GビズID委任機能と代理申請 行政書士がAIに任せない範囲を決める7手順

GビズIDの委任機能と代理申請を使う行政書士事務所が、生成AIに任せる範囲と認証情報の扱いを決める7手順を、守秘義務の論点とFAQまで一次情報で整理しました。

GビズID委任機能と代理申請 行政書士がAIに任せない範囲を決める7手順

GビズID委任機能とは、行政サービスの手続を他者に委ねるためにデジタル庁が提供する機能のことです。

オンライン申請を依頼者から任された場面で、どこまでを生成AIに手伝わせ、どこからを人が行うのか、事務所の線引きは決まっているでしょうか。デジタル庁のGビズIDは、2026年3月27日の機能改善で、受任者から委任の依頼ができるようになり、特定の委任関係についてはメンバーに代理人ログイン権限を付与できるようになる旨が案内されています(出典: GビズID 委任機能の改善について)。この記事では、委任機能を使う行政書士事務所が、AIの使い方と認証情報の扱いを決める7つの手順を示します。本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、GビズIDの仕様はデジタル庁の公表資料で確認しました。個別案件への当てはめは行わないため、運用の最終判断は有資格者が行ってください。

GビズIDの委任機能で何ができるのかを一次情報で確認する

GビズIDには、プライム、メンバー、エントリーの3種類のアカウントがあります。プライムは法人代表者と個人事業主が対象で、すべての行政サービスを利用でき、従業員用のアカウントを追加できます。メンバーは従業員向けで、プライムのアカウントから作成します。エントリーは審査なしで作成できますが、利用できる行政サービスは限られます(出典: GビズID)。

委任機能の前提は、デジタル庁のマニュアルに書かれています。委任関係は、委任者と受任者の双方がGビズIDプライムのアカウントを持つ場合に設定でき、委任内容について契約締結などによる合意が前提とされています。根拠として利用規約第14条が示されています(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。つまり、依頼者との間の委任の合意は、システムの外で結ぶ契約として事務所が管理する事項です。

委任関係の作成では、受任者のアカウントID、対象サービス、対象手続き、終了日、備考を指定して承認を依頼する、という流れがマニュアルに示されています。承認で委任関係が成立し、その時点から効力が生じます。終了日を入力しない場合は期限なしの委任関係になり、承認済みの委任関係は解除できます。解除すると、受任者は代理申請を行えなくなります(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。

マニュアルには、見落としやすい注意事項もあります。委任対象の手続きをすべての手続きにした場合、作成後にサービスで追加された委任可能な手続きも対象になります。代理人ログインの利用履歴は、委任者も確認できます(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。委任の範囲を広く取るか、手続きを限定するかは、事務所の運用で決める事項です。

委任申請書の郵送での受付は、2026年3月27日以降、GビズIDアカウントを持たない委任者には利用できなくなったと案内されています。委任者もGビズIDアカウントを作成し、オンラインで委任機能を使う形になります(出典: GビズID 委任機能の改善について)。依頼者への案内文には、この点を含めておくと手戻りを防げます。

代理申請の手続きの方法は、行政サービスごとに異なります。上記のデジタル庁のページにも、各サービスの公式サイトで確認する旨が書かれています(出典: GビズID 委任機能の改善について)。委任機能に対応していないサービスもあるため、受任前に対応状況を確認する手順を事務所の標準にしておきます。

条文の側では、行政書士法第1条の3が行政書士の業務を定め、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することを業とする旨を規定しています。書類には、その作成に代えて電磁的記録を作成する場合の電磁的記録を含むとされています(出典: 行政書士法第1条の3)。電子申請の準備でも、この業務の枠組みで考える点は変わりません。

オンライン申請の根拠としては、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第6条があります。申請等のうち、他の法令で書面等により行うことなどが規定されているものについて、主務省令で定めるところにより電子情報処理組織を使用する方法で行うことができる旨を定めています(出典: 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第6条)。

委任機能を使う事務所がAIの線引きを決める7手順

想定するのは、行政書士と補助者が数名の事務所で、補助金や許認可の電子申請を、依頼者の委任を受けて準備する場面です。各手順で、何を入力し、何が返り、有資格者がどこで確認するかを示します。

1手目は、受任前の対応状況の確認です。入力は、依頼された手続きの名称と所管の行政サービスです。デジタル庁の行政サービス一覧で、委任機能に対応しているかを確認します。返ってくる成果物は確認結果の記録です。この作業にAIは使わず、公式サイトを直接見て、確認日を残します。

2手目は、委任の合意の整理です。依頼者との契約書または覚書に、委任する手続きの範囲、期間、解除の方法を書きます。GビズIDの委任関係の対象手続きや終了日と、契約上の範囲を一致させます。契約書の文面の最終確認は有資格者が行います。AIに文案の下書きを作らせる場合も、依頼者の名称は入力せず、架空の名称で作ります。

3手目は、認証情報の取扱いの規程化です。GビズIDのパスワードや二要素認証の情報は、生成AIに入力しないことを規程に明記します。AIに作業を代行させるツールを使う場合も、ログイン情報を渡さない運用にします。ログイン後の画面の内容も、依頼者の秘密を含むため、入力範囲を決めます。

4手目は、申請内容の下書きです。生成AIには、依頼者から預かった事実を、申請書の項目順に整形させる使い方ができます。入力にない項目は推測させず、未入力と書かせます。返ってくるのは項目順に並んだ下書きで、補助者が原本と照合し、有資格者が最終確認をします。

下書きの整形用プロンプトの例です。

次の情報を、申請書の項目の順に並べ替えてください。
入力にない項目は推測せず、未入力と書いてください。
情報はすべて架空のものです。

事業者名: 株式会社D商店
申請する手続き: (未入力)
担当者: 未定

5手目は、提出前の確認の分担です。画面入力と添付ファイルの確認は、入力した人とは別の人が行う二人体制にします。AIには、入力予定の項目と添付資料の一覧を突き合わせて、抜けの候補を挙げさせます。AIの指摘は候補にとどまり、確認は人が行います。

抜けの候補を挙げさせるプロンプトの例です。

以下の入力予定項目の一覧と、添付資料の一覧を突き合わせてください。
対応する資料が見当たらない項目だけを、候補として挙げてください。
推測で補わず、判断がつかないものは「要確認」と書いてください。
情報はすべて架空のものです。

【入力予定項目】
事業者名、所在地、代表者名、事業内容
【添付資料】
登記事項証明書(写し)

返ってくるのは候補の一覧です。確認を終えた項目は、人が記録に残します。

6手目は、提出操作と記録です。提出するのは有資格者または有資格者の指示を受けた人の操作とし、AIには提出操作をさせません。提出日時、操作した人、提出した内容の控えを、案件ごとの記録に残します。代理人ログインの利用履歴は委任者も確認できるため、記録と利用履歴が食い違わないようにします。

7手目は、委任の終了処理です。案件が終わったら、委任関係の解除を検討します。解除は必須ではありませんが、解除すると受任者は代理申請を行えなくなります(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。期限なしの委任関係を残すか、手続きごとに終了日を設けるかは、依頼者と合意した契約に沿って決めます。

認証情報と依頼者資料の扱い 守秘義務・規程上の論点

電子申請では、GビズIDの認証情報、依頼者の決算書や代表者の情報、添付する資料など、秘密にあたり得る情報を大量に扱います。生成AIに関する論点を整理します。条文の当てはめは行わず、確認先と運用例を示します。

行政書士の守秘義務は、行政書士法第12条の見出しが秘密を守る義務で、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならず、行政書士でなくなった後も同様とされています(出典: 行政書士法第12条)。生成AIへの入力がこの条文の論点にどう関わるかは、ツールの契約条件、入力する情報、依頼者への説明の有無などによって変わり得ます。個別の判断は有資格者が行います。

職責については、同法第1条の2が、品位を保持し、法令及び実務に精通して公正かつ誠実に業務を行うこと、デジタル社会の進展を踏まえ情報通信技術の活用に努めることを定めています(出典: 行政書士法第1条の2)。技術の活用に努めることと、秘密を守ることは、並べて読む条文です。

規程に落とす運用例として、入力情報を三つに分けます。公開情報、たとえば行政サービスの公式案内やe-Govの条文は、承認済みのどのツールにも入力できます。事務所内の一般情報、たとえば匿名化した手順書は、承認済みのツールに限ります。依頼者の秘密情報と認証情報のうち、認証情報は生成AIへの入力を禁止し、依頼者の秘密情報は、データを学習に使わない設定が確認できたツールに限って入力する、という分け方です。

認証情報については、人が管理する方法を規程に書きます。パスワードの保管方法、二要素認証の端末の管理、退職者のアカウントの扱いなどです。GビズIDでは、有効期限の更新の際に、メンバーはプライムまたは管理者権限のあるメンバーによる承認が行われる旨が案内されています(出典: GビズID)。アカウントの棚卸しの周期を決めておくと、更新の際にも慌てません。

業務の枠組みの観点では、行政書士法第19条が、行政書士または行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことを制限しています(出典: 行政書士法第19条)。AIツールの位置づけは、当サイトの行政書士と生成AI 非行政書士による書類作成の線引きと注意点で整理しています。事務所の側では、AIが作るのは下書きまでで、提出する書類の作成主体は有資格者であると記録に残す運用が考えられます。規程づくりの型は、士業事務所のAI利用規程テンプレート 全10条の骨子と作り方の手順も参考になります。

委任とAIの運用で起こりやすい失敗例と回避策

実在の事務所の事例ではなく、運用上の想定として3つ挙げます。

1つ目は、認証情報をAIに渡してしまうことです。作業を効率化したい気持ちから、ログイン情報をAIツールに入力してしまう想定です。回避策は、3手目のとおり、認証情報の入力禁止を規程に明記し、ツールごとの入力禁止項目の一覧を作ることです。

2つ目は、委任の範囲と契約の範囲のずれです。対象手続きをすべての手続きにすると、作成後に追加された手続きも委任の対象になります(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。契約上は特定の手続きだけを受任しているのに、システム上の権限のほうが広い状態が起こり得ます。回避策は、委任関係の作成時に対象手続きを限定し、契約と画面の設定を突き合わせて記録することです。

3つ目は、委任の終了後も権限が残ることです。終了日を入力しなかった委任関係は期限なしになります。案件が終わっても解除されないまま残ると、台帳と実態が食い違います。回避策は、案件の完了時の確認項目に、委任関係の解除の要否を入れることです。

費用・工数・体制の目安

この種の運用の費用について、統計に基づく平均値は確認できていません。そのため、数字ではなく工数の内訳の考え方を示します。数字を置く場合は、自事務所で測った実績値を使ってください。

工数の中心は、受任前の対応状況の確認、契約の整理、二人体制での提出前確認、委任の終了処理です。生成AIで短縮できるのは、申請内容の項目順への整形、抜けの候補の洗い出し、依頼者向け案内文の言い換えまでです。認証情報の管理と提出操作は、人が担当します。

体制は、規程と台帳を管理する人、案件の有資格者、提出前確認をする人の役割を分ける形が考えられます。小規模な事務所では兼務になりますが、入力した人と確認した人は分けると、見落としに気づきやすくなります。費用は、利用する生成AIサービスの料金表で確認し、確認日を台帳に残します。

委任機能の拡充と今後の論点

一次情報から言える範囲で、確認しておくとよい論点を整理します。

1つ目は、行政サービスごとの対応状況の広がりです。委任機能の対応は、サービスごとに異なります(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。対応状況は変わり得るため、案件ごとに確認する運用が現実的です。

2つ目は、機能改善の継続です。デジタル庁は、GビズIDの令和8年度の機能改善に関する資料を公表しています。改善の内容は今後の公表で変わり得るため、事務所の運用手順は、確認日を付けて保管しておきます。

3つ目は、AI代行ツールとの関係です。ブラウザ操作を代行するAIツールが増えていますが、認証情報を渡す運用の可否は、各行政サービスの利用規約や事務所の規程で決まります。使う場合は、ログインを人が行い、AIには画面内の整形や確認の補助だけをさせる設計が考えられます。

よくある質問(FAQ)

依頼者からGビズIDの認証情報を預かって申請してもよいですか。

預かるか、委任機能を使うかは、各行政サービスの規則と事務所の規程を確認して判断する事項です。デジタル庁は、委任機能の利用には委任者と受任者の間の合意が前提とされ、利用規約第14条が根拠とされていると案内しています(出典: GビズID 委任機能の改善について)。

委任機能を使うには、どのアカウントが必要ですか。

マニュアルでは、委任者と受任者の双方がGビズIDプライムのアカウントを持つ場合に設定できる、と案内されています(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。

生成AIに申請書の下書きを作らせてよいでしょうか。

下書きの整形には使えますが、提出する書類の最終確認は有資格者が行う運用が考えられます。依頼者の秘密情報の入力は、行政書士法第12条を踏まえ、有資格者が判断します(出典: 行政書士法第12条)。

AIにログインして申請操作まで任せられますか。

任せるかどうかは、各行政サービスの規則と事務所の規程で決まる事項です。この記事では、ログインと提出は人が行い、AIには下書きと確認の補助だけをさせる設計を勧めています。

委任関係は、案件が終わったら解除したほうがよいですか。

解除は必須ではないとマニュアルに記載されています。解除すると、受任者は代理申請を行えなくなります(出典: GビズID 委任機能 ご利用マニュアル)。依頼者との契約の内容に沿って、事務所が決めます。

オンライン申請の法的な根拠はどこで確認できますか。

情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第6条で、電子情報処理組織を使用する方法による申請等について確認できます(出典: 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第6条)。

参考文献

※士業のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴事務所の業務に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://shigyonochikara.jp/contact/

本記事の作成体制について

本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。

本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。

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