日本公認会計士協会は2026年8月18日、研究報告第48号を公表しました。
日本公認会計士協会(JICPA)が、非営利法人委員会研究報告第48号「医療法人の継続事業の前提について」を専門情報ページに掲載しました。掲載日は2026年8月18日、2026年8月6日に開催された常務理事会の承認を受けたものです。医療法人の監査に当たって監査基準報告書570「継続企業」を適用する際の参考として、実務上の留意事項をQ&A形式でまとめた内容だと説明されています。継続企業の前提は、監査のなかでも判断の比重がとりわけ重い領域です。生成AIをどこまで前工程に入れられるのかという問いとあわせて、公表内容を整理します。
何が公表されたか
公表されたのは、非営利法人委員会研究報告第48号「医療法人の継続事業の前提について」です。JICPAの公表ページには常務理事の菅田裕之名で告知が掲載され、「本研究報告は、医療法人監査に当たり、監査基準報告書570『継続企業』を適用する際の参考に資することを目的として、実務上の留意事項についてQ&A形式で取りまとめたものです」と目的が示されています(日本公認会計士協会)。
ファイルは前書文(PDF・68.0KB)と本文(PDF・34.7KB)の2点で構成されています。閲覧には日本公認会計士協会著作権規約への同意が求められる形式で、公表物の複製・転載には事前の文書による許諾が必要だとご利用条件のページとあわせて明記されています。本稿でも中身の逐条紹介は行わず、原典に当たっていただく前提で公表の事実と位置づけだけを扱います。
注目したいのは、この研究報告が単独で出てきたわけではないという点です。JICPAの専門情報一覧を見ると、2026年7月16日に「監査基準報告書570『継続企業』の改正に伴う監査基準報告書等の改正」の公開草案が公表され、募集期間はすでに終了しています。さらに2026年8月10日には監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」の改正公開草案が公表され、こちらは募集中の状態です。継続企業と不正という、判断が割れやすい二つの論点が同じ時期に動いています。
会計士事務所にとっての論点
影響が直接及ぶのは、医療法人の監査を受嘱している公認会計士と監査法人です。継続企業の前提に関する評価は、経営者の評価を検討し、必要な場合は追加手続を実施して結論に至る流れをとります。医療法人は診療報酬という公定価格に収益構造が強く依存する一方、人件費や建物・設備の負担が重く、一般事業会社とは資金繰りの読み方が異なります。業種特性をふまえた留意事項がQ&Aとして整理された意味は小さくないと考えます。
税理士事務所にとっても無関係ではありません。医療法人の顧問先を持つ事務所では、決算数値や事業計画が監査人の継続企業の検討材料になります。監査対象法人かどうかで求められる資料の粒度は変わりますが、資金繰り表や返済予定表の整備水準が問われる場面が増える可能性はあります。ここは各法人の制度上の区分によって異なるため、個別に確認する領域です。
なお、本研究報告の具体的なQ&Aの内容および医療法人監査の適用範囲については、本稿では原典の記載に立ち入っていません。詳細は原典と所属団体の案内をご確認ください(要確認)。

生成AIをどこまで前工程に入れられるか
継続企業の前提の検討で、生成AIが担えるのは判断そのものではなく判断の前工程です。実務で線を引くとすれば、次の3つの論点になります。
第一に、資料の横断検索です。過去の監査調書、経営改善計画、理事会議事録といった手元の文書群に対して、資金繰りに関する記述を拾い出す用途であれば、AIは下読みの時間を圧縮します。ただし拾い漏れの可能性は残るため、AIの出力を網羅性の根拠には置かず、人が確認する範囲を決めたうえで使う運用が現実的です。
第二に、公開情報の整理です。診療報酬改定の内容や地域の医療提供体制に関する公表資料は量が多く、要点抽出との相性が良い領域です。この場合も出典に当たり直す手順を挟むことで、生成AIが事実でない内容を出力するリスクを抑えられます。
第三に、データの取り扱いです。医療法人の財務データや経営計画を外部の生成AIサービスに入力する場合、入力内容が学習に使われるかどうかはサービスと契約プランによって扱いが分かれます。各ベンダーの公表ポリシーを確認したうえで判断する領域であり、守秘義務との関係は事務所の規程で先に整理しておく論点です。事務所規程への落とし込みは監査におけるAIの利用 JICPA研究文書第11号を事務所規程に落とす7論点で扱っています。
調書レビューの工程設計については監査調書のAI一次レビューを組む6工程と会計士事務所の品質管理の線を、監督官庁側の整理は金融庁AIディスカッションペーパー第1.1版 会計士が読む6つの論点を参照してください。
今後の動き
監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」の改正公開草案は、2026年8月10日公表時点で意見募集中と記載されています(日本公認会計士協会 専門情報一覧)。継続企業と不正の両方で基準側の見直しが進む局面では、事務所内の手続書やチェックリストの更新タイミングを先に押さえておく事務所があります。研究報告第48号についても、まずは原典のQ&Aを読み、自事務所の医療法人案件でどのQ&Aが効くかを棚卸しする段階と言えます。
まとめ
日本公認会計士協会は2026年8月18日、非営利法人委員会研究報告第48号「医療法人の継続事業の前提について」を公表しました(出典: 日本公認会計士協会)。監査基準報告書570の適用にあたる留意事項をQ&A形式で整理した内容です。同時期に570と240の改正公開草案も動いており、継続企業をめぐる実務は更新期に入っています。生成AIは資料の下読みと公開情報の整理までを担い、判断は会計士が行うという線引きが、当面の現実解になりそうです。
参考文献
- 日本公認会計士協会 非営利法人委員会研究報告第48号「医療法人の継続事業の前提について」の公表について
- 日本公認会計士協会 専門情報一覧
- 日本公認会計士協会 専門情報
- 日本公認会計士協会 ご利用条件/著作権について
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引用元: 日本公認会計士協会
本記事の作成体制について
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