認する運用が要ります。この線引きの具体的な引き方は税理士が生成AIに入れてよい情報の範囲 守秘義務から引く7つの線にまとめています。

事務所規程に落とすなら、次の三点を書き込んでいる事務所があります。ひとつめは、顧問先の実データを入力できるツールを列挙し、それ以外を使わせないこと。ふたつめは、入力の記録を残すこと。誰が・いつ・どの顧問先の情報を・どのツールに入れたかを追えるようにしておく設計です。みっつめは、顧問先への説明文の雛形を持っておくこと。新規の顧問先契約時に説明する運用にしておけば、案件ごとの判断を毎回やり直さずに済みます。

判定と案内で起きやすい3つの失敗

ひとつめは、要件を満たしていると早合点して顧問先に案内してしまう失敗です。大綱が挙げる四つの要件は、いずれも確認できる状態にしておくことを求める書き方になっています。機能があることと、運用として確認できる状態になっていることは別です。ベンダー資料に機能名が載っているだけで判定を終えると、後から帳簿側の関連性がたどれないことが分かる、という順序で手戻りが起きます。

ふたつめは、生成AIが条番号や施行日を補完してしまう失敗です。電子帳簿保存法は改正が重なっており、条ずれが起きやすい法律です。AIに案内文を書かせると、与えていない条番号や施行日を自然な文章の中に混ぜてくることがあります。プロンプトで、与えていない数値と日付は書かないと明示し、出力後に条文をe-Gov法令検索の原文で当たり直す工程を外さないことが対策になります。

みっつめは、届出の存在を案内から落とす失敗です。除外は要件充足だけでなく、あらかじめ届出書を提出していることが前提とされています。案内文が要件の説明だけで終わると、顧問先は自社のシステムが条件を満たしているから大丈夫だと受け取ります。案内の骨子に届出の要否を毎回含める構成にしておくと、この取りこぼしは減らせます。

届出と検証にかかる工数と担当の置き方

工数の山は三つに分かれます。顧問先ごとの経路棚卸し、ベンダー資料の読み込みと照会、案内文の作成と送付です。このうち生成AIで圧縮しやすいのは一つめと三つめで、二つめは照会の往復が発生するため短縮しにくい領域になります。

担当の置き方としては、ベンダー照会を事務所側で一本化する形が扱いやすくなります。同じ会計ソフト・同じ請求書サービスを使っている顧問先はまとまって存在するため、顧問先ごとに個別照会すると同じ質問を繰り返すことになります。ソフト単位で確認結果を台帳化し、顧問先へは台帳から引く運用にすれば、確認作業は一度で済みます。

費用面では、新規のツール導入よりも既存システムの設定変更と運用整備に時間が向かう構図です。デジタルインボイスの送受信に対応しているかどうかはソフト側の対応状況に依存するため、事務所が決められる範囲は限られます。決められるのは、どの顧問先から順に手を付けるかという優先順位のほうです。取引件数が多く、電子取引の比率が高い顧問先から着手すると、検討の再利用が効きます。

デジタルインボイスと決済データが軸になる意味

今回の基準が、デジタルインボイス仕様に従って提供されたデータと、金融機関の為替取引データの二つを名指ししている点は、実務上の方向感を示しています。どちらも、送り手と受け手の間で人手を介さずに構造化されたデータが流れる経路です。人が手で作ったファイルを添付して送る経路とは、改ざんの入り込み方が違います。

ここから読み取れるのは、電子帳簿保存法の運用が、保存の形式を整える段階から、データの出どころで信頼性を担保する段階へ移りつつあるという論点です。事務所の実務でいえば、顧問先に対して保存方法を指導する仕事から、取引データの受け取り方そのものを設計する仕事へ重心が移る可能性があります。デジタルインボイスに乗っている取引と、そうでない取引を分けて管理する発想が要るようになるかもしれません。

もうひとつの論点は、システム選定の基準が変わることです。これまでは検索要件やタイムスタンプへの対応が比較軸でしたが、今後は訂正削除の記録と帳簿との関連性確認が加わります。電子取引の一問一答が令和8年7月版へ 税理士が回す7点検で扱った国税庁の一問一答も、改正に合わせて更新されていく領域です。省令や国税庁の公表内容はこれから具体化する部分が残るため、現時点では要確認として扱い、公表があり次第、判定基準を更新する構えが要ります。

よくある質問

加重措置の適用除外は、すべての電子取引データが対象ですか

いいえ、対象は限定されています。大綱は、国税庁長官の定める基準としてデジタルインボイス仕様に従って提供されたデータと、金融機関の為替取引データの二つを挙げています。メール添付のPDFをそのまま保存しているだけの経路は、この枠に入らない読み方になります。詳細は財務省の大綱の該当箇所をご確認ください。

届出書を出していなければ除外されないのですか

大綱は、除外の対象を、あらかじめ当該記録について届出書を提出している場合に限ると記しています(出典: 財務省の大綱)。届出の様式や提出期限といった細目は今後の省令等で具体化される部分があり、この点は要確認です。

いつから適用されますか

大綱によれば、加重措置の除外は令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。青色申告特別控除の要件に関する部分は令和9年分以後の所得税が対象です(出典は前掲の大綱)。

顧問先の請求書データを生成AIに読ませて判定してよいですか

判定作業で必要なのは、データの経路とシステムの機能情報であり、請求書の中身そのものではない場合が多くなります。取引先名や金額を含むデータの入力は、税理士法第38条の秘密を守る義務との関係で論点になるため、入力範囲を事務所で決めてから着手する運用が扱いやすくなります。

重加算税そのものの割合は変わるのですか

大綱が扱っているのは電磁的記録に係る上乗せ部分です。重加算税の本体の割合は国税通則法第68条に定められており、今回の見直しはその枠組みの中で、電磁的記録に関する加重の対象範囲を絞るものとして示されています。

顧問先にはいつ案内すればよいですか

適用開始まで期間があるため、初回の案内は、何が変わるかと自社が検討対象になり得るかの共有に留め、省令や国税庁の公表が出た段階で第二報を出す二段構えを採る事務所があります。システム更改の判断が絡む顧問先は、更改サイクルに合わせて早めに論点を渡しておく形が現実的です。

生成AIに案内文を書かせると事実誤認が心配です

出力をそのまま送らない前提で組めば、下書き作成としての利用価値は残ります。与えた事実の範囲外を書かせないプロンプト設計と、条文・日付を原典で当たり直す工程、そして有資格者による最終確認の三点を手順に組み込む運用が広がっています。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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