Vercelは7月のAI利用でトークンの平均単価が下落したと公表しました。
生成AIの利用料は、いま下がりながら偏っています。Vercelが公表した月次レポート「AI Gateway Production Index(2026年8月版)」によると、2026年7月に同社のゲートウェイを通ったトークンの平均単価は前月比13.6%下落しました。一方でAnthropicは支出全体の65.1%を集め、単価は他ラボ平均の4.4倍に開いています。安いモデルが増えても、金額の集中は解けていないという構図です。この記事は、Vercelの公表データを一次情報として、士業事務所がAIツールを選ぶときの見方を整理したものです。

トークン単価13.6%下落の中身は「使い分けの変化」
単価が下がった理由は値下げではなく、利用者がどのモデルに仕事を回したかの変化です。Vercelの同レポートによれば、7月はトークン消費量が59%増、支出が37%増となり、その差分が単価の13.6%下落として表れました。6月時点のモデル構成のまま計算すると単価はほぼ横ばいだったとされており、下落分はすべて「振り分けの変更」から生じたことになります。
振り分けの変更は一部の先進的な利用者だけの動きではありません(出典: Vercel AI Gateway Production Index)。両月とも1,000万トークン以上を使ったチームのうち、4分の3が構成の1割以上を、5分の3が4分の1以上を入れ替えたと報告されています。中央値のチームの単価は2.9%減にとどまりましたが、開始時点から上下5%以内に収まったのは6チームに1チームだけでした。高い側は下げ、安い側は上げるという両方向の移動が同時に起きています。
モデル自体の入れ替わりも激しく、7月に流れたトークンの81%は半年前にはゲートウェイ上に存在しなかったモデルで処理されたとのことです。DeepSeekはGoogleを抜いてトークン量で2位となり、最安モデルであるV4 Flash単体でGoogle全体を上回りました。
支出の65%はAnthropicへ、単価は他ラボ平均の4.4倍
量が分散する一方で、金額はAnthropicに集まっています。Vercelの集計では、Anthropicは7月にゲートウェイ支出の65.1%を、トークン量の30%で獲得しました。1トークンあたりの平均単価は他のすべてのラボの平均の4.4倍で、6月の3.4倍からさらに開いています。7月1日に提供が再開されたClaude Fable 5が短期間で支出全体の13.2%まで伸び、Opus 4.8に次ぐ2位になったことも押し上げ要因として挙げられています。
同レポートは、Anthropicには市場の最下層にあたるモデルが無いとも指摘しています。最も安いHaiku 4.5でもゲートウェイ平均単価の3分の2程度で、GPT-5-Nanoは6分の1、DeepSeekのV4 Flashは16分の1とされます。価格競争そのものは起きているものの、それは金額の少ない領域で起きている、というのがVercelの見立てです。

士業事務所がこの数字から読み取れること
この統計は開発者向けの基盤サービスの数字であって、士業事務所の請求書に直接載る金額ではありません。それでも見方として使える点が三つあります。
一つ目は、同じ作業でもモデル選択で単価が桁単位で変わるという事実です。最安帯と最上位帯の差は10倍以上あり(出典: Vercelの単価比較)、下書き生成のような軽い処理と、長文の読み込みや複数資料の突き合わせのような重い処理を同じモデルで回している事務所には、見直しの余地が残っている可能性があります。
二つ目は、Vercelが「買い手はまずタスクが要求する階層でモデルを選び、その階層の中で価格を比べている」と整理している点です。安い順に選ぶのではなく、必要な精度の階層を先に決めるという買い方が、実際の利用データから読み取れる形になっています。
三つ目は、バックオフィス系のエージェントが単価の最も高い用途として挙げられていることです。支出シェアが利用量シェアの約2.5倍にあたるとされており(出典: Vercel)、書類作成や照合といった事務処理の自動化は、想定より単価が高くつきやすい領域だと分かります。
なお、価格だけで判断できない論点として、入力したデータの取り扱いがあります。今回のレポートは匿名化・集計済みのルーティングデータに基づく統計であり、各ラボの学習利用の可否や保存期間には触れていません。守秘義務を負う事務所では、単価と併せて各社の公表ポリシーを個別に確認することが論点になります。
今後の動き
オープンウェイト勢の支出シェアは7月に8.6%へ倍増以上となり、利用量では36%に達しました(出典: Vercel)。Vercelは、Kimi K3とGLM 5.2が、これまで大手が押さえてきた種類の仕事を意味のある量で回した初めてのオープンウェイトモデルだとしています。上位帯の価格が動くとすれば、この層がどこまで上がってくるかが次の焦点になりそうです。
まとめ
2026年7月のAI利用は、平均単価が13.6%下がる一方で、支出の65.1%がAnthropicに集中しました(出典: Vercel)。単価の下落は値下げではなく利用者の振り分け変更によるもので、モデル選択が費用を左右する局面が続いています。事務所がAIツールを選ぶ際も、精度の階層を決めてから価格を比べる順序と、データの取り扱い方針の確認が判断材料になります。
参考文献
- Vercel「DeepSeek overtakes Google on volume, cost per token falls 13.6%」(2026年8月11日)
- Vercel AI Gateway 製品ページ
- Vercel「AI Gateway Production Index(2026年7月版)」
- Anthropic 公式サイト
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引用元: Vercel
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