政府の生成AI利用224件の内訳が公開|機密性2情報4割・ガイドライン改定へ

デジタル庁が第5回先進的AI利活用アドバイザリーボードの資料を公開。政府職員向け生成AI224件のうち機密性2情報を扱うのは90件。ガイドライン改定の論点も整理します。

政府の生成AI利用224件の内訳が公開|機密性2情報4割・ガイドライン改定へ

デジタル庁が第5回先進的AI利活用アドバイザリーボードの配布資料を公開しました。

デジタル庁のサイトで、第5回先進的AI利活用アドバイザリーボードの配布資料が公開されています。会議は2026年7月14日の13時から15時まで、会議室とオンラインの併用で開かれました。公開資料の中心は、各府省庁が政府職員向けに動かしている生成AIシステムを棚卸しした定期報告のとりまとめです。政府が自らの生成AI利用を件数と類型で開示した資料であり、士業事務所が自事務所のAI利用を整理するときの比較対象になります。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。行政の見解は各府省庁の公表資料で確認しています。

会議室で資料を前に議論する様子

何が公開されたのか

公開されたのは、令和7年度第4回にあたる各府省庁生成AIシステム定期報告の概要資料です。デジタル庁の公開資料によれば、2026年3月末時点の利活用状況を各府省庁が2026年4月に報告し、事務局がそれを集計したものです。

同資料の冒頭では、全府省庁において生成AIシステムを利用開始済みであり、これは2025年12月末時点の前回報告から変更がないこと、そして2026年3月末時点までにリスクケースの発生事例はなかったことが示されています。25府省庁のうち20府省庁は、課室や部局にとどまらず府省庁内全体で利用を開始しており、前回報告から2府省庁増えています。

会議の議題は、この定期報告のとりまとめのほか、内外の生成AI動向、政府における生成AIの活用事例、有識者からの説明、今後の予定という構成でした。なお、高リスク案件を扱うページと防衛省の取組を扱うページは非公開資料とされており、公開版では中身を確認できません。

224件の内訳が示す政府の生成AI利用の現在地

政府職員を利用者とする案件は、同じ定期報告概要で総計224件と集計されています。前回報告の306件から減っていますが、これは同時に利用終了案件が121件報告されているためで、そのうち約9割が課室単位以下の小規模な案件でした。試しに立ち上げた小さな利用が整理され、残ったものが常用段階へ移っている構図が読み取れます。

利用類型別に見ると(出典: デジタル庁 定期報告概要)、指示文やファイルを直接入力するだけの汎用型1が131件、定型の指示文やテンプレートを使う汎用型2が16件、特定の業務データをRAGなどで参照させる特化型1が42件、追加学習で独自モデルを開発する特化型2が2件です。前回報告では汎用型1が210件、特化型1が28件でしたので、件数の整理が進む一方でRAG型は増えています。同資料は、単一府省庁のみの利用でも常用段階のものが徐々に増え、複数府省庁にまたがる案件も微増していると分析しています。

用途の集計も同資料で新たに示されました。Webサイトなど外部データを対象にした調査・リサーチが74件で全体の30.7パーセント、要約が69件で28.6パーセント、テキストのみの資料生成が68件で28.2パーセント、府省庁内部データのみを対象にした調査・リサーチが62件で25.7パーセント、翻訳が50件で20.7パーセント、メール等のドラフトを含む文章執筆が48件で19.9パーセントと続きます。一方で画像を含む資料生成は12件で5.0パーセント、動画生成は3件で1.2パーセント、自律的な対話型タスクの実行は1件で0.4パーセントにとどまり、生成の主戦場は依然としてテキストである状況が数字で確認できます。

士業事務所が読み取れる論点

士業事務所にとって参照価値が高いのは、機密性の高い情報をどう扱っているかの区分です。同じ定期報告概要では、機密性2情報や個人情報を扱う案件は224件中90件、およそ4割とされています。内訳は、利用者が指示文に入力するものが42件、参照して回答を生成するものが46件、追加学習に用いるものが1件で、残る135件は機密性1情報のみを扱う案件です。政府の情報区分でいう機密性2情報とは、行政事務で用いる情報のうち公にすることを予定していないものを指します。

この三分法は、事務所の側でAI利用を整理するときの切り口としてそのまま使えます。依頼者の情報をプロンプトに直接貼るのか、社内文書として保管したものをRAGで参照させるだけにとどめるのか、それとも学習には一切用いないのか。政府の集計では追加学習に用いる案件が1件だけという偏りが出ており、参照までは許容しても学習には出さないという線引きが多数派である様子がうかがえます。AI事業者ガイドラインを起点にした事務所規程の組み立てについては、AI事業者ガイドラインの12項目から事務所規程を作るやNIST AI RMFで事務所のAIガバナンスを構築するでも整理しています。

もう一点は、外部向けに提供されている生成AIシステムが15件に増えていることです。前回報告の10件から増加し、特定の利用者への情報提供にRAGを活用するものが多いと同資料は分析しています。行政書士や司法書士のように府省庁の窓口や案内システムに日常的に触れる職種では、問い合わせの一次回答が生成AI経由になる場面が今後増えていく可能性があります。行政側の生成AI活用と申請実務の関係は、政府のAI利用と行政書士の申請実務の論点でも扱っています。

成果目標の設定例も参考になります。同資料は定量目標として過去資料の調査にかかる時間を30パーセント削減する例、職員等からの問い合わせを3割削減する例を挙げ、定性目標としては外国語資料の対応時間削減や国際会議の内容理解の効率化を挙げています。導入の効果を語るときに、削減率と対象業務をセットで書く形式は事務所の稟議でも扱いやすい形です。

今後の動き

今後の予定を示した資料によると、アドバイザリーボードは令和8年度に第5回から第8回まで開催し、年度内に行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドラインの改定案をとりまとめることを目指すとされています。

改定の論点候補として明記されているのは、AIエージェントの導入・利活用時のルールと、ガイドラインの利便性向上です。第6回ではAIエージェントのガバナンスをめぐる動向と改定の主要事項案、各府省庁アンケートの結果が扱われ、第7回で改定方針案、第8回で改定案が示される流れが示されています。定期報告も四半期ごとに継続され、令和8年度6月分、9月分、12月分が各回で取りまとめられる予定です。

政府向けのガイドラインは士業事務所を直接の名宛人にしたものではありませんが、調達時に何を確認し、どこまでの情報を入れてよいかを整理した文書としては国内で最も具体的な部類に入ります。AIエージェントのルールが今年度中に条文化されていく過程は、事務所が自前の利用規程を見直すタイミングを計るうえで追う価値のある動きです。デジタル庁の直近の政策動向はアナログ規制の見直しフォローアップでも取り上げています。

まとめ

デジタル庁が公開した第5回先進的AI利活用アドバイザリーボードの資料では、政府職員向けの生成AIシステムが224件、うち機密性2情報や個人情報を扱うものが90件と示されました。追加学習に用いる案件は1件のみで、参照までにとどめる運用が主流です。令和8年度中には生成AIの調達・利活用ガイドラインの改定案がまとまる予定で、AIエージェントのルールが主要論点に挙がっています。

参考文献

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引用元: デジタル庁

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

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