厚生労働省は2026年10月21日、令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況を公表しました。
厚生労働省は2026年10月21日、「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査」の概況を公表しました。1人平均賃金を引き上げた、または引き上げる予定の企業は92.0%、1人平均賃金の改定率は4.4%で、いずれも公表資料に前年の数値が併記されています。顧問先の賃金改定や就業規則、給与計算の相談を受ける社会保険労務士や税理士にとって、顧問先に示せる客観的な参照値になる調査です。この記事では公表された数値を整理し、士業事務所の現場との接点を述べます。なお、本稿は公表資料にもとづく速報で、数値の評価や個別の助言を行うものではありません。
何が公表されたのか
厚生労働省の調査結果ページには、賃金の改定の実施状況、改定額および改定率、定期昇給制度やベースアップ等の実施状況、賃金の改定事情、夏の賞与の支給状況、労働組合からの賃上げ要求状況の6項目が掲載されています。このほか、統計表、図表データのExcel、報道発表用資料、概況版のPDFも公開されています。
概況版のPDFによると、調査の実施時期は2026年7月20日から8月10日です。調査対象は3,668社で、有効回答は1,862社、有効回答率は50.8%でした。公表日は令和8年10月21日と記載されています。
主な数値の整理
賃金の改定の実施状況では、1人平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業が92.0%で、前年の91.5%から0.5ポイント上昇しました。引き下げた、または引き下げる企業は0.4%(前年1.1%)、賃金の改定を実施しない企業は2.1%(前年2.4%)、未定は5.1%(前年3.9%)です。労働組合の有無別では、引き上げた企業の割合は労働組合ありが96.9%、なしが90.5%でした。
1人平均賃金の改定額は13,926円で、前年の13,601円を上回りました。改定率は4.4%で、前年と同じです。労働組合の有無別の改定率は、ありが4.5%(前年4.8%)、なしが4.2%(前年4.0%)と、差が縮まる形になっています。
定期昇給制度については、制度ありが84.2%(前年81.2%)、なしが13.9%(前年17.7%)でした。定期昇給を行った、または行う企業は81.2%(前年76.8%)です。ベースアップを行った、または行う企業は57.9%(前年57.8%)で、労働組合ありでは83.9%、なしでは48.8%とされています。
改定の背景と賞与・労使交渉の状況
賃金の改定事情の項目では、企業の業況が「良い」とした割合が40.3%で、前年の35.3%から増えました。「さほど良くない」は48.6%(前年51.2%)、「悪い」は8.4%(前年13.1%)です。賃金改定で最も重視した要素は、企業の業績が46.0%(前年41.7%)、労働力の確保・定着が12.1%(前年17.0%)、雇用の維持が9.2%(前年11.9%)でした。
夏の賞与は、支給した、または支給する企業のうち額が決まっているものが88.5%(前年88.4%)、支給するが額は未定が5.3%(前年4.6%)、支給しないが5.3%(前年4.9%)です。
労働組合がある企業の割合は23.3%(前年22.0%)でした。そのうち賃上げ要求交渉があった企業は84.7%で、前年の78.3%から上昇しています。
士業事務所にとっての接点
この調査は統計の公表であり、制度の変更や新たな義務を定めるものではありません。そのため、施行日や手続の変更といった論点は、今回の公表資料には含まれていません。
そのうえで、顧問先から賃金改定や賞与の相談を受ける社会保険労務士にとっては、同業他社の動向を示す数値の一つになります。税理士や公認会計士にとっても、人件費の見通しを顧問先と話す際の参考資料です。ただし、この調査は有効回答1,862社の結果であり、個々の顧問先の業種や規模、地域に当てはまるかどうかは別に確認する必要があります。業種別や規模別の詳細は、統計表や図表データに掲載されているため、顧問先に近い区分を見たい場合は一次資料に当たる段階です。
生成AIの活用という観点では、統計表のExcelやPDFを読み込ませて顧問先向けの説明資料の下書きを作る使い方が考えられます。その場合、AIの出力にある数値は、元の統計表と照合して確認する運用を採る事務所があります。調査結果そのものは公開情報ですが、顧問先の個別の賃金データを併せて入力する場合は、利用するAIサービスのデータの取り扱いを事前に確認する段階です。今回の公表資料からは、こうしたAI利用に関する記載は確認できません。
今後の動き
概況版には、毎年の調査として前年の数値が併記されています。来年以降の調査結果との比較で、改定率や定期昇給、ベースアップの実施割合がどう推移するかが注目点です。今回の公表では、改定率が前年と同じ4.4%となった一方、定期昇給を行う企業の割合や、業況が良いとする企業の割合は前年から上昇しました。
事務所の側では、次のような点を確認する段階にあります。
- 顧問先の賃金改定の時期と、今回の調査の実施時期である7月から8月との違い
- 統計表のうち、顧問先の業種や規模に近い区分の数値
- 資料作成にAIを使う場合の、数値の照合方法とデータの入力範囲
まとめ
厚生労働省は2026年10月21日、令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況を公表しました。1人平均賃金を引き上げた企業は92.0%、改定額は13,926円、改定率は4.4%で、定期昇給を行う企業は81.2%、ベースアップを行う企業は57.9%です。制度変更を伴う公表ではありませんが、顧問先との賃金や賞与の話をする際の参照値として、一次資料の統計表にあたる価値があります。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」
- 厚生労働省「令和8(2026)年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況(概況版PDF)」
- 厚生労働省「賃金の改定の実施状況」
- 厚生労働省「賃金の改定額及び改定率」
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引用元: 厚生労働省
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
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