許認可申請の効率化 AIを当てる5工程と要件確認の設計

許認可申請の効率化をAIで進める方法を解説。聞き取り整理、要件照合、書類の洗い出しと受領確認、申請書作成の制約と窓口対応まで工程別に整理します。

許認可申請の効率化 AIを当てる5工程と要件確認の設計

許認可申請の効率化とは、要件確認と書類準備の負担を減らす工程設計のことです。

許認可の申請業務は、要件を確認し、書類をそろえ、様式に沿って作成し、窓口とやり取りする流れで進みます。どの工程も抜けが許されない一方、繰り返しの作業が多く含まれます。この記事では、申請業務の工程を分解し、AIを当てられる部分と、人が担う部分を整理します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。生成AIサービスの利用については個人情報保護委員会の注意喚起が判断の出発点になります。

申請業務の工程を分解する

効率化を考えるには、工程を分けます。

第1の工程は、相談の受付と初期の聞き取りです。依頼者の状況を把握し、どの許認可が対象になるかを見立てます。

第2の工程は、要件の確認です。対象となる許認可の要件に、依頼者の状況が当てはまるかを確認します。ここが申請業務の中核であり、判断が集中する部分になります。

第3の工程は、必要書類の洗い出しと依頼者への案内です。要件によって書類が変わるため、第2の工程の結果を受けて進みます。

第4の工程は、書類の収集と確認です。届いた書類が一覧とそろっているか、記載に不備がないかを見ます。

第5の工程は、申請書の作成と窓口への提出です。様式が定まっている手続では、形式を崩さない設計が要ります。

このうちAIを当てやすいのは、第3の書類の洗い出しと案内、第4の受領確認、そして第1の聞き取り内容の整理です。第2の要件確認は判断が中心であり、第5は形式の厳格さから制約が大きくなります。

事務所全体での使いどころは行政書士のAI活用で扱っています。

工程1 聞き取り内容を整理する

相談の場で得た情報は、話の順番のまま記録されることが多くなります。これを整理する作業から始めます。

整理の目的は2つです。第1に、確認できた事項と、まだ分からない事項を分けること。第2に、依頼者が判断に迷っている事項を拾うことです。

あなたは事務所の事務スタッフです。以下の聞き取りメモを、次の3つに分けて整理してください。
1. 確認できた事項
2. まだ分からない事項
3. 依頼者が判断に迷っている事項

条件:
- メモに書かれていない事実を補わないこと
- 許認可の可否や要件についての判断を書かないこと
- 依頼者は 甲、関係者は 乙 のまま扱うこと
- 日付・金額・施設の規模はメモのまま変更しないこと
- 各項目は1文で、箇条書きにすること

聞き取りメモ:
"""
(ここに貼り付け)
"""

まだ分からない事項として挙がったものが、次の連絡で確認する対象になります。この整理を面談の直後に行えば、依頼者に一度で必要なことを聞ける可能性が上がります。

整理の結果を依頼者に確認してもらう使い方もあります。話した内容がこう整理されました、と示して、認識のずれを早い段階で見つける。手続が進んでから食い違いが分かるより、この段階で確認するほうが手戻りが小さくなります。

工程2 要件確認をどう支えるか

第2の工程は、判断が中心になります。要件そのものをAIに尋ねる使い方は向きません。

理由は、取扱いが変わる可能性があることと、誤りが検出しにくいことです。それらしい説明が返ってくるため、正しいかどうかを確かめる作業が、自分で調べる作業とほぼ同じ手間になります。

代わりに使えるのが、事務所が作った要件の一覧から該当項目を選ばせる形です。一覧は、所管する行政機関の公表資料を確認して作ります。一覧を作る作業自体が、要件を原典で確認する作業になります。

あなたは事務所の事務スタッフです。以下の「要件の一覧」と「依頼者の状況」を照らし、
該当状況を整理してください。

条件:
- 一覧に記載された要件だけを対象とし、一覧にない要件を追加しないこと
- 状況から判断できない要件は「要確認」に分類すること
- 許認可の可否や見通しについての判断を書かないこと
- 依頼者は 甲、施設は A、関係者は 乙 のまま扱うこと
- 出力は「該当」「非該当」「要確認」の3つに分けて列挙すること

要件の一覧:
"""
(事務所で作成した一覧を貼り付け)
"""

依頼者の状況:
"""
(匿名化した箇条書きを貼り付け)
"""

要確認とされた項目が、行政書士が判断する対象になります。この形にしておくと、判断が要る箇所が可視化され、依頼者に何を聞けばよいかがはっきりします。

一覧の更新は、実際に扱った案件から材料が集まります。案件が終わるたびに、追加で確認が要った項目を一覧に足す。この習慣にしておくと、一覧が自然に育ちます。

工程3と工程4 書類の洗い出しと受領確認

ここが最も効果の出やすい部分です。

必要書類は、要件の該当状況によって変わります。事務所の一覧から該当するものを選ばせ、依頼者向けの案内文に整える作業に効きます。

案内文の作成では、書類の名称と取り寄せ先を正確に伝えることが求められます。名称が違うと、依頼者が誤ったものを取り寄せます。指示文で名称の変更を禁じておきます。

あなたは事務所の文書作成を手伝う役です。
以下の「必要書類の一覧」をもとに、依頼者向けの案内文を作成してください。

条件:
- ですます調で統一すること
- 一文は60字以内を目安にすること
- 一覧にない書類を追加しないこと
- 書類の名称は一覧のまま変更しないこと
- 取り寄せ先の判断や、許認可の可否についての見通しを書かないこと
- 依頼者は 甲 のまま扱うこと
- 書類ごとに「何を」「どこで」の順で書くこと

必要書類の一覧:
"""
(ここに貼り付け)
"""

受領確認では、届いた書類の一覧と必要書類の一覧を突き合わせます。書類の点数が多い手続ほど、この作業に時間がかかります。機械に突き合わせを任せると、担当者は不足しているものへの対応に集中できます。

突き合わせの結果は候補であり、実際に不足しているかどうかは人が確認します。書類の名称が微妙に違う場合、機械は不足と判定することがあります。逆に、名称は合っているが内容が古い書類を、そろっていると判定することもあります。発行日や有効期限の確認は、別の観点として残します。

受領確認では、書類の中身の確認も工程に含まれます。記載の欠落、押印の有無、添付図面の不足。これらは書類ごとに見る点が違うため、一律の指示文では拾いきれません。書類の種類ごとに、見る点を一覧にしておくほうが実務に合います。この一覧も、扱った案件から材料が集まります。

依頼者への再連絡を減らす工夫としては、案内の段階で見本を添える方法があります。どの欄に何が書かれている書類が必要か、記載例を示す。誤ったものが届く回数が減れば、その分だけ工程全体が短くなります。案内文の作成にAIを使う場合、この見本の説明部分も一緒に作らせられます。

工程5 申請書の作成に使う場合の制約

第5の工程は制約が大きくなります。

様式が定まっている手続では、事務所の既存の様式を見本として渡し、その形式に沿って内容を埋めさせる形にします。ゼロから作らせると形式が崩れます。

指示文には、氏名や商号、住所、日付、金額を変更しない条件を入れます。生成AIは表記を自然な形に直す傾向があり、この処理が申請書では誤りになります。

出来上がった下書きは、記載事項の充足と、添付書類との整合を人が確認します。この確認は省けません。体裁が整っているぶん、確認が省かれやすい点にも注意します。

自由記述の部分が多い手続では、AIの当てどころが広がります。事業の内容の説明、施設の概要、実施の計画。これらは文章として書く部分であり、下書きの作成が効きます。ただし、記載した内容が事実と合っているかの確認は、依頼者に対して行います。

守秘義務と規程 申請業務に固有の設計

許認可の申請では、依頼者の事業の内容が具体的に含まれます。設計を整理します。

行政書士の守秘義務は行政書士法第12条に置かれています。正当な理由がなく業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならないと定められており、行政書士でなくなった後にも及ぶ構成です。

あわせて、行政書士法第1条の2は職責について定めており、業務に関する法令及び実務に精通して公正かつ誠実に業務を行うこととされています。生成AIの出力をそのまま使うことは、この職責の観点からも慎重に扱う対象になります。

決めるのは4点です。第1に、入力してよい情報の区分。事業の内容や施設の状況は、識別できる情報を落としてから入力する区分に置く例が多く見られます。役員の個人情報や資産の詳細は、入力しない区分に置きます。

第2に、匿名化の水準です。商号や施設名を記号に置き換えても、業種と地域と規模が揃えば特定できる場面があります。この点まで含めて判断します。

第3に、確認の工程です。商号、所在地、日付、書類の名称の4点を確認します。条文が含まれていたらe-Gov法令検索の原典で確認します。

第4に、記録です。どの案件でAIを使ったかを既存の案件管理に一項目足す形で残します。記録がなければ、後から範囲を特定することもできません。

個人情報の側では、安全管理措置が個人情報の保護に関する法律の個人情報保護法第23条に置かれています。役員や関係者の個人情報を扱う場面では、この観点も重なります。日本行政書士会連合会の公表情報は、所属する団体の考え方を確認する材料になります。規程への落とし方は士業事務所のAI利用規程テンプレートで扱っています。

窓口とのやり取りをどう扱うか

申請業務では、窓口との事前相談や補正のやり取りが発生します。この部分の扱いも整理しておきます。

窓口から示された指摘の内容を整理する作業には、AIが使えます。口頭で受けた指摘をメモに残し、対応が要る項目に分ける。この整理があると、次の対応が具体的になります。

一方で、窓口の判断そのものを予測させる使い方は向きません。取扱いは行政機関によって運用が異なる場面があり、生成AIがこれを正確に反映しているとは限りません。

事前相談の準備としては、想定される質問を列挙させる使い方が効きます。事務所として説明する内容を組み立てるときの材料になります。ただし、回答は人が用意します。

補正の対応では、指摘された箇所と、修正した箇所の対応関係を記録に残します。同じ手続を次に扱うとき、この記録が要件の一覧を更新する材料になります。補正が繰り返される箇所は、事務所の作業に構造的な抜けがあることを示しています。個別の対応で終わらせず、一覧に反映して同じ指摘を受けない形にします。

窓口とのやり取りで得た情報は、担当者の中に閉じやすい部分でもあります。所内で共有する場を作っておくと、他の担当者が同じ手続を扱うときに活きます。共有の材料としては、指摘の内容と対応の記録があれば足ります。凝った報告書は要りません。

効率化でつまずくパターン

1つ目は、要件をAIに尋ねた例です。それらしい説明が返りますが、根拠を確かめる作業が自分で調べる作業と同じ手間になります。事務所の一覧から選ばせる形にします。

2つ目は、要件の一覧を作らずに始めた例です。一覧がないと、AIに要件そのものを尋ねる使い方に流れます。

3つ目は、書類の名称をAIが直してしまった例です。名称が違うと、依頼者が誤ったものを取り寄せます。指示文で変更を禁じます。

4つ目は、下書きができたことで安心してしまう例です。体裁が整っているぶん、記載事項の充足の確認が省かれやすくなります。

5つ目は、窓口の判断を予測させた例です。取扱いは行政機関によって運用が異なる場面があり、正確に反映されているとは限りません。

6つ目は、補正の記録を残さなかった例です。同じ手続を次に扱うときの材料になるため、指摘と修正の対応関係を残しておきます。

7つ目は、複数の手続を同時に効率化しようとした例です。手続ごとに要件も様式も違うため、一覧を作る労力が分散します。件数の多い手続から一つずつ進めるほうが、結果として速くなります。

8つ目は、依頼者に届く文書がAIの文体のまま出た例です。生成AIの出力には特有の言い回しがあり、読み手には意外と伝わります。事務所の文面に整えてから送る一手間を、作業の流れに残しておきます。

費用と体制、導入の順番

費用は、法人向けプランのライセンス料が中心になります。金額は事業者と契約形態で変わるため、各社の料金ページで確認します。申請の支援に特化したツールを検討する場合は、扱う件数との釣り合いを見ます。

工数は、要件の一覧と書類の一覧を整理する作業に集中します。参考値として、よく扱う手続の一覧をそろえるのに数日、指示文の型を整えるのに半日ほど見ておくと、無理なく形になります。この整理は道具を入れなくても価値がある作業です。

体制では、一覧を更新する担当を決めます。制度が変われば一覧も更新の対象になるため、担当が決まっていないと古い内容が残ります。更新といっても、扱った案件で追加が要った項目を足すだけの作業です。案件が終わるたびに振り返る習慣にしておけば、負担になりません。

導入の順番としては、事務所でいちばん件数が多い手続を選びます。効果が読みやすく、一覧を作る労力にも見合います。そこで型が固まってから、他の手続に広げます。導入全体の進め方は士業事務所のAI導入の進め方にまとめています。

補助金の活用を検討する場合は、IT導入補助金の公式サイトで対象ツールと申請要件を確認します。

これから変わること

行政手続の電子化が進むほど、申請の形が変わります。行政手続のオンライン化の動きはデジタル庁の重点計画で確認できます。入力画面に沿って項目を埋める形になれば、書面としての様式を扱う場面は減ります。

一方で、要件の確認と、依頼者から受け取る資料の確認は残ります。この部分は、形式が電子化されても人の判断が要る領域です。

依頼者の側でもAI利用が進むため、持ち込まれる資料の性質が変わります。整理された資料が届く一方で、その整理の正しさを確認する作業が新たに発生します。

制度面では、個人情報保護法の見直しの議論が続いています。委員会の公表資料は個人情報保護委員会の報道発表で追えます。分野ごとの制度についても、所管する行政機関の公表資料を追う体制が要ります。

よくある質問

許認可の要件をAIに尋ねてよいですか

尋ねる使い方は誤りが混ざりやすくなります。取扱いが変わっている可能性があり、古い内容が出力されることがあります。事務所として作った要件の一覧を渡し、その中から該当項目を選ばせる形にします。

どの工程から始めるのがよいですか

必要書類の洗い出しと、依頼者への案内文の作成です。形式の厳格さが直接は関わらず、効果が見えやすくなります。件数が多い手続ほど効果が大きくなります。

申請書の作成に使えますか

様式が定まっている手続では、事務所の既存の様式を見本として渡し、その形式に沿って内容を埋めさせる形にします。自由記述の部分が多い手続では、下書きの作成が効きます。いずれも記載事項の充足は人が確認します。

書類の名称はどう扱いますか

指示文で変更を禁じます。名称が違うと依頼者が誤ったものを取り寄せることになり、手戻りが生じます。生成AIは表記を自然な形に直す傾向があるため、明示的に禁じておきます。

窓口とのやり取りにも使えますか

指摘の内容を整理する作業には使えます。一方、窓口の判断を予測させる使い方は向きません。取扱いは行政機関によって運用が異なる場面があり、正確に反映されているとは限りません。

要件の一覧はどう作りますか

所管する行政機関の公表資料を確認して作ります。一覧を作る作業自体が、要件を原典で確認する作業になります。実際に扱った案件で追加で確認が要った項目を足していくと、一覧が育ちます。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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